主人公じゃない私のポケモンワールド異聞録   作:時緒

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書きたいことを詰め込んでいたら冗長になった上に新しい展開ほぼなくなりました。
描写の取捨選択を的確に出来る人間になりたい……。



16. 満ち充ち、道々、そして未知

ハナダシティ名物――と言って良いか分からないが、ある種の名所と呼んで差し支えないものの1つに、北に抜ける大橋、通称ゴールデンボールブリッジ(和訳はしても良いが漢字変換は厳禁)がある。ゲームだと不意打ちでライバルと出くわすのでそっちのインパクトが強いが、5人のトレーナーを勝ち抜いた後に景品の『きんのたま』を渡してくる不審者(ロケット団のスカウト)もなかなかに濃いと思う。

 

今考えると、あの橋のシステムはそもそも誰が考えたのかとか、あの道を普通に抜けたい人は一体どうしていたのかとか、主人公の前に来た人(少なくともライバルは先に通ったはず)にも負けただろうロケット団員はあの体たらくでどうやって正体をごまかしたんだろうとか……気になることはまあ、多々あった。

なのでオーキド博士からお遣いを頼まれなくても、マサキの家、少なくともその近くまでは行ってみるつもりだった。FRLGでは謎にデートスポットにされてたし、ちょっとしたピクニックや観光になるだろうとも思って。

 

というわけでポケセンで一晩過ごした翌日。朝食とストレッチを済ませた私はハナダの北に向かったワケだが……結論を言うと、ゴールデンボールブリッジの5人抜きキャンペーンは普通にやっていた。なんなら橋の入口に

 

『ポケモンバトル勝ち抜きチャレンジ! 5人に勝利して豪華賞品を手に入れよう!』

 

と書かれたアーチ状の看板が掛けられていた。しかもその脇には『お急ぎの方、トレーナーでない方はこちらからお通りください』という立て札も別にある。確かにこれなら通行に支障はなさそうだ。

 

「カフカ、5人抜きだってさ。やってみる?」

「ももんっ!」

「あっは! やる気があって何より。じゃあ此処はそのまま()()()しようかな」

「もぉんっ!」

 

勢い込むカフカをボールに戻す。腰には他にフラウとアシュラムが入ったボールと、今はダミーとしての役割が強い空ボール3つ。順番を適当にシャッフルしてから、如何にも手作り感満載のアーチを潜る。すると一番近くに立っていた虫取り少年が意気揚々とこちらに近寄ってきた。

 

「ハナダシティ名物、勝ち抜きチャレンジにようこそ! 早速だが準備はいいか!?」

「勿論」

 

間髪入れず頷くと、少年は嬉しそうにモンスターボールを取り出した。最初の1戦目はどうやら彼が相手らしい。虫取り網を振り上げて「バトルだ!」と声を張り上げた少年と私がほぼ同時にボールを投げた。

 

「さ、行っといで。――君に任せた」

 

2つのボールは殆ど同時に落ちた。少年のそれから現れたのはキャタピー、そして私が投げたボールからは

 

「シャァーボッ!」

 

図鑑No.23、アーボ。分類はへびポケモン。アニポケではラブリーチャーミーな敵役の片割れことムサシの相棒でお馴染みだった1匹だ。とはいえアニメでは割と早い段階でアーボックに進化していたから、アーボ自体の活躍はそんなに多くなかった気もするけど。

 

「ピィ!?」

「どうしたキャタピー!?」

 

進化前とはいえ全長2mに達する『アーボ』に対し小さすぎる程小さなキャタピーが、短い悲鳴を上げて全身を硬直させる。特性『いかく』の効果だと教えてやれば、「スクールで習ったやつ……!」と少年が歯噛みする。

 

「戻れ、キャタピー! そんでもって、いけっビードル!」

 

早速の選手交代。悪くない判断だけどちょっとラグが大きすぎるかな。

 

「悪いけど着地狩りするね。『へびにらみ』からの、『のしかかり』!」

「シャアッッ!」

「ピギッ!?」

 

出てきた瞬間マヒを入れられたビードルが中途半端にのけぞった姿勢で固まり、そのままアーボの巨体に押し倒される。恐らく自分に何が起こったかも分からないまま気絶しただろうビードルを、たっぷり5秒ほど呆気にとられていた少年がやっとボールに戻した。

 

「やっ、やるなチャレンジャー! でもまだまだこんなもんじゃないぞ!」

「お手柔らかに」

 

