「ねぇグレン」
「............」
「ねぇ、一瀬グレン」
「うん?」
「あの.......私たちさ......」
「............」
「大人になったら......その、私たち、結婚できるかな.......?」
「............」
「いまみたいにさ、ずっと一緒にいられるのかな?」
青い芝生の上。
雲のない、抜けるような空の下。
自分の少し前で自分の主であり幼馴染みでもある少年の横でその手を握っている少女が、そう言った。
少女と少年の距離はあまりにも近い。
自分は、俺はその近くいてそれを見守れれば十分だった。
だけど少年は彼女を見ないまま、答える。
「無理だよ」
「どうして?」
少女の声は少し、震えていた。
そして少年は言う。
「わかってるだろ?」
「私の.....私の家のせい?」
「.....俺は分家。そしておまえは、本家の、それも当主候補だ。とても釣り合わないよ。」
「でも、でもそんなの関係....」
「あるよ」
と、少年は遮って言った。
すると少女は黙った。いや、もしかしたら泣いていたのかもしれない。少女も、わかっているはずだから。本当らわかっているから。
だからだろう、少女の息づかいがほんの少し乱れた。
と同時に、遠くで声が響き始めた。
「いたぞ!」
「真昼様だ!」
「また一瀬のところのガキと霧雨のところのガキが、真昼様を連れ出したのか!」
「卑しい分家とその従者のくせにいったいどういうつもりだ!」
グレンが顔を上げた。
隣にいる灰色の髪を持った少女に言った。
「お迎えだ」
少女はやはり泣いていた。少年の手を握ったまま。
そろそろいかなければいけない。
俺はそう思いながら少年のもとへいく。
「私.....グレンと離れたくないよ」
少女の声が聞こえる。
「........」
少年は何も言わない。
「私.....私.....」
しかしそこで、少女の声は聞こえなくなった。でもそれは、少女が声を出すのをやめたからではない。
俺が少年を庇い殴られたからだ。
大人たちがきて、俺たちを殴る。
「やめてぇええええええ!」
少女が叫んでいるが大人たちには届いていない。
「身分をわきまえない、クソガキ共が!」
「いっそ殺しちまえ!分家の一瀬とその従者の霧雨なんぞ、いらねぇんだよ!」
「殺せ、殺せ!」
大人たちはそう言いながら俺たちを殴り続ける。
殴られながら、俺はぼんやりと自分の主である少年と泣いている少女を見た。
グレンという名の、少年を。
従者として生まれた俺にとっての、太陽を──
真昼という名の。
自分の主にとっての太陽であろう少女を──
「やめて!お願いみんな、やめて!」
少女の声が聞こえる。
そこで一瞬、意識が飛んだ。
強く殴られ、自分が倒れたのがわかった。
鉄のような血の匂い。
雲のないどこまでも続くような青い空。
気持ちのいい芝生。
俺はその中を倒れながら思う。
本当に子供のころは叶わない夢なんてないと思っていたのに、と。
友達や自分の主と一緒に楽しく毎日を笑って生きていく。
それはとても簡単そうに思えた。
それは本当に、とても簡単なそうに思えた。
「.....力が」
と、グレンが倒れながら、呟く。
拳を強く握り、
「.......欲しいものを手に入れるには、力が.....足りない」
力が足りない。何をするにしても、何を守るにしても。
俺はそう思いながら顔を上げる。
するともう、少女は連れ去られようとしている。
彼女は泣きながら、こちらを見ている。
私のせいで、ごめんなさい、と何度も、何度も、謝っているようだった。
彼女が悪いわけではないのに。
悪いのは力のない、俺たちなのに。
俺たちをそれを見つめ、手を伸ばした。
それは虚空に向かって。
太陽に向かって。
自分の守りたいものを、ちゃんと守るためにはいったい、どうすればいいのかと考えながら、俺は.....
そしてあっという間に十年の月日が過ぎていった。
自分なりに頑張りました。
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