主人公じゃない私のポケモンワールド異聞録   作:時緒

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話の展開が鈍足すぎてアレなのでなるべく今日明日中にもう1話UPしたいです(願望)



07. 便りの無いのは良い便り。但し時と場合による

「というわけで、グリーンバッジを最初に頂きました」

 

ポケモンセンターに設置されたテレビ画面つきの公衆電話。数時間前にゲットしたばかりのバッジと、これまた進化したてホヤホヤのアシュラムが画面に映るようにして報告すると、通話相手もといオーキド博士は『おお!』と目を輝かせた。

 

『もう進化したのか! 最初のうちはどんなポケモンも比較的レベルが上がりやすいとはいえ、バッジ1つ目の段階でそこまで育てられるとはなかなかのもんじゃのう』

「アシュラムが頑張ってくれたお陰ですよ。苦手なタイプ相手にも危なげなくバトルすることが出来ました」

『うむ。よく頑張ったの、アシュラム』

「ギャウ!」

 

元気よく、それでいて電話機や周囲の壁に当たらないよう気をつけながら手を振ったアシュラムを床に下ろし、ちょっぴりそわそわしていたフラウを同じように膝に乗せる。アシュラムがずしんと重くなった分、彼女が余計に軽く感じた。

 

『おっと、頑張ったのはフラウもじゃな。公式戦勝利おめでとう』

「らるっ」

 

ぱあっと顔を輝かせたかと思えば、すぐ口元を覆いはにかむ様子が何とも可愛い。生まれたときから変わらない、こういう所作のひとつひとつから伝わる『お淑やかなレディ』っぽさが印象的で、私はタマゴから孵ったばかりの彼女をひとまず『お嬢さん(フラウ)』と呼ぶことにしたのだ。

 

その後オーキド博士からラルトスという種名を教えて貰った時に愛称も付け直そうとしたのだが、当の彼女が『フラウ』という響きを大層気に入ったそうで、そのままこれが彼女の名前となった。カフカやアシュラムに比べると安直で申し訳ない気持ちになるが、私はあくまで仮称のつもりだったのと、何より彼女の気持ちが第一なのでどうかご勘弁願いたい。

 

『カフカはまだ治療中かの?』

「ですね。流石にレベルが一回り違う相手はキツかったです」

『有利タイプになっていたとはいえ、それだけのレベル差相手に相討ちというのも凄まじい話じゃがの。いや、一番凄まじいのはカフカ自身なんじゃが』

「特性:かわりものってチートですよね」

『何度も言っておるが、それだけで済む話でもないんじゃよ』

 

博士のぼやきに対し、私は「ですよね」と頷くほか無い。前世において私は所謂『厳選』の類は一切したことが無い極めてライトなエンジョイ勢だったが、そんな私でもしっかり理解出来る程度に、カフカは一般的なメタモンと比べると明らかに外れ値の個体だ。

 

ゲームでの対戦はサッパリ分からないが、この世界においてメタモンというポケモンを編成に入れているトレーナーはほぼいない。『へんしん』しか覚えないこのポケモンを野生以外で見かけるのは、もっぱらバラエティやパフォーマンスの舞台だ。

 

何故かといえば、まず殆どのメタモンは目の前にお手本がないと正確な『へんしん』が出来ない――少なくとも対象の技を使用できるレベルにまで姿を変えられないことが挙げられる。だからメタモンはフィールドに出るとまず対戦相手と同じポケモンに姿を変えるわけだが、そうすると基本中の基本である『相手の弱点タイプを攻める』という戦法が難しくなる。

 

そして次に、仮に相手側の強いポケモンに『へんしん』出来たとして、そのポケモンがどんな技を使えるかをトレーナーが把握できるわけではないのも問題だ。ゲームであれば技スロットに技が勝手に表示されるが、此処は現実。空中に自分しか見えないウィンドウが浮かぶ便利な仕組みなど存在しない。恐らくポケモン図鑑が実用化・普及すればこの問題はある程度解消されるが、それでもバトル中にいちいち図鑑を開く暇があるかといえば……まあ、相手が強ければ強いほど難しくなるだろう。

