終わりのセラフ もう一人の従者   作:烟月

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少々修正しました。


7, 敗北

周囲を見回す。

彰哉の周囲は、煙で囲まれていた。

それはまるで他の、学校の生徒や、教師から見えないようにしているかのようだった。

「で、ここでお前が俺の前に来たのは、俺の足止めってところか?」

「まぁそんなところだ。本当は、お前を再度勧誘するのも仕事なんだが.....」

「俺はグレンの従者だ。グレンが決めたことに俺は従う」

「そう言うと思ったよ。だから、勧誘なんざしない」

言い終わると同時に、八木が体から鎖を生み出す。その数は、八本。全ての鎖がバラバラの方向から彰哉に襲い掛かってくる。

しかし、彰哉はそれを気にせず、刀を抜き、八木に向かって突撃する。

一本、二本......

視界に入った鎖を切り刻む。

八木の目の前まで来たときには八本全てを切り刻んでいた。

八木の首を狙い刀を振るう。八木がしゃがみ彰哉の足を払う。彰哉が後ろに飛びそれを避ける。二本の鎖が左右から彰哉を襲う。右の鎖を切り刻み、左の鎖に鞘を絡ませ、八木に向かって投げつける。八木がそれを避ける、そこを斬る。

しかし、八木は腹を切られているにも関わらず、

「はぁ、ったく前にもそれは試しただろ?俺達には物理攻撃は効かねぇよ。そういう改造受けてんだからな」

と、言いながらまた、鎖を生み出す。

こいつにはどうやら、実体がないらしい。

おそらく、人間の姿は仮初めで、鎖を覆う黒い霧が、体の構成なのだろう。

「そうだな。俺も出し惜しみは無しにしよう。さっさとグレンのとこに行かなきゃなんねーし」

そう言い、彰哉は制服の袖に隠し持っていた呪符を刀身に滑らせた。

「おいおい....。なんだよそれ?」

八木が言う。

彰哉の身体から煙が、黒い煙が立ち上っていた。

瞬間、八木の視界から彰哉が消える。

「こっちだ」

八木の右側から刀が振るわれる。

「ぐっ」

八木が鎖で刀を防ごうとしながら左に飛ぶ。だが、少し間に合わず、鎖ごと腹を斬られる。

「くそが.....。なんで俺を斬れんだよ....」

驚いた表情を、痛みで曇らせながらこちらを見る。

《黒死》──霧雨家に代々伝わる刀であり、かの妖刀《白死》の兄弟刀である。

そしてその刀は、実体のあるなしに関わらず、敵対者を切り伏せ、使用者の身体能力を限界を越えて引き上げる。という、眉唾ものの伝説が残る刀だ。

その刀は、八木を斬った。

「お、俺の体は、柊の呪法が効かないはず.....」

「俺は柊じゃない」

呻くように言った八木に、彰哉は吐き捨てるようにそう、言った。

「さて、さっさとグレンのとこに行かなきゃならないんでな。そろそろ死んでくれ」

彰哉が八木の首に刀を振り下ろす。

「くそっ」

八木はそれを、避けようとするが彰哉が刀を振り下ろすほうが速い。

刀が八木の首を切り落とす.....。

 

 

 

 

はずだった。

ギィンッという、甲高い、金属と金属がぶつかりあうような、そんな音がして刀が止まった。

八木の首を切り落とすことなく、もう一本の刀によって彰哉の刀は止められた。

「久しぶり、彰哉」

声が聞こえた。

女の声が。

刹那、彰哉は大きく後ろに下がった。

下がらなければ死ぬ、そう思わせるほど、異常な大きさの殺気が生まれたから。

しかし、その殺気は後退した彰哉に、ついてきた。

故に、彰哉はその殺気に向けて、剣撃を放つ。

だが、また止められる。

そして、彰哉は前を見る。

そこには、いつの間やら一人の、美しい女がいた。

艶やかにきらめく、長い灰色の髪。

輪とした眼差し。

ピンク色の唇。

柊真昼だ。

彼女の手には、漆黒の刀身を持った、日本刀が握られていた。

その漆黒の刀を、彰哉の黒死に押しつける。

刀ごしに彰哉は顔を上げる。

「真昼.....」

と、彼女の名前を呼んだ。

すると、真昼は少し微笑んだ。

「久しぶりだね、彰哉」

「ああ、久しぶりだな。で、お前柊を裏切って百夜教についたのか」

「そうだけど?それがどうかしたの?」

真昼はそう言いながら、刀を押し斬ってくる。その力は、人間の力とは思えないほど強かった。それが、呪術によるものなのか、それとも別の力なのか、それは分からない。

「いいや、どうもしないさ!」

そう言い、彰哉は笑う。

少し横にずれ、真昼の刀を流し、剣撃を立て続けに放つ。

刹那の間に、何度も刀がぶつかりあう。

技術は、互角。

力の強さも、互角。

だが、速さだけは、彰哉が少し勝っていた。

故に、徐々に押していく。

切り合いながら、少しずつ前進していく。

「わわっ、すごい......とんでもなく強くなったんだね、彰哉。やっぱり、グレンのため?それとも、私のため?」

斬り合いながら、真昼はそんなことを言う。

「グレンのために決まってるだろ。馬鹿か」

「やっぱりそうだよね。でも、彰哉。その力、長くは続かないよね」

「それは、お前もだろ」

「さぁ、どうでしょう?」

真昼は笑いながら、彰哉は冷や汗をかきながら、ともに剣撃を放つ。

何度も、何度も刀がぶつかり続ける。

しかし、それにもいずれ終わりがくる。

「あはは、余裕が無くなってきた見たいね、彰哉」

「それは、お前もだろ真昼。顔から少し、余裕が消えてるぞ!」

彰哉が刀を振る。真昼がそれを避け刀を振り下ろす。

それを流し、刀を振るう。

その時、ピキッ、と彰哉の体から音がした。

一瞬、彰哉の体勢が崩れる。

それを、真昼が見逃すはずもなく、刀を振るう。

体勢を崩した状態では、受け止めきれず、吹き飛ばされる。

「ぐっ」

すぐに体勢を立て直すが力が入らない。

「やっぱり失敗作じゃ、そこが限界よねぇ。これ以上の、上の領域にはいけない」

「......上だと?なんだよ、それ」

「後でグレンに聞いて。じゃあね、もうグレンの所に行かなくちゃ」

「行かせるかぁ!」

今の真昼をグレンの所に行かせては駄目だ。

そう感じた彰哉は、真昼に向かって剣撃を放つ。

しかし、力が入らず、真昼によって再度吹き飛ばされる。

まだだ、まだいける。

そう自分を奮い立たせ、立ち上がる。

しかし、吹き飛ばされたときに、打った場所が悪かったのか、気が遠くなってくる。

「じゃあね、彰哉。また会いましょう」

そんな声が聞こえた。

「くそ、まだ、まだ力が足りな.......」

そう言いながら、グレンのいる方向へ手を伸ばす。

だが、彰哉の意識はそこで途切れた。




ちなみに真昼と彰哉が切り合っているときの八木さん

おいおい、あれはいくらなんでもおかしいだろ。
あのスピードでの斬り合いなんざ、人間業じゃねぇ。
どうみても二人とも化け物だろ。
って、斬り合いの最中に二人同時にこっち見るなよ。
いや、確かに化け物は失礼かもしれんけどさ。
もはや、やってることが人間業じゃないんだからしょうがないだろ!

というのを仲間に回収されながら考えていたという......。



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