【桜月 夕方】
[木の葉隠れの里 とある森]
「カガリー!?」
俺とサトル先生は、慰霊碑近くの森でカガリを
探していた。
かれこれ一時間ほど森の中を捜し回っているが
その行方を示す手掛かりはまったく見つからない
「うーん、この森にはいないのか?」
「サトル先生、この森にカガリがいます」
「・・・・・・その根拠は?」
「俺の勘です」
俺が胸を張って言うと、サトル先生は頭を掻き
ながら呆れてため息をついた。
「勘・・・・・・勘ね、そうですか」
「露骨に嫌な顔しないで下さい」
サトル先生は俺の顔を冷ややか目で見て嫌味を
口にする。
「カガリはこんなやつに負けたのか・・・・・・・・・」
サトル先生は遠い目をした。
「かわいそうに」
「二段階でディスるのやめてください」
思わずツッコミを入れた、その時だった。
――ドォォォォォン!!
突如、爆音とともに大地が揺れた。
「なっ!?」
「今のは……!」
森の奥から凄まじい衝撃波が吹き荒れ、木々が
大きく揺れる。
同時に、背筋が凍るような禍々しいチャクラが
空気を震わせた。
俺は直感的に、そのチャクラの主がカガリだと
察した。
次の瞬間、全速力で森の奥へと駆け出す。
「待て、律樹!!」
一歩遅れたサトル先生は、慌てて俺を止めよう
とその後を追った。
「ハァー!ハァー!」
俺がたどり着いた先には、小さな湧き水の池が
あった。
だが、その周囲の光景は異様だった。
地面は抉れ、木々は根元から薙ぎ倒され、まる
で上忍同士が激突した戦場の跡のようだった。
「な、なんだよ・・・・・・これ・・・・・・」
俺は息を呑んだ。
その破壊の中心に――
カガリが膝をついていた。
「カガリ・・・・・・!?」
肩で荒い息を繰り返し、全身から禍々しいチャ
クラを漏らしている。
「ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・」
カガリはゆっくりと顔を上げた。
無表情のカガリを見た瞬間、俺の背筋に悪寒が
走る。
「ッ!?」
あの決闘から感じていた違和感。
だが、その正体が今ようやく分かった。
「お前・・・・・・その右目・・・・・・」
右目の瞳が異様だった。
「・・・・・・写輪眼」
だが、普通の写輪眼とは違う。
三つ巴ではない。
「あの紋様・・・・・・まさか」
万華鏡写輪眼。
間違いない、万華鏡写輪眼だ。
「・・・・・・な、なんで?」
俺はカガリから一歩後ずさった。
「ありえない・・・・・・」
原作知識を持つ俺でも、あの年齢で開眼するな
んて聞いたことがない。
「(待て・・・・・・)」
その時、ある記憶が脳裏をよぎった。
あの決闘。
カガリに勝った時。
「(そうだ・・・・・・あの時も)」
ほんの一瞬だけ。
アイツの右目に違和感を覚えた。
最初は見間違いだと思った。
戦闘中だったし、気のせいだと流した。
だが――
「(あれは気のせいじゃなかった)」
今なら分かる。
あの頃から既に変化は始まっていたのだ。
「カガリ!」
俺は声を張り上げた。
「聞こえるか!?」
しかし返事はない。
カガリは虚ろな目でこちらを見ているだけだっ
た。
「おい・・・・・・」
嫌な予感がする。
俺がもう一歩近づいた瞬間――
カガリの右目がギロリと俺を捉えた。
ゾクリ――。
全身の毛穴が総毛立つ。
「律樹! 離れろ!!」
直後、追いついたサトル先生が叫んだ。
俺は反射的に、サトル先生の隣まで飛び退く。
カガリの右目から黒赤いチャクラが噴き上がり
巨大な赤黒い骨格が出現した。
「おいおい・・・・・・」
俺に追いついたサトル先生は、アレを見た途端
顔から余裕が消え失せる。
「冗談だろ!?」
骨だけだった巨人は右半身に肉を纏い、みるみ
るうちに筋肉を形成していく。
そして完成した巨大な腕が、天を衝くように伸
び上がった。
その姿はまるで神話の鬼神。
「スサノオ・・・・・・」
俺は息を呑んだ。
万華鏡写輪眼の究極瞳術。
うちは一族でも限られた者しか使えない禁断に
して最狂の力。
俺はその化け物を驚愕しているとーー
「あああああああああああああああっ!!」
カガリの激昂に呼応するかのように、スサノオ
が咆哮を上げた。
轟音と共に巨大な拳が振り下ろされる。
――ズガァァァァァン!!
