ようこそ百合至上主義のハーレムへ 作:ド級のスランプ、ドスランプス
「虎居の姐さん、すんません!」
「いや、いいよ。いいんだけど……」
これも運命の修正力ってやつ? Dクラスに三馬鹿が居たけど、Cクラスにも居たらしい。石崎、小宮、近藤……暴力事件の関係者トリオだ。というか姐さんって。確実にりゅーたんのせいだ。
「勉強、嫌い?」
「嫌いというか……」
「聞いてると眠くなるっていうか……」
「バスケのが楽しくて……」
まあ遊びたい盛りだろうし気持ちは分かる。将来の為って言われても働いてる自分なんて想像もできないもんね。そもそも逆に仕事には学校の勉強ってあんま使わないし。
「うーん……じゃあ、初日は勉強に興味を持つところから始めよっか」
「お願いします!」
赤点取ったら退学だから必死なのか、りゅーたんの恐怖政治のおかげで必死なのか。どっちでもいいけどせめて生徒は女の子が良かった。
「じゃあ3人が興味なさそうな古典から行こう……念の為聞くけど、古典好きな人、居る?」
「授業も何言ってるのか分かんないっす!」
「日本語だと思えません!」
「けりけり言ってるのだけ覚えてます!」
「単語はおいおい覚えていこう。文法より先に、内容が分かんないと面白くないよね……ってことでこれをどうぞ」
渡したのは実際のテストで使われたこともある古典の問題。センター試験から持ってきたから難易度は上になるけど、別に問題として解くわけじゃないから大丈夫だろう。
「これは……?」
「玉水物語。興味が出そうに言うと狐っ娘性転換主従百合小説」
「エロ本ですか!?」
「違うって言いたいところなんだけど、拡大解釈すればそうとも言える。男の子はこういうの好きでしょ?」
「そ、そんなこと……すみません好きです」
「素直でよろしい。じゃあとりあえず内容を話してくから、古文の方見ながらなんとなくこの文章ってそういう意味なんだって思いながら聞いといてね」
簡単に内容を要約すると姫に一目ぼれした狐が女の子に化けて会いに行く話。最後には思いを込めた手紙だけ残して去るお伽草子。
「キツネぇ……!」
「抱けー! 抱けー!」
「なんかさ……切ない……」
とりあえず内容は理解してくれたっぽい? 現代語訳したからこれで無理って言われたらもう絵本でも持って来ることになるんだけど。
「とまあ、古文が分かるとこういうお話が読めるようになるの。そんで話の流れが分かっちゃえばなんとなく問題も解けるでしょ? 例えば……ここの敬語の相手は?」
「え、キツネからだから……お姫様?」
「はい正解。次、キツネが女の子に化けた理由は?」
「姫様の傍に居たかったから!」
「OK。これで今君達は高校3年生が解く問題を2つ正解しました。意外と簡単でしょ?」
「え、マジですか……?」
「マジマジ。後は読み慣れてくだけだね。単語の意味もお話しの流れで分かったりするし」
「……もしかして姐さん、教師ですか?」
「いや、専門職には勝てないよ。少人数相手だからこんな教え方も出来るってだけだし。次は……このまま文系科目で英語やる?」
「うへぇ」
「これこそわかんないんすよ!」
「てか日本で暮らしてたら使わなくないすか!?」
「うーん予想通りの反応」
私も正直学生時代は思ってた。海外とか行かないし……って。
「でもバスケやってたら海外との交流もあるんじゃ……?」
「アッ」
「つ、通訳とか付けてもらえば……」
「せめて読めるようにはなろうね~」
とはいえ英単語なんかは流石に覚えてもらうしかない。となると……
「うーん……洋ゲーでもやる?」
「え?」
「勉強中っすよね……あ、休憩にってことですか?」
「いやいや……ただ日本語化を外してもらうだけ。男子なら核戦争で崩壊した後の世界を冒険するゲームとか好きでしょ?」
「なんで姐さんさっきから男子の趣味にそんな理解があるんすか?」
元男だから……
「HowとかWhereとかやたら出てくるな……」
「5W1Hってやつだねぇ……」
「あ、なんか聞いたことある気します」
「うわ、ステータス読めねぇ。小宮、調べてくれ」
「えーと……す、すとれ……?」
「ストレングスだねぇ……」
キャラメイクから最初の街に辿り着くまでワイワイと。選択肢が出る度に辞書を引くことにはなるが、一度やりだせばこっちのもの。
「うわ、死んだ!」
「ん、じゃあここまで。ちょっとは苦手意識薄れた?」
「そういえば途中から普通に読んでたな」
「姐さんが訳してくれてたしな」
「俺、少なくとも銃はもう英語で読めるし書けるわ」
「今度ロープレも貸したげるよ」
遊びながら学ぶって結構馬鹿にならないんだよね。桃鉄で特産品覚えた人とか、Hoi4で世界地図覚えた人とか居るでしょ。私も信長の野望で旧国名覚えたし。
「じゃあ今日の最後は勉強らしい勉強として数学やろっか」
「ふ……俺達を舐めて貰っちゃ困りますよ」
「俺達は数学に英語が出てきた時点で諦めた男……」
「因数分解ってなんなんすか。勝手に分解しないでそのままにしといてやりましょうよ」
「筋金入りだねぇ……」
逆にそれでよく小テスト赤点回避できたな。図形問題は得意とかなの?
