異界と現世が交差する街、ミスコル。
それはかつての古代文明で最も栄えた国の、首都の名前だった。
数千、或いは数億、過去改編など歴史的な改竄が頻繁に起きる世界において、取り敢えず昔にあったことは確かなその首都は、色々な世界に同じ名前の都市があった事から何らかの特異点とも言われており、現在の都市の名前として定着しているらしい。
不在着信みたいな、ふざけた名前だなとか思ったけど、オレの誕生と同時に発生した街とかなら、そんな事もあり得そう。
それってラッセル?因果系の懐疑主義者みたいな思考してんねとは、俺の使い魔であり式神であるギャルからの談である。
とはいえ、ミスコルと呼ばれる街がここ。
そして、ギャル曰く、世界は一度滅んだらしい。
何をきっかけにミスコルという街を中心に世界が繋がったのか、原因は誰もが分からないブラックボックス。
この世界において、最も神秘的な一つらしい。
最もって言うんだから1つだろうがとか思うが、知られた瞬間に、理解された瞬間に、それは神秘的な格という物が落ちるそうだ。
つまり、不確定である場合だけ他の最も神秘的な物として扱われる、神秘とは秘匿され誰も知らぬが故に神秘的なのだから……らしい。
「俺の記憶を見た?知ったっていうなら、俺が訳分からんのも分かんでしょ。あと、近い」
「言葉は正しく使わなきゃご主人、見てきた、知っているが正しいんだよなぁ。うりうり」
「まだ説明途中でしょうが、歩き辛いでしょうが、あと近い!」
「この世界に存在する汎ゆる技術を用いても特定は出来てないまで話したっけ」
ギャルが、俺の身体に纏わりついてくる。
後ろからハグしてくる感じだ、柔らかくてドキドキする。
耳元で柔らかくてドキドキしたんだってナチュラルに考えてること言わないでほしい。
そんな俺の内心を弄びながらギャルが、この世界について説明を再開する。
「世界は一つの街を中心に残して、それ以外は滅んで再構成されたの」
ミスコルという街は、どの世界にもあったらしい。
そして、今は確立されているけど、当時は色んな世界のミスコルという街で特定手順を踏んだら異世界のミスコルに行けるみたいな都市伝説が流行っていて、ある日突然繫がったから旧世界と呼ばれる方のミスコルに来れるようになったそうだ。
異界側のミスコルで学生が都市伝説を試してみたら、旧世界側のミスコルに繋がって、旧世界側はビックリ大混乱。
だって、エイリアンみたいな見た目の奴らがエレベーターから現れて旧世界の人類はパニック、エレベーターから現れたエイリアンは実際に行けちゃって、二足歩行の猿に騒がれてパニックみたいな状況だったらしい。
最初期はそんな感じで、化け物や言葉が通じないだけの人型、高度な機械生命体や実体のない霊的存在、面白半分でやってきた奴等が旧世界の人類に捕まってアレコレあったらしい。
流れが変わったのは、帰り方を偶然見つけた奴らだった。
偶然返ってこれた奴らは、当然騒ぎ立てる訳だ。
誰も信じてなくても、それが一人二人と増えていけば試す奴等も増えてきて、サンプルデータも増えていく。
最終的に何処かの世界の政府が検証するのは必然だった。
「ははーん、分かったぞ。つまり異世界侵略だ、映画やアニメで見たことある」
「まぁ、そうなんだけど、問題はつながってる世界が1つじゃなかったってこと」
「あぁ……関係ないところ巻き込んだ感じかぁ」
「グランザ、グラジャ、グルアザ、色んな発音があるけど、そんな名前の人が死んで」
ギャルは目の前で手をグーパーして、ボンっと言った。
えぇ……爆弾か何かですか?
