主人公じゃない私のポケモンワールド異聞録(5/24改題) 作:時緒
「ブッキャァァア!!」
白い塊が叫び声を上げ、なかなかの勢いで突っ込んでくる。起点から機動は真っ直ぐで、止まる様子は微塵もない。
「アシュラム、頭下げて、踏ん張って――『ひのこ』!」
「カゲーッ!」
万が一勢いを殺せず突っ込んでこられても避けられるように屈んだ姿勢を取らせたが、既に弱火の『かえんほうしゃ』くらいの勢いを持った『ひのこ』は突撃してきた塊の勢いを容赦無く殺した。白い毛並みを焦がしてプスプスと音を立てた塊――野生のマンキーは、ぱちくりと何度か瞬きをした後バタリと倒れ込んだ。
「し、勝負あり……です! 勝者、マリステラさんとアシュラム!」
「カァ、ゲ!!」
「おーし、よくやったねアシュラム。お疲れ様」
「ケー!」
満面の笑顔で私にガッツポーズを向けてくるアシュラム。軽く握った右拳をそっと差し出せば、同じように右手をグーの形にしてコツンとぶつけてくれた。うちの子は今日も抜群に可愛い。
――ピロリン♪
「お、レベル上がった。……うん、これでアシュラムも目標達成だ。頑張ったね」
えらいえらい、と頭を撫でてやると、いつも通り私の左肩に控えていたカフカも同じように弟分の頭をよしよしし始める。そうすると少し離れたところでバトルを見学していたフラウも私達の真似をして、メンバー総出で頭を撫でられたアシュラムはうれし恥ずかしといった様子で赤らんだ頬を両手で押さえた。うーん、やっぱり可愛い。
「フラウ、アシュラムの手当お願いできる? あっちは私がやるから」
「ラルっ」
鞄から出したきずぐすりをフラウに持たせ、次にきのみケースを取り出す。野生の木から採取しておいたオレンの実を2つ掴み、辛うじて気絶はしていなかったマンキーに渡した。
「ナイスファイト、ボス。いつも付き合ってくれてありがとうね」
「……ブキッ」
顔をぷいと逸らしつつ、しっかりきのみを受け取って食べ始めるマンキー。オコリザルの進化前だけあって、好戦的ながらもまだ『めがあっただけで おこりだす』程の短気さは無いのが幸いだ。
「ボス、さっきの動きとっても良かったよ! 昨日より反応速かったよね!」
「……ブキィ?」
「あっ、その顔! 今絶対『お前なんかにわかるのか?』って思ったでしょ!? 私だってもう4日も君達のバトル観てるんだからね!?」
「…………ブキャッ」
「え、何今の笑い!? 今笑ったよね!? ねえってば!」
へんっ、と文字通り『鼻で笑って』みせたマンキーに文句をたれるリーフだが、手に持ったブラシを動かす手は止めない。煤けてしまったマンキーの毛から徐々に黒い汚れが落ちていき、本来の少しだけ黄色みがかかった白さを取り戻していく。
トキワシティとセキエイ高原を結ぶ22-23番道路。この世界のこの場所には、ゲームのFRLGと同じように野生のマンキーが生息している。中でも私達が「ボス」と呼ぶ彼は他のマンキー達より一回りほど大きく、ここら一帯のマンキー達のリーダー的存在だ。マンキーはその気性の荒さから通常あまり群れを作らないが、彼のように突出した大きさや強さを持つ個体が現れた場合はその限りではないらしい。
それにしても。
「リーフがこんなにボスと相性良いとは思わなかったな」
「え? そ、そうですか?」
「うん。今のその様子からじゃピンとこないかも知れないけど、ボスはこの辺のマンキー達の中では一番警戒心が強いんだよ。バトル大好きだから人間に近寄っていくことは珍しくないけど、普通ならブラッシングどころか手当だってさせないからね」
今こうやってバトルの練習をさせてくれているボスだけど、それは私達と彼が何だかんだ数年の付き合いだからだ。まだ手持ちがカフカしかいなかった頃、トキワへのおつかい帰りに何となく寄り道した22番道路の物陰で、毒を受けて倒れていたマンキーがボスだった。
