終わりのセラフ もう一人の従者   作:烟月

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前の投稿から随分と遅くなりすいません。


12,久しぶりの登校

数日学校を休んだ。

完全にずる休みだ。

「.........」

彰哉は目を開く。自室のベットの上。ベットの横に置いてある目覚まし時計をみる。

時刻は朝の五時。

基本的に同じぐらいの時間に目が覚める。長年この時間に起き、修練を積んでいたお陰か、何故かこの時間に一度は目が覚める。

ベットから起き上がる。上下ジャージという楽な格好。ここ数日は、グレンが学校を休んでいたため彰哉も学校に行ってない。休んでいる間は、修練場でずっと修練をするか、考え事をしていた。真昼に勝つためにはどうすればいいのか。隆二はどうやって真昼と知り合い、手を組んだのか。分からない事ばかりだ。

結局のところ出た結論は、真昼の事はグレンに丸投げ、隆二については後から考えようという、なんとも言えないものだったが。

彰哉は腕を振り、首を回し、足首を回して今日の体調を確認する。

「....よし、問題なし」

ちなみに彼がいるのは、一瀬家がグレンのために上層階を借りきった、高層マンションの一室である。五LDKに一人で住んでいる。横の一室では、グレンが小百合、時雨とともに三人で住んでいる。部屋を出て、隣のグレン達の部屋に移動する。

そういえば数日前、グレンは柊暮人に拷問を受けたそうだ。それについては大丈夫だと言ってたけど.....。

本当に大丈夫なのかなぁ…。

まぁ、あいつのことだから拷問中も出す情報は自分で出しても大丈夫だと思ったやつしか出してないだろうし。

それに、柊暮人の部下になるってのも丁度いい隠れ蓑ができて好都合、とか考えてそうだけどな。

小百合や時雨には、自分で伝えるって言ってたけどちゃんと言ってんのかなぁ。

「朝食できましたー!」

小百合の声が聞こえた。

どうやら調度朝食ができたようだ。

四人で朝食を取る。

朝食を取った後、グレンたちはテレビをつけて、ソファに座る。

彰哉はそれを見てから、

「じゃ、いつものとこでいるからどっか行くなら呼んでくれよ」

と言う。

「へいへい」

グレンが適当な返事を返す。

そのまま彰哉は修練場へ向かう。

修練場につくといつも通りの修練を進めていく。

少しすると時雨が学校に行くから準備するようにと伝えに来た。

どうやら今日は学校に行くみたいだ。

グレンの意思かどうかは知らないが。

 

 

 

 

いつもの通学路。

だが、これまでとはまるで様子が違う。

生徒たちが、遠巻きにグレンを見て、ひそひそと何か言葉を交わしていた。いつもなら、そろそろ絡んでくる奴がいて、コーラなんかが飛んできてもおかしくないはずなんだけど。

「いったい、どういうことでしょう」

小百合は首をかしげ、

「.....柊の奴らは、なにを企んでいるのでしょうか」

時雨は警戒する。

遠巻きにグレンを見ていた生徒が一人グレンの方へと駆け寄ってきた。

「あ、あの、一瀬君」

その生徒は、震える声音でそう言う。

.......あ~、そういうことか。

何故こうなっているのか理由が分かったためその生徒とグレンの会話を聞くのをやめる。

どうやら、グレンが柊暮人の下についた、という情報は学校中にもう、知れ渡っているようだ。

グレンは、柊暮人の部下。

だから、これまでのように馬鹿にしてこない、絡んでこない。

そういうことなのだろう。

「.......いまの話」

時雨がグレンに問う。

「事実だ。言ってなかったな」

「おい.....。ちゃんと言っとけよ.....」

「うるさい」

こいつ、やっぱり言ってなかったのか。

「拷問されて、下につくよう命じられたのですか?」

「いいや。いつもと変わらない。もとから俺たちは、柊の下だろう?」

「ですが、それはつまり、下についたフリを.....」

「時雨。グレンはなんて言った?」

時雨の言葉を遮る。

「え?えっと....」

「グレン様は、いつもと変わらないって、そう言ったでしょ?ならそういうことじゃないかな」

小百合が珍しく、たしなめるような口調で言った。

「あ......そか」

時雨が目を少し開き、うなずく。

どうやら解決したようだ。

後半部分全部小百合に持ってかれちゃったけど.........。

 

