【桜月 早朝】
[木の葉隠れの里 機密施設]
縄樹とカガリは俺の言葉で驚愕した。
「な、何言ってるんだよ、りつ兄!?」
「そうよ!何を根拠にそんなことを言うの!?」
姉さんだけは冷静な表情で聞き返した。
「律樹・・・・・・それは、どういうことだい?」
三人の視線を受けながらも、俺は落ち着いた様
子で口を開いた。
「俺がそう考える根拠は、一つだけです」
一拍置き、全員を見渡す。
「――うちはマダラによる九尾襲撃です」
俺は一拍置いて、続けた。
「世間では、復讐に取り憑かれたマダラは口寄せ
した九尾を使役し、木ノ葉を滅ぼそうとしたと
伝えられています」
「・・・・・・真実は違うっていうのかい?」
姉さんが鋭く問い返す。
俺は静かにうなずいた。
「違います。もちろん里への攻撃は事実です。で
も、それは目的ではなく陽動だったのではない
かと、俺は考えています」
その場の空気が張り詰める。
「陽動・・・・・・?」
カガリが小さく呟く。
「ああ、本当の狙いは――お祖父さま・・・・・・・・・
千手柱間の身体の一部を奪うことです」
「「「ッ!!?」」」
姉さんたちは息を呑んだ。
俺は落ち着いた口調で説明を続ける。
「まず、終末の谷でマダラは死んだことになって
いる。でも実際は、うちは一族の禁術によって
生き延びたと俺は推測しています」
その言葉に、カガリが目を見開いた。
「ま、まさか・・・・・・イザナギ!?」
「イザナギ?」
いきなり、声を上げたカガリに驚いた縄樹が聞
き返すと、カガリは小さく頷き、説明を始めた。
「イザナギは、万華鏡写輪眼を持つ者だけが使え
る禁術なの」
「スサノオみたいなものか?」
「違うわ。イザナギは、忍界最上位の幻術・・・・・・
自分に起きた不利な現実を幻へと変え、都合の
いい現実へ書き換える術なの」
「はっ!? 現実を書き換える〜!?」
縄樹は混乱するのも当然だ。
理解するには言葉で説明するより、例えた方が
早い。
「縄樹、落ち着け」
「お、落ち着けねえよ。ちんぷんかんぷんだ」
「だろうな。じゃあ、分かりやすく説明する」
俺は本棚から一冊の本を取り出し、テーブルに
置き、ページをパラパラとめくった。
「縄樹、この本の開いているページに気に入らな
い文章があったとする」
「うん」
俺は鉛筆を持った。
「そこで、その文章に線を引いて、新しい文章を
書き加える」
「えっ・・・・・・ってことは・・・・・・」
俺は静かに頷いた。
「そう。これがイザナギだ。本来起きた出来事を
『なかったこと』にして、自分に都合のいい結果
へ書き換える術なんだ」
俺の説明を聞き、縄樹はようやく理解した。
「なるほど・・・・・・マダラはイザナギによって、自
らの死を偽装したってことか!」
縄樹はイザナギの仕組みを理解できたことに喜
んだ。
しかし、姉さんは怪訝そうな表情を浮かべ、俺
に尋ねた。
「待て。死を偽装したっていうなら、マダラは遺
体としてどこに保存されていた?」
俺は小さく頷いた。
「それは大叔父様――二代目火影の仕業だよ」
「え?」
「おそらく、終末の谷で回収されたマダラの遺体
は、お爺さま――千手柱間と同じように、木ノ
葉の極秘研究施設で保存・研究されていた」
姉さんはそれを聞いて納得した。
「つまり、マダラは自身の身体が研究対象だと分
かっていて、それを利用したってこと?」
縄樹にも問われ、俺はこう断言した。
「そういうこと。そのおかげで、当時の上層部も
うちは一族も、マダラの死の偽装には誰一人気
づけなかったんだ」
カガリは驚愕のあまり、言葉を失っていた。
しばらく口を開こうとするものの、何も言葉が
出てこない。
「・・・・・・そんなことまで計算していたなんて」
俺は静かに首を横へ振った。
「ただ、一つだけ誤解しないでほしい」
三人の視線が俺へ集まる。
「大叔父様は私利私欲でマダラの遺体を保存・
研究していたわけじゃない」
俺はゆっくりと言葉を続けた。
「あくまで木ノ葉隠れを守るためだ」
一拍置いて、さらに続ける。
「二度とマダラのような脅威を生まないために
危険を徹底的に調べようとしただけなんだ」
