トラッシュ・トラッシュ・トラッシュ! 作:馬鹿にしていこう
まさかのキャラクターが、グリムと監督生しか出ていないという。
「うわぁぁぁぁあああああ!!!!! 」
「ふなっ!?」
「っ!? 」
鼓膜が破れそうなほどの叫び声の後にドンガラガッシャーン!! と大きな音が外を騒がしくさせた。その後もカランと何かが転がる音がしたり、バサッと落ちる音がする。
そうしてやっと静寂が訪れた。
驚いて毛が逆だったグリム。
半開きのツナ缶を落としてしまった監督生。
そして謎の叫び声を上げた不審者。
一匹と二人が出会ったきっかけはこの不運な事故からだった。
*
「ふ、ふなぁぁぁ! お、おおおオレ様のツナ缶がぁぁ!!」
「あばばばば! ツナ缶が、ツナ缶が」
ベチャッと床に落としてしまった。
缶の中からツナが零れており、あぁなんと無惨なツナだ、と目も向けられそうにない。しかも悲しいことに、三秒はとっくにすぎていてルールを守ることもできやしなかった。
「……」
「ググググ、グリム? ま、また新しいものを買うから、元気だして、ね? 」
無惨なツナを目の前にしてグリムは固まってしまった。可愛らしい小さな手をぎゅっと握っていて、監督生にはその姿がツナの別れを悲しんでいるように見えた。
監督生は必死にグリムを慰めようと声をかけ続ける。今度は高級な物を買ってあげる。何個欲しい? 今度はアレンジをして食べようよ。などなど……。
それでも目の前にあるツナが失われたのは変わらない。今も、床にツナの汁が染み続けている。このままでは跡が残ってしまうかもしれない。そうすれば、あの胡散臭い鳥が飛んでくるだろう。
「このツナ缶は」
「う、うん」
「俺様が朝から食べようと」
「うん」
「我慢してたやつなのに」
「……うん」
「それなのに……」
「……」
「……」
「ぐ、グリ「ユウ!! 俺様は叫び声の主を特定してみっっっちりとツナ缶の倍の倍のば──ーいの金を請求して……ぐすっ、コイツのっ、墓を……立ててやるんだゾ!!」は、墓?」
そうなれば早く外に出て現場を確かめるゾ!! とグリムは足をチーターのように速くして出ていってしまった。その様子を見ていた監督生はグリムのツナの墓という言葉に数秒囚われてしまったが、すぐにグリムの元へと駆け出した。
「(すまない……ツナ缶…………)」
中身が零れたままのツナ缶に構う暇なく飛び出していく。
「「「……」」」
ゴースト達も何が何だかよくわかっていない。
*
「グーリームー! どこー!! どこにいるのー? 犯人は見つかったー? 」
「……ここにいる、間違いなく絶対にここにいるんだゾ。俺様の火で」
「ちょっと待って落ち着こう。はーい深呼吸して……よしっ燃やしていいよ!! 」
「いや良くないよぉ! ねぇそこにいる人助けてよぉ僕全身痛くて動けないんだぁ」
「うわっゴミの山が喋った! 」
「ツナ缶の仇……ガルルルルル」
監督生が後で捨てようと思っていたダンボールとゴミ袋の山から聞こえたのは一人の少年の声だった。
埋もれていてどんなやつかは分からないが、こいつはツナ缶の仇……。故にグリムはずっと威嚇し続けている。
「うぅ、痛いよぉ助けてぇ」
「……グリムちょっと待ってて! 」
臭うゴミの山に手を突っ込みたくはない、だが叫び声の不審者は助けなければいけない。
そうして監督生が思いついたのは、
【バケツ一杯の贖罪☆】というものだった。
監督生はバケツいっぱいに入った水を持ってきてドサッと地面に置く。
そして淡々と言うのだ。
「グリム。こいつ燃やせ」
「おう! 任しとけ!! 」
グリムはその言葉に即答。そして監督生は再びバケツを持って構えた。
「(ゴミ達をいちいち動かして捨てるのめんどくさいしグリムに燃やしてもおう)」
不審者のことは……まぁ別に構わなということで早速監督生が提案した、
【バケツ一杯の贖罪☆】が始まった。
「(危なくなったらかけてあげよう)」
「うわぁぁぁ! 熱い熱い! 火達磨になっちゃうよぉ! 酷い、助けてって、言ったのに! もっと痛めつけあちっ!」
「…………ここだぁ!!」
「ふぅースッキリしたんだゾ」