柊暮人について。

個人の力はともかく、組織としての力は向こうの方が圧倒的に上だ。

ゆえに今のこの、『帝ノ鬼』と《百夜教》の戦争に乗じて、力を拡大、疲弊するであろう二つの組織に割ってはいる為の方法はないかと情報を集めてはいるのだが、やはりそう簡単ではない。

 

時雨と小百合がまた何か楽しそうに話しているが、興味はない。

彰哉は少し呆れるように目を前に向ける。

すると、第一渋谷高校の、校門の前に、取り巻きを連れて一人の男が立っていた。

髪は茶色。

蛇のように細い瞳。

唇にピアスをしている。

柊征志郎だ。

以前、選抜術式試験において、小百合を滅茶苦茶に殴った奴であり、俺が殴れなかった奴。

前から思ってはいたんだけど唇にピアスって痛くないのかな....。

征志郎の目的はどうやらグレンのようで、グレンのことを酷く嫌な目つきで、にらみつけている。

確か、もうグレンは実力を隠さなくてよくなった、と言ってた筈だ。

ならあの程度の相手にグレンの前に出る必要もないだろう。

だが、それを知らない時雨と小百合は反応する。

「グレン様、お下がりくだ......」

グレンを守るように、一歩前に出ようとする。

「はい、ストップ」

それを後ろから小突いて止める。

「ああ、守らなくていい。実力を隠さなくてもいいことになった」

と、グレンが少し苦笑いしながら言った。

瞬間、

「「え?!」」

小百合と時雨の顔が分かり易いほど、歓喜の表情にかわった。

「そ、そ、それは、じゃあ、グレン様は柊の奴らに、ついに実力をお見せになられるんですね!」

「ふ、ふふ、奴らめ、驚きますね。自分たちがいったい、誰に手を出していたのか.........」

「はいはい、まずは二人ともちゃんと落ち着こうな.....」

喜びをこらえきれないとばかりに言う、小百合と時雨を彰哉が少し苦笑いしながら落ち着かせる。

「おい、一瀬のネズミ!」

征志郎が言う。

「なんだよ」

グレンは顔を上げる。

「おーおー、暮人に気に入られたからって、ずいぶんと態度変わったじゃねぇか。なんだ?暮人に目ぇかけてもらったからもう、怖いものなんてない、か?」

征志郎が笑いながらそう言い、近くにいる取り巻きも笑う。

ここで笑うってことは、あそこの取り巻きたちは暮人のことが怖くはない、というこどたろう。

一応この、征志郎も柊の名を持つ人間だから、征志郎に媚びを売っていれば守られると思っているのだろう。

「暮人なんて、関係ねぇよ。俺はやりたいようにやる」

この言葉を聞いてわかった。こいつは、柊征志郎は柊暮人に対して踏み込めずコンプレックスを持っているのだろう。同じ柊の名を持つ、だが評価も実力すらも段違いの男に。

「おまえも、許さねぇからな。そもそも、クズの一瀬家を部下にするってのがおかしいんだ。な?おまえらもそう思うだろ?」

なぜそこで周りに同意を求めようとするのだろう。自分の意見ぐらいハッキリと言えばいいものを。そこで同意を求めるから、暮人にコンプレックスを持つようになるんだろ。

征志郎の言葉に笑ったのは、彼の取り巻きのみ。他の生徒たちは暮人を怖がって状況を見守っている。

やっぱり、

「柊の奴ら以外は、俺たちと同じ立場みたいなもんか.....」

彰哉が小さく呟く。

「なんだよてめぇら!笑えよ!」

征志郎が怒鳴る。

だが、生徒たちは従わない。

「くそが!」

征志郎が苛立つ。

「........」

それをグレンが見つめている。

グレンの奴征志郎を利用するつもりか?

