ようこそ百合至上主義のハーレムへ   作:ド級のスランプ、ドスランプス

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さらば山内。また会う日まで

(あれだけ落ち着きの無かった空気が弛緩している……まるで自分は絶対安全だと理解しているかのように)

 

 一変した空気の中綾小路清隆は思案する。恐らくは大きなグループで誰か一人を退学させることに決めたのだろう。それもこの空気になるぐらいにはクラスの大半が参加している大きなグループ。そして自分が何も聞いていないということは──

 

「……嫌な雰囲気ね」

 

 そんな思考は隣人の少女、堀北鈴音の一言に中断させられた。

 

「ああ。もう結果は出たかのような雰囲気だな」

 

「貴方、何か聞いてる? 先に言っておくと私は一切グループに参加していないわ」

 

「残念ながら俺もだ。案外、標的にされたのは俺や堀北かもな」

 

「……そうね。私もあまり人望があるわけでは無いし、貴方もクラスに友人が多いわけじゃないものね」

 

「そうだな」

 

(しかし大きな違いがある。俺にはクラス外に友人が居るという単純な事実だ)

 

 

 

 

 

 そして、クラス内投票前日──

 

「皆、少し時間をもらえるかしら」

 

 堀北の声にDクラス全員が注目する。

 

「明日の試験、その退学者について。大事な話があるの」

 

 櫛田がポイントの借用を断られた話は皆知っている。だから退学者が出ること自体にはもう動揺は無い。

 

「クラスから退学者が出ることが確定してしまったからには、誰が相応しいか考えなくてはならない。───それを踏まえて、私は山内君を候補に上げるわ」

 

「はぁ!? ふざけんなよ!!」

 

 自分が候補に挙げられると思っていなかったのか、山内は声を荒げる。

 

「貴方のこれまでのクラス内での貢献度は極めて低い。身体能力や学力、授業態度と総合的に見れば、クラス内での重要度は貴方が最下位といっていいわ」

 

 痛烈な批判。だが、山内はそれでもどこか余裕を見せている。

 

「へぇ……まあいいぜ、好きに言ってくれれば。俺には俺のことを分かってくれる子が付いてるんだから」

 

「は? ……山内君、まさか貴方がスパ──」

 

「それに、今更決めようたってもう遅いぜ! なにせクラスの大半は綾小路に批判票を入れるように契約を交わしてるもんなぁ! なあ、みんな!」

 

 気まずげに顔を伏せた人の数は綾小路に批判票を入れる約束をした人間とイコールであろう。正確に言えば、仲介した櫛田が色気を出したことにより堀北にも批判票を入れる契約となっているのだが、それは山内も知らない。

 

「だからもう綾小路を退学させて終わりさ! みんなもそれでいいから協力してくれたんだもんな! ははっ悪いな、綾小路」

 

「謝ってもらう必要は無い。俺にも、俺のことを助けてくれる人が居るからな」

 

「は?」

 

「はーい、呼ばれてないけど虎ちゃんでーす! 廊下にまで聞こえる声で話し合うのはどうかと思うよ?」

 

「……何しに来たのかしら? もしかして、綾小路君のためならポイントを貸してくれるの?」

 

「そんなつまんないことしないよ~。ただ、Dクラスのお友達から嫌な契約をさせられたって聞いてね。じゃあもっと嫌なことをしてやろうと思って」

 

「な、何する気だよ」

 

「ん? えーと……黒内君だっけ? まあいいや。簡単なことだよ。君が批判票を入れるよう指示した人に賞賛票を入れるだけ。二人らしいから……40票ずつ入れてあげればプラマイゼロかな?」

 

「は!? そんなに他のクラスに入れられるわけねぇだろ! 馬鹿じゃねぇの!?」

 

「Aクラスから40票、Bクラスからも40票。残りのウチの40票は……どうしよっかな? ふふ、私が動かせるのは私のクラスだけじゃないんだよ?」

 

 それは山内の作戦を根底から覆すもの。しかも、帳消しにされる批判票の枠が無意味になることを考えれば、残った批判票を自由に動かせるのは山内の策に乗ってこなかった者ということになる。

 

「さて、他人を退学に追い込もうとした君のことを助けてくれるクラスメイトは居るかな? もしかしたら、策に乗った人も残った一枠に君の名前を書くかもね?」

 

「あ、ああ……」

 

「あれ? さっきまであんなに楽しそうだったのにどうしたの? ほら、笑いなよ。こうやるんだよ?」

 

「……虎居さん、申し訳ないけどそこまでにしといて貰えないかしら」

 

「ん? ああ、話し合いの邪魔だったね、ごめんごめん。じゃあ帰……あ、私に賞賛票頼みに来ないでね? 私は私が楽しむだけだから」

 

 

 

 

 

 

「どう? 有栖ちゃん。勝ち誇ってた人の醜態は」

 

「不快感に耐えた甲斐がありましたね。後は退学の瞬間も是非とも見たいものですが」

 

「それもまた録画しといてもらおっか。十中八九彼で決まりでしょ」

 

 二枠無駄に潰して残り一枠で誰を退学させるかとなれば……まあ、他人を退学させようと貶める人になるのはそうおかしくはないはず。そこまで嫌われてる人も他に居ないはずだし……いや、赤ゴリラとかワンチャンあるか? まあでも少なくとも賞賛票は入らないでしょう。

 

「それにしてもやはり、自分は安全だと思っていた人が叩き落される様は見ていて心が洗われますね」

 

「じゃ、邪ロリ……」

 

