終わりのセラフ もう一人の従者   作:烟月

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いつの間にかUAが7000越えていました(゜ロ゜;
皆さんありがとうございますm(__)m

さて、ようやく小説1巻の終わりでございます。


8,始まり

彰哉が目を覚ましたのは、百夜教襲撃の五日後だった。

「ここは......」

「家だろ」

気づけば、横にグレンがいた。

「あぁ、俺はまた負けたのか」

体を起こしながら、グレンにそう言う。

「そうだな。また負けた」

「真昼は随分と先に進んじまったな」

「あぁ、そうだな。それに、戦争が始まった」

「戦争.....か」

空を見上げる。

グレンも彰哉も、それ以上は話さない。

どれだけ先へ進まれようと、どれだけ予想外の事が起きようと、もう止まるわけにはいかないから。

 

 

 

 

 

 

「グレン様、グレン様、今日からまた、学校が始まるわけですが、もう絶対、片時も離れませんからね!」

「.........」

小百合がグレンの横にぴったりとくっついて、喋っている。

さらに、反対側にも時雨がぴったりと寄り添い、何か言っている。

そんなふうに、騒がしい三人の後ろを彰哉はついていく。

二人がよほど邪魔だったのか、グレンが二人の肩を手で、まるで両開きの扉を開くように、押しのけた。

しかし、またすぐに小百合と時雨が横にくっつき、周囲をきょろきょろと見回す。

「おい、彰哉。どうにかしろ」

グレンが後ろを振り向き、そう言った。

「無理」

彰哉はすぐにそう返す。

なぜなら、グレンが振り返ってすぐに小百合が振り返ったのだが、何故か笑っていた。目以外は.....。

助けに入って被害を受けるなどごめんなので、グレンには我慢してもらうとしよう。

ちなみに彼らがいるのは、いつもの通学路である。

第一渋谷高校へと続く道。

結局、選抜術式試験中に、正体不明の組織に襲われる──という事件以降、半月の休校を経た後に、学校は再開された。

襲ってきた組織は、『帝の鬼』が一瞬で皆殺しにし、『帝の鬼』に逆らえ者はこうなる、と、発表した。

それで、学校の関係者たちは、安心した。

『帝の鬼』の信徒たちの不安も、解消された。

組織の名前は、聞いたこともないテロ組織だったということになっていた。

しかし、それは当然嘘である。

なぜなら、襲ってきたのはこの国最大の呪術組織である《百夜教》であり、『帝の鬼』がすぐにどうこう出来る相手ではないからだ。

ついに、この国の二大呪術組織の戦争が、始まってしまったのだ。

そしてその下で、一瀬家が率いる『帝の月』は、漁夫の利を狙うことになった。

争っているとはいえ、どちらの組織も『帝の月』よりもはるかに大きい。

その二つを潰し、上に立つことを狙うのはそう簡単なことではない。

その上、二大組織が戦争状態に突入したことを伝えられているのは幹部のみだ。

厳しい情報規制を敷き、水面下で、激しい情報収集戦が始まった。

各組織の工作員たちが命がけで敵組織を陥れるために、動き回っている。

陰で、そんなことが行われているというのに。

いつぞやと同じように、グレンに向かってコーラの入ったペットボトルが飛んできていた。

もちろんフタも開いているので、当たれば必ず、コーラまみれになる。

向こう側で、『帝の鬼』の生徒たちが笑っていた。

今が、戦争中だということも伝えられず。それどころか、襲ってきた組織は始末した、などという嘘の情報を信じ、安心している馬鹿が笑ってる。

飛んでくるペットボトルに反応するであろう時雨に、声をかけようとする。

ここで実力をバラす必要がないから。いや、以前よりも自分たちの力を秘匿する必要性は、高くなったからだ。

なにせ、戦争が始まったのだから。

ここで、我慢する時間はもう、三年もない可能性もあるのだから。

潰す予定だった、バケモノ組織二つが潰し合いをし始めたのだから。

ゆえに、自分たちは侮られていたほうがいい。

限界まで馬鹿にされてていい。

あの、偉そうにしている馬鹿たちは、『帝の月』を侮って死んでいけばいい。

グレンは、コーラを受けようとしていた。

が、やはり時雨が反応してしまう。

グレンに近付く敵意(ペットボトル)を排除しようと、クナイを投げてしまう。

後ろにいた彰哉(自分)には、止められなかった。

クナイは、一直線にペットボトルを破壊するために飛んでいく。

ペットボトルが破壊されれば、生徒たちは黙るだろう。時雨の怒りに、実力に触れて。

しかし、そんなことに意味はない。

それをしてもこちらに利はない。

(はぁ、こりゃ後で説教されるな.....。どんまい時雨)

しかし、

「よっ」

という声がしたかと思うと、いつのまにか現れていた深夜がクナイを掴んだ。

と、同時に、クナイがなくなったため破壊されなかったペットボトルがグレンの頭に当たる。

勿論、中身が飛び出しグレンは、全身コーラまみれになった。

「コーラまみれでやんの!」

「弱ぇやつが、この学校にきてんじゃねぇよ!」

コーラを投げた生徒たちは爆笑したり、怒鳴ったりしていた。

最後に深夜が振り向き、グレンを笑う。

周囲の生徒たちは、柊の名を持つ深夜のバックアップを受け、一層盛り上がる。

「貴様っ」

「黙っとけ」

いきりたつ小百合と時雨の頭を小突き、二人を制止する。

グレンと深夜は少し話し、その後こちらに背を向けた。

「ちょっと、ずぶ濡れじゃないですか!」

背後からまた別の声がかかる。

確か、十条美十という名前のはずだ。

彼女がグレンの前に立ち、何かをいい始める。

何かを、がいい加減だって?

いやだってさ、さっき二人を小突いてからずっと時雨の方から寒気がしてさ。

いい加減に限界だからちょっと現実逃避してたいんだよ.....。

 

 

 

現実逃避を終えて、現実に帰ってくると、時雨は十条に勧誘され、小百合はいつの間にか現れていた五士にナンパされていた。

「..........」

ちなみにもう一度言うが、いまは戦争中だ。

でもまぁ、俺達は学生なんだからこういうのもたまにはいいかな、と思う。

「この、平和ボケどもの様子は、いったいなんだ?」

グレンが呟いた。

「別に、たまにはいいんじゃない?」

それに、答える。

空を見上げる。

無駄に平和そうな空、そしてあまりに馬鹿馬鹿しい目の前の光景。

「.....はは」

グレンは、小さく笑っていた。

 

 

その後、何故か頭を小突かれたが.....。

 

 

 

 

しかし、ようやくここから物語は動き出す。

 

戦争。

殺し合い。

愛と、憎しみ。

それは終始、人間味を帯びている。

欲望を起点にし、全ては際限なく回り続ける。

いずれその欲望は膨れあがり、世界は滅んでいく。

これは、人類滅亡直前の物語。

終わりの天使(セラフ)が終末を告げるラッパを吹き鳴らし、世界に鉄槌を下すまでに、人間たちがどれだけ醜く、だがどれだけ必死に足掻いたかの、物語の始まり──




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