「みんなが部屋に入って来た時からいたよ…」
「だいぶ前じゃん!?…もしかしてアリスちゃんとニーナが怖かったから?」
「なぜロッカーから人が…?」
緊張しているのか小さく震えた声でミドリとモモイに話しかけるユズを見ながら私とアリスはいまだ予想外の所から人が急に現れたことに唖然としていた。
あの中に入ってたの…?見た感じ他にも色々入ってるし、よくあんな狭い空間に入るな…
「あ、そういえばアリスとニーナは初めてだよね。この人が私たちゲーム開発部の部長、ユズだよ!」
「…あっ…えっと…あの…その…」
「?」
ユズはモモイの軽い紹介の受けると、私と私の膝の上で寝そべるアリスに近づいて来たと思うと絞り出すような声で話しかけてきた。
「あ……」
「あ…?」
「…ありがとう」
「もう一度やりたいって、面白いって言ってくれてありがとう…泣いてくれて、ありがとう」
「……」
「面白いとか、もう一度って言葉…ずっと聞いてみたかったの」
ユズはだんだんと感動からか涙ぐんだ声でしかし鮮明に聞こえる声でそう言うと、一瞬はっとして無意識に詰めていた距離を後退りし離しすと一度深呼吸をした。
「…改めまして、ゲーム開発部の部長、ユズです。二人ともこの部に来てくれてありがとう、これからよろしくね」
「こちらこそよろしくお願いします」
「…理解、パンパカパーン!ユズが仲間になりました!」
「ふふふ…その様子だと本当に私たちのゲームを楽しんでくれたみたいだね…仲間が増えていくのもRPGの醍醐味の一つだもね」
「はい、新しい仲間が増えてゆくたび“嬉しい“と呼ばれる感情が湧き出てきます」
「あ、もしRPGを面白いなって思ってくれるなら…私が他にもおすすめのゲームを教えてあげる」
「…期待」
ユズが微笑みながらアリスにそう言うとアリスも起き上がりユズの目を言葉にした通り期待の眼差しで見ているのが感じられた。
「ちょっと待ったぁ!アリスに先におすすめするのは私!まずは『英雄神話』と『ファイナル・ファンタジア』と…」
「何言ってるの、二人とも初心者なんだよ!?ニーナに至ってはまだやってないし…ここは『ゼルナの伝説』から始めるのが一番だって!」
「これだけは譲れない、次にやるべきなのは『ロマンシング物語』だよ」
「……」
「ふふ…今夜は長くなりそうですね、アリス」
「肯定……再びゲームを始めます」
三人が私たちが次に何をやるべきなのかを決める中、私はそっとアリスに笑いかけた。
さてと…前から夜型ではあったけど…どれだけ持つかな?私。
——同時刻、ブラックマーケットにて——
「はぁ…今日のシフトが終わるまであと何時間だ?」
「知らん。それぐらい自分で確認したらどう?スマホ出したらすぐに分かるじゃん」
「それがめんどくさいから聞いてるんだが…」
私は今日も今日とてパートナーとしばらく前に学校を退学してから就いているマーケットガードの仕事をこなしていた。
「ま、どうせ時間になれば分かるでしょ」
「随分と楽観的だな」
仕事といっても治安が良いとは言えないが、比較的銃撃戦の少ないこの場所の巡回パトロールや店同士の揉め事を止める程度で意外と少なく暇な時が多く大半は日替わりで2人1組で組まされる名前の知らないパートナーとの雑談で終わることが多い。
「それはそうでしょ、だってどうせ大した仕事じゃ…ん?」
「どうした?」
何か愚痴を吐こうとして開いたパートナーの口が閉じられ、どこか警戒しているような雰囲気を漂わせていることを感じ彼女の視線の先を見てみると…
「………」
「…すごいな、あれ」
そこには両手に錆びて所々部品がなくなっていそうな銃、背中に馬鹿でかい銃のような形をした鉄の塊を背負ってさらには重そうな鎧まで着てこっちの方向に歩いてくる人物がいた。
「……」
「……何か用か?」
私たちの前まで歩いてきたそいつは、私たちを顔を見るような素振りを見せた後、背負っていた銃を地面にゆっくりと大切そうに下ろし、立ち止まるのと同時に互いの間に数秒の沈黙が流れた。
思ったより身長が高くないその体を見ると、喧嘩をしてからここへ来たのか腕や膝の所々に切り傷やあざがあり、手入れをしていないのかボサボサになり目元が見えないほど伸びた藍色の髪が印象的だった。
どこか威圧感を感じる視線を感じるその重い沈黙に耐えられなかった私は相手を威嚇するように自分の出せる一番低い声で一言言い放った。
「…最近ここにミレニアム生は来ましたか?」
「え?」
予想外の質問と想像していた数倍声が高く、丁寧な物言いに私は思わず呆気に取られてしまった。
「それを知ってどうするつもり?」
「あなた達にそれを言う義理はありません。ですが、これから使えるかもしれない大切な情報になるかもなので知っておきたいだけです」
「……っ」
「さあ、教えてください」
そう冷たく言い放つと同時に前髪に隠れた薄緑色の目を光らせ、ジリジリと一歩また一歩と近づいてくるその様子は何かに対する執着が感じとれた。
「…来ていない。少なくともここ辺りでは最近ミレニアム生は見てない」
「…そうですか」
あまりの圧に圧倒されるが、知っている事を絞り出すように声にすると、欲しかった答えではなかったのか相手も熱が冷めたのか数歩下がり、残念そうな声で応えた。
「…教えてくださりありがとうございました。では、これ以上お二人の邪魔をしても悪いので」
そう言い軽く一礼すると、先ほど地面においた銃を再び背負い重そうな足取りでそいつは行き交う人々の間の間に消えていった。
「……何だったんだろう?」
「私が知るわけないだろ」
心臓の鼓動が聞こえる中遠ざかって行くその背中はどこか小さく、悲しそうに見えた。
「すべては私がいるから、私がいるからこそ起きてしまう…」
そんな声が小さく、しかし鮮明に彼女が消える前に聞こえた気がする。
それとも私の気のせいだろうか?
最近今後の構成を変えようか迷ってるんですよね…本気でどうしよう…
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