声上擦ってますよ、なんて意地悪な指摘はしないでおく。その代わり再び繰り出されたキャタピーに、容赦無くそして勢いよく『ようかいえき』を浴びせた。

 

「おわあ!? キャタピー!!」

「おーし2連勝。よくやったよくやった」

「シャボッ!」

「くっそお! めっちゃくちゃ強いなお前! でもまだこれからだ!」

 

と、まだまだ戦意を失わない少年に敬意は表するものの、結果は私、というかカフカの圧勝だった。まあレベル10かそれよりちょい上くらいの相手に対してカフカはもう34だから、ちょっとレベル差の暴力が酷かったのは認める。チャレンジ自体にレベル制限は設けられてないからルール違反って訳でもないだろう。

 

「負けたー! くっそ、マジでつえーなお前!」

「対戦ありがとう。楽しかったよ」

「シャー!」

「うちの子も楽しかったってさ」

「そうかよオレもだよ! 悔しいけど! めっっちゃくちゃ悔しいけど!!」

 

虫取り少年の土で少し汚れた手と握手し、次の相手へ。ミニスカートのよく似合う可愛らしい少女が「こっちこっち!」と手を振った。その後ろには短パンをはいた少年、丈の短いワンピースの少女、そしてこの中で一番年上だろうキャンプ道具を背負った少年が続いている。

一旦カフカをボールに戻して2番目の少女に近づけば、如何にも溌剌とした様子で手を振られた。

 

「2番手は私! 対戦よろしくね!」

「こちらこそ」

 

腰に戻したボールをまた適当にシャッフルして投げる。相手のポケモンはポッポ。んでもってこっちは、

 

「わあ、ロコンだ! 可愛い!」

 

図鑑No.37、きつねポケモンのロコン。さっきの虫取り少年相手であれば明確に弱点を突けたが、ノーマル・飛行のポッポにはタイプ相性的に等倍となる。やっぱりピカチュウやコイルは選ばなかったか。トキワのジム戦以降アシュラムやフラウが等倍や苦手タイプとバトルすることが多かったから、自分にも同じ条件を課しているらしい。

 

「頑張れ、ポッポちゃん! 『かぜおこし』!」

「ロコン、『ほのおのうず』で壁作れ!」

 

弾むようなステップと共に『ロコン』が火炎を吐き、その熱風と上昇気流によって折角巻き起こった風がかき消される。面白いくらい可愛い悲鳴を上げてくれた小鳥と少女に、ついつい口角を上げてしまう。

 

「よーし相棒、このまま全部勝ちに行こうか」

「コーンッ!」

 

という感じで、ちょっとばかし気合いを入れたのが良かったのか悪かったのか。いや少なくとも、悪いことじゃないのは間違いないんだけど。

 

「5人抜きおめでとう! いやー凄いねえ君! 快刀乱麻とはこのことだ!」

 

蓋を開けてみれば5人目から勝利をもぎ取るまでにかかった時間は正味30分弱。1人辺り5分ちょっと。タイプを等倍にしてもレベル差が大きすぎたのが一番の要因だ。何せレベル34のカフカに対して、相手のポケモンは一番高くても15くらいだったと思う。相性やトレーナーの技量、あとは運次第でひっくり返せるレベル差ではあるけど、それが出来るのはジムリーダークラスかそれ以上の実力者からだろう。

 

「しかもトレーナー1人にポケモン1匹での突破というのも凄まじい! 君のポケモンはよく育てられているなあ!」

「恐縮です」

 

実際は同じ1匹だからトレーナー5人にポケモン1匹なんだけど、余計なことは言わない。今回化けたのは順番にアーボ、ロコン、ゴース、バタフリー、ワンリキー。最近『ストック』に入れたばかりのネタを色々と試せたカフカは、今はボールの中で大層ご機嫌だ。

 

「それじゃ、これが豪華賞品のきんのたまだ! 改めておめでとう!」

「ありがとうございます」

 

本当に賞品コレなんかい。あ、でもこの人はロケット団ではない、よな?

