空崎ヒナVS石流龍(によく似ている生徒)   作:アビス・アッカーマン

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前編

 

ブラックマーケット・廃墟地区

 

それはブラックマーケットの奥地にある廃墟で満ちた地区。人の影は無く、ゴミが散乱し汚いネズミがうろちょろする場所。

 

そこにとある噂がある。

 

かつて、大昔にとある研究者達が集まる組織があり、そこで今のキヴォトスでは再現出来ない数々の発明が生み出され、その中の一つ。

 

冬眠カプセルがその地区に眠っているという。

 

 

 

 

黒服のビル

 

黒服「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯おや?こんな所にまだ見ていない物が?」

 

黒服が崇高へと至る為の過去の記録や書物の山が綺麗に整頓されている本棚で、まだ見ていないものがあるかもともう一度確認しようと思ったのがこの物語の始まり。

 

黒服「ふむ、かつてのゲマトリアが開発した物の、その一部が書かれていますね。」

 

そこには過去のゲマトリアが開発した様々な記録が記載されていた。

 

黒服「クックック、こういうのがあるから確認というのは大事なんですねぇ。」

 

パラパラとめくるがどれも素材調達が困難で出来なかった物、暴走で中止した物、キヴォトスの住人を使った実験結果から凍結された物まで。どれも興味があるが過去だからこそ出来た物ばかり。

 

いや出来なくはないがどれもコストに似合わないし、他のゲマトリアとの協力が不可欠な物ばかり。いつも自分勝手に行動している(先生の時は互いに協力する)変人ばかりの為、無理であろう。

 

あれもダメ、これもダメと精査していく事に心が沈んでいく黒服。

 

そして最後のページには、

 

黒服「⋯⋯⋯⋯⋯おや?これは。」

 

冬眠カプセルに関する記録とそれに関する契約。

 

冬眠カプセルは開発成功と記載され、その際の状況や記録が事細かに書かれていた。

 

そしてその一番下に契約の内容が。

 

その契約は404年前にゲマトリアとゲヘナの生徒達との間に冬眠カプセルの実験台にする事を条件に、石流リュウを最高責任者としその者に従う者達の願いを叶える為の(当時の)最先端の武装の提供と冬眠カプセルを使わせる契約をしたという記載があった。

 

黒服「ほう、冬眠カプセルですか。過去の人を未来へ送るという一種のタイムマシーン。けれどそれは私の望む崇高とは違いますね。⋯⋯⋯しかしゲヘナの生徒と契約ですか。」

 

あの治安の悪い生徒が集まるあのゲヘナと契約を交わすとは。中々に狂って⋯⋯⋯⋯愉快な人達だ。

 

黒服「はぁ、これで最後のページですか。契約書は一体どこなんでしょうかね?」

 

黒服は契約を重んじる。悪い大人である黒服は騙す事はするが契約で嘘を付く事はしないし、破る事もしない。契約次第で弱者は強者にチェックメイトを繰り出す事が出来る事を知っているが故に。

 

黒服(『ゲマトリア』と契約している以上、名前を借りているとはいえ私も『ゲマトリア』ですし。契約を遂行する義務があるでしょうから。)

 

黒服は冬眠カプセルそのものはあまり興味は無いが冬眠カプセルを使わせる事と記載されている為、もしかしたら今も冬眠カプセルで眠っているかもしれない。

 

そしたら書物では得られない当時の詳細を聞けるかもしれない。

 

その眠っている人の為ではなく、自分の探究心を満たす為に契約書を探す。

 

 

その後、無事2時間の格闘の末、ようやく見つけた黒服は冬眠カプセルがある廃墟地区に赴くのだった。

 

 

廃墟地区

 

黒服「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯ようやく見つけましたよ、冬眠カプセル。正常に動いているからか中の人はまだ生きている様ですね。」

 

工場のような空間に左右に横一列で鎮座している冬眠カプセルは遠くまで続いている。中は意外にも綺麗で外と中のギャップで頭が混乱する程。中に入っている当時のゲヘナの制服を着ている人がスヤスヤと呼吸器を付けたまま安眠している。

 

