木の葉の摩利支天と呼ばれた忍    作:rOOd

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閑話 夜道

      【桜月 夜中】

 

    [木の葉隠れの里 表街道]

 

「いや~、今日はめでたい日だな、大蛇丸」

「そうね。綱手に家族が増えたもの」

 

 綱手の家での宴を終えた儂と大蛇丸は、ほろ酔

い気分で夜道を歩いていた。

 

「・・・・・・で、大蛇丸。収穫はあったか?」

「あら、何の話かしら?」

「とぼけるな。才牙のことだ」

 

 儂は白々しいなと言いたげな視線を向ける。

 

「綱手ん家の宴に参加した本当の目的は、才牙だ

 ったんだろう?」

「・・・・・・あらあら、お見通しね」

 

 大蛇丸は満面の笑みを浮かべた。

 

「バレバレだっての。で、才牙の感想は?」

「一言で言えば――感銘、かしら」

 

 その答えに、儂は深くうなずいた。

 

「やはり、お前もそう思うか」

 

 儂は夜空を見上げながら、静かに続ける。

 

「儂も同じだ。余興で見せてくれたアレは、忍術

 ではない。まして仙術でもない」

 

 一拍置き、確信を込めて言い切る。

 

「才牙とは――忍びの始祖 六道仙人の陰陽術。

 その極致とも呼べる力だ」

 

 大蛇丸は細く目を細め、不敵な笑みを浮かべた

 

「ええ。魂そのものを力へと昇華させる術・・・・・・

 実に興味深いわ」

 

 自来也は横目で大蛇丸を見た。

 

「・・・・・・で、お前ならどうする?」

「何がかしら?」

「決まっておる。才牙だ」

 

 自来也は口元を緩めながら続ける。

 

「お前なら、才牙を手に入れられるか?」

 

 その問いに、大蛇丸は足を止めた。

 月明かりが白い横顔を照らす。

 

「ふふっ・・・・・・」

 

 静かな笑みを浮かべると、黄金の瞳が妖しく輝

いた。

 

「ええ、いずれ必ず・・・・・・」

 

 その答えに、自来也は苦笑する。

 

「やっぱりな。そう言うと思ったよ」

「だって、あれほど魅力的な力を前にして、諦め

 る理由なんてないもの」

 

 大蛇丸は再び歩き出す。

 

「律樹君は、魂へ至るには清らかな心が必要だと

 言っていたわ」

 

 貪欲の目でこう語り出した。

 

「でも、それは彼なりの到達法というだけ」

 

 一拍置き、静かに言葉を重ねる。

 

「ならば私は、私だけの方法で魂へ辿り着いてみ

 せる」

 

 その揺るぎない言葉に、自来也は肩をすくめて

笑った。

 

「まったく・・・・・・お前の探究心だけは昔から底な

 しだな」

「褒め言葉として受け取っておくわ」

 

 大蛇丸は薄く笑みを浮かべた。

 

「それと、自来也。一つだけ言っておくわ」

「なんだ?」

 

「猿飛先生がカガリと律樹について箝口令を敷い

 たでしょ。あれ、あまり意味はない」

 

 自来也は眉をひそめる。

 

「どういうことだ?」

「あの日の事件をもみ消すことなんて不可能よ」

 

 大蛇丸は夜空を見上げ、静かに続ける。

 

「里には優秀な忍が大勢いる。あれほどの異変を

 起きて気づかない忍など木の葉にはいない」

 

 唇を舐めながら、こう断言した。

 

「誰一人として疑問を抱かないはずがない。時間

 はかかるでしょうけれど、必ず真実へ近づく者

 が現れる」

「・・・・・・確かにな」

 

 自来也は苦笑しながら頭をかいた。

 

「噂も情報も、完全には止められねぇか」

「ええ。けれど、重要なのは隠し続けることでは

 ないのよ。誰よりも先に、その正体へ辿り着く

 ことよ」

 

 その黄金の瞳には、研究者としての強い執念が

宿っていた。

 

「そして、その栄誉は──私がいただくわ」

 

 自来也は満面の笑みを浮かべ、唇を舐める大蛇

丸を見つめ大きくため息をついた。

 

「まったく・・・・・・そういうところは、猿飛先生と

 そっくりだな」

 

 大蛇丸は小さく肩をすくめ、くすりと笑う。

 

「あなたにだけは言われたくないわね」

「ん?」

「確かに、猿飛先生の探究心は私が受け継いだけ

 れど――」

 

 一拍置き、その黄金の瞳を自来也へ向ける。

 

「先生の色欲は、あなたがしっかり受け継いでい

 るじゃない」

「ぐっ・・・・・・!」

 

 思わぬ反撃を受けた自来也は言葉を詰まらせる

 大蛇丸は勝ち誇ったように微笑み、自来也は頭

をかきながら苦笑するしかなかった。

 大蛇丸は軽く息をつき、表情を引き締めた。

 

「・・・・・・まあ、その話はここまでにしましょう」 

 

 そう言って話題を切り替えると、静かな口調で

続ける。

 

「それよりもね。私は律樹君に一つだけ矛盾を感

 じているの」

「矛盾?」

 

 自来也が首をかしげる。 

 

「ええ。律樹君は言っていたわよね。自分が才牙

 へ至った理由を『純粋無垢な子供の心』だと。

 でも、私はそうは思えない」

 

 大蛇丸はゆっくりと首を横へ振った。 

 

「私から見て、彼の印象・・・・・・聡明ではあるけど

 早熟ではないわ」

 

 一拍置き、その黄金の瞳に確信を宿す。

 

「むしろ、精神だけが異常なほど成熟しているの

 よ」

 

 自来也は目を丸くした。

 

「・・・・・・成熟?」

「ええ。だからこそ、彼自身が唱える理論と、律

 樹君という存在は一致していない。

 そこに私は強い違和感を覚えているの」 

 

 自来也は腕を組み、しばらく考え込んでから苦

笑した。

 

「・・・・・・確かにな。言われてみりゃ、あいつはガ

 キらしくねぇところがある」

 

 大蛇丸は黙って耳を傾ける。

 

「物事の見方も、考え方も、客観的に捉えとる。

 まさに大人顔負けだ。

 儂もお前の言う『成熟している』って考えには

 同意だな」

 

 自来也は肩をすくめると、どこか優しい笑みを

浮かべた。

 

「だがな、それでもあいつは綱手の弟だ」

「・・・・・・ええ」

「理屈じゃねぇ。あいつがどれだけ特別でも、儂

 にとっちゃ仲間の家族なんだよ」

 

 自来也は夜空を見上げ、小さく笑う。

 

「だからこそ、あいつには変な重荷なんざ背負わ

 せたくねぇ。あいつには、あいつらしく歩いて

 ほしいもんだ」

「そうね。それが私たち、大人の役目ね」

 

 二人は月明かりに照らされた街道を、静かに歩

き続けた。

 

 

ーto be continuedー

 

 




次回 うずまきミト
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