ようこそ百合至上主義のハーレムへ 作:ド級のスランプ、ドスランプス
まさか期末試験──一応特別試験という括りだが──で小論文を書かされるとはな。事前に聞いていた俺や姫さんは別として、クラスの大半は面食らっただろう。指定文字数が少なかったのは難易度の学校側の許容量か。というかこれ、下手したら姫さんでも満点は取れないんじゃないか? 今回の試験における小論文の採点基準次第だろうが……虎姫ちゃんにそこまで指定したか聞いておけば良かったか?
「では、2限目の英語のテストを開始する」
担任の真嶋先生の言葉に全員が問題用紙をひっくり返し──―また動揺した気配が広がる。
「……問題用紙にある通り、リスニング問題からとなっている。これから音声が流れるので、しっかり聞くように」
えげつねぇよな。ライティングかリーディング、精々アクセントとかでのマイナーな問題を予想していたところにリスニングだ。しかも残りは長文問題。リスニングを早く終わらせるなんて不可能な以上、長文の方はある程度捨てざるを得ないだろう。答えを知っている者を除けばの話だが。
スピーカーから流れる、恐らくは山田アルベルトの流暢な発音を聞きつつ後半の問題に取り掛かる。姫さんが予めリスニングの答えを教えてくれてて助かったぜ。
少なくとも姫さんの中で俺はまだ必要な駒であるらしい。他にも鬼頭とか神室ちゃんとか山村ちゃんなんかは答えを共有されていた。俺が知らないだけでもう少し居るかもしれないが、このメンバーには万が一にも退学ラインを下回って貰っては困るのだろう。
まあ葛城派がどうなるかまでは知ったことじゃない。流石に退学者は出ないだろうが……総合点で負けた原因だと叩かれることになるのは想像に難くない。何せ姫さんの派閥からだけ高得点者が出るのだから。全員満点は露骨すぎるから数問落とすようにと指示は出たが……まあ、あの姫さんのことだから自分は満点を取るだろう。
あとはCクラスがきちんとこちらを上回ってくれるかだが……まあ横流しして負けるようなら俺が着く価値は無いし考えなくていいだろう。お利口さんなクラスらしく『順当に難しい問題』程度しか考えつかなかったようであるし。
「では、3限目の化学──」
少なくとも二人の姫さんの意地の悪さには劣るだろう。原子番号52は何か答えろ、なんて問われて即答できる奴は果たして居るのか? そりゃあ周期表も履修範囲内……なんなら最初の最初に習ったけどよ。
そのくせ『石灰水を二酸化炭素に通すと何色に濁るか』なんて問題もある。虎姫ちゃんこれ途中で飽きただろ。それか小馬鹿にするためか……それとも、一応退学者が出ないように気を使ってるのかね? いや、『可愛い女の子以外は割とどうでもいいけど……?』って声が聞こえる気がするな。
♢♢♢♢♢
【ペーパーシャッフル試験結果】
Aクラス:1185cpt→1085cpt
Bクラス:905cpt→1005cpt
Cクラス:872cpt→972cpt
Dクラス:100cpt→0cpt
♢♢♢♢♢
「まずはおめでとう虎姫ちゃん、無事Cクラスが勝ったな」
「原因がなんか言ってる~。まあ、ありがと?」
横流しされた試験問題見てから回答余裕でした。邪ロリに作らせとけば選択肢1万個の中から回答を選ぶ問題とか作ってくれただろうに、葛城君も愚かな選択をしたものよ……いや、流石にそれは教師チェックで弾かれるか……?
「無人島試験で結んだ200クラスポイントの契約が無けりゃウチはCクラスに転落だな。代わりに今も毎月80万徴収されてるわけだが」
「葛城君戦犯扱いされてるんじゃない?」
「ご想像の通り。姫さんを追い出してのこの結果だからな。葛城派も姫さんに任せとけばよかったのにって言い出してるよ」
「自分達は何もしなかったくせに結果だけで責める人もどうかと思うけどね~」
「それが神室ちゃんぐらい可愛い女の子だったら?」
「リーダーなんだから敗北の責任を負うのは当たり前だよね。結局トップに求められることなんて勝利だけなんだから」
「清々しいぐらいに分かりやすいな虎姫ちゃん……」
うんうん、それは葛城君が悪いね。じゃあ挿れるね……
「というか未だに派閥争いしてるって意味ではDクラス以下じゃないの? たまたま二人とも優秀だったからギリギリ何とかなってるだけで」
「耳が痛いな。まあDクラスレベルだけが相手なら俺も葛城を盛り立てても良かったんだけどな」
「葛城君、りゅーたんと相性悪いもんねぇ……逆にお利口に争うんだったらりゅーたんに勝ち目なかっただろうけど。……っていうか、有栖ちゃんが葛城君支えたら勝ち確だったんじゃ……?」
「方針が真逆の2人にそんなこと出来ると思うか?」
「うーん……Aクラスの不運はあの2人の橋渡し出来る人が居なかったことだね……」
いや、Aクラスの不運は邪ロリの性格か……?