 

「ちょっとお聞きしたいんですが、このキャンペーンというか、チャレンジ? これってそもそもどういうものなんですか?」

「ああ、別に大したことじゃないよ。この先の24番道路や25番道路は結構広い上に野生のポケモンも多いからトレーナーが多く出入りしていてね。折角だから集まったトレーナー同士でこういう催しをしたら面白いんじゃないかって声が出たんだ」

「あたし達みんなハナダのトレーナーで、これはボランティアみたいなものなの。だからメンバーも結構入れ替わるし、参加出来ない時は代役を立てたり、人数が増えたり減ったりすることもあるのよ」

「ちなみに景品は負けた挑戦者からの賞金と一部カンパで買ってます」

「今回は負けちゃったけどねー」

「へえ」

 

口々に教えてくれるトレーナー達に相槌を打ちつつ、大きめのビー玉くらいのきんのたまを鞄にしまう。きんのたまって何となく、本当に何となくドラ○ンボールくらいのサイズを想像してたけど、実際の大きさってこんなもんなんだな。マジモンの金だし、デカすぎても邪魔だから文句は無いが。

 

ちなみに補足しておくと、この世界において金などの貴金属やレアメタルの価値は、総じて前世世界のそれより安価だ。

理由は至極単純で、採掘量や生産量が前世世界よりだいぶ多いから。例えば金でいうと、前世の私は2026年3月にぽっくりというかざっくり死んだんだけど、その少し前に純金1グラムあたり3万円を超えたというニュースが結構大々的に報道されていた記憶がある。一方でこの世界だと、今私が受け取ったきんのたま(推定50g)は売ればゲーム通り5000円かそのくらいにしかならない(十分大金だけど)。この世界でも金は確かに価値ある金属だけど、こういった町おこし未満の催しで賞品にされてしまう程度なのだ。

……いやうん、もし前世と同じ価値だったとしたら流石に受け取らない、いや受け取れないけどね。持ち運ぶのすら怖いわそんなん。

 

「ところで君、これから何処へ? この先にはハナダ岬か、ジムバッジをコンプリートした人しか入れないハナダの洞窟くらいしかないけど」

「目的地は岬の方向ですね。『岬の小屋』に用事があって」

「あーあそこか! 結構遠いけど1人で大丈夫かい?」

「ご心配ありがとうございます。でも平気ですよ」

 

昨日おつきみ山を越えてきたところだと続ければ、景品をくれた男性は勿論のこと今し方バトルした5人も少し驚いた様子だった。ヤマブキ方面から来たと思われていたらしい。

 

「山を単身越えられるトレーナーなら心配はいらないな。でも道中気をつけて!」

「頑張れよー!」

「またそのうち挑戦しに来てね! あたし達これから特訓し直すから!」

 

思い思いに激励をくれた彼らに手を振り返し、25番道路方向に向かう。何だか1話完結型アニメのエンディングみたいに爽やかなお別れになったが、今日のうちにまたこの道通るんだよなーと思うと若干気恥ずかしい。帰りはフラウに『テレポート』して貰おう。

 

「――――もん!」

「っと、お疲れカフカ。楽しかった?」

「もぉん!」

 

うきうきと弾んだ返事と共に、ぴょんと定位置に乗っかるぷにぷに。さっき言ったとおり相手とのレベル差は結構あったが、カフカには十分楽しかったらしい。まあ昨日の登山者達は疲れてたのもあって瞬殺決めてたもんね、ラプラスで。私から見ても今日は『へんしん』の精度も技のキレも良かったし、調子は上々と言って良いだろう。

 

「……へえ」

 

流石に細かいところまでは覚えていないが、ゲームではこの先ちょっとした迷路のような小道が続き、短い間隔でトレーナーが密集していた記憶がある。実際はどうなっているんだろうと思いを巡らせつつ先に進むと、広がったのは迷路ではなくちょっとした林道だった。きちんと均された道が1本、真っ直ぐ奥へと伸びている。

 

なーるほど、現実はこうなってるんだな。実際問題、テーマパークでもないのにあんな入り組んだ道作る必要ないもんね。

 

「折角だから、此処からはみんなで歩いて行こうか」

「もんっ」

 

なんとも散歩に丁度良さそうな一本道だ。森林浴がてらのんびり歩くのも良いだろうと、アシュラムやフラウをボールから出す。

 

「少しならその辺散策していいよ。でもあんまり道から逸れないようにね」

「ギャウ!」

「リルっ」

 

返事もそこそこにアシュラムが駆け出し、フラウがその後ろをふよふよと半分浮きながらついていく。トキワの森に比べればあまり探索しがいはないだろうと思っていたが、間も無くふたりの興奮した声が聞こえてきてちょっと驚いてしまった。

 

「どうしたー?」

「ギャオウ!」

 

「こっち来て!」と一声鳴くアシュラム。目立つ尻尾の炎を目印に小走りで追いつくと、両手一杯に何かを抱えたふたりが「これ!」と何かを差し出してくる。

 

