SF世界の天使っぽい種族に転生したけどワープ事故で戦国時代の日本に来ちゃいました。 魔法と知識で日本を発展させます。   作:Lavian

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第二十話 フリントロック銃と硝石

 清州城に移ってから季節が一巡し、1559年(永禄2年)になっていた。

 

 信勝は信長の配下となり、信勝派だった柴田勝家と林秀貞らと共に活躍していた。これにより、信長は尾張の内乱を史実よりもスムーズに処理していった。

 

 セララは授業を続け、各地の村を回り、鬼滅の刃の紙芝居や小説を書き溜めて過ごしていた。

 

 尾張の地図もようやく完成した。

 

 セララが上空から記録した地形データを元に地図職人が描き直した地図は、以前のものとは別物だった。川の流れの正確な位置、山の高さと傾斜の向き、村と村の距離、街道の正確な経路。信長はその地図を受け取ったとき、上から下までじっくりと眺めた。

 

「これほど詳細な地図は見たことがない。セララのおかげだな」

 

 と信長は言った。

 

「上から見れば分かることも多いよ。翼があって良かったと思う場面の一つだね」

 

 地図は軍事と政治の両方で使われるようになった。物資の輸送ルートの計画が立てやすくなり、各地への連絡の速度も上がった。

 

 農業改革の結果も出始めていた。

 

 1558年に導入した塩水選種と正条植えを試した村から、収穫量の報告が上がってきた。丹羽がそれをまとめてセララに見せた。

 

「塩水選種と正条植えを両方導入した村では、米の収穫量が二割増しとなっております」

 

「二割も増えたんだ。思ったより早く結果が出たね」

 

「千歯こきの効果もございます。脱穀の時間が大幅に短縮されたことで、その分の人手を別の作業に回せるようになったと各村から報告が来ております」

 

 目に見える恩恵が広まるにつれて、尾張各地での水神様への信仰が深まっていた。水神様の教えを守ったら収穫が増えた。水神様の道具を使ったら仕事が楽になった。そういう話が村から村へ伝わり、水神様を祀る小さな祠が各地に作られ始めていた。

 

 輪作農法はまだ4年周期の途中だったが、導入した村の農民たちは来年以降の収穫に期待を持ち始めていた。

 

 農業の成果は国の財政にも直接影響した。各地の収穫量が増えれば税収が増え、清州城の予算に余裕が生まれる。信長はその増えた予算を軍備増強に充てるつもりだと、ある朝の話し合いで言った。

 

「尾張の内を整えるには、それ相応の力が必要だ。財があれば兵も揃えられる」

 

 セララは頷いた。信長が軍備に力を入れることは、この時代においては当然のことだと分かっていた。信勝と和解した事で尾張の内紛が収まりつつある今、次の段階を見据えているのだろう。

 

 

 

 

 

「セララよ。お前の知識で武具を作ったり、改良することはできないか?」

 

 セララは待ってましたとばかりに頷いた。

 

 実は銃の改良方法については既にホワイトスワローのデータベースで検索済みであり、信長と丹羽に説明するための資料を作った上でペンダント型携帯端末にデータ移行済みだ。

 

 偶然にもこの作業を行ったのは昨日の事であり、ちょうど信長に提案しようとしていた所だったので渡りに船であった。

 

「火縄銃の改良だね。フリントロックへの改造案があるよ」

 

「フリントロックとは何だ」

 

 セララはペンダント端末を念じて操作して、ホログラフィックの映像を展開した。火縄銃とフリントロック銃の構造が並んで映し出された。

 

「今の火縄銃は、火縄という縄に火をつけておいて、引き金を引くと火縄が火皿に触れて点火する仕組みだよね」

 

「その通りだ」

 

「フリントロックはそれを火打石に変える仕組みなんだ。引き金を引くと火打石が金属の板を叩いて火花を発生させて、その火花で点火する」

 

 映像が切り替わり、フリントロックの内部構造が示された。火打石を固定するコック、火花を受ける火皿、それを覆う火蓋の動きが順番に示されていく。

 

「火縄がいらないから、火縄に火をつけておく必要がない。雨が降っても使いやすいし、点火の信頼性も上がる。それに構えてから発射までの動作が減るから、連射速度も上がるんだよ」