「その世界の禁止されてるレベルの魔法を仇討ちにやって来た親族が発動しちゃった」
「えぇ、首都ってことは東京で核爆弾ってことやろ」
「まぁ。戦争中の軍隊が防いだからミスコルは無事だけど旧世界の一部はヤバかったみたいね」
具体的に、ミスコルの隣町とかは余波で更地になったらしい。
敵対中の異世界人は新しい敵の軍隊だと思って、異世界人同士で市街地戦を展開。
旧世界の軍隊は異世界の文明同士の戦争に巻き込まれて撤退したらしい。
更に次から次へと新しい世界の軍隊が現れては、先にいる別世界の軍隊と戦闘を開始。
旧世界を戦場とした世界同士の戦争が始まったのである。
しかも、自分の世界じゃないことを良いことに核兵器レベルの魔法やら兵器やら呪いやら超能力やら、なんか色んな技術の破壊兵器が使われたそうだ。
戦争が始まったら拠点を作るので、ミスコルと関係ない旧世界の国が滅んだり、乗っ取られたり、植民地にされるのは、想像に難くない。
そして、いつしか旧世界の至る所に別世界の拠点が国のように混在するようになり、そして自分達の世界と繋がっているミスコルを占領しようと、ミスコルという街の内側と外側から、それぞれの国の軍隊が戦闘を繰り広げる泥沼の戦場が出来上がったそうだ。
「で、なんやかんあって色んな世界の技術を取り込んだ死霊術師がやらかして戦争は終わったの」
「死霊術師って時点でロクでもなさそう」
「旧世界で死んだ奴らを材料に怨霊作ったら暴走して世界滅んじゃったの」
「うわぁ、そりゃ死にまくってるから材料はあるとはいえロクでも無かった」
誕生と同時に旧世界で生きてる奴ら全員呪殺したらしい。
一瞬で世界から人が消えたそうだ。
無差別に、生きてるだけで、異世界人は皆殺し。
調査をしに来た異世界人も来た瞬間、呪い殺される。
どんなに耐性を付けても個人の力と旧世界全ての呪いでは、防げなかった。
ただ、何人か呪われない体質の者が発見されて、規則性が判明。
どうやら材料が旧世界の人類だったからか、旧世界の血を取り込んでいたら対象から外れていたらしい。
ということで、すぐさま各世界は魂を偽装したり、肉体を移植したり、普通に子孫を送ったり、色々やって、またミスコルの外には各世界の移民による国が出来てるらしい。
「ということで、冷戦時代に突入。コールドウォーって奴ですよ。裏では色々やってるけど、バレたら世界中の異界移民国家から総叩き、だから代理戦争として、世界の特異点で玄関口だったミスコルに学園を作ったって訳」
「ここに来て、急に学園物の導入来た」
「卒業生には特権が与えられるよ。あらゆる国へのパスポート、融資、政府組織への所属権、生涯年金、個人的な治外法権」
「はえー、なるほどね。だから、学園に所属すると……あれ、さっきの代理戦争ってのは?」
「国際条約で政府関係の仕事は学園の卒業生だけしか出来ないの……まぁ、抜け道はあるけどね」
そういう世界観なのか。
学生は卒業で特権を、周りの国は卒業生の囲い込みで色々やるのか。
「それって、たくさん自分の国のやつらが入れば有利なんじゃないの?」
「入れたら苦労しないって、入試はそもそも難問だし、条約で国による妨害は禁止されてるけど」
ギャルは、俺からそっと離れて何処かを見る。
カラーが付いたのは俺達だけしか居ない、モノクロの世界。
そこに、モノクロの背景の中で目立つ色の人影があった。
ギャルの視線の先、そこには青いツナギに青いマスク、背中には剣らしきものを二本、交差するように背負っている人影があった。
「受験生による妨害はあるんだよね。呪術を齧ってる不審者さん、何か用?」
「用など1つ、街中に結界が見えたからな。ドーモ、お嬢さん。ニンジャ、オボロです!」
「挨拶だと!?くっ、ドーモ、オボロさん。受験生のイヨです」
ツナギの男、オボロとやらが両手を合わせてお辞儀する、ギャルの方も同じように手を合わせてお辞儀する。
バ、バカなのか、何でそんな隙だらけな事をしてるんだ!?
「ッ、ご主人!」
「ククク、アイサツも知らぬ愚か者め、カナリシツレイ!」
瞬間、俺の心臓が大きく、そして激しく鼓動する。
まるで内側から殴られるかのような、強烈な胸の痛み。
「グワッー!?アイエエエ、ニンジャ、ニンジャナンデェェェ!」
「いけない!ニンジャリアリティショックだ!クソ、ご主人の常識のなさを忘れてた」
俺の口からは自然と謎のセリフが流れ、そして激痛が全身を駆け巡った。
ニンジャリアリティショック
妖怪、神などの神聖存在、それらはしばしば幻想上の存在だった。
ニンジャ、それは闇に生き、存在を忍び、虚構とされる存在。
もしそれが現実に現れるとしたら、常人は精神的錯乱に陥る。
現実に存在しないそれらと遭うということは、保障された価値や想像力の崩壊ということだからだ。