不審者はちゃんと罪を償えたのだろうか。いやはやこんなもので償えるわけがないだろう。グリムのツナ缶を落とさせた罪は相当重いのだから。
「も、もうむり」
やっと出てきた不審者は服が所々ボロボロに焼けていたり、土が付いたりすごく汚い。しかも監督生とグリムのせいで不審者は気絶してしまったではないか。当の本人らは鼻の穴を塞いで呑気に話をしている。
「グリム、頑張って運ぼっか」
「起きたら請求してやるんだゾ」
「っう……ぅ、ツナ缶が……襲って、うわぁ!」
「ふなっ!? またびっくりしたんだゾ! 」
「あー、大丈夫? ずっと魘されてたけど」
「大丈っ痛っ! 痛い〜!」
「うん大丈夫みたいだね」
「どこがぁぁ!」
全身包帯ぐるぐる巻きの不審者が一人。
財布を漁る狸が一匹。
包帯と軟膏を持って心配する優しい人間が一人。
オンボロ寮はいつも通り変わらず騒がしかった。
*
「えへへ、そのなんかごめんね。ツナ缶は賠償するから安心して」
「こいつ反省の色が見えないんだゾ」
「一件落着? 」
にこにこと笑みを浮かべながら謝罪をする少年。彼は穏やかで優しそうな顔をしている子だった。
監督生が何故叫び声をあげてゴミの山に埋もれていたのか理由を問いただすと、答えはなんとオンボロ寮の屋根に大事なプリントを乗っけてしまい、それを取ろうと屋根まで登り、降りようとしたら滑って落ちた。ということだった。
それを聞いた監督生とグリムは思った。
こいつ不運すぎるだろう、と。
あぁ、なんて可哀想なのだ。
「まぁ、ツナ缶は三十個で許してやるんだゾ」
「じゃオンボロ寮の部屋掃除手伝ったら許してあげるよ」
「えぇ。これでも僕怪我人なんだけどなぁ」
監督生はふと疑問に思う。彼は何故オンボロ寮の近くに足を踏み入れたのだろうか。オンボロ寮の近くに来る人など、オンボロ寮生か友達くらいだ。
やはりこいつツナ缶を狙って……。
「違う違う。えっとね、僕は君にこれを渡したかっただけなんだ」
不審者が差し出したのは平々凡々としたペンだった。マジカルペンとかそういうのじゃなくて普通のペン。多分100円ショップに売っていそうなペンだ。
そんな落し物をするのはどっかのハイエナか、金がない監督生くらいだろう。
「……じゃあ部屋の掃除は無しにしてあげるよ。ありがとう」
「えへへ。どうしたしまして」
「ツナ缶はちゃんと買うんだゾ」
「も、もちろんだよ」
「あ、ベット汚してるからシーツも買って」
「えぇ……」
*
「改めて自己紹介させて。僕はサバナクロー寮生、スカムだよ。君と同級生だしクラスも一緒だよ」
「ユウ。よろしく。こっちは」
「俺様はグリム様だ! オマエを子分にしてもいいんだゾ」
「えへへ、それは遠慮させてもらおうかな。ねぇ、君達って今まで学園で起きたすごいこととか、事件に関わってたりするんだよね? そ、その、もし良ければだけど、その話聞かせてくれないかな? 僕、英雄談聞きたいなぁ」
「そ、それほどでも〜」
「ふふん、全くしょうがねぇやつなんだゾ。まずは…………」
監督生とグリムは、時間を忘れて入学式からマジフト大会までの事を順番に話して言った。それを微笑ましそうに聞くスカム。二人と一匹はすぐに打ち解け仲良くなっていた。それはもう、最初の事故を無かったかのようにさせるほどだ。
そうして気づけば夜。窓の外は暗く、小さく輝く星が見えていた。
「もうこんな時間だけど帰らなくていいの?」
「あっホントだ。でも僕全身動かないんだけど」
「なら泊まってく?」
「それじゃあユウが寝るところがないんだゾ」
「えへへ、だ、誰かに迎えに来てもらうよ…………どうしよう……」
スカムは汗をダラダラと流す。なんせ入学してからクラスにも馴染めず、空気になっていたスカムだ。滝のように流れる汗は止められまい。だって迎えに来てくれる友達も、仲のいい先輩もいないのだから。
「大丈夫、ソファで寝るからベッド使っても大丈夫だよ。後、ただ単にスカムの怪我のせいでシーツ土とか付いてるしそこでは寝たくないかなぁ」
「そっかぁ。ありがとう」
「明日も休みなんだしちゃんと体休めて早く帰ってくれよな」
「わ、わかってるよぉ。……ありがとうおやすみ」
「おやすみー」
「ぐがー」
「……」