「……おー、すっごい。大量じゃん。此処に落ちてたの?」

「ギャウ!」

「リルゥ!」

 

あれあれ、と彼らが指さす先にあったのは、背の低い広葉樹ばかりの中でよく目立つきのみの木。幹は1本なのに、枝には種類を問わない様々なきのみが鈴生りになっている。前世世界であれば植物学者が目を剥きそうな生態だが、この世界では一部の研究者を除いて「そんなもん」と認識している世界の七不思議(私調べ。そしてポケモン関連除く)だ。

 

「お手柄だよ、ふたりとも。ありがとうね」

 

というわけで、取り出したるはきのみであれば腐らせることなく年単位で保存し続ける摩訶不思議な『きのみケース』。集められたきのみ達を無造作に放り込んでから、フラウとアシュラムの頭をぐりぐり撫でてやる。すると向こうからも「もっと」とばかりに額を押しつけてくるのが、なんかもう本当に可愛い。

 

「全部毟っていくと他の人の分がなくなっちゃうから、クラボとモモンだけもう少し貰って終わりにしようか」

 

ちなみに公道に生えてる木からきのみをとるのは合法なので、ジュンサーさんに怒られたりはしない。ただ「必要な人が必要な分だけ」という暗黙のルールはあるから、そこはちゃんと弁える必要がある。それと、

 

「おっと」

「! ナ、ナッゾ!」

「んっふふ……びっくりさせてごめんね。お先にどうぞ」

 

こうやってきのみを取りに来た野生のポケモンと鉢合わせることも珍しくないから、その点も少し注意がいる。目を付けたきのみが同じだったナゾノクサにモモンの実を手渡すと、ざっそうポケモンは器用にもそれを頭に乗せて去って行った。

 

「可愛いねえ」

「もん」

 

その小さな後ろ姿を見送ってから、目的のきのみをひとつふたつと拾い集めて先に進む。道は一直線だったので特に迷うことはなく、ついでにバトルを挑まれることも想像よりだいぶ少なかった。どうやら岬だけで無くこの辺り一帯がデートスポットになっているようで、ポケモンバトルよりも隣のパートナーに夢中な人が多い。

 

「なんでこんなリア充の巣窟に1人で住んでんだろうねえ」

「もんもー?」

 

思い描くのは訪問先にいる人物、通称ポケモンマニアのマサキ。ゲームでは誰もが世話になるポケモン預かりシステムを制作した物凄いエンジニアだが、出番自体は多くない。アニメでも出ていたはずだけど、それも私の知る限り1回こっきり(再登場してたら申し訳ない)。確か出身はジョウトだった気がするが、その辺記憶があやふやだ。ポケスペだとイエロー編で結構出番が多かったような……うん、そっちもあんまり覚えてないな。

 

ただそんな出演回数そのものは少ない彼も、初登場時のインパクトはだいぶ強烈だった。初代ポケモンをプレイして『マサキ』を覚えていない子供なんてそうそういないと思う。なんせ自分の作った機械の事故でポケモンと合体してしまうというトンデモ事件を起こしていた人物なんだから。

いやーほんと、ゲームボーイ時代は数種類しかなかったポケモンのドット絵に話しかけたら『こんちわ! ぼく ポケモン……』と人語を返された時の衝撃は、死んで生まれ変わった今も忘れられない。あれ、結局何のポケモンと合体して、分離した後は何処行っちゃったんだろうね本当。Switch版FRLGでもその辺は特に言及されてなかったし……。

 

「なんて考えてたら建物が見えて……あれが『岬の小屋』か。分かりやすいな」

 

遠くに見えるのが地平線ではなく水平線に切り替わってすぐ、建築物もひとつ見えてきた。近づいてみると『小屋』というには些か立派なサイズ。少なくともハナダシティのごく一般的な一軒家の1.5倍くらいはありそうだ。

専門ではないから完全に素人意見だが、絶対に個人のDIYで建てられるようなものじゃない。本当に、どういう意図と経緯でこんな何もないところにこれ建てて住んでるんだろう。少なくとも最後にやったFRLGではニシキという後輩に凄く慕われてたし、人間嫌いやコミュ障という様子は全く無い人だったんだけど……。

 

「ごめんくださーい」

「もんもーん」

 