 

更に言えば、仮にトレーナー側が使用可能な技を分かっていたとして、今度はメタモン側がオリジナルより後れを取りやすいという課題も出てくる。たとえステータスの数値そのものが同じでも、普段からその身体や能力を操っているオリジナルと、たった今その場で模倣したばかりのメタモンでは動きや技の練度に差が出るのは当然のこと。最悪、技を指示されても「どうすればいいか分からない」と立ち往生してしまうパターンだって普通に有り得る。

 

他にもフィールドに繰り出されてから『へんしん』を使うまでのタイムロスだとか、他の手持ちと全く噛み合わないポケモンに『へんしん』してしまうリスクだとか……まあとにかく、メタモンというポケモンはそれだけ玄人向けポケモンなのだ。少なくともこの世界では。

 

だけど、今挙げたような諸々の問題が、カフカには無い。当然『全く』ではないが、『ほぼ』無い。あの子が持って生まれもった特性と、色んな才能と、そして何より弛まぬ努力の賜だ。

 

『マサラタウンのマリステラさん、マサラタウンのマリステラさん、ポケモンの治療が完了しました。お受け取り口にお越しください』

 

アナウンスが聞こえてきたので博士に断って中座し、待ち構えていたラッキーからボールを受け取る。安全装置を外すなり飛び出してきたカフカが、「もんっ!」と弾んだ声を上げる。いつもよりご機嫌だ。可愛い。

 

「よしよし、お疲れ。今日はありがとうね。カッコよかったよ」

「もぉん!」

 

なんだかはしゃいでいる相棒の様子に、この子にとってもサカキとのバトルは楽しかったのだと分かった。本当、ロケット団のボスでさえなければ何度でも対戦お願いしたいところなんだけど。

 

定位置(つまり私の左肩)に乗ったカフカを連れて電話の前に戻る。オーキド博士は目尻を更に和ませると、アシュラムやフラウにしたようにカフカのことも労ってくれた。こういう当たり前のことを当たり前にやってくれる優しい人なんだよな、博士は。ゲームボーイ時代の孫へのドライっぷりはどう考えてもゲームの仕様と容量不足のせいだと分かる。少なくとも、孫の名前を忘れたところなんぞ私は一度も見たことないしな。

 

『ところで、ポケモン図鑑の調子はどうじゃ?』

「あ、それなんですけど、一応レポート形式で纏めてまして……」

 

後でPDFにしてパソコンから送ると前置きしつつ、鞄から改めてポケモン図鑑(プロトタイプ)を取り出す。

 

「遭遇したポケモンの基本データがすぐに確認できる、という唯一無二の特徴は間違いなく利点です。肉眼で姿が確認できなくてもある程度近づけば反応してくれるので、単純にデータを取る以外でも、例えばゴーストタイプに化かされているときの対処も素早く出来るようになると思います。あとは交換したポケモンの出所がきちんと保存されるというのも良いですね。あまり考えたくないですが、捨てられた他地方のポケモンを元の場所に返す保護活動にも役立てられると思います」

『ふむ』

「ただ、この勢いでデータを採り続けているとどうしても容量の問題がついて回ります。私まだトキワシティにいますけど、使用済み容量が……もうこんな状態でして」

『なに!? もう30%以上使用済みじゃと!?』

「そうなんですよ」

 

意図的に道路やトキワの森で収集していたとはいえ、まだ『みつけたポケモン』は30にも満たない。カントー原種のポケモンは今のところ150程度とされているが、このペースでは全ポケモンのデータが揃う前にHDDがパンクしてしまう。

 

「こういう技術的な方面は時間が解決してくれると思いますが、それを待っていると図鑑の実用化も遅くなります。思い切って持ち主が『見つけたポケモン』は名前・外見・タイプ、あとは分布地なんかの最低限だけ採取して、『つかまえたポケモン』とか、『一定期間行動を共にしたポケモン』だけ詳細データを記録するようにしたらどうでしょう?」

『ふむ……一考の余地ありじゃな』

 

