ようこそ百合至上主義のハーレムへ   作:らっきー(16代目)

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恵ちゃんにはポイント持ってないフリして貰ってる

 急遽追加で行われることとなった特別試験──―クラス内投票の説明を茶柱先生が終えると同時にDクラスの教室は大きな動揺に包まれていた。

 

「そ、そうだ平田! 夏の試験でめっちゃポイント入ってたよな!? あれを使えば……」

 

「……あの試験で僕らに入ったポイントは合計で1700万ポイント。そこから9月から3月までの7か月で皆に月1万渡した分を引いて1420万ポイント。そこから打ち上げだとかの雑費を引くと……」

 

「つ、つまりどういうことだよ!」

 

「……僕らのクラスには退学者救済を行えるポイントは無い、ということになるね……クラスポイントがほぼ無い以上個人で持ってる人も居ないだろうし」

 

 正確に言えば体育祭や混合合宿でプライベートポイントを追加で手にしていた者も居なくはないが、その程度では焼け石に水ということは分かっていた。そもそも使い切っている者の方が多かったが。

 

「500万以上届いていないとなると、今から自力で2000万ポイント集めるのは不可能でしょうね」

 

「じゃ、じゃあどうすんだよ! 誰か選んで退学させろってのかよ!」

 

「うるさい! 騒いでもどうにもならないでしょ!」

 

「んだと!? お前、さては俺に批判票入れるつもりだな! それなら、俺もお前に入れてやるよ!」

 

「みんな! 気持ちは分かるけど一回落ち着いて!」

 

「平田は良いよな~。批判票一位なんて有り得ねぇし」

 

「そんな、僕だって──」

 

「──―虎居ちゃんに、相談してみようと思うの」

 

 無秩序になったクラスを、その言葉が一度落ち着かせた。

 

「Cクラスの? 他のクラスがわざわざ助けてくれる?」

 

「分からない。でも一番プライベートポイントをこの学校で持ってるのはあの子だと思うから……可能性があるとしたら……」

 

 その発言で一度クラスは落ち着いた──とはいえ、その蜘蛛の糸を信じていないのはその発言をした櫛田自身であったが。

 

(もとはと言えばあいつが干支試験のボーナスをかっさらったから! なんで誰も指摘しないんだよ! ……でも、私ならもしかしたら女の子だからって助けて貰えるかもしれない。それだけでも接触する価値はある。それに、クラスの為に動いている印象付けのためにも……)

 

 虎居の女好きは有名である。なにせ本人が公言して憚らないのだから。Dクラスを助けるつもりは無くとも、気に入った女の子の救済ぐらいはするかもしれない。そう思って接触した結果は──

 

 

 

「え、嫌だけど」

 

「そんな! でもDクラスには」

 

「私と仲良い子も居るって? もしかしてそれ、脅しのつもり? 私が断ったらその子達に批判票を集めるって?」

 

「ち、違うよ! ただ心配じゃ無いのかなって……」

 

「んー……まあ私が使える他クラスへの賞賛票、120あるしねぇ。守るぐらいは出来るしなぁ」

 

「ひゃくにじゅ……!」

 

 他クラスへの一票の枠をA~Cまでの全クラス分一人の意思で動かせる。それなら確かに容易いことだろう。Dクラスで同じ三人に批判票を集中させることが出来たとして37票。当然そんなことが出来るはずが無いのだから実際はもっと少なくなる。そこに他クラスからの賞賛票を注ぎ込まれればもう誰が退学するかなんて制御できなくなる。

 

「まあ私とじゃれ合いたいなら歓迎するけど、どうする? 敵対関係の女の子って今まで……いや、ある意味居たかな……?」

 

「……どうしても、ダメ、かな?」

 

「だって返せないでしょ。今後全てのプライベートポイントを徴収しても怪しいとすら私は思ってるよ」

 

 現在のDクラスのクラスポイントは80。一月当たりにクラスに入る合計値は32万。2000万を借りれば仮に全て献上したとしても返済には5年かかる計算になる。勿論今後クラスポイントが増えることもあるし、そもそもとして別に虎居は返済に興味は無いし、Dクラスの貯蓄を考えれば借りるポイントはもっと少ないのだが、そんなことは今この瞬間には関係ない。ただ断る理由として使っているだけだから。

 

「……まあ櫛田さんは大丈夫でしょ。むしろ、嫌われ者が居なくなるってポジティブに考えてみたら? ま、堀北さんを退学させるのは難しいだろうけど。……何で知ってるのって顔してるけどさ、私龍園と同じクラスだからね?」