探す事三日。格好の良い奇妙な大人が廃墟地区をうろついていると囁かれているくらいには彷徨った黒服はようやく見つける事ができた。

 

まさか倉庫の地下の隠し扉のさらに隠し扉(光学迷彩による擬態)があるとは思わず舌打ちをしかけた程に探した黒服はその中の一人、石流リュウと書かれた冬眠カプセルを解除する。

 

石流リュウ、彼女が当時の契約書に最初にサインした人物であり、その後もサインしたゲヘナ生の最高責任者だからだ。

 

契約に則り冬眠状態を解除し、今か今かと待ち構える。

 

カプセルが開くと同時にリュウは目をそっと開ける。

 

黒服「404年の睡眠をしたあとの気分はどうですか?石流リュウさん。」

 

リュウ「悪くはねぇ気分だな。こんだけ待たされたんだ、俺を満足させる『デザート』はあるんだろうな?」

 

黒く短い髪に鋭い眼光、男気がある顔にゲヘナの生徒の特徴である小さな角がある石流リュウは長ぇなと呟きながら呼吸器を取りカプセルから立ち上がり黒服を見下ろす。

 

黒服「クックック、そうですかそれは良かったです。それでは契約の話を⋯⋯⋯⋯⋯。」

 

リュウ「ちょっと待った。お前俺と契約した奴とは違うな。誰だお前?」

 

黒服「おっと自己紹介が遅れましたね。」

 

背筋を伸ばしネクタイを締め、丁寧に話す。

 

黒服「私の名前は黒服。ゲマトリアのメンバーであり、探求者であり、研究者でもあります。そして⋯⋯⋯⋯⋯貴女が契約した者の代行者でもあります。黒服というのは暁の⋯⋯⋯⋯いえ、とある生徒からそう呼ばれましてね。この名前が気に入っているので黒服とあなたも呼んでください、石流リュウさん。」

 

リュウ「リュウでいいぜ黒服。自己紹介してくれたならこっちも返さなきゃな。俺はゲヘナ学園3年生、石流リュウだ。部活は入ってねぇ。よろしくな、黒服。」

 

黒服「当時のゲマトリアの人達は解散しました。名前を借りているとはいえ私は『ゲマトリア』です。この黒服が貴女の願いを叶えましょう。さあ、願いは何ですか?」

 

リュウ「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯デザートだ。」

 

黒服「デザート、ですか。」

 

デザート。一般的な意味では無いだろう。おそらく何かの比喩。

 

リュウ「⋯⋯⋯⋯⋯あぁ、お前が知らないのは無理ないか。まぁいい。冬眠カプセルで眠ってるバカ共を叩き起こせ。今のゲヘナを見てみたい。」

 

黒服「それが貴女の願い、という事でよろしいですか?」

 

リュウ「⋯⋯⋯⋯⋯⋯ま、そうだな。俺の腹を満たす奴はは自分で探すさ。とりあえず今のゲヘナについて話せ。うめぇメシとか寝床、銀行口座とか色々寄越せ。⋯⋯⋯⋯⋯あ、ついでに戸籍もだ。」

 

黒服「クックック、クックックック!図々しいですねぇ貴女は。」

 

リュウ「大人っつうもんは子供にアレコレしてくれる人の事なんだろ?なら大人の義務を果たせよ黒服。」

 

黒服「大人としての義務、ですか。クックック、クックックック!」

 

 

 

閑話休題

 

 

 

黒服「これが貴女の武器です。」

 

ポンっとリュウに渡す。

 

 

グラニテブラスト

 

かつてのゲマトリアが開発した二丁の小型のエネルギーキャノン。放射状態と圧縮状態を状況によって使い分ける事ができる。

 

内蔵したエネルギーと使用者の神秘を用いて発射され、威力は使用者によりバラつく為使用者はかなりの技量と神秘が要求される。

 

変形前は火力が低いが近距離向きの小回りの利く二丁、変形後は二つを合体させ高火力で遠距離向きの一丁となる。

 

馬鹿げた消費量と神秘量に求められる技量で数多くの生徒達が手にし、そして手放したそれは

しかし、だからこそ石流リュウにもっと相応しい武器である。

 

必殺技:最大点火(イグニッションブラスト)

