主人公じゃない私のポケモンワールド異聞録(5/24改題)   作:時緒

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色々考えたんですが性格・味の好み・ステータスの成長性がマトリクス関係になるのは
ポケモン=生き物と考えた場合些か不自然なので無いものとして扱っています。


01-1. まさかの3人目エンカウント・前編

マサラタウンとトキワシティ。

 

ゲームならちょっと草むら生い茂る一本道を歩けばほんの十数秒で辿り着く距離だけど、当然現実はそんなものじゃない。ゲームでは建物3軒しかないマサラタウンが『何もないけれど特別不便でもない田舎町』であるように、1番道路はそこそこ長いし、車が通れるようにきちんと整備もされている。勿論横道にそれて草むらや少し離れた森林地帯に入れば、ゲームのように野生のポケモンにちょっかいをかけたりかけられたりの道中となる。

 

1番道路にいるのはコラッタとポッポ……だけでなく、たまににその進化形、更にごく稀に余所から流れてきた高レベルのポケモンも出てくることがある。この辺もゲームとは大きく違うところだ。とはいえ1番道路は10年のマサラ生活で大体知り尽くしているので、今更探索するところはほぼ無い。

 

そんなわけで、マサラタウンからの出発までに随分時間をかけてしまった私は、敢えて寄り道はせずトキワシティに行くことにした。途中、遠くの方で「いけ、ゼニガメ! 今度こそ勝てよ!」とか「ふ、ふふフシギダネー! そっちじゃないあっち! あっちだって!」とかクソガキ共の悲鳴らしいものも聞こえてきたが、あまり切羽詰まっていない感じだったのでスルーした。自分から厄介ごとのタネを背負い込む趣味はない。

 

「すみません、宿泊手続きお願いします」

「もぉんっ」

「はい、承ります」

 

ポケモンセンターの窓口で事務員さん(ジョーイさんの他にちゃんといる)にトレーナーカードを提示する。にこやかに受け答えしてくれる彼女とも実は顔見知りだ。マサラタウンとトキワシティは結構交流が深い。

 

「宿泊日数はどのくらいですか?」

「ええと、ひとまず1週間」

「えっ、1週間?」

 

暗に「そんなに長く?」と言いたげな事務員さんの気持ちは、まあ分かる。彼女は別に私を追い出したいわけではなく、単にトキワシティという町に、新米トレーナーが長く留まる理由がないからだろう。

 

……トキワジムがまともに運営されていればそんなことも無いんだけどね。

 

「少しやりたいことがあって、暫く町の付近やトキワの森を散策したいんです。あそこのピカチュウ達にも会いたいし」

「成る程。それはとても大切ですね」

「はい、そりゃもう」

 

クスクスと小さく笑い合っていると、ナースキャップを被ったラッキーが何やら手に何かを握らせてきた。……個包装のひとくちチョコレートが4つ。

 

「トレーナー認可おめでとうございます、有意義な旅になるようお祈りしていますね」

「……ありがとうございます。いただきます」

 

ありがとうね、とラッキーのまあるい頭を撫でれば、「らぁっき!」と左肩のカフカごと軽く軽くハグされた。見た目はお腹の卵みたいに丸っこいが、回された腕は力強い。流石は看護師、毎日の激務で鍛えられているんだろう。

 

「貰っちゃったね。どうする? 今食べる? それとも後に取っとく?」

「もん!」

「すぐ食べたいのね。じゃあお昼も近いし、これはデザートにしようか」

「めぇた、もーん!」

 

早く早く、とよだれを垂らさんばかりの相棒に急かされつつ、センター近くのファミレスに入る。マサラタウンにも個人経営の飲食店は幾つかあるが、此処のような全国チェーン店は参入していない。トレーナー御用達のフレンドリィショップといい、こういうところに『タウン』と『シティ』の差を感じる。

 

……あ、でもシオンタウンとグレンタウンはショップもポケセンもあったな。まあいいか。

 

「カフカ、コレ持ってテラス席取っておいてくれる?」

「もんっ!」

 

ポケモンも食べられるサンドウィッチと飲み物のセットを4つ頼み、まだまだ少なく小さな手持ち達を席に座らせる。この店には何度も来たことがあるからカフカとフラウは落ち着いたものだが、トキワシティも外食も初めてらしいヒトカゲは好奇心の赴くままにきょろきょろしていた。可愛い。

 

「お待たせ。じゃあみんな、まずはここまでの道中お疲れ様でした。いただきます」

「もぉん!」

「らるっ!」

「ケ、クゥー?」

 

ぱちん、と全員に見えるように手を合わせれば、先輩2匹は慣れた様子で、新入り1匹はそれを見ながら「こう?」と言わんばかりに同じようにする。「上手上手」と頭を撫でてやってから、「食べていいよ」と全員を促した。

