翌日。
やはり演習場では、選抜術式試験が行われていた。
周囲は相変わらず、生徒たちの歓声や声援で、賑わっていた。
彰哉の所属する五組はほとんどがそこまで強くなく、何人かが強い。
と、そんなかんじだったため、今日残っているのは彰哉を含めて十人ほどだった。
残っている人数が少ないため、まだクラスメイト同士が当たることはないだろう。
だが、勝ち進めばいずれは当たる。しかし、それまでは、仲間だ。
昨日今日の試験期間を過ごして、生徒同士の仲はかなりよくなってきているように見える。
もちろん、彰哉を除いてなのだが。
そんなことは、ともかく。
昨日の小百合の傷はかなり酷く、あの試合のあと、彼女はそのまま入院することになった。
そのうえ、今日はその付き添いで、時雨も病院に行っている。
つまり、
「今日の護衛は俺一人か.....」
小さく呟き、彰哉は演習場で独り空を見上げた。
ここ最近、晴れの日が続いていたが今日の空は快晴。
雲一つない、日本晴れだった。
こんなに空は綺麗なのに、ここでは生徒同士の、殺し合いの試験が行われている。
「にしても昨日は駄目だったな......。怒りで我を忘れるとは、やっぱり俺もまだまだ子供だな」
昨日の事を若干後悔しながら、ため息をつく。
「まぁでも、止めなかったら止めなかったで今より後悔してただろうし.....」
と、そんなことを言いながら、また空を見上げる。
試合は行われているが、自分の番はまだ先だ。
どれくらい空を見上げていただろうか。
グレンのいる方向から、また笑い声が聞こえてくる。
グレンを笑う声が。
プライドもなく、頑張ることさえ出来ない、実力がない、クズの顔をしながら。
俺には耐えられないだろう。
しかし、
自分の目的を達成する、ために耐えきるだろう。
「やっぱ、お前は凄いよ。グレン」
そんなことを、呟く。
──しかし、一瞬にして、状況が変わった。
「....なんだ?」
空。
雲一つない快晴の空。
しかし、そこには先ほどまではなかった、違和感が生まれていた。
赤い光。
その光が、一直線にこちらに向かってくる。
一直線に、こちらを攻撃してこようとする。
なのに、誰も気付いていない。
否、このタイミングでは、普通の人間では誰一人、気付くことが出来ないだろう。
彰哉は一歩横にずれて、よける。
直後に、赤い光が着弾する。
彰哉の後ろにいた数人を潰し、砕き、巻き込み、地面にぶつかって、爆発する。
爆発の規模は大きくはなかった。
だが、おそらくこの攻撃は、殺傷を主な目的としたものではなかったのだろう。
しかし、赤い光は一本ではなかった。
何本も、何本も、赤い光が降り注ぐ。
轟音が鳴り響き、大地が揺れ、爆発が起きる。
赤い光が生徒たちを薙ぎ払っていく。
それが終わると、少しだけ静かな時間ができた。
しかし、すぐに声があがる。
「きゃぁあああああ!」
「な、なんだ!?いったい何が起きたんだ!」
「脚が、私の脚が!?」
「し、死んでる!みんな死んじまってる!?」
校庭に悲鳴が溢れ、生徒たちが泣き叫ぶ。
恐怖に震える声があがる。
だが、それにかまっている暇はなかった。
今この学校は、あきらかに、何者かからの攻撃を受けているのだから。
彰哉は再び空を見上げた。
その時には、すでに空から次々と、黒いスーツを着た男たちが降ってきていた。
戦争が、始まったのだ。
ついに、《百夜教》と柊家の戦争が、始まったのだ。
グレンが伝えられていた、言葉は嘘だった。
開戦は十日後、とグレンは聞いていた。
もちろんグレンも彰哉も信じていなかった。
それが、実際はで二日後だっただけだ。
そう、それだけなのだ。しかしそれは──
「いくらなんでも早すぎるだろっ」
すぐに周囲の状況を確認する。
だが、対応できている者がほとんどいない。そのうえ、先程奇襲の時にうけた爆撃が白煙を生み出し、視界が悪い。
周りを見ても彰哉から見える範囲に生きた人間はいなかった。
しかし、悲鳴は聞こえている。
「殺さないでくれ!頼むから、俺を殺さな......うわぁあああ!」
「なんだてめぇ!ここがどこだか知ってんのか!こんなことしてただですむと思っ.....がぁああああ!?」
完全に敵の思うがままになっていた。
平和ぼけしていた無防備な生徒たちに対しても、敵は用意周到に準備し、完全武装して襲いかかってきた。
「最悪の場合、皆殺しかな.....」
彰哉は腰の刀に手を添える。
と、さっきまで五組が試合を行っていた、試合場に、スーツ姿の男が落ちてきた。
しかもそいつは知った顔だった。
ついこの前、戦った男。
八木という名の、《百夜教》の暗殺者。
「はぁ、ったくなんで俺の持ち場はいつもめんどくさい場所なんだよ。この学校に八人いる要注意人物のうちの一人がいるとか。いやまぁ、斉藤のとこよりはマシなんだろうけどさぁ....」
「へぇ、つまり俺のことはもう、調査済みってことか、八木」
「当然だろ。下調べもせずに戦争なんざ仕掛けるわけないだろ」
「そりゃそうだな」
と、彰哉は笑った。