辺境の惑星でリアル弾幕ごっこ 作:わさびの食べ方にうるさい人
14日目。
反応炉起動シーケンス。
残り1日
朝。
拠点。
空は曇っていた。
だが、それよりも酷いものがあった。
臭い。
ただ臭いという言葉では足りない。
鼻の奥に張り付き。
肺に入り込み。
頭痛まで引き起こす腐敗臭。
死臭。
血の臭い。
焼け焦げた肉の臭い。
死液の臭い。
それらが混ざり合い。
拠点全体を包み込んでいる。
外
地面が見えない。
原住民。
海賊。
その死体が何十、何百と積み重なっている。
爆発で吹き飛んだ腕。
焼かれて炭になった脚。
顔の判別すらつかない死体。
その間に散らばるメカノイドの残骸。
砕けた装甲。
切断された機械腕。
溶けた電子部品。
黒く染まった土。
血液と死液が雨水と混ざり。
ぬかるみのようになっている。
そして。
ハエ。
大量。
空気そのものが黒く見えるほどの数。
……ブゥゥゥゥゥ……
耳障りな羽音が絶え間なく響く。
死体の上では大量の蛆虫が蠢いている。
白い塊が脈打つように動いている。
死体を覆い尽くし、肉を食い荒らしている。
「……地獄すぎるぜ」
霊夢。
口元を押さえる。
「吐きそう……」
拠点内部。
いや。
もう拠点とは呼べないかもしれない。
迫撃砲で吹き飛んだ屋根。
穴だらけの壁。
壊れた家具。
雨漏りの跡。
血痕。
そこにも腐臭が染み付いている。
そしてハエ。
外だけではない。
……ブゥン……
部屋の中まで平然と飛び回る。
食卓の上。
寝床の近く。
顔の前。
どこにでもいる。
「中入ってくんなよぉ……」
魔理沙。
手を振って追い払う。
だが意味はない。
追い払っても次の瞬間には別のハエが飛んでくる。
三人。
無言。
簡素な食事。
置かれている。
誰も箸が進まない。
臭いのせい。
疲労のせい。
食欲などとっくに消え失せている。
「……食べたくない」
「でも食わねぇと死ぬぜ……」
無理やり口へ運ぶ。
噛む。
飲み込む。
作業のよう。
味なんて分からない。
胃に詰め込むだけ。
生きるためだけの行為。
禰豆子だけは食事を取らない。
静かに座っている。
魔理沙。
少し食べて止まる。
「……もう無理だぜ」
皿を押しやる。
霊夢。
返事もしない。
ただぼんやりと机を見つめている。
拠点。
ボロボロ。
迫撃砲で破壊された壁。
穴だらけ。
外が丸見え。
キルゾーン。
崩壊したまま。
タレット。
沈黙したものが増えている。
誰も修理していない。
魔理沙。
壁にもたれる。
「……動きたくねぇ」
霊夢。
床へ座ったまま。
「私も……」
数秒。
沈黙。
誰も喋らない。
ただハエの羽音だけが聞こえる。
禰豆子。
二人を見る。
「……休む?」
「休んでも来るわよ……」
その時。
外。
遠く。
叫び声。
「オオオォォォッ!!」
三人。
ゆっくり顔を上げる。
「……またかよ」
地平線。
大量の影。
原住民の集団。
こちらへ向かっている。
霊夢。
目を閉じる。
深く息を吐く。
「……やるしかないわね」
誰も立ち上がらない。
数秒。
それでも。
三人。
重い身体を起こす。
これだけ酷い環境にいると精神崩壊待ったなしですが、霊夢には「信念の人」と「あっけらかん」、魔理沙には「能天気」、禰豆子には「鉄の意志」と「忍耐強い」という心情強化の特性があるので、かろうじて持ちこたえています。