 

 信長が映像を見ながら目を細めた。

 

「点火信頼性の向上、雨天使用、連射速度向上か」

 

「そういうこと。今の火縄銃の弱点を一気に三つ解決できる改良だよ」

 

「素晴らしいな。セララよ、それはすぐに開発できるものなのか?」

 

 セララは少し考えてから、正直に答えた。

 

「銃の仕組みを変えるから、鍛冶屋さんがどれだけ対応できるか分からないよ。薄い鋼の板が必要だし、精密な角度の加工が必要なんだ。種子島や堺の鉄砲鍛冶さんなら何とかなるかもしれないけど……尾張の鍛冶職人にやらせたいんだよね?」

 

「うむ。可能であれば尾張で鉄砲を生産可能にしたい」

 

「それだとすぐには無理かも。開発に数年かかりそう」

 

 信長は少し考えたがすぐに結論を出した。

 

「時間がかかるのは仕方あるまい。丹羽を使って鍛冶職人を手配させる。フリントロック銃を開発せよ。必要な物資や職人の手配は丹羽に相談するが良い」

 

「うん!すっごい銃を開発しちゃうからね」

 

 セララは張り切って答えた。

 

 

 

 

「頼もしい限りですな。ところでセララ様、銃弾や火薬をセララ様の知識で改良する事はできますか?」

 

 丹羽が問いかける。先ほどまでの話は銃本体の話であり、銃弾や火薬の話が無かったため確認したのだろう。

 

「今の銃ってどんな火薬を使っているの?」

 

「硝石、木炭、硫黄を使って火薬を作っております。木炭は尾張でいくらでも作れますし、硫黄も日の本で産出されます。しかし硝石だけは大半を南蛮貿易に頼っているのが苦労する点です」

 

 丹羽が火薬の材料を説明する。これを聞いてセララはピンと来るものがあった。硝石を国内で作る方法がある。硝石床だ。

 

「硝石の生産なら何とかなるかも。硝石は土から作ることができるんだよ」

 

「なに?それは本当か?南蛮貿易に頼らずとも硝石が生産可能になるのは大きいぞ」

 

 信長が前のめりになって聞いてくる。

 

「そう。硝石床っていう方法があるんだ。人や家畜の糞、藁、木灰、土を混ぜて積み上げて、発酵させると土の中に硝石が生まれるんだよ。それを水で溶かして煮詰めると硝石が取り出せる」

 

「材料の確保はどれも難しくないな。作るのにどのくらいの時間がかかる」

 

「最初の収穫まで数年かかるよ。でも一度作り始めれば継続的に生産できる。南蛮からの輸入が途絶えても困らなくなるんだ」

 

「数年か。であれば早く始めた方がいいな。セララよ、フリントロック銃の開発と共に硝石の生産を進めてくれ」

 

「了解だよ。ボクにお任せ!」

 

セララは力こぶを作るポーズでアピールする。

 

 

 

 

 

 その日の午後、セララは丹羽と話し合いを始めた。

 

「尾張の鍛冶職人の中で、一番技術の高い人はどこにいるかな?」

 

「清州城下にも腕の良い鍛冶がおりますが、より精密な仕事となると……津島や熱田の職人が良いかと思います」

 

「その人たちに声をかけてもらえる?それと、良質な鋼の仕入れ先も調べておいてほしい」

 

「承知しました。職人の手配を早速始めます。他に必要なものはありますか」

 

「まず試作から始めないと何が必要かも分からないから、腕の良い鍛冶職人を一人二人、最初の打ち合わせに呼んでほしい。ホロ画像で構造を見せながら説明するから」

 

「では近日中に打ち合わせを手配いたします」

 

 丹羽が下がった後、セララは端末を開いてフリントロックの設計データを再度確認した。

 

 構造自体は理解している。しかし実際に作るとなると、この時代の素材と加工技術の限界がある。火打石を固定するコックの角度、バネの強さ、火皿の形状。どこが最初の難関になるかを考えながら、メモを取っていく。

 

 フリントロックが一段落したら次は硝石の生産についてだ。どうやって生産の仕組みを作れば効率が良いか、セララは頭を悩ませるのだった。

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