【桜月 早朝】
[木の葉隠れの里 機密施設]
お婆さまは俺に視線を合わせ、こう言った。
「律樹、お前の言う通りになるかもしれない」
深いため息をつき、ゆっくりと顔を上げた。
「マダラが今も生きているかどうかは、私にもわ
からない」
その瞳から、一筋の涙が静かにこぼれ落ちる。
「・・・・・・だが、私もマダラが何らかの形で復活す
る可能性はあると思っているよ」
「そんな・・・・・・」
姉さんは息をのみ、険しい表情で尋ねた。
「三代目火影は・・・・・・猿飛先生は、そのことを知
ってるの?」
お婆さまは静かに首を横へ振る。
「いや、確証までは持っておらんはず。
だが、ヒルゼンはアレで勘が鋭い男だ。
薄々と何かを察してはいるだろう」
縄樹は困惑した表情を浮かべ、お婆さまへ視線
を向けた。
「りつ兄とばあちゃんは、さっきから復活するっ
て断言しているけどさ・・・・・・。
マダラは、どうやって生き返るんだよ?」
その問いに、俺は静かに答えた。
「おそらく、六道仙人の仙術だ」
その場の空気が、一瞬で張り詰める。
「えっ・・・・・・六道仙人の仙術?」
縄樹は目を丸くすると、俺は静かに、自分の考
えを口にする。
「六道仙人が遺した仙術ならば、人を蘇らせるこ
とも不可能ではない」
その言葉に、縄樹は慌てて首を横に振った。
「いやいや、りつ兄!? ろ、六道仙人って神話
で出てくる架空の人物だろ!?」
動揺する縄樹へ、お婆さまが穏やかな笑みを浮
かべて語りかけた。
「縄樹。六道仙人は実在したんだよ」
「えっ!?」
俺も静かに頷く。
「お婆さまの言うとおりだ。六道仙人は実在した
んだ」
「じ、実在したって・・・・・・あれは作り話じゃない
のか?」
俺は首を横に振り、縄樹へ問いかける。
「なぜ六道仙人が『忍の始祖』と称えられている
か知っているか?」
「えっ?神話では、滅びかけた世界を救ったとか
・・・・・・」
俺は、六道仙人――大筒木ハゴロモにまつわる
真実を語り始めた。
「忍の始祖・大筒木ハゴロモは、弟・ハムラと共
に、ある化け物を戦った」
「・・・・・・化け物?」
「そうだ。お前も聞いたことがあるだろう。この
世界には九つの化け物が存在すると」
縄樹は息をのみ、お婆さまへ視線を向ける。
俺は静かに告げた。
「その九つの化け物の源――すべてを内包する存
在こそ、神樹・十尾だ」
「「「ッ!!!!!」」」
縄樹だけでなく、姉さんもカガリも驚愕に目を
見開き、言葉を失う。
「六道仙人は、自らの母・大筒木カグヤを取り込
んだ十尾と激闘を繰り広げた。
そして最後には、その十尾を自らの身体へ封印
した」
「えっ!?それって・・・・・・!」
「そう。六道仙人は、この世界で初めての人柱力
となった」
縄樹は、あまりの事実にただ呆然と立ち尽くす
「その後、十尾の抜け殻は月へ封印され、世界は
救われた」
俺は静かに語り続けた。
「十尾を封印した六道仙人は放浪の旅に出た。
そして『忍宗』を興し、人々へチャクラの正し
い在り方と教えを広めていった」
縄樹たちは息をするのも忘れたように、その神
話の真実へと聞き入っていた。
「やがて、六道仙人には二人の息子が生まれた」
俺は淀みなく語り続けた。
「兄・大筒木インドラは、六道仙人の眼と精神エ
ネルギーを受け継いだ。
その子孫が、『うちは一族』だ」
縄樹は思わず息をのむ。
「そして、弟・大筒木アシュラは、六道仙人の生
命力と身体エネルギーを受け継いだ。
その子孫が、『森の千手一族』なんだ」
姉さんもカガリも、縄樹と同じように息をのみ
縄樹が質問してきた。
「えっ?じゃあ、うちはと千手って・・・・・・」
俺は静かに頷いた。
「そう。うちはと千手は、六道仙人の直系の子孫
なんだ」
突然明かされた事実に、縄樹は喉を鳴らした。
俺は、その兄弟の悲しい物語を語り出した。
「言い伝えだと、インドラとアシュラは、とても
仲の良い兄弟だったらしい」
「へぇ~。まるで律樹と縄樹みたい」
カガリがそう言うと、姉さんも微笑みながら頷
いた。
「でも、二人は考え方の違いから袂を分かったん
だ」
「考え方の違いで・・・・・・仲が悪くなったの?」
「いや、そうじゃない。簡単に言えば、出来の違
いかな。それにより拗れたんだ」
「・・・・・・・・・それ、どういう意味?」
「つまり、優秀な兄と・・・・・・落ちこぼれの弟。
その違いにより、二人は別々の道を歩んだ」
俺はみんなを見回しながら、静かに物語の続き
を話した。
「兄・インドラは、生まれながらにして六道仙人
の眼と強大な精神チャクラを自在に操る天才。
その才能ゆえ、なんでも一人でこなした。
だからこそ、『力こそがすべてを可能にする』
と悟った」
一拍置き、俺は続ける。
「一方、弟・アシュラは、幼い頃から何をやって
もうまくいかない・・・・・・落ちこぼれだった。
兄と肩を並べるには、仲間の助けと血のにじむ
ような努力を必要だった」
俺の言葉に、みんなが頷く。
「アシュラは多くの仲間に支えられ、気が遠くな