 

 櫛田としても、本心を言ってしまえばどうでもいい特別試験だ。自分が批判票一位になることはまずないだろうし、退学して欲しい生徒ならともかく退学して欲しくない生徒なんて別に誰も居ない。だから交渉はここで終わった。

 

 

 

 

 

「くそ、どうすりゃいいんだよ……」

 

 Dクラス、山内春樹は部屋で落ち着きなく端末を弄っている。別に何をしているというわけでは無いが、友人とやり取りでもしていないと不安でどうにかなりそうだったからだ。とはいえグループチャットも荒れていてそれほど気分転換にはならなかったが。そんな彼のもとに、一通のメールが届いた。

 

「あ? 差出人不明?」

 

 この学校は外界との連絡が断たれている。よって迷惑メールなどの心配も無い……とはいえこの男の場合そんなこと関係なくメールを開いていただろうが。

 

 そこに書かれていたのは……

 

『貴方が退学にならないお手伝いをさせていただけませんか?』

 

 到底信用できない文章だろう。人によってはこんなメッセージを送った思惑を知るために話に付き合うという選択肢をとるかもしれないが、普通なら一笑に付して終わるのが精々の物だ。しかし。

 

「マジかよ! やっぱ俺って皆に好かれてるもんな~。にしても、誰だろ?」

 

 この男にそんな常識は通用しない。自分に都合のいいように世界は動くと信じ切っているから。

 

「えーと……『よろしく頼む! ところで、君のことはなんて呼んだらいいかな?』っと。可愛い女の子だったりしねぇかな~」

 

『チェシャとでもお呼びください』

 

 

 

「うーん……退学に追い込むためとはいえ、思ったより不快ですね……」

 

「ああ、なんかDクラスの奴にちょっかい出してるんだっけ?」

 

「ええ。ですが……いえ、見てもらった方が早いですね。真澄さん、これ見てください」

 

「うわ……出会い厨って言うんだっけ、こういうの」

 

「個人チャット教えてだの顔写真送ってだの……女だと言ったのは失敗でしたね……」

 

「でも男だったら喰いついてこなかったんじゃない?」

 

「そうなんですよねぇ……真澄さん、ちょっと癒してください。具体的には枕になってください」

 

「別にいいんだけど……なんかあんた、優里に似てきてない?」

 

「人肌の温もりを必要以上に教え込まれてしまったせいですかね……?」

 

 

 

 

 

 同時刻──

 

「やあ、ウルトラガール」

 

「あ、いたいた。高円寺君。こんな時でも相変わらずだねぇ……」

 

「僅かな危機で大慌てなど美しくないからねぇ」

 

「それは同意。まあ大慌てなのDクラスだけだけど」

 

「実に嘆かわしいことだよ」

 

「ちなみに高円寺君はこれで退学になったらどうするの?」

 

「別に何も? この私を切るなどと愚かな選択をしてしまった元クラスメイトの活躍でもささやかに祈っておくさ」

 

「うーん本当に相変わらず。取引が成立しない厄介な相手だよほんと」

 

「おや、悪巧みに私も混ぜてもらえるのかな?」

 

「なんで気付けるのさほんと……んや、退学に追い込んだら最後の大暴れしそうだから、出来たら女の子達を守ってもらえたらなって」

 

「その程度なら言われるまでも無いねぇ。か弱いレディを守るのは強き者の役割さ」

 

「おー助かる。綾小路君はそれどころじゃなくなりそうだったからさ」

 

「ふむ、では彼がプロテクトポイントを得るのかい?」

 

「話が早すぎるねほんと。それとも高円寺君欲しい? それならそうするけど」

 

「不要さ。どうせ私が使う機会も無いだろうしねぇ。必要な者に渡してやりたまえ」

 

「どこまで見えてるの? ほんとに……」

 

 

 

 

 

 クラス内投票が通達された翌日──

 

 唯一退学者救済に必要なポイントが足りないDクラスだけがピリピリとした空気に包まれていて、その事実が余計にDクラスのメンバーを苛立たせている。

 

 ただその中でも各々出来る事、つまりは小さいグループを作って賞賛票を入れ合ったり、批判票を同じ生徒に集めることで退学を回避しようと出来ることはしようとしていた。

 

 そしてその翌日、そこには不気味なほどにいつも通りになったDクラスの姿があった。

 

 




一体誰が退学になってしまうんだ…?
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