辺境の惑星でリアル弾幕ごっこ 作:わさびの食べ方にうるさい人
拠点。
夜。
外では乾いた風が吹いている。
岩肌を撫でるような低い音。
薄暗い空。
遠くで自動タレットの駆動音。
生存者たちの生活圏は、相変わらず無機質で、冷たい。
だが――
研究室だけは違った。
研究室。
中央作業台。
無数の工具。
散乱するケーブル。
分解された精密機器。
冷却装置。
演算モジュール。
その中心。
慎重に固定されているもの。
AI人格コア。
淡く青白い光。
まるで呼吸するように、ゆっくり脈動している。
魔理沙、静かに息を吐く。
ここまで長かった。
部品不足。
電力不足。
襲撃。
設備故障。
何度も研究は止まった。
だがようやく。
ようやくここまで来た。
「……壊すなよ」
誰に言うでもなく呟く。
細い接続端子。
慎重にコネクタへ差し込む。
一つ。
また一つ。
……ピッ
……ウィン……
……カッチョイン……
研究設備全体が反応する。
停止していたモニター群。
一斉に点灯。
暗かった研究室が青白く照らされる。
封鎖されていた設計データ。
アクセス不能だった高等研究。
ロック表示。
次々と解除。
コンピュータコア。
統合制御システム。
超高密度演算機構。
設計開始可能。
魔理沙の口元がわずかに上がる。
「……通った」
長かった。
本当に長かった。
背後。
禰豆子が静かに覗き込む。
「やっと?」
「やっとだ」
魔理沙、椅子へ座る。
即座に設計作業開始。
工作機械起動。
……ウィィィン……
……カチャ……
……ジジッ……
複雑な回路。
精密部品。
高密度演算ユニット。
冷却パイプ。
極細配線。
人間の手作業では到底無理な精度。
自動工作機械が寸分違わず組み上げていく。
魔理沙、モニターを見つめる。
「これが完成すれば、船の制御系はほぼ揃う」
宇宙船。
脱出計画。
最初は夢物語だった。
だが今は違う。
船体フレーム完成。
推進機関完成。
生命維持設備も稼働可能。
そして今。
最後の頭脳部分へ到達している。
「……(あと少し)」
ゴールが見える。
その一方。
禰豆子は忙しかった。
調理。
掃除。
洗濯。
設備点検。
食料整理。
燃料確認。
備蓄管理。
生活基盤のほぼ全てを支えている。
「……(終わらない)」
だが表情は変わらない。
淡々。
黙々。
ひたすら作業。
研究設備が動くのも。
皆が食事できるのも。
船の建造が続くのも。
全部、禰豆子が裏で回しているからだった。
地下採掘場。
……ゴゴゴゴ……
……ドォン……
深部ドリルマシン。
粉塵。
削岩音。
崩れ落ちる岩盤。
霊夢が掘り進めているのは――
以前発見したシルバー鉱脈。
しかもまだ掘っている。
霊夢、採掘した鉱石を抱える。
ライトに照らされた銀鉱石が鈍く光る。
「いいわねぇ……」
うっとり。
完全に目が金属へ向いている。
通信機。
「まだ掘ってたのか」
魔理沙。
若干呆れ声。
「当然でしょ」
「100万円分は持って帰るわよ」
研究室側。
魔理沙、顔をしかめる。
「いや、余分な重量は減らしたいんだが……」
「余分じゃないわよ」
「資産よ、資産」
「宇宙船に積むんだぞ?」
「積めるでしょ」
「理論上はな……」
モニター。
船体重量計算。
燃料消費。
推力比。
離陸必要出力。
全部かなりシビア。
「推進剤計算が狂うんだよ」
「ちょっとくらい平気よ」
「その“ちょっと”が怖いんだって」
宇宙では。
“ちょっと”が死因になる。
禰豆子、横で聞いている。
「……(どっちも分かる)」
銀は貴重。
地球へ戻れば大金。
だが重量問題も本当。
魔理沙、深いため息。
「……せめて制限しろ」
「いくら?」
「最悪、非常食削ることになるぞ」
霊夢、即答。
一秒も迷わない。
「じゃあ削って」
「食料より優先なのかよ」
研究室。
AI人格コア。
コンピュータコア。
宇宙船制御システム。
最先端技術。
その一方。
地下では霊夢が、
ひたすら銀を掘っている。
方向性が微妙に違う。
だが全員本気だった。
建造中の宇宙船。
内部配線が増えていく。
パネルが閉じられる。
制御基板が組み込まれる。
少しずつ。
確実に。
完成へ近づいていく。
魔理沙、その船体を見上げる。
最初はただの残骸だった。
今では違う。
帰還船。
本当に飛ぶ。
現実として。
魔理沙、小さく呟く。
「……本当に飛ぶんだな」
通信。
即座に返答。
「だからシルバーも積めるわよ」
「まだ言ってる」
研究室ではAIが目覚め始め。
地下では銀が増え続ける。
宇宙船は完成へ近づく。
「AI人格コア」
「コンピュータコア」
「宇宙船完成」
「帰還は現実になりつつある」
そして霊夢は――
銀を持って帰る気満々だった。
霊夢が持ち帰ろうとしている銀100万円分の重量は、現在の相場(1gあたり約410円〜450円前後)でおおよそ 2.2kg〜2.4kg です。まあ宇宙船に載せるのに現実的な重さではありますね。