るほどの修行を積み重ねた末、生まれ持った身
体チャクラを開花させた。
自分が強くなれたのは仲間のおかげだと心から
感謝し、『助け合うことこそ本当の力』だと理
解し、『愛こそがすべてを可能にする』と悟っ
たんだ」
姉さんたちはアシュラの生き方に深く共感し
静かに頷いた。
この後、俺は衝撃の事実を口にした。
「そして、死期が近づいた六道仙人は、『忍宗』
の後継者をアシュラに指名した」
「えっ?なんで??」
驚いた縄樹の問いに、俺はこう答えた。
「六道仙人は『チャクラとは、人と人の心を繋ぐ
ためにあるもの』と信じていた。
『忍宗』を開き、その教えを広めたのも、その
ためだ」
「「「・・・・・・・・・・・・」」」
「だからこそ、人との和を何より大切にするアシ
ュラへ後世を託したんだ」
俺は一拍置き、さらに続ける。
「六道仙人は、封印していた十尾が再び復活する
のを恐れ、災いを起こさせないため、チャクラ
を九つに分け、それぞれを獣の姿へと変えた」
「えっ? それって!?」
「そう。後に『尾獣』と呼ばれる存在だ」
「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」
「『尾獣』を分け、その力を管理するのを『忍宗』
の役目と定め、世界の平和を保とうと考えたん
だ、六道仙人は・・・・・・」
俺は悲しげな表情を浮かべながら、静かに続け
る。
「六道仙人は当初、インドラも後継者に選ばれた
アシュラを支え、共に忍宗を導いてくれるもの
だと信じていた」
俺は首を振り、悲しい物語を話し終えた。
「だが、インドラはそのことを受け入れられなか
った。 ――その瞬間から、二人の思想は袂を
分かち、長きにわたる二つの一族の争いが始ま
ったんだ」
姉さんたちは、自分たちの一族の因果の根源を
知って、言葉も出ずに立ち尽くた。
俺は一息つき、静かに言葉を続ける。
「だからこそ、マダラが六道仙人の仙術へとたど
り着いたのも、ある意味では必然だったんだ」
「そんな・・・・・・」
縄樹が驚愕な表情を浮かべながら、俺に視線を
向け、俺は静かに頷いた。
「ただし、マダラの復活は、まだ先の話だ」
「どういうこと?」
「今のマダラには、まだ復活するための条件が揃
っていないと思う」
頭を掻きながら、続けた。
「推測だが、蘇るにしても数十年後のはずだ」
律樹はそう言うと、静かに目を細めた。
「だが・・・・・・いずれ、その条件が揃った時――
本当の意味で、うちはマダラは再びこの世に姿
を現すよ」
その言葉を聞いたカガリは、盛大にため息をつ
いた。
「はぁ〜っ!! 律樹、これ以上情報を詰め込ま
ないで! 頭が痛くなってきた!」
縄樹も額を押さえながら苦笑する。
「オレも同じだ・・・・・・。頭いてぇ〜っ!!」
姉さんも苦笑しながらも、すぐに真剣な表情へ
戻った。
「・・・・・・だったら、この話を猿飛先生に伝えたほ
うがいい」
俺は静かに首を横へ振る。
「いや、三代目・・・・・・違うな、上層部に話すのは
まだ早い」
「えっ・・・・・・?」
「そもそも、俺が話した仮説には確固たる証拠が
ない。
これが未来の出来事です、なんてバカげた話を
素直に信じるほど、上層部は甘くない」
俺は一拍置き、静かに続けた。
「それに、木ノ葉の上層部には暗黙の了解がある
と思う」
「暗黙の了解?」
「――うちはマダラの名を、むやみに議題へ上げ
ないことだ」
姉さんたちは息をのむ。
「マダラは木ノ葉最大の禁忌とも言える存在だ。
もし『まだ生きているかもしれない』なんて話
を持ち出せば、根拠を示せと問い詰められるだ
けだろう」
俺は静かに目を伏せた。
「だから今の段階で話しても、信じてもらえない
どころか、余計な混乱を招くだけなんだ」
お婆さまが静かに俺の名を呼んだ。
「律樹」
「お婆さま?」
「お前の言うとおりだ。マダラのことは、今は
秘密にしておくのが最善だ」
俺が静かに頷くと、お婆さまは穏やかな眼差し
で、俺たち一人ひとりを見つめた。
「これから先、お前たちは多くの戦いを経験する
だろう。
憎しみも、悲しみも、数え切れぬほど味わうは
ずだ」
「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」
「だからこそ、忘れてはならん」
お婆さまは胸に手を当て、静かに微笑んだ。
「愛を見つけなさい。そして、その愛をお前たち
の心に宿しなさい」
温かな声で、お婆さまは大切な教えを語る。
「愛は人を強くする。だが、それを失えば、憎し
みへと変わることもある」
一拍置いて、お婆さまは俺たち一人ひとりを見
つめた。
「だからこそ、お前たちは憎しみに心を支配され
てはならない。愛する者を守るために、その力
を振るいなさい」
身体を震わせながら、立ち上がって見上げた。
「それが、お前たちの未来を照らす光となる」
その言葉とともに、お婆さまは静かに俺たちへ
未来を託した。
ーto be continuedー
次回 カガリの懸念