そのときはたまたま手元にあった毒消しで呆気なく事なきを得たけれど、そのたった一度の恩義で彼が私に懐いた……なんて都合の良い展開は当然なく、毒が身体から消え去るや否や、彼は私とカフカから一目散に逃走したものだ。
まあ、その後も度々負傷した彼を私が見つけて手当てすることが続いた結果、今のような『野生のバトル練習相手』と呼ぶしかない奇妙な関係に落ち着いたわけなんだが。
「そういえばリーフ、今日はお昼持ってきてる?」
「はい、大丈夫です!」
「じゃあ町に戻る必要はないか。昼食は森に着いてからでいい?」
「はい!」
よっこらしょと草の上から立ち上がると、移動の気配を感じたアシュラムが私の鞄を持って駆け寄ってくる。受け取りがてら「ありがとう」と頭を撫でれば、嬉しそうに微笑んでボールへと戻っていく。
「アシュラムに譲ってくれてありがとね、フラウ」
「ルルゥ?」
いつもこういうときは率先して荷物を運んでくれるフラウは、私の言葉に「何のこと?」と首を傾げた。こういうのをあざと可愛いって言うんだろうな。追求するのも野暮なので、アシュラムにしたように頭を撫でておく。うちの子みんな可愛い。
「さ、じゃあ行こうか。ボス、またそのうちよろしくね」
「またね、ボスー!」
「ブッキー!」
挨拶代わりのファイティングポーズに見送られ、文字通りの獣道(ポケモン道?)をガサガサかき分けつつ北東に向かう。時々野生のコラッタやポッポ、オニスズメが遠巻きにしてくるが、襲いかかって来ない限りは特に気にすることもない。
「リーフ、足下大丈夫?」
「だ、大丈夫です。流石に慣れまし……わっと!」
おっと言わんこっちゃない。
絡み合った草に足を取られかけたリーフの手を捕まえる。2歳差とはいえ勢いも手伝ってそこそこの重力がかかるが、これで釣られて転ぶほど私も柔な鍛え方はしていなかった。
「大丈夫?」
「は、はい……すみません。ありがとうございます」
「どういたしまして。さ、あとちょっとだからもう少し頑張ろうか」
「はい!」
草を踏みならしながら目的の方向にずんずん進んでいけば、やがて周囲を取り囲む植物の種類や樹齢が少しずつ変わっていく。まだまだ緑の淡い若木ではなく、年月を経た大樹に。
そして地表を踊る根っこの間や枝の上から顔を出すポケモンがコラッタではなくキャタピーやビードルに変わったなら、ここはもうトキワの森の中だ。
「よし、到着。スプレー撒いて休憩しようか」
「やった!」
2番道路から森に入ったトレーナー達があまりやってこない場所にある、中くらいのテントなら十分広げられる程度に開けた平地。本道から大きく逸れたそこは、ボスに教えて貰って以降絶好の休憩スポットとなっている。広げたレジャーシートと自分達の身体にゴールドスプレーを惜しみなくかけてから、私達は殆ど同時にそこへ座り込んだ。
「ところで、どう? 新米トレーナーに引っ張り回されるフィールドワークの感想は?」
知り合って今日で5日目。図鑑データ収集のためトキワ周辺を散策し始めて4日目。トレーナーズスクールの授業に飽きて実地体験を求めていると踏んで以降ずっとこうして付き合って貰っているが、きちんと所感を聞いたのはこれが初めてだ。今のところヤバい怪我はしていないし、文句らしい文句は一度も出たことがなかったけど。
「…………楽しいです、すごく」
大きめに握ったおにぎりに食いついていた彼女は、行儀良くそれを飲み込んでからにこりと微笑んだ。
「スクールは通信だからどうしても座学が中心だし、たまの登校日にレンタルポケモンでバトルしたりはしたけど、自分のポケモンでもないしイマイチ実感が湧かなくて……。でもこの4日間だけで、活きた知識というか、なんでも教科書通りにはいかないんだなって、当たり前のことをハッキリ理解出来た気がします」
