終わりのセラフ もう一人の従者   作:烟月

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1,入学

「グレン様、グレン様、今日から高校一年生になるわけですが、心の準備は出来ていますでしょうか?」

「........」

「わ、わたくしは正直、緊張しております。いえ、グレン様の護衛役であるわたくしが緊張するのはいったいどうなのよ、という突っ込みが入ることは重々承知しているのですが、しかし!しかしですね!やはりこの第一渋谷高校に入学する、というのは、我ら一瀬家の従者にとっては、非常に緊張するものがあるわけでして。あの、ですので.....」

まだ続いていく女の声に少々辟易としながら彰哉は空を見上げた。

空はピンク色に染まっていた。

なんてことはなくただ桜が舞っているので青空にピンクがまじっているだけだ。

春。

入学のシーズン。

彰哉は詰め襟の制服を着て、桜の下を歩いていく。

この道の先にはこれから俺達が通うことになる学校がある。

第一渋谷高校と呼ばれる学校だ。

そして自分の前で、つまり主であるグレンの横でまだ喋り続けている女を見る。

自分と同じ十五歳の、少女。身長は百六十センチくらいなのだろう自分と同じぐらいの身長だ。セーラー服姿に、茶色がかった髪。先程から続く騒々しい口調からは想像できない程顔だちが整った、美人。

花依小百合だ。

彼女は本当に緊張しているしているらしく、胸を手で押さえながら言う。

「あの、ですので、いたらぬ点もあるとは思いますが、その、頑張りますのでなにとぞ、よろしくお願い....」

「あー、小百合」

まだ喋っていた小百合をグレンが遮った。

「は、はい、なんでしょうかグレン様!」

「おまえさっきから、ちょっとうるさい」

「えええええええ!?」

「も、もももも、申し訳ありません!」

しょんぼりしながら、ずずずと後ろにに下がってきた小百合を横目で確認し、バックの中から本を出して読み始める。

そして小百合は、彰哉と同じように、グレンの背後に付き従うように、歩いていた少女のほうに近寄っていった。

「うう、雪ちゃん.....わたくしグレン様に怒られました。うるさいって」

するとその、雪ちゃんと呼ばれた少女が、小百合のほうを見上げた。

こちらは身長が百五十センチないくらいの、小柄な少女だった。

落ち着いた、しかし冷たすぎるほど無表情。

雪見時雨だ。

そして時雨が無表情で言う。

「.....だって本当にうるさいですし」

「あう!?」

そのあとも二人はやかましかったが無視して本を読み続ける。

すると、自分の前を歩いていたグレンが振り返ったため、本から目をはなす。

「はぁ.....」

グレンがため息をつき、再び前を見た。

桜の舞う通学路。

楽しげに笑い合っている学生たち。

たが、確かにここを歩くのは少々緊張する。

なぜならここは、普通の学校ではないのだから。

鬼と呪術が支配する、忌まわしくも呪われた学校なのだから。

 

第一渋谷(だいいちしぶや)高校》

 

それは、日本でも有数の宗教組織、『帝ノ鬼』が管理運営する、呪術師養成学校だ。

もちろん表向きは普通の学校ということになっているが、ここに通う人間のほぼすべて『帝ノ鬼』に所属し、その教えを信奉している者たちの、子女たちだ。それも、日本中の信者たちの中でも、選りすぐりの実力者だけを集めているエリート学校。

それが第一渋谷高校の実態である。

つまりここにるやつらは全員....

「こいつら全員が、俺のライバルか」

グレンが新学期の楽しげなムードに浮かれている生徒たちの姿を眺めながら言った。

すると先程まで彰哉の隣にいた時雨がグレンの隣にいき、他の生徒たちを見つめ、薄く笑いながら何か言い始めたが、彰哉はまた本に目をおとす。

しばらく、三人の会話を聞き流しながら本を読んでいた。

「彰哉」

グレンに呼ばれ、本をバックにしまってから顔を上げる。

「三人とも、あえて言っておく。一秒も油断をするな。気を引き締めろ。わかっていると思うが、ここに『帝ノ月』の人間は、俺と、お前ら三人しかいない。つまり残りの周りの奴らは全員──敵だ」

