№01 千手家の朝
【桜月 早朝】
[木の葉隠れの里 千手屋敷]
「ヨシ!できた」
「りつ兄、朝めしできた?」
「ちょうど、テーブルに並べ終わったところだよ
縄樹」
俺の名は千手律樹。
初代火影の孫で千手本家の長男。
今の千手家は綱手姉さんが一番上だ。
縄樹が双子の弟で、両親を失った俺たちは姉弟
3人で暮らしている。
実は俺だけ家族の中で違いがある。
それは俺が転生者だ。
クソ神さまに転生特典を押しつけられ、半ば強
引に転生させられてから早六年。
なんだかんだとアカデミー入学の年齢になって
本日晴れてアカデミー生となる。
「そういえば縄樹、姉さんは?」
俺が台所にいない姉さんを縄樹に尋ねる。
苦笑いの縄樹は頭を掻きながら言いづらそうに
答えた。
「それが姉ちゃんを起こそうと部屋を覗いたら酒
臭かった。あれは深酒で爆睡中だよ」
それを聞いた俺は縄樹とともにため息をはく。
「ったく、今日は俺たちのアカデミー入学式なの
に。姉ちゃんは相変わらずだ」
「まったくだよ、昨日なんて、自来也さんを担い
で朝帰りしてきた時は呆れたな」
近年の社会情勢は第二忍界大戦の勃発が近い。
そのため、姉さんは木の葉の上忍として数カ月
前からあちこちに派遣されたり、仕事場で寝泊ま
りしたりしていると多忙を極めている。
そりゃ、とてつもなくストレスが溜まっている
のはわかる。
だけど、俺たちの入学式のためにわざわざ数日
休みを取って家に帰ってきたはずだよな?
なのに、ここ数日は連日連夜飲み歩いているん
だよ。
「はぁ〜、姉ちゃん優秀だけどだらしない」
「まったくだ。そんなんだから嫁のもらい手がな
いんだよ」
俺が姉さんの愚痴を口走ると、縄樹がパクパク
と口を動かして固まった。
「?縄樹?」
俺は縄樹が凝視している後ろを振り返ると怒気
を纏った姉さんが仁王立ちしていた。
「・・・・・・・・・姉さんおはよう」
「おはよう、かわいい弟たち。そして私の将来を
心配してくれてありがとう」
顔は笑っている。
だが、額には青筋が立てて目から怒気を宿した
チャクラを感じる・・・・・・。
自来也さん、よくこんな姉さんに毎回セクハラ
できるな。
勇気あるというか、尊敬するよ。
「律樹」
「はい!?」
「こんだけがんばっている私が酒を飲んじゃいけ
ないかい?あんた鬼だね〜」
そう言うと姉さんは俺の頭を右手で鷲掴みして
ギリギリと音を立てながら持ち上げた。
「さ、酒はいいけど、ギャッ、ギャンブッる!
あた!!アタタタっ!!!?」
「稼ぎ頭の姉に楯突くとは・・・・・・いい度胸だね」
アイアンクローをかまさせ、もがき苦しむ俺。
その背後では椅子の盾にしてガタガタと震える
縄樹。
「ね、姉さんギブ〜ギブ!!」
「・・・・・・これにこりたら、二度と姉に楯突くんじ
ゃないよ、いいね」
「は、はい!」
ギラッと睨みつけてくる姉さんがパッと手を離
したら、俺は床に尻もちをついた。
怒りを内側に秘めた笑顔の姉さんが俺と縄樹に
こう言った。
「わかればよろしい。さっさと朝めしを食べて入
学式の用意をしな!」
「「は、はい!!」」
俺たちは「これ以上は逆らわない方がいい」と
目で語り合い、すぐさま自分の席について朝飯を
食べ始めた。
「まったく、朝から怒るなんて。これじゃ肌があ
れるわ」
「・・・・・・そこかよ」
「何か言いたげそうだね、律樹?」
「なんにもございません」
俺は話題を変えて怒りを収めるため、姉さんに
質問した。
「そういえば姉さん。入学式の後はすぐに任務へ
戻るの?」
「ああ、そうだよ。なんせ戦争がまた始まるから
ね。猿飛先生が気を利かせて休めたけど・・・・・・
またしばらくは家に帰れないよ」
「ふ~ん、でも姉ちゃんの任務って主に医療でし
ょ?今はそんなに忙しくないんじゃない?」
「縄樹、戦争でもっとも厄介なのは巻き込ませる
一般人なんだよ」
姉さんは縄樹に、戦争では戦闘そのものよりも
その後の後始末の方が大変なのだと話し始めた。
戦争で一般人を巻き込めば済む話じゃない。
戦場周辺の調査や住民との交渉、避難誘導まで
忍の仕事だと姉さんは語った。
姉さんの説明にそうかと納得する縄樹の顔を見
て俺は能天気だと思った。
「あんたたち、ごめんね。入学式のお祝いができ
なくて。後で埋め合わせをするから」
「気にしなくていいよ、姉さん」
「そうだよ、姉ちゃん。りつ兄と俺がいれば無敵
だから大丈夫だよ」
俺たちがそう言うと満面の笑みに変わった姉さ
んはそうかいと言い、頷いた。
朝ごはんを食べ終えて俺たちは正装して3人で
アカデミーに向かった。
途中で商店街を通ったが、活気のあるところさ
え、重い空気が漂うから幼い俺たちにも戦争の嫌
悪がよくわかった。
「なんか、みんな暗いな縄樹」
「そうだな、戦争が始まるせいか?」
「・・・・・・仕方ないさ、戦争は人から何かを奪うか
らね。潤うのは上の連中ばかりだよ」
確かに姉さんの言う通りだ。
商店街の人たちも戦争とは無縁じゃない。
里の商人は忍と兼業している人がほとんどだ。
手足を失えば生活は苦しくなるし、無事に帰っ
てきても心に傷を負う者もいる。
戦場の記憶に苦しみ、家族を傷つけてしまった
忍の話も耳にしたことがあった。
本当にいたたまれない。
「・・・・・・姉さん」
「なんだ律樹」
「俺たちがアカデミー卒業する頃には、戦争はも
っと過酷になると思う?」
俺の問いに悲しい目で俺を見る姉さんは数秒の
沈黙の後、こう答えた。
「おそらく律樹の言う通りになるよ」
「え?な、なんでだよ姉ちゃん!?」
やりきれない顔に変わった姉さんは優しい声で
語り出した。
「忍は所詮、戦争の道具だ」
「「…………」」
「他里と同盟を結んでも争いはなくならない。
どこかで利権や思惑がぶつかる。
やがて小さな火種は戦火へ変わる。
ーーそれが戦争さ」
縄樹は信じられないという目で姉さんを見る。
姉さんは俺たちの頭に手を置いてこう呟く。
「だから、あんたたちは強くなるんだよ」
「うん」
「そんなの当たり前だろ!おれは火影になる男
だ!!」
縄樹の夢・・・・・・俺たちの爺さん初代火影を超
える火影になること。
俺の夢か・・・・・・・・・・・・。
ーto be continuedー
次回 アカデミー入学