 

エネルギーと使用者の神秘を一度に多く消費することで発射できる技。

使用後は過加熱状態(オーバーヒート)を引き起こすが絶望を打ち砕くにはロマンは必要だろう。

 

 

 

黒服「ついでにこれも。必要でしょう?」

 

リュウ「ああ、ありがとな。」

 

過加熱状態(オーバーヒート)を即座に解除する為の冷却剤を数個渡す。

 

それをポケットの中に突っ込み後ろにいる石流リュウに付いてきた約30名に声を掛ける。

 

リュウ「よし!空腹はしのいだ、ぐっすり眠った!金もたっぷり貰った!不安な事は俺を満たす奴がいるかだが⋯⋯⋯とりあえず今のゲヘナに行こぜ!」

 

親衛隊「おおおおお!」

 

皆がそれぞれの銃を掲げて声を上げる。

 

彼女達は石流リュウの性格に、在り方に、強さに惹かれた者達だ。彼女達は勝手にリュウに付いていきリュウの手と足として動く、いわば親衛隊である。

 

黒服「クックック、楽しみませてもらいますよリュウさん貴女の願い、それが叶う事をお祈りしております。」

 

黒服の実験台となる契約は断られてしまったものの、400年以上前の当時のゲヘナ最強が今のゲヘナと相見えた時、どうなるのか興味が尽きない。

 

黒服はゲマトリアだ。自分の欲求を満たす為なら悪と言われる事を平気でする悪い大人である。居場所を与る訳でも、仕事を紹介する訳でも今後必要となるゲヘナへの編入をさせる訳でも無い。

 

 

 

何度でも言おう。黒服はゲマトリアだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黒服「⋯⋯⋯と、いうことがありましてね。」

 

先生 "⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯それで私に何をさせたいんだ?黒服。”

 

黒服「クックック、そんなに警戒しないでください。私はただ先生がその生徒にどう対応し選択をするのか気になるだけです。⋯⋯⋯⋯⋯それであの生徒達はどうするんですか?」

 

先生 "たとえ400年以上前の生徒であろうとも関係無い。先生として生徒を導き、指導し、応援する。それが先生だ。”

 

黒服「クックックック。やはりそうですか。先生としての責任と義務を果たすと。クックックック。」

 

先生 "⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯ところで何でこの事を伝えたの?私に伝える義務なんて無いだろうに。”

 

黒服「何故ってそんなの決まってます。前にも言いましたよ。先生がどう選択するのか、それが気になったからです。クックックック!」

 

黒服は先生大好きファンクラブのメンバー(ゲマトリア)である。

 

先生 "言いたくはないけど一応言っておく。ありがとう。”

 

黒服「どういたしまして(満面の笑み)。クックックック。」

 

先生(ヒナ達に連絡しなきゃな。)

 

石流リュウが今のゲヘナ最強と相見える昨日の事である。

 

 

 

 

 

ゲヘナ風紀委員本部

 

ヒナ「これ3日前の挑戦状ね。⋯⋯⋯⋯⋯挑戦状なんて今時珍しい。」

 

アコ「ヒナ委員長、何かのイタズラでは?」

 

ヒナ「いいえ、爆破予告なんて面白くない事言っているんだもの。相手が私を呼んでいるなら私が行かなきゃ。」

 

アコ「しかしヒナ委員長が行く必要なんて⋯⋯⋯⋯。」

 

イオリ「言いたいことは分かるけどここはヒナ委員長に任せようアコちゃん。ヒナ委員長が行けば大体解決するよ。」

 

チナツ「それに相手がヒナ委員長では無く私達が行ったら本当に爆破してしまうかもしれません。リスクはできるだけ排除するべきでは?」

 

アコ「分かってます、分かってますよそんな事!」

 

ヒナ「とにかく私が行って⋯⋯⋯⋯⋯。」

 

挑戦状という珍しい物を見て意見を交わすゲヘナ最強の風紀委員長空崎ヒナ、行政官の天雨アコ、切り込み隊長銀鏡イオリ、救護担当の火宮チナツの4人が書類の山を片付けながら話していると、

 

ドゴォン!ドゴォォォォォォン!!