 

「カゲっ!」

「お、美味しかった? そのプレートのはヒトカゲのだから、ひとりで全部食べていいよ」

「クッ!? クケーっ!」

 

外食も初めてならサンドウィッチも初めてだったらしい。一口食べてみるみる目を瞠ったかと思えば、ガツガツと音がする勢いで食べ進めていく。ごく普通のBLTサンドとオレンジジュースだけど、気に入って貰えたなら何よりだ。

 

「……ふむ」

 

自分のアイスコーヒーを啜りつつ、100%オレンジジュースの甘酸っぱさにも驚くヒトカゲの様子を改めて見やる。彼の正直な反応が面白いやら庇護欲を唆るやらで、カフカはにこにこしながら自分のタマゴサンドを分けてやっているし、フラウは紙ナプキンでちょくちょく食べ滓を取ってやっている。早くも良い関係を築けていて何よりだ。

 

どれどれ、と『大事なもの入れ』に入れておいたポケモン図鑑を改めて開き、ヒトカゲに向けてみる。

 

『No.004 ヒトカゲ』

『ぶんるい:とかげポケモン』

『タイプ:ほのお』

『しっぽの ほのおは せいめいりょくの あかし。げんきだと さかんに もえさかるが はんたいに すいじゃくすると ちいさくなる。ほのおが かんぜんに きえたときが ヒトカゲの いのちの おわりである』

 

うーん、この恐ろしいことをサラっと述べる容赦のなさ、これでこそポケモン図鑑。

……いやまあ、ヒトカゲの炎が何であるかはヒトカゲを選んだトレーナーにとって必須だから、この説明は寧ろ無きゃ困るんだけど。

 

「……お?」

 

ページ切り替えのマーク出てるな。どれどれ。

 

『レベル:4 せいべつ:♂』

『とくせい:もうか』

『であい:XXXXねんXXがつXXにち マサラタウンで であった』

『おや:マリステラ』

 

なるほど、一般的な生態を除いた個体そのもののデータはこっちに出てくるのか。あ、身長と体重も出てきた。確かにゲームと違ってこれは個体ごとに結構変わるよね。

 

面白くなって隣のフラウ、次にカフカへと図鑑を向けてみたが、彼らと出会った日時や場所は表示されなかった。画面はドットが荒くて漢字がほぼ使えないくらいなのに、私が手にした瞬間以降のデータはリアルタイム更新されるらしい。面白いなコレ。マサラタウンでは操作確認がメインだったし、レッドとグリーンがどんどん身を乗り出してくるからあんまりじっくり画面見られなかったんだよね。

 

ちなみにゲームにそんな機能は当然ないが、出会いの情報は自分で追記出来るらしい。こういう地味な心遣いは非常に嬉しいので、カフカとフラウの出会いについては私が直接書き込んでおくことにした。ちなみに書き込みは流石にプッシュボタン式だった。

 

……うん、まあこんなもんでしょ。

 

取り敢えずパンが具材の水分を吸いきらないうちに私も自分のサンドウィッチを食べ終え、先程ポケセンで貰ったチョコレートを1つずつ配る。甘いものが大好きなカフカとフラウはひとくちチョコを文字通り一口で食べて幸せそうに表情を緩め、チョコレートも初めて見たらしいヒトカゲは茶色い小さな塊を暫くおっかなびっくり見つめていた。

 

が、先輩2匹が美味しそうに食べたのと、私が「あんまり握ってると溶けちゃうよ」と教えたことで「ええいままよ!」とばかりに口の中に放り込み、

 

「カ~ゲェ~♡」

 

と、今までで一番の甘えた声を出した。心なしか「あまぁ~い♡」という日本語訳が聞こえた気がしたのは多分、気のせいではないだろう。

 

そういえば、ゲームではポケモンの性格ごとに好きな味と伸びやすい(伸びにくい)ステータスが決まっていた記憶がある。チョコレートへの反応を見る限り今のところみんな甘い物が好きなようだけど、この世界でもあのシステムって有効なんだろうか。

 

少なくとも覚えている限りアニメでは全く関係なさそうだったし、進化前と後で性格が変わるポケモンもちょいちょいいる。仮にあったとしてもそこまでシステマティックではない気がする。そもそも人間でもポケモンでも、性格なんてそんな『せっかち』とか『真面目』とか一言で表せるもんでもなし。

 

……いやそれ以前に、私が性格と好みとステータスの関連をほぼ覚えてない以上、仮に有効だったとしても活かせないわ。考えても無駄だった。ハイハイ終わり終わり。

 

「もんもん?」

「? いや大丈夫、考え事してただけだから」

 