目が悪いこと考えてる時の目になってやがる。

グレンが歩き出す。

「おいてめぇ、なに勝手に歩いてんだよ」

「............」

「無視するんじゃねぇよ!」

「..........」

「おい!」

グレンが征志郎の横を通り過ぎようとした瞬間、征志郎が手を伸ばした。

グレンがその手をつかむが、すぐに征志郎がその手を払う。

その動きは、やはり速い。

さすが柊とでも言うべきか、十条美十や五士典人よりも強い。

そこからまだ二人の攻防は続く。

幾度かの攻防をし、グレンが征志郎の拳を受け、倒れる。

まぁ、実際のところ当たってはないのだが。

グレンが倒れ様に征志郎の足を払い、腕を引っ張っる。

支えを失った征志郎の身体は必然的にグレンの上に覆い被さるように倒れる。

 

─────────

 

「......はっ、この一瀬のクズが。これに懲りて、もう俺に楯突いてくるんじゃねぇぞ!」

征志郎が怒鳴る。

「......すみませんでした」

グレンが倒れたまま、答える。

結局、グレンが最後に一発殴られ終わった。

といっても、それも肌に触れるかどうかで、止まっていたが。

「わかればいい。おい、おまえらいくぞ」

そして、さっさと去っていく征志郎たち。取り巻きたちも一緒に、笑いながら去っていく。

グレンのほうを見れば、笑いをこらえているように見える。

こいつ、倒れてた時に征志郎騙したな......。

まぁ、その嘘を見抜けないようじゃ、柊家の人間としては、致命的な欠陥だろうが。

時雨と小百合がグレンのもとへ駆け寄りるが、彰哉は歩いて向かう。

グレンが立ち上がる。

「で、小百合と時雨、おまえらどこまで見えた?俺が呪術符出したのは?」

二人は驚いたような顔で、首を振る。

「あれ?俺には聞かないの?」

彰哉がグレンに聞く。

「お前が見えてないとでも言うつもりか?」

「いやもちろん全部見えてたけども」

「ほれみろ。なら聞かんでいいだろ」

「グレン」

「なんだ?」

「悪いやつめ」

「うるさい」

グレンが適当に返事を返す。

あらら、まぁ小百合と時雨に見えてなかったんだから。

他の奴がさっきの攻防を見える、ということはないだろう。

「二人とも修行が足りないみたいだね」

彰哉が言う。

「彰くん。グレン様はいったい何をやったんですか?」

小百合が聞いてくる。

「めんどくさいから解答拒否」

「ええー」

続いて時雨が言う。

「あれほど強かに殴られているのに傷がない。つまり、殴られていないのですよね?柊征志郎となにかを話されていたようですし.....できれば従者としては、状況をつかんでおきたいのですが」

グレンが答える。

「俺の従者は自白剤を飲まされて拷問される可能性がある。だから、必要があるとき以外は、情報はやらん。彰哉にはやるがな」

「それは問題ありません。拷問される前に、わたくしたちはきちんと自決できるように、訓練されて.....」

「だからだろ?俺たちが簡単に自殺するからグレンは言わないんだろ。てかグレン、なんで俺は大丈夫なんだよ!」

「いや、どうせお前ならどうにかして逃げるだろ?」

「いや、まぁそうだけどさぁ」

「ということだ。小百合、時雨。いまはいい。だがもう少し状況が進んだら手を貸してかくれ。たぶん.....」

 

今日、グレンが征志郎を騙したことですべてが一気に転がり始めただろう、と彰哉がは思う。

《百夜教》と『帝の鬼』の戦争の間に入り、本気で漁夫の利を得ようと思うのなら、ここらで一度大きく一歩、前へ踏み出す必要があった。

ただでさえ真昼と隆二はもう、ずいぶんと先に進んでいるのだから。

だから、動く必要がある。

タイムリミットが、後どれくらい残っているのかはわからない。真昼の話では、クリスマスに世界は滅亡するらしい。滅亡、その言葉がどういう状態を指すのか分からないが、大きな変革が起きることは間違いない。

ならば、それまでに強い足場を作らなければいけない。

今は六月。

残りは半年。

だから彰哉は呟いた。

「.....おそらく、学校に通うのもあと少しだろう。俺たちも戦争に加わることになるだろう。そしたら何人も人が死ぬだろう、最悪皆殺しの可能性もある。だからまぁ、それまではこの学校生活を気楽に楽しもうか」

そう言ってから、

グレンと小百合、時雨を見て静かに笑った。

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