所謂クラウドシステムが実用化されればHDD本体に全データをぶち込まなくてもどうにかなるが、それもきっと暫く先だ。今は出来る方法とあるもので何とかしなくてはいけない。

 

「あとは、今この図鑑は存在が判明しているポケモンなら出身地を問わずにデータを記録出来るけど、これを地方ごとに敢えて制限するのもありだと思います。今の交通事情だと他地方のポケモンと遭遇する機会はそこまで多くないですし、地方を跨いだ移動の際には、たとえば現地のポケモン博士に協力して貰って現地仕様にアップデートして貰うとか」

『なるほど。それであれば単純な利便性は落ちるが、データの問題は解消されるの。それに、そういった仕様にすれば図鑑使用者と研究者との関わりも密接になり、互いに最新の情報を交換しやすくなるというメリットもある』

 

報連相は社会人の基本と言われているけれど、そうやって方々から口酸っぱく叫ばれているといことは、つまりどうしても疎かになりがちということの裏返しでもある。合理的に出来る部分を敢えてアナログなままにして、強制的にあるプロセスを踏ませるという手段は結構有効だ。

 

『一考の余地ありじゃの。あとは何かあるかね?』

「んー、今すぐお伝えしたいのは以上ですかね。あとは現時点までの単純な使い心地とかの話になっちゃうし、暇な時間に文字で確認して貰う方がいいと思います」

『うむ、ではそうするとしよう。データ容量については、当面は定期的に集めたデータをストレージに吸い出すことで対応するしかないの。移動が面倒になって申し訳ないが、解決策が出来るまでは定期的に研究所まで戻ってきてくれんか』

「大丈夫ですよ。どうせ定期検診もありますし」

 

ゲームでは旅立ち以降、グレンジムまで制覇した後『なみのり』で海を真っ直ぐ北に渡ってようやく戻ってきたマサラタウン。恐らく私に限らず、多くのプレイヤー達はわざわざフレンドリィショップもなければトキワシティとグレンタウンにしか繋がらないマサラタウンに途中帰宅などしなかっただろう。

 

が、私は生まれてこの方11年以上マサラタウンで生きてきた生身の人間なので、ゲームのように一直線に進むばかりでは味気ない、どころか不義理でさえある。特に頼まれてはいないけど、実家とオーキド博士への定期的な電話連絡は旅立った側にとっての義務だ。特にスマホもポケギアもない今のご時世では所在や安否の確認は一苦労なので、こちらから連絡できるときにしておくに越したことはない。

 

……ということについて、私は今からどうやってレッドとグリーン、特にレッドにしっかり叩き込むか少し悩んでいる。ゲーム同様シロガネ山に籠もりきりになるのは100万歩譲ってまだ許せるとして(危ないし寒いし是非ともやめて欲しいけど)、唯一の身内である母親にまでロクすっぽ連絡を寄越さないなんてアホな真似しようもんなら、私は渾身の拳骨をあの子の脳天にお見舞いしなければならない。

 

『あ――――!! じーちゃんがリスティと電話してる!!』

 

噂をすればなんとやらとでも言うべきか、受話器でセルフハウリングを起こす程度の音量に思わず耳を遠ざける。画面はたちまち博士を椅子から追い落とす勢いで身を乗り出すツンツン茶髪と、負けじと張り合っている赤い帽子の持ち主達に支配された。

 

『何で教えてくんねーんだよ、じーちゃん! リスティから電話あったらオレにも代わってって何度も言ってたのに!』

『おっと、すまんすまん。つい話し込んでしまっての』

『リスティ、久しぶり。いま何処?』

『おいレッド! オレがまだ喋ってる途中なんだから黙ってろよ!』

「はいはい喧嘩しない。久しぶりだねふたりとも。こっちはトキワシティでのんびりやってるよ」

『……トキワ?』

『え、まだトキワ? 遅くね?』

 

こんの正直者共め。あまりにも素直過ぎてイラッとくるどころか可愛くて仕方ない。違う系統の顔してるくせに頓狂な表情そのものがそっくりで、噴き出すのを堪えるのが一苦労だった。

 