「まあ姫さんに代わってどうなるかは分からんけどな。案外ころっと負ける可能性だってある」
「そのためにりゅーたんとも繋ぎ付けてるんだもんねぇ……」
「虎姫ちゃんのことも口説いてるつもりなんだけどなぁ」
「うーん、友達としてならいいけど、恋人にするにはちょっと軽薄すぎるかな……」
「いや、真面目に振らないでくれよ」
「りゅーたんとの恋路……応援してるからね……!」
「本当にやめてくれ……」
お腐りの才能は無かったらしい。私も別にそういう趣味は無い。男の娘モノならちょっと見たりもする。なんだァ? てめェ……(先行入力)
「ちなみに他のクラスは粉かけてるの? BとD」
「Bクラスは一応何人か友人ぐらいなら。あそこは仲良しグループだから他のクラスにも優しいしな。Dは……まあ、いいだろ」
「否定できないね……」
橋本君いつ綾小路君に興味持ったんだっけ。体育祭? なんか軽井沢さんとのデート現場に絡んでたよね。……ってことはクリスマスとか……下手したらバレンタイン? 現状綾小路君に繋ぎ付ける価値無しと見てるのか、私の知らないとこで接触してるのか。どっちだろね。
「というかそこまでするならAクラス特権より普通に受験勉強した方が良くない? それとも就職目当て?」
「選択肢は多い方が良いだろ?」
「答えになってないよ?」
でも実際、Aクラス特権ってどこまでいけるんだろね。海外の企業とか要望したらどうなるんだろ。あと年齢制限的に不可能な政治家とか。ある程度の援助だけしてくれるのかな……? 国家資格の必要な医者になりたいとか……それは医学部に入れられるだけか。
「ま、今回の試験はAクラスは敗北だが俺としちゃ大勝利だ。姫さんがAクラスを掌握したし、Cクラスにも恩を売れた。どっちが勝っても何とかなりそうだ」
「ちなみにどっちに勝って欲しいの?」
「そりゃ俺の面倒を見てくれる方さ」
「うーん百点満点の答え」
デビルハンターに向いてそう。りゅーたんにしろ有栖ちゃんにしろが退学してもちゃっかり別の相手に着くんだろうし。
「虎姫ちゃんもいざって時に俺の面倒を見てくれたりしないかねぇ。……虎姫ちゃんとしてはどう思う?」
「うーん……あの子は可愛い女の子相手だったらチョロいから生活費ぐらいは出すんじゃないかな……男相手は分かんない。2000万ポイント出せるかは……今後の特別試験次第?」
「じゃあ自分で貯めとかないとなぁ。まあ何かあったら頼ってくれよ? 出来るだけ恩を売りつけておきたい」
「おっけー。虎居ちゃんに伝えとくね」
「さっきからだけど、本人が本人に伝えるってなんなんだ……?」
「おおー……ラブコール……」
恵ちゃんと千秋ちゃんからメッセージが入ってた。恵ちゃんは素直にペーパーシャッフルで負けて悔しい的な話。Cクラスはどうやって勝ったのか教えてよってのは今後に活かすためかな? もしかしてリーダーやってたりする?
千秋ちゃんからは早速のヘルプ。まあ来月からまた0ポイント生活だもんね。冬休みも近いしそりゃポイントも欲しくなる。0円冬休みは流石に侘しいもんね……
とりあえずどっちから返そうかな……って一瞬だけ悩んで二人とも部屋に呼んでしまうことにした。どうせなら顔合わせさせたいし。まあ千秋ちゃん、恵ちゃんから私のこと聞いたって言ってたから顔合わせ要らないかもしれないけど……三人でお風呂OKかだけでも聞いときたい。ダメって言われたら諦めるしかないね。
そんなわけで。
「やほ、松下さん。もしかして私遅かった?」
「そんなことないよ、私もさっき来たばっかだし」
「というか私がいきなり集めたのが悪いしね~。あ、飲み物適当に冷蔵庫漁っていいよ」
残念ながら私に紅茶やら珈琲やらを淹れておもてなしするスキルは無い。蒸らす時間とかで別のことしてるうちに忘れちゃうタイプだから……
「それで、Dクラスはどうだった? ペーパーシャッフル」
「どうって言われると……」
「退学者が出なかっただけ良かった……のかな?」
「まあ雰囲気だいぶ悪いけどね~、負けちゃったし」
溜め息と共にそんな言葉が出てくるあたり、やっぱDクラスじゃなくて良かったなって。学校にしろ職場にしろ、場の雰囲気が悪いってだいぶ精神的負荷大きくない?