当たり前だが、ゲームのように他人様の家に勝手に入ることは出来ないし、普通の家にはインターフォンがある。当然『岬の小屋』も例外ではなく、ごく一般的な形のそれを鳴らして応答を待つ。待つ。待つ。……待つ。

 

「出ないね?」

「ギャウ?」

 

もう一度インターフォンをポチッと押す。もう一度待つ。……音沙汰無し。

 

「留守?」

「……リルっ!」

「あ、いるんだ。トイレとかお風呂で出られないだけかな?」

 

フラウが断言するなら在宅なのは間違いない。居留守を使われる理由に心当たりはないし、もう少し待ってみるとし

 

「フィー……?」

「ん?」

 

ふ、と顔の上に影がかかるとほぼ同時に、耳に馴染みのない鳴き声が頭上から聞こえた。人見知りの子供が小さく「どなたですか?」と隠れながら問いかけるような響き。なんとはなしに視線を上げれば、まるで猫がそうするように屋根の上で香箱座りをしている見知らぬポケモ、

 

「っっっぁあ゛あ゛あ゛あ゛あ゛おったぁ――――――!!!!」

「うわうるさっ」

 

その場にいた全員がほぼ同時に自分の耳を塞いだ。近所に誰もいないから良いものの、市街地なら間違いなく苦情もののクソデカボイスが放たれた方を見やる。窓から上半身を乗り出すような格好をした若い男が、私……ではなく屋根上のポケモンを凝視している。

 

「そこの君! 今そっちいくさかい、そのポケモンが逃げんよう見張っとってくれ!」

「へ?」

「頼んだで!!」

 

急になんやねん、とツッコむ間も無く引っ込んでいく青年。ぽかんとする私達。寛いでいた頭上のポケモンはすらりとした体を起こすと、そのまま屋根を横切って反対側へ……

 

「いやそれは駄目だって」

「リル!」

「フィア!?」

 

フラウの『ねんりき』によってころんと持ち上げられたポケモンが、ゆっくりとこちらに降りてくる。驚いて硬直している体をよいせと受け止めれば、思ったよりしっかりずっしり重い。先程は猫と喩えたが、小柄なチーターくらいかも知れない。まあ、見た目は猫と似ても似つかないけど。

 

「フィア……っ」

 

暴れはしないものの、何処か不安げな様子でこちらを見つめる水色の瞳に、「大丈夫だよ」と声をかけてみる。何が大丈夫なんだよと自分でも思うが、少なくとも私はこの子を虐める気は無いし、この家の主だってきっとそれは同じだろう。

だから大丈夫。怖いことも、不安に思うこともきっと無い。

 

「……フィ」

 

やがて小学生男子が立てるような騒がしい足音が近づいてきて、ドアが勢いよく開かれる。髪も服もあちこち乱した若い男が、うっすら汗ばんだ顔にそれでも安堵の笑みを浮かべて見せた。

 

「まっさか外に出とったとは気づかんかったわ。わいも悪かったし散歩するんはええけど、何も言わんといなくなるのは堪忍やで。な、イーブイ?」

「フィ……」

 

しょんぼりと長い耳を垂らすポケモンは、青年の手にされるがまま撫でられている。何があったかは知らないが、取り敢えずこの1人と1匹に致命的な問題があったわけではないらしい。そのこと自体は他人事ながらとても良いことなんだけど、それはそれとして

 

「すいません、この子ってイーブイなんですか?」

 

私の知ってるイーブイとは見た目もサイズも鳴き声も全然違うんだけど、マジで?

腕の中のポケモンと青年を交互に見比べながら口を挟むと、ポケモンとそのおやであろう青年……暫定マサキは色も形も違う瞳を殆ど同時にぱちくりとして見せた。

 

…………このきょとん顔、確かにちょっとイーブイの面影あるかも知れない。

 




《後書き》
エセ関西弁へのツッコミはナシでお願いします(土下座)。


《キャラ設定》
○マリステラ(リスティ)
・年齢:11歳
・性別:女
・特記事項:イーブイの進化形は5種類(第2世代)までしか知らない

【所持ポケモン(参入順)】
・メタモン(カフカ):―/Lv.34 → 35
・キルリア(フラウ):♀/Lv.28
・リザード(アシュラム):♂/Lv.29

○ゴールデンボールブリッジチャレンジのメンバー
・特記事項:トレーナー5人と景品を渡す1人の計6名

○マサキ
・年齢:25歳(捏造)
・性別:男性
・特記事項:自己紹介していないのでオリ主に『暫定』とされた。ちゃんと本人
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