 

大きな爆発音が連続で鳴り響いた。

 

そのタイミングで風紀委員が大慌てでヒナ達のいる部屋に入った。

 

風紀委員「報告!ゲヘナ中で爆破事件が勃発!その事件の首謀者はどれも『空崎ヒナを出せ』と騒いでいます!どうしましょう!」

 

ヒナ「⋯⋯⋯⋯⋯⋯ねぇ、これ心当たりあるのだけど。」

 

アコ「⋯⋯⋯⋯⋯⋯奇遇です、私もです。」

 

イオリ「これ絶対挑戦状見送られたから強硬手段に出ただろ。」

 

チナツ「⋯⋯⋯⋯⋯⋯すみませんヒナ委員長。私がもっと先に見つけていれば。」

 

ヒナ「気にしなくていいわチナツ。場所も書いてあるしそこに行くわ。皆は騒動を収拾して。」

 

アコ達「了解!」

 

ヒナ(場所は⋯⋯⋯⋯⋯⋯ゲヘナの捨てられた廃墟地帯ね。)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

廃墟地帯

 

ヒナ「ここかしら?」

 

どこも朽ちた場所で呟きながら歩いていく。挑戦状には石流リュウの名前があったがアコに調べさせてはいるが『今のゲヘナ生徒で』そんな名前のゲヘナ生はいないという。もしかしたら外部の⋯⋯⋯⋯⋯。

 

 

 

イグニッションブラスト

 

 

 

ヒナ「!?」

 

ドゴォォォォォォン!!!

 

ヒナのいた地点に大きなクレーターができ高温でガラスが出来るほどの熱線を放たれたと分かる熱風と温度。

 

砂煙で遠くからでは見えない風紀委員達(アコが心配でついて行かせた)はヒナ委員長の無事なのかと心配になる。

 

が、

 

ヒナ「問題無いわ。」

 

当たり前の様に回避したヒナは放たれた場所に目を向けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

廃墟地帯・とあるビル

 

リュウ「おいおい、まさかその程度じゃないだろうな、空崎。」

 

変形後のグラニテブラストを構えながら呟く。

 

この廃墟地帯を選んだのは邪魔が入らないようにするため。デザートは最後に残しておくタイプであり、最高のデザートを頂くためなら出し惜しみはしないリュウはこの三日間で準備してきたのだ。

 

404年前では叶う事が出来なかった渇きを満たす為に。

 

挑戦状ですぐ来たならそれでいいがリュウは無視されるだろうと考えてた為、嫌でもここに来るようにゲヘナ中に爆弾を仕掛けた。それなりに苦労したが最高のデザートを味わう必要経費だと考える。

 

リュウ(にしても空崎の姿が見えないな。逃げた?いやそれはない。情報通りならあいつが今のゲヘナ最強だし、遠くからだがかなりの強者だと感じた。あれくらいで倒れたら混沌としたゲヘナを制するなんて不可能だしな。)

 

思考の海を泳いでいると⋯⋯⋯⋯⋯。

 

リュウ「おっと!」

 

ヒナ「見つけたわ、さっさと降参してくれないかしら?」

 

リュウ「それはできねぇ相談だな。投降したらお前が俺の求める『デザート』なのか分からくなっちまうだろ、空崎?」

 

リュウのいた所を機関銃(終幕:デストロイヤー)で連射したが身軽に回避されたヒナ。5階建てのビルの屋上に軽く着地したヒナもまたリュウが他の生徒とは一線を画す強者だと認識した。

 

リュウ「お前はゲヘナの連中にそいつの好きなものを目の前に出して我慢しろ、なんて言ってそれに従うゲヘナ生徒がいると思うか?」

 

真顔で問い掛けるリュウに対して、

 

ヒナ「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯いない、とは断言できないわね。でもこの混沌としたゲヘナにもいい子達はいるわ。その子達なら我慢できるんじゃないかしら?」

 

同じく真顔で返すヒナ。

 

リュウ「⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯確かにな。いる奴はいるかもしれん。でもな基本的には我慢なんて出来る奴なんていないんだぜ空崎。」

 