 まあ分からなくも無いけれど。その為に私もわざわざ種明かしに行ったわけだし。明日いきなり退学を突き付けられるというのも捨てがたかったけど、明日まで一日絶望しながら過ごしてもらうためには今日伝える必要があった。私の有栖ちゃんを転ばせようとしたのだからこのぐらいはさせてもらわないと。

 

「ん……この期に及んでメールですか。迷惑メールに登録でも出来ればよかったのですが」

 

「メール?」

 

「ああ、はい。山内君一人では何もできなかったでしょうからお手伝いをしていたのですよ。未だに救ってもらえると思っているようで」

 

「ふーん……男と二人でやり取りしてたんだぁ……」

 

「え? ……いや、そういう意味でやり取りしてたわけじゃないことは分かってくれますよね……!?」

 

「向こうはそういう意味だったみたいだけど?」

 

「そ、それは私の責任じゃ……ちょ、どこ触って──」

 

「んー? どこ触られてるのかな~? 教えてくれないと虎ちゃん分かんな〜い」

 

「んっ…優里さ…ちょ、あぅ…せめて、喋る余裕を…」

 

「ご主人様、でしょ?」

 

 まあ別にこの程度で嫉妬するほど心は狭くないけれど、それはそれとしていじるチャンスは逃したくないよね。二人きりもなんか久し振りな気がするし。

 

 

 

 

 

 クラス内投票、当日──の、放課後。

 

「よし、じゃあ鑑賞会だね! ……で、なんでこんなに人が?」

 

「有栖の付き添い」

 

「面白い見世物を見るぐらい混ぜてくれてもいいだろ?」

 

「私は繋いだら帰ってもいいんだけど……もう見たし」

 

「まあまあ恵ちゃんも折角だし」

 

 視聴覚室をポイントで借りて有栖ちゃんとDクラスの退学の様を見よう、としていたらどこから嗅ぎ付けたのかりゅーたんも来た。流石に帆波ちゃんはそんな悪趣味じゃないけど、下手したら各クラスのリーダーで退学鑑賞会になってたね。

 

 とりあえず賞賛票の結果発表。これはまあどうでもいい。綾小路君に叩き込みまくってプロテクトポイントもあげられたし。一応入れておいたけど高円寺君はTOP3には入れなかったみたい。やっぱ批判票喰らってたんだろうな……

 

 そんで批判票。一位は……

 

「まあ山内君だよねぇ。仲間を蹴落とそうとしてたってのは印象悪すぎだもん」

 

「それを投票前日にバラした奴が何言ってやがる」

 

「いやーよりによって綾小路君を狙ったのが悪いよねぇ。もっと嫌われてる人狙えばクラスのためって言い訳もできたのに」

 

「や……ウチのクラスで一番嫌われてるの多分あの三馬鹿達だから……」

 

「だからこそ私も彼に接触したわけですしね」

 

「転ばされかけた私怨じゃないの?」

 

「勿論それもあります」

 

 あるんだ……まああるよな……執念深いもん有栖ちゃん。

 

「うわ……振り下ろされた椅子片手で止めてる……龍園あれ出来る?」

 

「相手次第だな。アルベルトにやられたら多分無理だ」

 

「あれ、意外と素直」

 

「やかましい」

 

 まあ高円寺君は例外だからしゃーない。綾小路君とガチバトルしたらどっちが勝つんだろうね? まあ二人ともが本気出す状況なんて想像つかないけど。

 

「おー……終わりか。ありがとね恵ちゃん。結構面白かった」

 

「まあ優里が楽しめたなら良かった……けど、ウチのクラスだけなんだよね? 退学者出たの」

 

「一之瀬さんがクラスメイトを見捨てるとも思えませんし、そうでしょうね。罪悪感でもありますか?」

 

「それが全然。女子の胸のサイズで賭けとかやりだすような奴だったし」

 

 うーんみんなドン引きしてる。なんならりゅーたんもちょっと引いてる。アレに参加した初期小路君地味に凄いよね。……いや、セクハラって概念も知らなかっただけか? 

 

「……龍園、龍園」

 

「あ?」

 

「大きいのと小さいのどっち派? ぃだっ!」

 

「アホなこと聞くな」

 

「だってこの場じゃ貴重な男子の意見だし……」

 

「どう答えても角が立つだろうが」

 

「そういうの気にするんだ……」

 

 好みは好みだからなって普通に答えそうなのに。Cクラスの猥談とかちょっと興味あるんだけどな。具体的にはりゅーたんの好みの女とか。何となく歳上が好きそう。偏見です。

 

「まあ、そろそろお開きにしますか。私ここの鍵も返しに行かなきゃいけないし。ありがとね恵ちゃん。お礼にまた気持ちよくしてあげ……ぁだっ!」

 

「せめて俺が居ない所でそういう話はしろ」

 

「もしかして龍園結構ウブ? ……あ、冗談です冗談。拳を下げて……」

 

 トライヲイジメヌンデ……

 

 

 

 

「……あれ、こんにちは? 見慣れない人ですけど……来賓の方ですか?」

 

「ああ、どうも。この度理事長代理に任命された月城と申します。一度校舎を回らせて頂いてるのですよ」

 

「あれま、失礼しました。どこか案内しましょうか?」

 

「いえ、ご心配なく。それでは」

 

 理事長代理の襲撃ってそういえば今日だっけ……

 

 とりあえず綾小路君にメッセージ送って……遠隔で位置情報ONにされそうな端末を隠してカメラを持って、いざ出陣……かな? 目的が分からない以上、今の内に何とか弱みを握っておかないと……

 

 




この試験、なんで批判票3人に入れられる設定なんだろ。綾小路君退学させるなら一枠で良さそうなのに
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