たとえば、と囓りかけのおにぎりを置いて、指折り数え始める。
「人間が整えた道を逸れて草むらを歩くのがこんなに大変だとは思わなかったし、遠くから見たことしかなかったコラッタがあんなに素早いなんて知りませんでした。ポッポやオニスズメも、正直似たようなものだと思ってたけど見た目も性格も全然違って……それから、虫ポケモンって写真で見るよりずっと可愛いんだなって驚きました」
「……可愛かったんだ?」
「はい! 今あそこで覗いてるキャタピーとか、もし手元にボールがあったらすぐゲットしにいきたいくらいです!」
勢いよく断言するリーフの表情に無理は見当たらない。真正面から彼女の言葉を私はというと、実はちょっと感心してしまった。
ポケモンという不思議な生き物たちと人間が隣り合わせで生きているこの世界において、「私はポケモンが好きです」という自己紹介は、される側にとって少し困る。何せご存じの通り、ポケモンはそのタイプが18種類もあり、ふわふわきゅるんきゅるんの可愛さ全振り系から、一般受けしにくい虫タイプや毒タイプまで様々だからだ。
分かりやすい例を挙げるなら、可愛いメイクにゴテゴテのネイルをしたキャピキャピ系女子が「私ぃ♡ どーぶつって大好きなんですぅ♡」という自己紹介をしたとして、それを真に受け「そうなんだ! 僕のうちに珍しい寄生虫の標本が沢山あるから見においでよ!」なんて返しをしたらどうなるか、って話だ。この女の子が言う『動物』は『毛がふわふわで小さくて可愛くて、何もしなくても私に懐いてくれる都合の良い生き物』であり、本当に文字通りの『動物ならなんでも』という意味ではないのである。
……なーんて書くと如何にもこの女の子が悪者みたいだが、「動物好きなら寄生虫でも微生物でも愛せよ」なんて意見は十二分に過激派のそれだと私は思う。アニポケ初期のヒロイン……いやあれヒロインか? ちょっと微妙だが、主人公サトシと旅を共にしたカスミだって虫タイプが大嫌いだったハズだ。実際、虫タイプを扱うトレーナーは男性が圧倒的に多く、扱いの難しい毒タイプはどの世代からも倦厭される傾向にある。というか、下手な知識で毒タイプのポケモンと関わることは死を意味するので、最初から遠ざけてくれる方がまだマシまである。
現役のトレーナーだってそんなもんなんだから、まだトレーナー『志望』でしかないリーフの懐の広さに対して、私はあまり期待をしていなかった、のだけども。
「流石は女主人公ってことか」
「? すみません、よく聞こえませんでした」
「いや大丈夫。独り言だから」
寧ろ聞かれてたらヤバかったわ。危ない危ない。
「あ、でも一番発見が多かったのはやっぱりマンキーですね! テキストには凶暴で素人には扱いが難しいって書いてあったんですけど、ボスや群れの子を見てると決してそれだけじゃないっていうか、彼らなりに決めた秩序やルールをちゃんと守って生きてるんだなって思いました」
「最初に顔合わせたときはだいぶへっぴり腰だったもんね。虫は平気なのに」
「そっ、それは言わない約束じゃないですか!」
「初耳だなあ、そんな約束は」
集めたきのみとフーズを合わせた食事をかっ込む手持ち達を順繰りに撫でつつ揶揄えば、頬を赤らめた少女が「もう!」と頬を膨らませる。「ミルタンクかな?」と追撃しようかと少し迷ったけど、これ以上はちょっと可哀想なのでやめておくことにした。
「でもま、実際トレーナーとして旅に出るならこういう場所は入れた方が絶対いいから、苦手意識は無いに越したことはないよ。強いポケモンや珍しいポケモンは、なんでか大抵人が入りにくいところにいるしね」