ヒナ「もしかして七囚人のワカモみたいに所構わず爆破するのが好きなの?」

 

リュウ「違ぇよ。強ぇ奴との戦いは好きだが無差別に爆破するのは俺の趣味じゃねぇ。俺の目的はアンタだ空崎。⋯⋯⋯⋯⋯ああ、そんな顔しなくていい。わざわざお前をここまで連れて行くのにここまでやる必要は無かったのかもしれない。はっきり言って大きな不満ってのはねぇんだ。」

 

そう言うと懐に手を伸ばす。

 

ヒナは警戒して銃を向けると⋯⋯⋯⋯⋯目にしたのは、

 

リュウ「いろんな味を舐めたがやっぱりこれだな。」

 

イチゴミルク味のチュッパチャプスだった。

 

ヒナ(?)

 

何故このタイミングで舐めるんだろうと疑問に思っていると。

 

リュウ「俺の学園生活は腹八分って所だな。骨のある奴と戦ったしいい奴とも親友にもなった。さっきも言ったが大きな不満ってのは無いんだ。でもな漠然とした渇きっていうのは辛いもんだぜ空崎。」

 

じゃあ何で?と顔に出すヒナ。

 

口に含みながら答える。

 

リュウ「これはな今までの中で一番甘いんだ。パッケージとか企業が変わっても俺の渇きを凌いでくれる。俺の学園生活にはデザートが無かったから。」

 

顔を下にするリュウの目には確かに渇きに満ちた狼のような目をしていた。

 

ヒナ(来る。)

 

さっき放った攻撃が来ると予想しそれに備えた脳内シュミレーションを終わらせ警戒して構えていると、

 

ドゴォン!

 

ヒナ(!?)

 

横から殴れるという想定外の攻撃にヒナは虚を突かれた。

 

そのままリュウはワンツースリーと軽いジャブで、しかし一撃でそこらの不良を沈められる程の攻撃力をもって殴り掛かるリュウ。

 

それを面倒くさいと考えながら流水の様な手捌きでいなし、その間にある僅かな隙を突くヒナ。驚く所はそれをデカい機関銃を持ちながら捌いている所だろう。それだけでかなりの技量を持っていると確信させる技。

 

ゲヘナでは銃撃戦が得意なだけじゃ最強は名乗れない。

 

両者共に格闘戦では互角。

 

強烈な右ストレートを左手でいなし右手に持った機関銃で胴体めがけて打つが最小限の動きで回避し、その回避と同時に左足による足払いを繰り出すがヒナが小さなジャンプで通り過ぎらせ、ジャンプの勢いに乗せて機関銃を振り落とす。

 

その力は屋上の床に蜘蛛の巣状の亀裂を作るが、そんな見え見えの攻撃を回避できないリュウではない。回避を兼ねた後退で距離を取りヒナが屋上に付いたときに戻した二丁状態のグラニテブラストをぶっ放す。

 

ヒナ「!」

 

とっさに回避するが少しかすり直撃すれば大きな隙を晒す攻撃に肝を冷やしつつ、ヒナの必殺技を放つ。

 

空崎ヒナは三つの必殺技:イシュ・ボシェテを持つ。

 

最大5人に自動で追尾する扇形で超広範囲を誇る『絶海』。

 

三つの必殺技の中で最大火力を誇り、最後の三射目でさらに火力が上がり数多くのボスを捻じ伏せてきた『開演』。

 

そしてヒナ自身が最も扱ってきた高威力で扇形広範囲攻撃。

 

ヒナ「『終幕』:イシュ・ボシュテ」

 

キュイン!ズドドドドドド!!

