SF世界の天使っぽい種族に転生したけどワープ事故で戦国時代の日本に来ちゃいました。 魔法と知識で日本を発展させます。   作:Lavian

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第十九話 織田信勝との会談

 信長から呼び出しがあったのは、地図の整理をしていた午後のことだった。

 

 案内されたのは信長の執務室ではなく、客間だった。部屋に入ると、信長が珍しく難しい顔をして座っていた。

 

「セララ、頼みがある」

 

「何かな」

 

「弟の信勝がお前に会いたいと言っている」

 

 セララは少し驚いた。信勝という名前は知っている。前世で遊んでいたFGOというゲームで実装されたキャラなので覚えている。信長の弟であり、かつて家督を巡って争い、一度は許されたが再び動いて……最終的に信長に殺された人物だ。

 

 1558年(永禄元年)、史実では今年がその年にあたる。

 

「会うことは構わないよ。でも信長さんはどう思っているの?」

 

「信勝は柴田勝家や林秀貞ら重臣を後ろ盾にして、以前から儂に対抗しようとしてきた。一度許したが、また動き始めているという話もある」

 

 信長は腕を組んだ。

 

「信勝がお前に会いたいと言い出したのは、おそらく利用しようと考えているからだろう。会わせれば何かを言ってくるはずだ」

 

「それでも会わせてくれるの?」

 

「お前が嫌でなければな。お前は儂の友人だ。無理強いはしない。ただ……お前が信勝と話せば、何かが変わるかもしれないとも思っている」

 

 セララは少し考えた。

 

 信勝に会う。それはつまり、史実では起きなかった出来事が起きるということだ。放置すれば信勝は死ぬ。しかしセララが介入すれば、その結末が変わるかもしれない。

 

 変えていいのかどうか、という問いは以前から頭の片隅にあった。しかし信長と友人になってから、信長が生き残って天下を統一する未来を見たいと思った。それならば、信長の弟が生き残る未来もあった方がいいはずだ。

 

「会うよ」

 

 とセララは言った。

 

 

 

 

 

 会談の場所は織田信勝の居城、末森城の中の小さな座敷だった。信長は同席せずセララ一人だ。

 

 部屋に入ると、二人の男がすでに座っていた。

 

 一人は信勝だった。年は信長より少し下だろう。顔立ちは信長と似た部分があるが、目の鋭さが違う。どこか焦りのような、不安定な光が目の奥に宿っていた。

 

 もう一人は柴田勝家だった。がっしりとした体格の武将で、腕を組んで座っている。信勝の隣で岩のように動かず、しかしセララが入ってきた瞬間に目が動いた。翼とヘイローを確認するような視線だった。

 

 セララが席に着くと、信勝が口を開いた。

 

「水神の噂は良く知っている。空を飛び、怪我を癒し、多彩な術を使うと。こうして会ってみれば翼が本物なのは見て分かる」

 

「はじめまして、信勝さん。セララといいます」

 

「……気さくな神様だ」

 

 と信勝は言った。少し拍子抜けしたような顔をした。

 

「貴方が降臨してから兄上の領地は急速に発展していると聞く。千歯こきとやらが各村に届いたとか、農業のやり方が変わったとか」

 

「天の国の知識を少しずつ伝えているところだよ」

 

「なるほど」

 

 と信勝は言ってから、ひと呼吸置いた。

 

「私は織田家の家督争いは、水神を手に入れた者が勝者になると考えている」

 

 信勝は少し躊躇った後に言葉を続ける。

 

「これは……あくまで仮の、もしもの質問だ。水神、貴方はどのような条件を出せば私の配下になってくれるだろうか」

 

 セララは信勝の顔を見た。

 

 真剣だった。この人は本当に、セララを味方につければ家督を取れると信じている。確かにもしもセララが信勝についていたなら、状況はまるで違ったかもしれない。

 

 だからこそ、はっきり答えなければならない。

 

「信勝さん。ボクは信長さんの友人だよ。友人を裏切る条件は受け入れられない」

 

 信勝の顔が、一瞬だけ歪んだ。

 

「……条件次第では、という可能性も」

 

「ないよ」

 

 きっぱりと言った。迷いはなかった。

 

「これはボクの譲れないところだからね。それにボクと信長さんは友人の関係であって、主君も配下も無いんだ」

 

 信勝はしばらくセララを見つめた後、ゆっくりと息を吐いた。

 

 肩の力が少しだけ抜けるのが見えた。

 

「……そうか。ではもう一つだけ聞こう。兄上は織田の家督に相応しい器か?」

 

「うん。信長さんは織田の家督に相応しい器だよ。でも、それ以上だね。信長さんなら天下だって取れる。ボクが保証する」

 

 セララは断言した。その言葉には一切の迷いが無かった。

 

「兄上をずいぶんと評価しているのだな。織田家の家督どころか、天下を取ることまで保証するとは……」

 

「信長さんは新しい事をどんどん取り入れるし、効率や合理的である事を重視する。配下にも恵まれているし、実力も天運も持っているよ」

 

「……なるほど」

 

 信勝は呟いた。声に、諦めと何か別のものが混じっていた。

 

「これで諦めがついた。水神が兄上と共に行くというなら、どうあがいても私の勝ち目はあるまい。ならば……大人しく兄上の配下として行動しよう。」

 

 信勝はほっとしたような、それでいてまだどこか複雑そうな顔をしていた。

 

「私はずっと、兄上に対抗しなければならないという想いがあった。配下のためにも、民のためにも……長く背負ってきた重荷をようやく降ろせた気分だ。水神が共にいるのであれば、きっと兄上の方が上手くやるだろう」

 

 セララは少し間を置いてから、口を開いた。

 

「勧誘を諦めてくれたなら良かったよ。それと信勝さん、一つだけ言ってもいい?」

 

「……何だ」

 

「これは助言なんだけど、配下は大切にね。決して邪魔に思ったりしちゃ駄目だよ」

 

 信勝の目が、わずかに揺れた。

 

「邪魔者扱いすると、いつか見放されちゃうから」

 

「…………」

 

 信勝はじっと黙っている。その顔には若干の後ろめたさが浮かんでいた。セララの言葉がどこかに刺さったのが表情から分かった。

 

 横に座っていた勝家がゆっくりと頭を下げた。勝家は何も言わず黙っていたが、その礼が信勝への答えでもあるように見えた。

 

 信勝は勝家を横目で見ながら、ようやく口を開いた。

 

「……神様は何でもお見通しと言うわけか」

 

 一度だけ、小さく息を吐いた。

 

「わかった。配下の忠言はしっかりと聞くようにしよう」

 

 その言葉は自分に言い聞かせているようでもあった。

 

 こうして信勝は謀反を諦め、史実と異なり生存して信長の配下となった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 会談の後、清州城に戻ったセララは信長に報告を行っていた。

 

「どうだった」

 

 と信長が聞いた。

 

「信勝さん、ちゃんと話を聞いてくれたよ」

 

「勧誘されたか」

 

「うん。でも勧誘はきちんと断ったよ。その後もお話を続けたら、信長さんの配下になるって言ってくれたよ」

 

 信長はそれを聞き、安堵したように息を吐いた。

 

「儂は……信勝が謀反すると思っていた。そして、謀反するならば殺すしかないと。

 お前が信勝に会ってくれたおかげで殺さずにすんだ。礼を言う」

 

「ボクは兄弟が殺しあうのを見たくなかったんだ。それだけだよ」

 

「甘いな……だが、お前はそれで良い」

 

 信長はそう言い、セララの頭の上に手を置いて乱暴に撫で繰り回した。

 

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