終わりのセラフ もう一人の従者   作:烟月

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9,従者の決意

俺が初めて決意をしたのはいつのことだっただろう。

 

それは随分と昔のことだった。

グレンは俺たち霧雨家が命を懸けて守るべき主家の生まれで──

そして兄弟のように育った幼馴染みだった。

兄弟のような主。

それは、あってはならない関係だったのかもしれない。

だが、それは伝統だった。

『帝の月』の成り立ちから続くものだった。

 

十年前の、あの日。

 

俺は兄弟を、いや主を守れなかった。

俺ではあの日、グレンを守ることができなかった。

グレンは骨を何ヵ所も折られて、顔中にあざができ、高熱が出た。

近くにいたのに、グレンのすぐ近くにいたのに守れなかった。

なんで守れなかった?

相手が大人だったからか?相手が複数だったからか?相手が柊家だったからか?

違う。

俺が弱かったからだ。

グレンを守れるほど強くなかったからだ。

弱肉強食は原初のルール。

強いものは奪い、弱いものは奪われる。

それこそが最初から決まっていて、なおかつ変わらないルールだ。

俺は弱かった。

だから何も守れなかった。

 

グレンは目を覚ました後、泣いていたそうだ。

自分に力が足りないから、と。

とても悔しそうに、辛そうに、寂しそうに。

それを聞いたときに決意をしたんだと思う。

(グレン)の傍らで、(グレン)の支えとなろう、と。

全てを支えることできなくとも、一部だけでも、いや半分ぐらいは支えられるようになろう、と。

 

そして十年の時がたった。

いまだに決意は変わっていない。

あれ以来、俺はそれまで以上に修練をした。

親達の任務に付いていったりもした。

グレンは昔よりも強くなり、誰もが認める一瀬家の次期当主になった。

俺も昔よりは強くなれたと思う。

今の俺がグレンのことをどこまで支えられるかは、分からないけど。

 

身分が違う、幼馴染みで。

兄弟のような、主。

 

自分は強くなれたのか、いまだに弱いままなのか。

次こそはちゃんと守れるのか、また守れないのか。

まだ分からないから、だからもっと強くなろうと思う。

 

場所はいつもの通学路。

俺達がいずれ倒すべき相手である柊家。

その柊家が運営している、敵だらけの第一渋谷高校に向かう道。

グレンたちの後ろを歩いていると、毎日のように小百合がグレンに近付く。

グレンが顔をしかめ、

「離れろ」

と言う。

だが小百合は誤魔化し、また半歩近付く。

そんなことをして、最後はグレンに怒鳴られる。

怒鳴られてるのに小百合は笑う。

それを見て俺も笑い、グレンが俺を睨む。

それでいい。

今はこれでいい。

もうすぐこんなこともできなくなるかもしれないのだから。

今を楽しみ、生きていく。

これから先、進んでいくなかでどれほどの人の死を見ようと。

例え、地獄の中を進むことになったとしたとしても。

変わらずに生きていけるように。

 

 

 

友達や家族、皆が笑って楽しく毎日を過ごせるように。

そんな子供の考えのような、そんな日がくることを願いながら、俺は生きていく。

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