「珍しい……ピカチュウとかピッピとかですか?」
「そう。あとはまあ、カントーだとラプラスとかね」
特にラプラスは近年、ロケット団やポケモンハンターの密猟でその数を大きく減らしている。極めて利口かつ温厚な彼らはより広大な海の向こうや人の手が届きにくい難所に姿を隠してしまい、ここ数年は目撃情報すらなかなか出回らない。
……なんて暗い話題は、少なくとも今出す必要はないので黙っておくとして。
「珍しいポケモンは何となく分かるんですけど、強いポケモンも人目に触れにくいのはどうしてなんでしょう?」
「説は色々あるけど……個体として強いと色々なトレーナーに狙われるでしょ? そういうのが煩わしくなるからじゃないかと私は思ってるよ」
実際のところはポケモンそれぞれの事情によるだろうし、一概にコレと決めつけられるものではないと思う。それに、中にはあのボスみたいにガンガン人前に出てきてバトル経験値を積もうとする奴もいるし、強い個体ならみんな人間から隠れているかと言われたらそうでもないのだ。
「そういえば、マリステラさんはボスをゲットしないんですか?」
「しない」
考える間もなくコンマで出した答えが余程意外だったのか、リーフがぱちくりと目を瞬かせる。驚く彼女に対し、私は思わず苦笑いを浮かべてしまった。
「あっちにその気無いからね」
「あっちって……ボスのことですか?」
「うん」
先程説明した通り、ボスとの付き合いは負傷していた彼を度々私が手当てしてやったことから始まっている。
『負傷した』ということはつまり『誰かとバトルをした』ということ。そしてその傷を抱えたまま私達の前に何度も現れたということは、すなわち『近寄らせる相手を選んでいる』ということだ。彼を負かした相手の中には確実にトレーナーのポケモンも混ざっていたハズだが、その相手からは毎度逃げおおせているんだろう。
そんな彼が自分の身体を触らせてくれる時点で、確かに私は気を許されている。が、それでも私に対し「手持ちになってやってもいいな」という気持ちにはなれないらしく、以前一度聞いてみたときは両手で大きく×印を作って拒否されたものだ。
「ま、ボスにはバトル以外でも色々お世話になってるからね。この辺のきのみがなる木を一通り教えてもらったり、今通ってきた森までのショートカットルート案内してもらったり」
あとは気質がバトルに向かない上に「オーキド研究所で研究に協力してもいい」という個体を群れから送り出してくれもした。雌雄1匹ずつの一際小柄なマンキー達は今、名目上私の手持ちとして研究所の敷地でのんびり暮らしている。
「何度か手当てしただけにしてはこっちのリターンが大きすぎるくらいだよ。この上でまだボスの気持ちを無視して手持ちにするのは、それはもう裏切りの領域かなって」
「ポケモン側の気持ち、ですか」
「うん」
ポケモンがゲームのキャラクターだった前世と違い、れっきとした生き物であるこの世界。トレーナーにゲットされるということは、そのポケモンにとってそれからの生き方を捨てさせることに等しい。生活リズムは当然それまでとガラリと変化するし、バトルの数も増えるし、もしかしたら生まれ育った故郷の地を二度と踏まないかも知れない。
そんなことを一度考えてしまって以来、私はゲームのように片っ端からバトルでゲットしてそのまま手持ちに、という流れにどうしても抵抗を覚えるようになってしまった。大抵のトレーナーは一切気にしていないことをこうしていちいち考えてしまうのは、ぶっちゃけ前世の倫理観による弊害だと思う。あとはまあ……子供の頃毎週観ていたアニポケの主人公サトシが何度も披露していた『友情ゲット』への憧れもあるかも知れない。
が、だからといって今これをどうにかするには私の記憶を綺麗さっぱり消しでもしない限り無理なわけで。