「なーんでウチの男子ロクなのが居ないかなぁ……」
「平田君と付き合ってたくせに何言ってんの」
「元カレの事言わないでよ」
そういえば千秋ちゃん、平田君をクラス唯一の優良物件って評してたっけ……ん?
「元カレ?」
「え、うん。……あ、優里に言ってなかったっけそういえば。結構前に平田君との関係終わりにしたんだよね」
早くない? クリスマスにWデートイベントとかあったよね? 原作での別れるきっかけは忘れたけど。退学投票のやつのせいとかだっけ? 全然覚えてない。
「まあ特に優里ちゃんに借金してた人達とかうるさかったもんね。平田と付き合ってる癖にCクラスと仲良くするなんて有り得ないーとかなんとか」
「でも私は優里を優先したかったから……結果的に、ね?」
ね? と言われましても……でも素直に嬉しいね。偽装彼氏より優先されるぐらい好感度上がってたみたい。まあ平田君真の事なかれ主義だからイジメ対策に向いてないもんね。平田君(暴力の姿)になれば別なんだろうけど。
「うんうん、ありがとうね私を選んでくれて……後悔させないからね……いっぱい可愛がって気持ちよくしてあげるからね……」
「ゆ、優里、人前人前」
「別に気にしないけど? そういう関係って知ってるし今更でしょ」
「ちなみに千秋ちゃんどこまで知ってるの?」
「優里ちゃんが虎居組の女を日替わりで喰ってるってことぐらい?」
「ふ、風評被害……!」
まだ有栖ちゃんだけだよちゃんと食べたの。まあ確かに恵ちゃんは傷舐めから発展して今やそこら中だから物理的に食べてるような気もするけど。痕付ける場所はちゃんと気を付けてるからセーフセーフ。……というか虎居組って何よ。
「それだ、わざわざ私達を呼んだのはなんで? まさかほんとにペーパーシャッフルのこと聞きたかっただけじゃないでしょ?」
「まあそれも聞きたくはあるんだけど……ここらで1つ夢を叶えてみたいなって。その為に協力して貰えないかなって」
「夢?」
「3人でお風呂入ろ!」
「えぇ……?」
おっぱいサンドイッチって夢じゃんね。1人と付き合ったら二度と出来なくなるし。そういうお店に行け? うるさい。素人は黙っとれ。
「私は後でご飯でも奢って貰えればいいけど……狭くない?」
「狭いのがいいの! 恵ちゃん、どう……?」
必殺上目遣い。まあ傷を見られるのが嫌って断られても全然おかしくは無い。折衷案として水着を着てならとかワンチャン無いかな……?
「う──ん……まあ、いい、かな……?」
「ほんと!?」
「優里を選んだ時点で遅かれ早かれな気もしてたし……万が一があっても龍園辺り使って潰してくれそうだし」
「なんか私の印象物騒じゃない?」
いや、そういえばクラスメイトに全裸土下座とかさせたんだった。アレのおかげで好感度上がったって考えたら真鍋さん達に感謝すべきなのかも……?
千秋ちゃんが何の話? って疑問に思ってそうな顔してたけど、服を脱いだ所で理解したみたい。そしてその上で別に気にしてなさそう。まあイジメで付けられた傷って言わなきゃただの古傷でしかないもんね。わざわざ理由を聞く人は……まあ、居なくはないか。少なくとも千秋ちゃんは根掘り葉掘りするタイプじゃなかったみたい。
「あ゛〜天国ぅ〜」
「ほんとに女の子好きだよね優里……」
「軽井沢さんなんか慣れてるけど、もしかして頻繁に?」
「週7もしてないよね?」
「そんなしてたらもう同棲でしょ」
今の状況を言葉で説明すると……なんだろ。千秋ちゃんの身体にもたれかかりつつ恵ちゃんに抱き締めて貰ってる。身体の前も後ろもやーらかくて最高です。この胸の高鳴りこそが……オケアノスの潮騒だったのだ……
「私もうここに住民票移す……」
「はいはい」
「お値段2000万でお願いね」
「ぶ、分割払いで……」
「払えるの?」
りゅーたん……! 8億貸して……!
──私って、女で身を崩すタイプなのかな……?
虎姫さん→虎姫ちゃんの変化はミスではないです。念の為。橋本君の頑張りの成果です