 

ヒナの神秘で強化された弾丸が電ノコの様な音を奏でながら紫色の軌跡を描いてリュウの元に殺到する。

 

これをダメージ覚悟で直進してヒナに突進し、渾身のパンチを放つ。

 

ヒナ(ウソでしょ。)

 

リュウはグラニテブラストを手に入れる前は近接戦を好んでいた。

 

リュウにとって喧嘩とは拳で語る事と考えている。

 

本人の性格とセンスもあるが、キヴォトスでは拳やナイフなどの近接格闘術が一般の生徒まであまり浸透していない。当然接近されれば為す術もなく倒されてしまう。

 

空崎ヒナはその例外である。

 

腹パンをもろに食らったヒナは苦痛に顔を歪め続いて顔面パンチを咄嗟に避け、同じ目に合わせてやると左手に神秘を込め殴る。

 

ドゴォン!とリュウもまた左手によるストレートがヒナの拳と激突し人同士が鳴らしたとは思えない音を響かせる。

 

リュウ「何が不満かって?決まってんだろ!」

 

そう言ってヒナをビルから蹴り飛ばす。

 

リュウ「満ちてねぇから、不満なんだろ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ヒナはリュウの思いなんてぶっちゃけどうでも良い。彼女はゲヘナの治安を乱す存在。

 

ヒナ「容赦しないわ。」

 

あの攻防で理解した。並大抵では彼女を無力化出来ない。彼女を無力化するには力を削ぐ必要がある。

 

ヒナが相手を倒す作戦を考えているとリュウがビルから飛び出し落下しながらビームをぶっ放す。

 

ヒナ(あれはエネルギーだけじゃない。何かは分からないけどエネルギー単体だけじゃ説明が付かないほどの火力。)

 

思考しながらも走って回避をする。

 

ヒナ「デザートね、なら味わらせてあげるわ。」

 

ヒナ(小手先だと潰されて終わり。ならやる事は一つ。)

 

リュウ「いいねいいね、真っ向勝負!お前!最高じゃねぇか!」

 

道路の両端を走りながら両者はそれぞれの武器を放つ。

 

ヒナの紫色の弾丸が、リュウのビームが飛び交う中突如大音量で放送アナウンスが流れる。

 

『ええ、次のコーナーに参りましょう!続いてのコーナーは⋯⋯⋯⋯⋯。』

 

ん?何だこれは?

 

リュウ「おいおいゲヘナらしい事が起こってるなぁ。」

 

起こってたまるか。

 

ヒナのイライラゲージが溜まる中突如リュウは停止し路地裏へと入り込んだ。

 

ヒナ「待ちなさい。」

 

『今回のゲストである万魔殿の生徒会長羽沼マコトさん!これについてどう思いますか!』

 

『キキキ!あ奴らは実に面白い。この万魔⋯⋯⋯⋯⋯。』

 

うるさい。耳が痛い。ここまで聞こえるという事はゲヘナ全域?もしそうならゲヘナ全域にこんな大音量を流すとか頭おかしい。⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯いや、マコトは元々おかしいか。

 

狭い路地裏を抜け、破壊した後がある家を通り過ぎるとそこには地下鉄の駅近くの線路にいるリュウの姿が。

 

リュウが二丁のエネルギーキャノンを放ちながら駅の方向へ後退していく。

 

ヒナ「成る程、コースを絞るつもりね。⋯⋯⋯⋯でもそれはこちらも同じ。」

 

埒が明かないと『開演』を切る。

 

『一射目』

 

キュイイイィィィン!

 

その射撃は紫色の弾丸が高密度で超連射によって放たれた結果、まるでビームを放っていると見違う程の攻撃。

 

リュウ「な!」

 

それは電車の高さに合わせた通路の半分を占めるほどの神秘を込めた銃弾達はリュウに直撃する。

 

ヒナの『開演』はビームと見違う程の高密度の超連射である放射と一つに込めて貫通力を高める圧縮がある。

 

 

 

404年前のゲヘナ最強と現ゲヘナ最強は奇しくも似ていた。

 

 

 

リュウ「痛って〜な〜。」

 

直撃したことで駅を通り過ぎる程ぶっ飛んだリュウは通った軌跡が一目で分かる程の破壊根を見てますます笑みを深める。

 

通った軌跡はビームでも通り過ぎた様な赤々とした熱を帯びた箇所は数え切れず、ヒナの神秘の残滓がかすかに残っている。

 

『それにしても大変でしょう?万魔殿の仕事は膨大だと思うのですが?』

 

『キキキ、それは問題無い。うちには優秀な雑務係がいるのでな!』

 

そんな優秀な雑務係でもありこの惨状を起こした本人は見当たらない。

 