俺はそう言い切った。
「その判断自体は、火影として当然の責務だった
・・・・・・ただ、皮肉にもマダラは、その判断さえ
も自分の計画の一部として利用していたんだ」
俺は話を戻すため、マダラの策略をまた話し出
した。
「生き延びたマダラは千手柱間の肉体の一部を自
らの身体へ取り込んだ」
お婆さまは黙ったまま、俺の話を聞いている。
「うちはと千手――二つの力を自らの身体で融合
させる。長い年月を経て万華鏡写輪眼はさらな
る進化を遂げさせた」
律樹は静かに言い切る。
「その瞳の名は――輪廻眼」
姉さんの表情が強張る。
「輪廻眼!?六道仙人が持っていたと伝えられて
いる!?」
「確証はありません。ですが、六道仙人の伝承を
考えれば、十分にあり得ます」
姉さんは息をのみ、俺を見つめた。
「・・・・・・律樹。お前、本当に末恐ろしい子だね」
その声には恐れではなく、弟の洞察力への驚愕
が滲んでいた。
俺は静かに首を横へ振る。
「褒め言葉として受け取っておくよ。だが、輪廻
眼を手に入れたマダラは、もう死んでいると思
うんだ」
「何を根拠に?」
「姉さん、輪廻眼は神の力だ。その代償は計り知
れない。たとえあのマダラであっても、その負
荷に耐え切れるとは思えない」
俺の推察に、姉さんは頷く。
「なるほど、言われてみればその通りだ・・・・・・」
一拍置き、冷静な口調で続ける。
「木ノ葉上層部も、うちはマダラの一件の真相ま
では知らないはず。ただ、断片的な情報くらい
は掴んでいると思うんだ」
「断片的な情報?」
縄樹が聞き返すと、俺は静かに頷く。
「ああ。だからこそ警戒を続けているんだろう。
でも、それだけでは真実には辿り着けない」
俺は拳を握り締める。
「俺もまだ確証はない。でも、これまでの情報を
繋ぎ合わせれば、一つの答えが浮かび上がって
くるんだ」
「・・・・・・答え?」
「姉さん、マダラの真の目的は復活をして、世界
を終焉させることです」
俺の結論を聞いた姉さんは深くため息をつき
苦笑した。
「・・・・・・律樹。さすがに考えすぎじゃないか?」
縄樹も何度もうなずく。
「俺も姉ちゃんに賛成だよ。世界の終焉なんて
さすがに話が飛びすぎてるって」
カガリも不安そうな表情を浮かべながら口を開
いた。
「・・・・・・私も同意かな。そんな恐ろしいこと、
本当に起きるとは思えないよ」
三人の視線が俺へ集まる。
俺は静かに首を横へ振り、その奥にいるお婆さ
まを見つめた。
「・・・・・・お婆さまだけは、違うみたいですね」
部屋が静まり返る。
「その表情を見れば分かります」
俺は静かに言い切った。
「俺の推理は――正解なんですね」
お婆さまは静かに目を閉じ、懐かしむように小
さく息をついた。
「・・・・・・律樹。お前は鋭いよ」
ゆっくりと目を開き、穏やかな口調で続ける。
「だけど、一つだけ・・・・・・これだけは知ってほし
い・・・・・・」
その場にいた全員がお婆さまへ視線を向けた。
「マダラは、生まれながらの悪人ではないよ」
お婆さまは目を閉じ、マダラのことを語り出し
た。
「確かに、マダラは気性は激しく、好戦的なとこ
ろがあったが、一族への誇りも誰より高い男だ
ったね・・・・・・・・・」
綱手たちは息をのんだ。
「その一方で、族長として部下や仲間から深く慕
われ、家族にも優しかった・・・・・・」
お婆さまは遠い目をしながら、懐かしむように
当時を振り返る。
「あの戦乱の世で、仲間や家族を何よりも大切に
し、友や弟たちを守るためなら、自らの命さえ
惜しまない・・・・・・・・・そんな男だったんだよ」
「そんな人が・・・・・・」
カガリは信じられないという表情を浮かべる。
お婆さまは静かに頷いた。
「だからこそ、私もあの人の変貌が悲しかった。
深い愛を知っていた男だからこそ、深い絶望に
呑まれてしまったのだろうね」
そう語るお婆さまの瞳には、かつて同じ乱世を
生きた者だけが知る、切ない哀しみが宿っていた
ーto be continuedー
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