「色々やりたいことやってたら思ったより時間かかっちゃってね。でも悪いことばっかりじゃないよ。ほら、グリーンバッジがこの通り」

『!?』

『マジかよ!? トキワジムってアレだろ、カントーで一番つえージム!』

「そうそのトキワジム。まあ適用ルールは初級①だけどね」

『そんなの関係ねえって! すげーじゃんリスティ! やったな!』

『うん、すごい。おめでと、リスティ』

『ピッカァ!』

『ブーイ!』

「んふふ。ありがとう、みんな」

「もんもーん」

 

今にも液晶画面に顔を押しつけてきそうなピカチュウとイーブイをしっかり抱えた少年2人の後ろで、オーキド博士が微苦笑を浮かべている。目が合った私も同じような顔をしてしまった。分かります博士、この年頃の子供って本当パワフルだよね。

 

その後はバトルの様子を詳らかに説明させられたり、進化したアシュラムに気づいたレッドとグリーンが更にテンションぶち上げたりで、オーキド博士に受話器が戻ったのはそれから30分後になってしまった。

 

『孫達がいつもすまんの、マリステラ』

「私の方が構って貰ってるんですよ。ねえカフカ」

「もぉん」

 

近所の子供は何故か男の子ばかりのうえ、肝心の同い年があのクソガキ2人だった私はぶっちゃけ友達にはあまり恵まれていない。サマーキャンプで知り合った別の町や地方の子供達の中には手紙のやり取りが続いている子もいるが、それも直接会う機会は年に1度あれば多い方だし、そもそも私の中身が中身なので友達との文通というより『赤○ン先生』やってるような感じなのだ。

 

そんな中で、性別の壁も年齢の壁も鼻で笑って慕ってくれるレッドとグリーンが、私にとってどれほど貴重な存在かは筆舌に尽くしがたい。異世界転生していようが前世分加算した年齢が■■歳だろうが、裏表のない好意ってのは嬉しいものなのだ。少なくとも、このくすぐったい視線に恥じない生き方をしなければと、そっと襟を正すくらいには。

 

「あ、そうだ」

 

祖父の腕に押しのけられてブーイングを飛ばしながらフェードアウトしていく小僧達のお陰で、博士に頼んでおきたいことがあったのを思い出した。別に今すぐ必要ってものでもないが、こういうことは早めに済ませておく方が良い。

 

「博士、あの」

『うん?』

「実はちょっとお願いしたいことがありまして……」

 

ちょっとばかし、いや割と図々しいお願い事をダメ元で言ってみる。正直苦笑いとともに却下されても仕方ないと思っていたが、思いがけず博士は快諾してくれて拍子抜けしてしまった。……が、正直非常にありがたい。この一週間何かないかとこっそり色々考えていたのだが、一番理想的な『お礼』が出来そうでホッとする。

 

「ありがとうございます、博士」

『なに、元々席は空いておったし問題ないよ。それに、こういった縁は可能な限り大切にしておく方が後々良い方向に転がるもんじゃ』

 

悪戯っぽく片目を閉じたオーキド博士は、ちょっと悪巧みをしているときのグリーンに似ていた。

 




《キャラ設定》
○マリステラ(リスティ)
・年齢:11歳
・性別:女
・身長/体重:平均より高め/BMI正常域
・髪:灰色がかった銀髪ロングヘアのフィッシュボーン
・瞳:左右ともに黄色みが強いアースアイ
・特記事項:元がまともな社会人なので報連相は大切にしている

【所持ポケモン(参入順)】
・メタモン(カフカ):―/Lv.31 → 33(※サカキ戦でのレベルアップ分)
・ラルトス(フラウ):♀/Lv.18
・リザード(アシュラム):♂/Lv.17


○オーキド博士
・年齢:58歳(捏造)
・性別:男
・特記事項:普段オリ主が頼ってくることはないので、滅多にない頼み事に弱い


○レッド
・年齢:9歳
・性別:男
・特記事項:オリ主から音信不通になる未来を警戒されている


○グリーン
・年齢:9歳
・性別:男
・特記事項:オリ主のことはほぼもう1人の姉枠に入れているので態度は丸い
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