リュウ「ん?どこd⋯⋯⋯⋯⋯⋯。」

 

『二射目』

 

ドゴォン!とすぐ近くの家が死角となり紫色のビーム状となった銃弾達(以後ビームと呼称)が家を容易に貫通しそのままリュウにまた直撃する

 

 

 

リュウ「何度も当たらねぇぜ!」

 

 

 

事は無く。

 

華麗に回避し改めて分析する。

 

リュウ(ビーム⋯⋯⋯⋯じゃねぇな。ビームと思ってしまう程の超密度の連射!それがこの攻撃の正体か。)

 

一度見切った攻撃はそうそう当たらない。

 

何故初見殺しが初見殺し足り得るのか?

 

それはゲームと同じ。

 

初見だから食らう、初見だから死ぬ。

 

初見でなければ殺される事なんて無いのだ。

 

リュウ「見切ったぜ!お前の攻g⋯⋯⋯⋯⋯⋯。」

 

慢心したリュウに背後から近づき凄まじい蹴りを放つ。

 

リュウ「うぉ!」

 

ヒナ「隙ありよ。」

 

蹴られた衝撃力で線路から道路まで直線コース送りにされたリュウはすぐさま体勢を整え高速でグラニテブラストを変形させる。

 

ヒナが道路に降り立つと同時に、

 

ヒナ「これで終わり。」

 

『三射目』

 

両翼で地面を固定し射撃状態で放たれたそれは、一射目二射目とは比較にならない程の火力を持ったビーム。

 

これにより数多のボスを葬ってきたその攻撃に対してリュウは笑う。

 

リュウ「Sweet!お前が俺の、デザートか!?」

 

それならとリュウは圧縮状態で最大点火(イグニッションブラスト)を放つ。

 

ヒナのビームとリュウの必殺技がぶつかり、

 

 

 

僅かな拮抗を生むがヒナの開演が押し負け、今度はヒナが直撃した。

 

ヒナ(まさか最大火力の三射目が押し負けるなんて。)

 

石流リュウの神秘の出力は空崎ヒナを、そして今のキヴォトスの生徒を遥かに上回る。

 

『つまり空崎ヒナは大した事ないと?』

 

『キキキ!その通りだ!今日ゲヘナで連続爆破事件が起こっているのも、イブキのプリンがいつの間にか無くなっていたのも!全部空崎ヒナが無能だからだ!』

 

黙れ。

 

いい加減お前の声に聞き飽きた。

 

ぶっ飛びいくつもの家を貫きながら暴言を吐く。

 

やがて勢いは落ち崩れかけた家でホコリを払う。

 

『さてこの放送も終盤!最後の締めとして曲を流したいと思います!ゲストのマコトさん!選んだ曲とは一体!?』

 

『それはなK◯ng GnuのAI◯Oだ!』

 

突撃して殴り掛かるリュウの攻撃をカウンターでお返しし右頬にダイレクトアタックする。

 

『何故それを?』

 

僅かに硬直したリュウの腹に『終幕』を放ち相手に大ダメージを与える。

 

銃弾の雨を食らいながらグラニテブラストを構え、雨を打ち消す程のエネルギーを放ちヒナにも大ダメージを与えようとするがそれを咄嗟に回避し銃を向ける。

 

『それはな⋯⋯⋯⋯⋯⋯先生と一緒に見たアニメで流れた時に気に入ったからだ!』

 

⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯⋯は?

 

リュウの続く砲撃がもろに食らい続ける。

 

その勢いは止まらず一つ二つと周囲の家やビルを破壊しながら後ろへと進み続け、最後にオマケとばかりに最大点火(イグニッションブラスト)を放つ。

 

リュウ「おっと過加熱状態(オーバーヒート)しちまったな。冷却剤入れなきゃ。」

 

 

 




作中で神秘を込めて⋯⋯⋯とまるで神秘を意図的に扱っているように見えますが彼女達は力を込めて⋯⋯⋯みたいな感覚で無自覚に使っています。

良ければ高評価と感想お願いします。

追記:世の中にはSweetをSuiteと書く人物がいるらしい。つまり私です。魚の名前はイノシシさん、誤字脱字報告ありがとうございます!
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