終わりのセラフ もう一人の従者   作:烟月

7 / 14
6, 襲撃

翌日。

やはり演習場では、選抜術式試験が行われていた。

 

周囲は相変わらず、生徒たちの歓声や声援で、賑わっていた。

彰哉の所属する五組はほとんどがそこまで強くなく、何人かが強い。

と、そんなかんじだったため、今日残っているのは彰哉を含めて十人ほどだった。

残っている人数が少ないため、まだクラスメイト同士が当たることはないだろう。

だが、勝ち進めばいずれは当たる。しかし、それまでは、仲間だ。

昨日今日の試験期間を過ごして、生徒同士の仲はかなりよくなってきているように見える。

もちろん、彰哉を除いてなのだが。

そんなことは、ともかく。

昨日の小百合の傷はかなり酷く、あの試合のあと、彼女はそのまま入院することになった。

そのうえ、今日はその付き添いで、時雨も病院に行っている。

つまり、

「今日の護衛は俺一人か.....」

小さく呟き、彰哉は演習場で独り空を見上げた。

ここ最近、晴れの日が続いていたが今日の空は快晴。

雲一つない、日本晴れだった。

こんなに空は綺麗なのに、ここでは生徒同士の、殺し合いの試験が行われている。

「にしても昨日は駄目だったな......。怒りで我を忘れるとは、やっぱり俺もまだまだ子供だな」

昨日の事を若干後悔しながら、ため息をつく。

「まぁでも、止めなかったら止めなかったで今より後悔してただろうし.....」

と、そんなことを言いながら、また空を見上げる。

試合は行われているが、自分の番はまだ先だ。

 

どれくらい空を見上げていただろうか。

グレンのいる方向から、また笑い声が聞こえてくる。

グレンを笑う声が。

グレン(あいつ)はその中でまた笑って(耐えて)いるんだろう。

プライドもなく、頑張ることさえ出来ない、実力がない、クズの顔をしながら。

 

俺には耐えられないだろう。

しかし、グレン(あいつ)は、それにも耐える。

自分の目的を達成する、ために耐えきるだろう。

「やっぱ、お前は凄いよ。グレン」

そんなことを、呟く。

 

──しかし、一瞬にして、状況が変わった。

「....なんだ?」

空。

雲一つない快晴の空。

しかし、そこには先ほどまではなかった、違和感が生まれていた。

赤い光。

その光が、一直線にこちらに向かってくる。

一直線に、こちらを攻撃してこようとする。

なのに、誰も気付いていない。

否、このタイミングでは、普通の人間では誰一人、気付くことが出来ないだろう。

彰哉は一歩横にずれて、よける。

直後に、赤い光が着弾する。

彰哉の後ろにいた数人を潰し、砕き、巻き込み、地面にぶつかって、爆発する。

爆発の規模は大きくはなかった。

だが、おそらくこの攻撃は、殺傷を主な目的としたものではなかったのだろう。

しかし、赤い光は一本ではなかった。

何本も、何本も、赤い光が降り注ぐ。

轟音が鳴り響き、大地が揺れ、爆発が起きる。

赤い光が生徒たちを薙ぎ払っていく。

それが終わると、少しだけ静かな時間ができた。

しかし、すぐに声があがる。

「きゃぁあああああ!」

「な、なんだ!?いったい何が起きたんだ!」

「脚が、私の脚が!?」

「し、死んでる!みんな死んじまってる!?」

校庭に悲鳴が溢れ、生徒たちが泣き叫ぶ。

恐怖に震える声があがる。

だが、それにかまっている暇はなかった。

今この学校は、あきらかに、何者かからの攻撃を受けているのだから。

彰哉は再び空を見上げた。

その時には、すでに空から次々と、黒いスーツを着た男たちが降ってきていた。

 

戦争が、始まったのだ。

ついに、《百夜教》と柊家の戦争が、始まったのだ。

グレンが伝えられていた、言葉は嘘だった。

開戦は十日後、とグレンは聞いていた。

もちろんグレンも彰哉も信じていなかった。

それが、実際はで二日後だっただけだ。

そう、それだけなのだ。しかしそれは──

「いくらなんでも早すぎるだろっ」

すぐに周囲の状況を確認する。

だが、対応できている者がほとんどいない。そのうえ、先程奇襲の時にうけた爆撃が白煙を生み出し、視界が悪い。

周りを見ても彰哉から見える範囲に生きた人間はいなかった。

しかし、悲鳴は聞こえている。

「殺さないでくれ!頼むから、俺を殺さな......うわぁあああ!」

「なんだてめぇ!ここがどこだか知ってんのか!こんなことしてただですむと思っ.....がぁああああ!?」

完全に敵の思うがままになっていた。

平和ぼけしていた無防備な生徒たちに対しても、敵は用意周到に準備し、完全武装して襲いかかってきた。

「最悪の場合、皆殺しかな.....」

彰哉は腰の刀に手を添える。

と、さっきまで五組が試合を行っていた、試合場に、スーツ姿の男が落ちてきた。

しかもそいつは知った顔だった。

ついこの前、戦った男。

八木という名の、《百夜教》の暗殺者。

「はぁ、ったくなんで俺の持ち場はいつもめんどくさい場所なんだよ。この学校に八人いる要注意人物のうちの一人がいるとか。いやまぁ、斉藤のとこよりはマシなんだろうけどさぁ....」

「へぇ、つまり俺のことはもう、調査済みってことか、八木」

「当然だろ。下調べもせずに戦争なんざ仕掛けるわけないだろ」

「そりゃそうだな」

と、彰哉は笑った。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。