終わりのセラフ もう一人の従者   作:烟月

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前回の更新から随分と、遅くなりすいません…(笑)


突然の呼び出し

それはなんとも突然の事であった。

柊暮人に呼び出されたのだ。

それは俺だけではなく、時雨と小百合もだったようで彼女達と共に柊暮人の待つ生徒会室に向かっていた。

 

「普通呼び出すのなら従者じゃなくて主人じゃねぇかな…。なんでわざわざ俺らなんだよめんどくせぇ…」

 

2人に聞かれぬように小さく愚痴る。

それに何故か今回は少々嫌な予感がするのだ。

この呼び出しは俺達にとって余りいいものとは思えないような気がする。

そうしてあれこれ考えているうちに生徒会室前に着いてしまった。

そこには俺達の他にも2人、五士典斗、十条美十がいた。

尚更嫌な予感が増してくる。

少しして、グレンと柊深夜が共に歩いてきた。

 

「まさかこれ疑わしい奴皆殺しとかそんなパターンじゃないよなぁ……」

 

更に疑惑を深めつつ、警戒を増していく。

 

「何か言いましたか?」

 

どうやら少し時雨に聞こえてしまっていたようでこちらを少し見上げながら何か言ったのかと問われた。

 

「ん、いやなんでもないよ。グレンまで呼ばれたのかと思っただけ」

「そうですか…」

 

少し納得がいってないのか訝しそうに少し見られたがあえて無視しておく。

その後、グレンが2人に何か忠告をした為か2人が急に緊張した。

恐らく殺される可能性も視野に入れておけみたいなこといったんだと思うが。

まぁ、案の定俺はなんも言われてないがな。

どうやら十条はここに一同が集められた理由を知っているみたいだ。

 

「ちょっ――――」

「全員集まりましたか?では、入ってください」

 

十条に声を掛けようとしたところで扉が開き、同時に聞こえた女の声で質問の機会を逃してしまった。

生徒会室の扉が開く。

扉を開いたのは金髪を2つ括りにした女だった。

綺麗ではあるのだが…素直に綺麗と言えないのは何処か機械じみた雰囲気を俺が感じてしまったからだろうか…。

 

「どうぞ、お入り下さい」

 

女が俺達を見ながら言った。

――先程聞き流した十条の声を聞いたところこの女の名前は三宮葵というらしい

生徒会室はそれ程大きな部屋ではなかった。

しかし、手前に来客用のソファが2脚とテーブル。

奥に無機質な黒いデスクがあり、そこに柊暮人が座っていた。

生徒会室というよりは校長室を彷彿とさせる部屋だった。

 

「校長気取りか?」

 

グレンが暮人に問う。

 

「遅刻だぞ」

 

しかし、それに暮人が答えることはなく2人の会話は続いていく。

 

「次からは遅刻には罰則を与える」

「そうか。例えばどんな?」

「おまえの従者を、1人ずつ殺していく」

 

殺す、か。

それはグレンにとってとても効果的な方法だろう。

とても効果的であり、なおかつ向こうからすれば簡単なことだろう。

例えそうなっても大人しく殺される気はないが今のままでは勝つことは不可能だ。

いずれ殺される。

少し考え事をしながらも警戒を怠らぬよう気を付ける。

 

「で、なんで俺を呼んだ?」

 

グレンが暮人に問う。

 

「優秀な奴は、話が早くていい。座れ。葵、紅茶をみんなに」

 

葵が、頷き生徒会室の中にある、隣の部屋への扉を開き去っていく。

視線を戻すと、深夜はへらへらと笑っており十条と五士は本当に緊張しているようだった。

まぁ、十条と五士の反応が当然なのだろう。

この学校において絶対的な支配者である人物の部屋へと足を踏み入れているのだから。

 

「ま、座ってくれ」

 

暮人がそう言い、五士と十条、深夜が座った。

だが、俺達は座らない。

座ってしまえば何かあった時への対処が遅れてしまう。

故に、俺達にとって敵地といえるここで座るというのは自殺行為にも等しい。

 

「どうした?」

 

暮人が問う。

 

「おままごとやりにきたわけじゃないんで。頼みたいことがあるなら、さっさと言え」

 

グレンが答える。

だが、その言葉に十条が噛みついてきた。

 

「ちょっと、グレン!暮人様が座れ――」

「すいませんが十条さん。少しお静かに」

 

が、鬱陶しいので途中で言葉をはさみそれを遮る。

言葉は優しく、しかし言外に黙れという意味を込めて。

グレンからの口を挟むな、という意味を込めた視線が少し痛いが気付かないフリをする。

 