と言った。

周りを見るとすでに柊家の息がかかっている学生たちで、溢れ返っていた。

まぁ通学路なのだから当然なのだが。

そして、今から入学しようとしている学校は敵が運営しているのだ。

少し緊張した。

周りから声が聞こえ、視線が向けられる。

「なんだ、あいつら」

「ああ~、そうか。今年はそういう年か。一瀬の奴らだ。実力のないはぐれ者どもが、俺らの学校にまぎれこむぞ」

そんな声が周りから聞こえてくる。

こちらを見る学生たちからは、あきらかな敵意や嫌悪、蔑みが感じられる。

「あいつら、見下し.....」

時雨が言いかけたのをグレンが遮って言う。

「慣れてるよ。だから動くな」

「しかし」

「やめろ時雨。グレンにも考えがあるんだろ」

「俺たちはここで、力を見せない。敵にわざわざ、俺らはこんなに出来ますと、ガキみたいに張り切って手の内を発表(さら)してやる必要もないだろう?」

そう言って、グレンはこちらに振り返り笑う。

二人は不満そうにしているが、グレンのことだどうせ最初からそのつもりたったのだろう。

だから、霧雨家の中だけで開発し、発展させてきた呪術体系については、一切見せてはいけないな、と思っていて──

「.....ん?」

そこでグレンの頭に何か当たったのがわかった。

それはコーラが入っているペットボトルだった。フタは開いていた。当然グレンはコーラを頭からかぶってしまう。

「グレン様っ!」

小百合が叫んだ。

「くそっ」

時雨が前に出ようとする。

でも、俺は時雨の腕をつかみ止める。

かまわず前に出ようとする時雨を、

「でしゃばんなよ」

グレンがそう言い時雨を後ろに下がらせる。

そして、へらへらと笑い、頭を押さえながら言う。

「あ~、痛いんだけど?」

すると周りの学生たちが、一斉に笑う。

──なんだよあれ。

──とんだ腰抜けがきたぞ。

──だ~からしょせん一瀬の奴らなんだよ。

誰がペットボトルを投げたのかはわからない。

なぜならここにいる奴らは全員、敵なのだから。

グレンは、罵声と嘲笑を全身に受けながら、俺たちに呼びかける。

「彰哉、小百合、時雨」

「なに」

「.....はい」

「なんでしょうか」

二人の声は震えている。俺の声も震えていたかもしれない。

これも俺に力がないせいだ。

いま、この時点で、俺に、全て守りきる力があれば、ここで悔しがる必要もないのだから。

グレンがもう一度こちらを振り返り俺たちに言う。

「嫌な思いをさせる。すまない。だか、三年の辛抱だ。付き合ってくれるか?」

小百合と時雨が顔を上げる。二人とも泣きそうな顔をしながらグレンを見上げ、近づき何か言っている。

俺は空を見上げ、少しの間、目をとじる。

目をあけ、三人のほうを見ると、二人とも落ち着いていた。

生徒たちはもう、あまり残っていなかった。

もうすぐ、学校が始まる時間なのだ。

だからほとんどが、いなくなっていて、残っているのはびしょ濡れのグレンと、従者の三人だけだった。

「じゃ、いくか?」

とグレンが言うと、時雨が言う。

「.....グレン様」

「あ?」

「.....私どもが主を守るはずなのに、逆に守っていただいてしまうなんて....」

「黙れ馬鹿。部下を守るのは、主の務めだ」

「......あ」

それで時雨が、黙る。

「そうだね。俺も部下を見捨てる主なんて守ろうとは思わないし」

「だろうな」

グレンは俺の言葉にそんなこと知っている、とでもいうように答えた。

そして、うるさい二人に鬱陶しげな顔を向けながら学校に向かおうとしているグレンを見て、彰哉も、もう見えている学校に向かおうとする。

桜並木が長く伸びている。

その向こうにある校門に一人の男が立っていた。

珍しい白い髪。

男がふいに右手を上げた。

指先には札がある。

あれは確か柊の呪法を行う為の符だ。

その符が燃えて消えた。

凄まじい呪術の発動スピードだ。

おそらくあの男は、かなりの遣い手だろう。

もしかすれば、柊の名を持っている者なのかもしれない。

俺はグレンの前に出ようとする。

しかしグレンに手で制される

そして、グレンは呪術にまるで気づいてないかのようにこちらを振り返ろうとした。

そこでポンッと小さな音が鳴り、グレンの体が吹っ飛んだ。

「ぐぁっ」

グレンが地面に倒れ、そして動かない。

俺はグレンを守るようにに立ちふさがる。

後ろを見ると、小百合と時雨が泣きそうな顔でグレンに声をかけている。

今のはこちらの実力をはかろうとしたのか?

そして俺はあいつと真剣にやりあって勝てるのか?

そんなことを考えていると時雨が、俺の横にきてグレンを守るように立ちふさがり、校門の前を見ながら言う。

「も、申し訳ありません、グレン様。私がついていながら」

「いや、わざと受けたな」

俺がそう言うと、グレンが言う。

「あぁ、お前はミスしていない。攻撃はわざと受けた」

「え!?」

「お前たちは攻撃してきたのがどこからか、すぐに反応できたか?なら、優秀なのがバレたぞ。だから俺より優秀なフリをしろ。俺はお前らに守ってもらわなきゃ、なにも出来ないクズでいく」

「そんな.....」

そこでグレンは起き上がり、頭押さえながら、

「くそ、いったい何が起きたんだ......」

などと言う。

それに対して時雨が、一瞬困ったような顔をしてから校門のほうを指差し、

「あ、あそこから攻撃がありました」

と、ちょっと棒読みのように聞こえる口調で言った。

校門に目を向けると、男はまだこちらを見ていた。

すると、グレンが鬱陶しげに、

「....あ~こりゃだめか。バレてっか?」

と、うめく。

「いや、たぶん大丈夫だろ。」

と俺が答える。

すると、男が踵を返し、学校の中へと入っていった。

そのあと、時雨がグレンの着替えを取りに戻ることになり、そのついでに男の素性を調べることを命じられ学校と反対側に走り出した。

 

そして、一瀬グレンと霧雨彰哉・十五歳は、高校一年生になった。

 




主人公が目立たない....

直したほうがいいところがあれば教えてください。
お願いします。
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