【桜月 早朝】
[木ノ葉隠れの里 アカデミー]
「・・・・・・なぜ、こうなった?」
俺――千手律樹は、今日アカデミーに登校した
ら、なぜか三代目が待っていた。
「おはよう、律樹」
「おはようございます、三代目」
俺と縄樹、カガリは挨拶の後、火影直轄の暗部
たちとともに校庭に連れて行かれた。
校庭には学年がバラバラのアカデミーの生徒た
ちがいて、俺は三代目とともに朝礼台の上に立た
させた。
何が起こっているのかわからないままの俺が呆
然と立ち尽くしていると、目の前にはアカデミー
の生徒たちが整列した。
穏やかな笑みを浮かべる三代目火影の姿は一歩
前へ出ると、生徒たちへ向かって、朗らかに告げ
た。
「みんな、よく集まってくれた。今日から才牙の
特別授業を始める」
一拍置き、三代目は俺を手で示す。
「そして、ここにいるのが、お前たちに才牙を指
導する教官――千手律樹じゃ」
「えぇぇぇぇっ!?」
アカデミー生たちが一斉に驚きの声を上げる。
「ちょ、ちょっと待ってください! 俺、そんな
話は聞いてませんよ!?」
慌てて抗議する俺に、三代目は悪びれる様子も
なく笑った。
「うむ、今話したからな」
「ふざけんな〜〜!?」
俺は、たまらず叫んだ。
「なんでこうなるんですか?だいたい才牙は極秘
事項じゃなかったんですか!?」
三代目は穏やかに頷く。
「確かに極秘だのじゃが、もう箝口令など意味が
なかった」
「えっ?」
「実はな、才牙のことは、すでに里中へ知れ渡っ
ておる」
三代目は、あの日・・・・・・あの森の周辺にいた者
たちは少なからず強大なチャクラを感知したとか
俺が見たことがない忍具で戦っていたなど多数の
報告があった。
そんな中で、箝口令を敷こうが、偽の情報を流
そうが、あの異変をごまかすことなど不可能だと
言い切ると、肩をすくめて笑う。
「ならば、才牙を扱える指導者に事情を説明し、
正式に教育を任せた方が里のためになる」
「うっ・・・・・・それは正論だけど・・・・・・勝手に決め
ないでください!」
俺は思わず抗議する。
「それに、俺はカガリと一緒に学級委員長もやっ
ているんですよ。
そこに教官の仕事まで増えたら、とても手が回
りません」
三代目は落ち着いた様子で答えた。
「その点なら心配はいらん。教官の仕事は、儂が
信用する男が補佐するよう手配してある」
「・・・・・・・・・信用する男?」
その時、不意に背後から穏やかな声が聞こえた
「そうよ、律樹くん。そんなに肩に力を入れなく
ても私がいれば大丈夫よ」
「・・・・・・・・・っ!?」
振り返った俺は目を見開く。
「お、大蛇丸さん!?」
「そんなに驚かれなくてもいいでしょ・・・・・・」
大蛇丸さんは、いつの間に朝礼台にいて、俺の
横に静かに立っていた。
流石だ。気配をまるで感じなかった。
「いや、普通に驚きますよ!? なんで大蛇丸さ
んがここにいるんですか!」
三代目は咳払いを一つして、落ち着いた口調で
説明した。
「うむ。才牙のような特殊な現象を扱うなら、研
究家としての大蛇丸が最も適任じゃ」
「研究家って・・・・・・」
「お前の姉 綱手は医療の専門なので忙しい」
三代目は髭を触りながら、説明した。
「自来也は己の使命のため、すでに放浪の旅に出
ておる」
空を見上げて、ため息をつく。
「となれば、最もこの件に適しているのは大蛇丸
というわけじゃ」
「自分の弟子たちを、そんな消去法みたいに決め
ないでくださいよ・・・・・・」
俺がげんなりしていると、大蛇丸さんはクスリ
と笑った。
「安心しなさい。私はあくまで補佐役よ。あなた
の才牙には、とても興味があるけれどね」
「最後の一言が全然安心できないんですが!?」
三代目は満足げに頷いた。
「これで教官体制は万全じゃな」
「なんか、俺だけ置いて話がどんどん進んでませ
ん!?」
俺が頭を抱えていると、大蛇丸さんが一歩前へ
出て、柔らかな笑みを浮かべた。
「ふふっ。それじゃあ、改めてご挨拶しましょう
か。今日から一緒に子どもたちを指導すること
になったわね、律樹くん。よろしくお願いする
わ」
「は、はい・・・・・・こちらこそよろしくお願いしま
す」
思わず頭を下げると、大蛇丸さんは満足そうに
頷いた。
「そう固くならなくても大丈夫よ。分からないこ
とは私がフォローするわ」
「ぜひお願いします・・・・・・」
三代目は微笑みながら俺の肩を軽く叩いた。
「では律樹、お前から皆に挨拶をするんじゃ」
「えっ!? いきなりですか!?」
「うむ。教官として最初の仕事じゃ」
「横暴すぎる・・・・・・」
俺は小さくため息をつき、教室中の視線を浴び
ながら前へ出た。
「えーっと・・・・・・今日から才牙の指導を担当する
ことになった千手律樹です。
まだ俺も勉強中の身だけど、みんなと一緒に成
長していければと思っています。
よろしくお願いします」
そう言って頭を下げると、生徒たちから大きな
拍手が校庭に響いた。
拍手が落ち着いた頃、律樹はゆっくりと一歩前
へ出る。
「……大蛇丸さん」
「何かしら、律樹くん」
大蛇丸は妖しく微笑み、律樹へ視線を向けた。
「みんなの前で、俺と戦ってくれませんか?」
その一言に、会場は一瞬にして静まり返る。
「あら、いいわよ」
大蛇丸は蛇のような笑みを浮かべると、長い舌
で唇をゆっくりとなめた。
「ちょうど私も、あなたの実力には興味があった
ところだもの」
「待て!」
三代目が鋭い声を上げ、二人の間へ割って入る
「さ、さすがに早すぎる!だいたい、律樹はまだ
アカデミーの生徒じゃ。
それに相手は木ノ葉最強クラスの実力者、大蛇
丸だぞ!!」
しかし、律樹は真っすぐ三代目を見つめ、静か
に首を振った。
「止めないでください」
一拍置き、力強く続ける。
「木ノ葉隠れ最強の忍と戦うからこそ意味がある
んです。俺が今どこまで通用するのか、この場
ではっきり確かめたいんです」
せっかくだ。この立場を最大限利用しないと。
俺は無謀な戦いに身を投じた。
ーto be continuedー
次回 先手必勝