「なっ!あなたにそれを言――」

「いやいや、いいんだ、十条。俺は彼らのような態度は好きだから」

「え」

 

十条が暮人のほうを見る。

暮人が言葉を続ける。

 

「実力があり、物事の真実以外に興味がない、態度。他の奴らは、無駄が多すぎるよ。愚痴と、言い訳と、甘え。なぁグレン。おまえはそれに、いつもうんざりしてるんだろう?」

 

それは問いであった。

その問いにグレンは薄笑いを浮かべながら答える。

 

「おまえも大概、無駄に口数が多いけどな」

「はは」

 

そこで、隣の部屋からトレーを手にした、葵が出てきた。

トレーにはカップが8つ。

話は続くが、紅茶を飲みながら聞くべき話と聞かなくてもいい話をより分けていく。

 

「葵。書類を」

「はい」

 

いつの間にやら、葵は数枚の紙をテーブルに配り始めていた。

立ったままのこちらにもその紙を渡してきた。

その紙を見る。

そこには、上野のものと思われる航空写真が印刷されていた。

日付は今日。

確か、毒物がまかれ動物が殺された為封鎖している、というニュースが流れていた筈だが。

しかし、写真のそれはどう見てもニュースとは違っていた。

なぜなら、動物園の東園中央は、まるで爆弾が爆発したように見える程、地面がえぐられていた。

 

「これ、今朝のニュースの……」

 

十条が言う。

 

「そうだ。ニュースはもう見たか?」

 

暮人が頷き、全員に問う。

全員が頷いた。

それを確認し、暮人が続ける。

 

「だがあの情報は全部嘘だ。『帝ノ鬼』の情報局調べでは、上野全域は《百夜教》の実験場になっていた。そしてそこで、なにか事故があったらしい。現在、《百夜教》はその事故について必死に隠蔽しようとしている」

「なんの実験だ?」

「さあね」

 

尚もグレンと暮人の会話は続く。

それを聞きながら、自分なりに考えを張り巡らせてみる。

上野のニュースは嘘である。

毒物ではなく、何かによって地面がえぐられていたように見えた。

以前とは違い《百夜教》と『帝ノ鬼』は戦争状態に入っている。

…………。

駄目だ。

情報が少なすぎるし、大雑把すぎる。

適当に目算をつけるのもいいが、それは視野を狭める結果にもなりかねない。

今の状況でそれは悪手だろう。

 

「じゃあすでに調査部隊は派遣したのか?」

 

丁度聞きたかった事をグレンが暮人に問う。

 

「昨日の深夜から、すでに17部隊派遣した。だが全滅だ。で、おまえらを呼んだ」

 

17部隊の全てが全滅か…。

そして、次は俺達が行くことになったってことか…。

それはつまり、この日本国内で行われ始めた、静かだが、しかし激しい戦争の最前線へ出ろ、という命令に等しい。

 

「そ、それは、私たちに捨て駒に、なれと――」

 

十条と五士が、顔を見合わせていた。

 

「逆だ。無能な部下ではどうにもできないと判断した。だから、優秀な人材で構成した、特務チームで探らせることにした」

「………。」

 

無能…。

暮人はそう言ったが、決してその人達は無能ではなかった筈だ。

無能な人間を派遣するほど、『帝ノ鬼』の人材が不足しているとは思えない。

どうやらとてつもなく面倒な事を押し付けられたようだ。

 

「で、任務はいつだ。いますぐにいくのか?」

 

グレンが暮人に問う。

 

「ああ、そうだ。2時間後、動物園の北東から4部隊を突入させる。だがそれは陽動だ。その混乱に乗じて、潜入しろ」

 

手元の紙を一瞥し、テーブルに置く。

俺が覚える必要はそこまでないだろう。

 

「持っていっていいぞ。もちろん、見終わったら破棄してもらうが」

「いい、もう覚えた」

「相変わらず早いことで」

「うるさい、黙れ」

「はいはい」

 

グレンの言葉に十条と五士が驚いていた。

今回の任務。

恐らく、部隊を取りまとめるのはグレンだろう。

まぁ、俺達がグレンにしか従わないからだが。

その後、グレンが暮人から武器を渡され、それで今回の呼び出しは終わった。

 

グレンが渡された武器。

その名は《白死》、妖刀である。

かつて千の鬼を切り伏せても、刃こぼれ1つしなかった、という、眉唾な逸話が残っている刀だ。

その刀は、俺の持つ『黒死』とは兄弟刀である。

しかし、製作目的が違う為故か全く別の道を歩んだ刀でもある。

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