「はい、じゃあこの時のXは?」
「わかんねぇ!」
「よし。じゃあXのところに分かんねぇ! Yにふざけんな! って書いといて」
「いいんですかそれで!?」
「いいの。そしたらこれは、分かんねぇ! とふざけんな! を合わせるとこの数字で、分かんねぇが3つ集まるとこの数字になるでしょ?」
「3分かんねぇっすね」
「3分かんねぇが90なら1分かんねぇは?」
「30!」
「そしたらふざけんな! も分かるでしょ?」
「ほんとだ……」
君らさてはアルファベットに拒絶反応起こしてただけだな? クラスにも居たな……分かんない文字で思考停止しちゃうタイプの子。
「全然出来るじゃん君ら。暗記科目はもっと近くなってからでいいし、理数系から頑張ってこっか」
「いや、俺達だけじゃちょっと……なぁ……?」
「姐さんがやる気出させるの上手いっていうか……」
「正直中学の三年間より今の数時間の方がためになったっていうか……」
集団教育って落ちこぼれると復帰が難しいからね……個別で補習とか開くわけにもいかないし。塾なら別だろうけど。とはいえ私としても流石に毎日この空間は癒しが足りなくて死んでしまう。
「やる気……やる気かぁ……」
そういえば弱小チームがおっぱい揉むためにスポーツ頑張るみたいなドラマ昔流行ったよね。今はコンプラ的に厳しそうだけど。
「じゃあ今週で連立方程式とか二次関数のアルファベットが出てくるやつマスター出来たらパンツ見せてあげるよ。頑張れ頑張れ……なんて──」
「ッシャァ!」
「やるぞ!!」
「3人で助け合おうぜ!!」
「ええ……」
別に好きに幾らでも見てくれていいのに……まあやる気を出してくれる分には構わない……かな?
「こっちはそんな感じ~。椎名さんはどう?」
「そうですね……やはり、龍園君を参加させたのは正解でしたね」
「その心は?」
「一番怖い人が真面目にやってたら誰もサボれませんから」
「なるほど」
社長が現場で働いてたら誰もサボれないようなものか。……真面目に勉強してるりゅーたん、想像付かないな。なんなら自分で教科書のページ捲ってる所も想像つかない。クク……って笑いながら手下にページめくらせてそう。
「……ところで、相談なんですけど。虎居さんの部屋の本、お借りしてもいいですか?」
「え、完全に私の趣味だけどいいの? ミステリじゃないよ?」
「本全般好きですし……普段読まない本を読むいい機会になるかなと」
「確かに。じゃあ読んだら感想会開くのと……あと下の名前で呼ばせてくれたらいいよ」
「ありがとうございます……優里ちゃん?」
「どういたしまして、ひよりちゃん」
ちょっと気恥ずかしくて二人で笑っちゃったけど、これは仲を深めたと言っていいのではないだろうか。ありがとうりゅーたん。教師役同士ってことで仲良くなれてるよ私達。
「優里ちゃんは、歴史小説好きなんですか?」
「うーん……作者読みかも。歴史的には正しくないって叩かれがちな人だけど」
「物語に野暮ですね……」
「ほんとほんと。正しい歴史が読みたいなら学術書でも読むのよ」
「キングダムは突っ込みどころが多いですけど、史記を物語として読もうとはあんまり思いませんもんね」
「ひよりちゃん漫画もいける口?」
「面白ければなんでも。本に貴賤はありませんし」
「お金入ったら漫画も買い揃えとこうかな……ひよりちゃん、面白い考察とか聞かせてくれそうだし」
「あんまり期待しないでくださいね?」
「いいよ。話してるだけで楽しいから……大丈夫? 顔赤くない?」
「い、いえ……そんな風に言ってくれる人居なかったので……いつもは熱が入りすぎて引かれてしまうというか……」
「こんな美少女が熱く語ってたらそれだけで可愛いのに!?」
「か、からかわないでください!」
うーん、ひよりちゃんと会えただけでもCクラスで良かったかも。Dクラスの今の空気とか地獄だし。……まあ、原因は私だけどさ。
何とか赤評価に持ち直せました。みんなありがとう
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