左隣の席でお行儀良く座っていたカフカに促され、私も自分のチョコレートを食べる。うん美味しい。今も昔も前世も今世も、チ○ルチョコのお手軽なおいしさは正義だ。

 

「ヒトカゲ、ご飯美味しかった?」

「クー!」

「そっかそっか。普段はどうしてもフーズが多くなっちゃうけど、時々はこういうご飯も色々食べようね」

「カゲッ!」

 

元気よく返事をした後、まだ三分の一ほど残っていたオレンジジュースをご機嫌に吸い上げたヒトカゲ。チョコレートの後に飲んでしまったせいで急に増した酸味に驚いたらしい彼に、「水飲んだら味が戻るよ」と教えてやる。するとこれまで手を付けていなかった氷水を勢いよく飲み始めたので、なんだか面白くて笑ってしまった。

 

「さて」

 

お店はお昼時を少し外しただけあってまだそこまで混んでいない。今のうちに今後の予定を立てるべく、図鑑を閉まって手帳を取り出す。ちなみに私、昔から手帳やスケジュール帳はアナログ派だったりする。

 

「まずは今後1週間のタスクを優先度順にして、と」

 

 □不足品の買い出し

 □ポケモンのデータ採取

 □レベリング(13以上)

 □通院

 □新戦力の確保

 

……こんなところか。今日出来ることは買い出しだけかな。データ採取も出来るっちゃ出来るけど、トキワに隣接してる道路近くの草むらは出現ポケモンほぼ変わらないし、だったら明日以降トキワの森に向かいがてら野良トレーナーと戦いながらやる方が効率良いだろ。今日はヒトカゲが初陣だったし、初日から飛ばしすぎるのは良くない。

 

あ、ヒトカゲといえば。

 

「ねえ、ヒトカゲ」

「カァゲ?」

 

今のは「なーに?」って感じかな。こてんと首を傾げるヒトカゲが、くりくりした瞳でこちらを見上げてくる。コップをちょこんと持つ手の爪はまだまだ小さく、両足のそれと比べれば頼りない。尻尾の炎は勢い十分で、全身を覆うオレンジ色の鱗は一枚一枚がつやつやだ。ゲームではほぼ分からなかったけれど、やはり『火蜥蜴』なんだなと思う。

 

順調に育ってリザードになれば今より少し恐竜っぽい見た目になり、リザードンになればドラゴンと見紛うような翼持ちになる。子供の頃に夢中でプレイした『ポケットモンスター』のパッケージを飾っていた姿は、今もまだ忘れていない。

 

あの、目にも鮮やかなオレンジ色。

 

「アシュラム」

「?」

「君のことだよ、アシュラム。私が、君に贈りたい名前」

「……カゲ?」

「そう。カフカやフラウみたいなニックネーム。君が嫌じゃないなら、私は君をこれからそう呼びたいんだけど、どうかな?」

 

実のところ、ニックネームを嫌がるポケモンは稀にいるらしい。種族名で呼ばれることを望み、呼ばれたくない愛称を繰り返すトレーナーから逃げ出してしまったポケモンの例もあるそうだ。

 

カフカもフラウも、私の名付けを嫌がったりはしなかった。だけどヒトカゲもそうとは限らない。別にニックネームに特別拘りがあるわけではないので、嫌ならこれからもヒトカゲと呼ぶだけだ。

 

「…………カゲェッッ!」

「おっと!」

 

テーブル越しに飛びついてきたヒトカゲをどうにか受け止める。勢いがよすぎて椅子ごと後ろに倒れかけたけど、真横にいたカフカが危なげなく止めてくれた。ついでに倒れかけたグラスはフラウが『ねんりき』で捕獲してくれている。

 

ありがとうふたりとも、うちの子ほんと出来る子で私は嬉しい。

 

「……ええと、喜んでくれたってことでいいのかな?」

「カッゲ!!」

「うん、良いお返事。じゃあアシュラム、改めてこれからよろしくね」

「カゲー!!」

 

よしよし、元気で何より。だけどもうちょっと落ち着こうか。今の大声でお店の人みんなこっち見てるから、なんかすっごい微笑ましそうにされててちょっと居たたまれないから。

 

 




《キャラ設定》
○マリステラ(リスティ)
・年齢:11歳
・性別:女
・身長/体重:未設定だが身長は平均より高い
・外見:灰色がかった銀髪ロングヘアと左右ともに黄色みが強いアースアイ
・特記事項:ゲームでは個体値も特性も性格も気にしたことがなかったエンジョイ勢

【所持ポケモン(参入順)】
・メタモン(カフカ):ー/Lv.??
・ラルトス(フラウ):♀/Lv.9
・ヒトカゲ(アシュラム):♂/Lv.4
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