【桜月 深夜】
[木ノ葉隠れの里 表街道]
「律樹、一つ聞きたいことがあるの」
ミトお婆さまへの謁見を終えた帰り道、カガリ
が俺に尋ねてきた。
「なんだ?」
「マダラの復活が本当だとして・・・・・・ま、まさか
・・・・・・うちは一族が謀反を起こすなんてことは
・・・・・・・・・!?」
「いや、うちは一族は謀反なんてしない。という
か、する理由がない」
俺の答えに、縄樹は不思議そうに首を傾げた。
「なんで、そう言い切れるの?」
「うちは一族にとって、そんなことをしても何一
つ利益がないからだ」
それを聞いたカガリはほっとするが、俺は静か
に首を横へ振った。
「だが、うちはマダラが復活した時――真っ先に
動くのは、ダンゾウだ」
「えっ・・・・・・?」
カガリが息をのむ。
「ダンゾウは『里を守る』という大義名分を掲げ
うちは一族の粛清を始めるだろう」
縄樹は目を見開いた。
「そんなことをして、何の得があるんだ?」
「・・・・・・あるさ」
俺の声は冷たく響く。
「混乱の中で、ダンゾウはうちは一族が持つ写輪
眼や秘伝、あらゆる力を手中に収める。
マダラという脅威を利用し、自分の野望を叶え
るためにな」
「りつ兄、その野望って・・・・・・」
「そう、火影になることだ。そのため、うちは一
族をその踏み台にと考えているはずだよ・・・・・・
ダンゾウは」
その言葉に、カガリたちは黙り込んだ。
「だから、うちは一族にとってマダラの復活は利
益どころか破滅そのものだ。
そんな危険を承知で追放したマダラに手を貸す
理由なんて、どこにもない」
それを聞いたカガリは、俺に問いかけた。
「でも、律樹。それって、うちは一族が里に反乱
を起こす前提で話してない?」
「うちは一族を危険視する者は、昔から木ノ葉に
大勢いるんだ」
「えっ・・・・・・?」
俺は一拍置いて、静かに言葉を続けた。
「もともと木ノ葉隠れは、千手とうちはが手を取
り合い、結束して築き上げた忍連合だ」
俺は目を閉じ、静かに続ける。
「当然、そのどちらかの一族の長が忍連合の実権
を握る代表・・・・・・火影となる」
俺はみんなを見回した。
「みんなも知っての通り、千手柱間が初代火影と
なった」
みんなは頷き、俺の話に耳を傾ける。
「最初はマダラを火影にと言う意見があったと思
う」
カガリたちは静かに頷いた。
「けれど、最終的に木の葉隠れの忍たちは、うち
は一族を含め、多くの者がお爺さまを支持した
んだ」
俺は憶測を話した。
「誰もが認める徳を持つお爺さまには里を一つに
まとめる器があると判断させた。
だからこそ、一族の垣根を越えて多く信頼を集
め、初代火影に選ばれた」
俺は火影岩のお爺さまの顔を見上げた。
「そして、権力争いに負け、求心力を無くしたマ
ダラは里を抜けた」
俺は一拍置いて、続けた。
「そして――マダラによる九尾襲撃だ」
「「「・・・・・・・・・・・・」」」
「その事件によって、里の中には『うちは一族は
いずれ再び反乱を起こすのではないか』という
疑念が生まれた」
説明の途中で、カガリは俺に質問した。
「でも、うちは一族が反乱しても何の得があるっ
ていうの?
律樹がさっき話していた通りで、何の利益もな
く、里の全ての一族と戦う羽目になる。
はっきり言って、意味がない」
「そんなこと、うちは一族も里の連中も、それく
らいわかっているよ。けどな・・・・・・」
俺の表情を見た姉さんがため息をつく。
「一度、疑念を持てば、簡単には拭えぬか」
姉さんの言葉に、縄樹は息をのんで、ゆっくり
と口を開いた。
「じゃあ・・・・・・近い未来、うちは一族は本当に反
乱を起こす・・・・・・。
もしくは、里に粛清されるかもしかないってこ
となのか?」
俺は静かに首を横へ振る。
「・・・・・・わからない」
一拍置き、皆の顔を見回した。
「けど、その最悪の可能性を高めるものを、俺た
ちは見ただろ」
「「「・・・・・・え?」」」
カガリたちは息をのみ、思わず顔を見合わせ
最初に口を開いたのはカガリだった。
「ま、まさか・・・・・・ミト様、いえ、九尾を狙って
いるってこと?」
続いて縄樹も険しい表情で言う。
「おいおい、りつ兄。そんなこと、一体誰がやる
って言うんだよ?」
俺は静かに首を横へ振った。
「それもわからない」
一拍置き、皆の表情を見回す。
「だが、それでも九尾は必ず狙われる」
「「「っ!?」」」
「おそらく、マダラの計画には九尾を利用して木
ノ葉を混乱に陥れることが入っているはずだ。
そして、その混乱に乗じて『うちは一族こそが
九尾を操った』という疑念を里中に広める」
俺は低い声で続けた。
「そうなれば、うちはへの不信は一気に高まる。
里との対立は決定的になり、一族の中にも過激
な者が現れるだろう」
俺は視線を下に向いて、苦い顔に変わった。
「つまり、九尾襲撃をきっかけに、うちはを扇動
し、反乱へ追い込もうとしているのかい」
姉さんは腕を組み、真剣な表情で俺を見た。
「律樹、何か手立てはあるんだろ?」
鋭い目で、俺に打開策を聞く。
「お前は無意味に皆を不安にさせるような奴じゃ
ない」
縄樹とカガリは、真剣な眼差しで俺を見つめた
「もしもそうなった時、なんだがの策があるから
こうして私たちに話しているんだろ?」
俺は一度咳払いをすると、静かに告げた。
「うちは一族の反乱阻止の打開策はある。
――うちは一族が里の中で揺るぎない地位と信
頼を築き上げることだ」
縄樹は頭を掻きながら苦笑した。
「りつ兄・・・・・・それ、言うのは簡単だけどさ。
そんなことができりゃ、誰も苦労しないぜ?」
カガリも額に手を当て、小さくため息をつく。
「・・・・・・私も縄樹と同じ意見。確かに理想だけど
それを実現する方法なんて・・・・・・?」
顔を上げた俺は小さく頷いた。
「ああ。その『方法』を、これから話す」
道中、千手の俺たちとうちはが再び手を取り合
う方法を話しながら家路をゆっくり歩いた。
ーto be continuedー
次回 教官就任