森の一角が吹き飛んだ。
「まずい!」
サトル先生が叫んだ、その直後だった。
「完全に暴走してる!」
スサノオの瞳がギロリと俺たちを見据える。
「あっ――」
嫌な予感がした。
次の瞬間、巨大な拳がこちらへ振り下ろされる
――ズガァァァァァン!!
「散開しろ!」
サトル先生の声と同時に、俺たちは左右へ飛び
退いた。
直後、地面が爆発したかのように砕け散る。
土砂と木片が暴風となって周囲へ吹き荒れた。
「くっ!」
俺は木の幹へ着地する。
だが、スサノオの攻撃は止まらない。
「あああああああああっ!!」
カガリの叫びに呼応するように、スサノオが両
腕を振り上げた。
――ドゴォォォォン!!
巨大な腕が森を薙ぎ払う。
何十本もの大木がへし折れ、吹き飛んでいく。
「洒落にならねぇぞ!」
俺は迫る大木の破片を避けながら叫んだ。
「律樹! 近づくな!」
サトル先生は印を結ぶ。
「土遁ーー土流城壁!」
轟音とともに、スサノオの周囲を覆うように巨
大な土壁がまたたく間に出現した。
しかし――
――バギィィィィン!!
スサノオの拳が土壁を粉砕する。
「なっ!?」
サトル先生の顔が引きつった。
上忍の術ですら防ぎきれない。
その時だった。
カガリの右目が妖しく輝く。
「まずい!」
俺は反射的に叫んだ。
ーー次の瞬間。
「な、なんだ!?」
スサノオの右腕に黒赤いチャクラが噴き上がり
禍々しい炎へと変貌する。
「あの黒い炎――まさか、“炎遁”!?」
黒い炎は凝縮を続け、やがて巨大なクナイへと
姿を変えた。
次の瞬間――
――ドォォォォォン!!
スサノオはクナイを俺に放った。
「水遁ーー水陣壁!」
俺は咄嗟に水遁を発動する。
口から大量の水を吐き出し、巨大な壁となって
立ち上がる。
だが、巨大なクナイはその水壁を容易く貫いた
水陣壁のおかげでクナイの軌道がわずかにそれ
て、直撃だけは免れた。
「ぐはっ!?」
しかし、その余波だけで身体が吹き飛ぶ。
俺は数本の木の幹をへし折りながら地面を転が
った。
そして、軌道を外れたクナイが大岩に直撃した
瞬間――
――ドォォォォォン!!
轟音が森に響き渡る。
大岩は跡形もなく消し飛び、その周囲に生えて
いた木々までもが巻き込まれ、一瞬で消滅した。
「律樹!」
サトル先生が、その凄まじい威力に顔を強張ら
せながら叫ぶ。
もし直撃していれば――。
そんな考えが脳裏をよぎったのだろう。
「だ、大丈夫です・・・・・・」
口の端から血が流れる。
身体中が痛いが、まだ立てる。
「ハァ・・・・・・ハァ・・・・・・」
攻撃が逸れた一撃であの威力。
まともに受ければ終わりだ。
だが――
俺は暴走するカガリを見た。
「ああ・・・・・・あああ・・・・・・・・・」
カガリは苦しそうに頭を抱えていた。
その表情には怒りだけではない。
苦痛と悲しみが混じっている。
「・・・・・・まだだ」
俺は拳を握った。
「まだカガリの自我は残ってる」
「何?」
「完全に飲み込まれてるなら、あんな苦しそうな
顔はしない!」
俺は立ち上がり、覚悟を決めた。
“才牙”を使うしかない。
闇の底にいるカガリを救い出すには。
ーto be continuedー
次回 才牙