少しの間悩んだ結果、他の人に強要しない代わりに、私は私でこのスタイルをできる限り貫くことにした。きっとこれから多くの人に不審がられたり苦言を呈されることもあるだろうし、いつでも必ず守れるわけではないだろうけど……それでもその方が多分、私はこの世界で呼吸しやすくなる気がするのだ。
「ま、大抵のポケモンはゲットした親をその時点である程度信用するから、そんなに真剣に悩まなくていいよ。私が気にしすぎてるだけなのは間違いないからね」
「……」
「トレーナーとしてのスタンスは千差万別だよ。ポケモンが嫌がることを強要するとか、言うこと聞かないからって食事抜いたりハラスメントしなけりゃまずは大丈夫大丈夫」
「そ、れは、なんというか、当たり前っていうか……」
「その当たり前すら出来ない奴が世の中には一定数いるんだよ」
ロケット団とかロケット団とかロケット団とかな。……ていうか。
「何かカッコよく聞こえたかも知れないけど、単に『モチベが低い奴はお呼びじゃない』ってだけだからね? 考えてみて欲しいんだけど、ボスの方にやる気が無いのに無理矢理手持ちに入れたところで、いざってときにフルパワー出してくれるわけなくない? そしたら困るの私だよ? どうすんの、バッチ取得がかかったジムリーダー相手に繰り出した途端、横になって鼻ほじって居眠りとかし始めたら」
「………………それは困りますね」
「でしょ?」
大袈裟と言うなかれ。私はリザードンの試合放棄によりサトシがポケモンリーグ敗退したシーンをリアタイしているのである。
「だから私達はこれでいいの。おーけー?」
「…………ふ、ふふ! はい、オーケーです」
ようやく笑顔に戻ったリーフに内心ほっとする。やっぱり柄にもなく真面目な話なんてするもんじゃないね、そんな立派な人間でもないってのに。
「さて、そろそろスプレーも切れるし片付けようか。今日はスピアーの縄張り近くまで行くから、フラウの側から離れないように」
「スピアー……は、はい! 分かりました!」
若干おセンチになっていた脳をフィールドワークモードに切り替えて今回の目的を告げる。トキワの森ではぶっちぎりで危険度の高いポケモンの名前を聞いたからか、リーフもいつもの調子に戻ってきたようで何よりだ。冷や汗をかきつつも嫌がる様子は見せないリーフにやはり将来有望っぷりを感じつつ、トキワ滞在予定のあと3日であとは何を教えられるか今のうちに考えることにした。
――――ところで。
初期のアニポケを観たことがあるなら、トキワの森でサトシがスピアーに追いかけられる話を覚えている人も多いのではないだろうか。サトシが最初にゲットしたポケモンであるトランセル(ゲット時はキャタピー)が、サトシを庇ってバタフリーに進化した回だ。それでなくともスピアーはモチーフがスズメバチということもあり、攻撃性が高く集団で襲ってくるイメージが強い。……そして、そのイメージは決して間違いではない。
だからこの後の私達もお約束の如く何かでドジってスピアーに追い回されるのではないかと、そんな想像をした人ももしかしたらいるかも知れない。が、この場でハッキリ断っておくと、そんなことは別になかった。
なんでかと言えば、私の手持ちにはラルトスのフラウがいるからだ。『きもちポケモン』に分類される彼女は人やポケモンの気持ちをツノでキャッチする性質が知られており、同時にエスパータイプらしく『さいみんじゅつ』も使える。そんな彼女の手にかかれば、先にスピアーの居場所を察知し、遠隔から『さいみんじゅつ』を使ってスピアーの敵意を喪失させることなど朝飯前というわけだ。タイプ相性的にも強いしね。
「エスパータイプってすごぉい」
「いざってときはテレポートで逃げられるしね。旅のお供にひとりいてくれたら安心じゃないかな」
ラルトスは一番近いところでもホウエンまで行かないといけないけど、ケーシィならハナダシティ周辺によくいるから比較的見つけるのは簡単だ。まあテレポートでめっちゃ逃げまくるから捕まえるのは骨だけど。
「前向きに検討します」
ブブブブ……と少しぞわぞわする羽音を立てながら横切るスピアーを気にしてか、ぼそぼそと答えるリーフの真剣な顔が少しおかしい。笑ってしまわないように気をつけていたが、カフカとフラウが揃ってクスクス笑い出したので、結局つられて少し吹き出してしまった。
「な、なんで笑うんですか!」
「ごめんごめん」
小声で叫ぶ、という器用な芸を披露したリーフにまた笑いそうになりつつ、私達は無事に今日の調査を終えた。最後までスピアーはこちらに攻撃してこなかったし、近くにいたビードル達は友好的でさえあった。「キャタピーもいいけどビードルも可愛い」と虫取り少年顔負けに悩み始めるリーフの手を引いて森を出るまでの間さえ、私達にトラブルは襲ってこなかった。
が、想定していない出来事は起こった。
「おお、あの時のお嬢さんとリーフちゃん! ようやっと見つけたわい」
「え?」
トキワシティに戻るなりポケモンセンターに直行した私達に、聞き慣れない声がかけられた。リーフ、と名を呼んだことから彼女の知り合いということは分かったが、私の方は生憎と覚えがない。
とはいえ、その身体を預ける車椅子と、左頬を大きく陣取るガーゼを視界に入れれば、彼が誰なのかはすぐさま予想出来たけれど。
「2人とも、この間はどうもありがとうなあ。お前さん達が助けてくれなかったらどうなってたことか」
「いえ、そんな」
「……たまたま通りかかっただけですよ。こちらこそ、うちの地元の馬鹿がとんでもないことをして申し訳ありません」
「何を言うか。お嬢さんに非なんかあるわけ無かろう。元はと言えば、ワシが若者にちょっかいをかけたのも原因の一つじゃしなあ」
痛々しい様子ではあるものの、呵々と笑う老人の声と表情は元気そうだ。聞くところによると、あの日痛みを訴えていた脚と背中は骨折には至っていなかったらしい。それは本当に良かった。高齢者は、特に足腰が動かせなくなると一気に弱るから。
「それよりお嬢さん、君は今年トレーナーデビューしたとジュンサーさんから聞いたが、ジムバッチを集める予定はあるかね?」
「? ええまあ、一通りチャレンジはしてみるつもりですが」
そのためにアシュラムとフラウのレベリングもしていたわけだし、と思いつつ頷けば、老人は「それは良かった」と何故か嬉しそうに笑みを浮かべる。
「実はつい先程、トキワジムに見覚えのある男が入っていくのを見かけての。もしやと思って待ち構えておったら、明日からジムを再開するとの報せが出たんじゃ」
「えっ」
「この機会を逃せば恐らくもう今年は開かんじゃろう。明日にはカントー中のトレーナーに情報が出回るじゃろうし、お嬢さん、今のうちにジム戦の予約をしにいってはどうじゃ?」
「………………えっ」
えっ、トキワジム開くの? このタイミングで?
そんなことって、ある?
《キャラ設定》
○マリステラ(リスティ)
・年齢:11歳
・性別:女
・身長/体重:平均より高め/BMI正常域
・髪:灰色がかった銀髪ロングヘアのフィッシュボーン
・瞳:左右ともに黄色みが強いアースアイ
・特記事項:マンキーの『ボス』とはフラウよりも長い付き合い
【所持ポケモン(参入順)】
・メタモン(カフカ):―/Lv.??
・ラルトス(フラウ):♀/Lv.9 →Lv.13
・ヒトカゲ(アシュラム):♂/Lv.4 → Lv.13
○リーフ
・年齢:9歳
・性別:女
・特記事項:虫タイプも毒タイプもなんでもござれの女主人公。つよい