ブオォォォーーーン
灰色のアスファルトに鳴り響く音。断っておくが、決して屁の音ではない。
最近、北高の決して厳しいわけでも緩い訳でもなかった校則が、毛が抜けた程度に緩くなったのだ。俺はこの出来事をきっかけに、毎月毎月貯金しておいた金であるものを買ったのだ。
それは……中古の原付バイクだ。流石に新品は無理だった。高校生の貯金なんて頑張ってもこんなもんさ。
前々から欲しいとは思っていたのだが、いかんせん北高の校則に「バイクは原則禁止」なんて書かれてやがったのだ。まさかいまだに、高校生でバイク=暴走族や不良、的なことを考えていたんじゃあないだろうな?
自転車はどうするかって?流石に捨てたりなどはしない。短距離用の乗り物へと転職してもらっただけさ。そもそもバイクは高校生という身分の俺にとっちゃ、維持費やガソリン代がえらいもんだから、節約せねば。
で、今俺がこいつに乗りながら向かっているのは北口である。勿論、ハルヒ主催の市内不思議探しがあるからだ。
自転車でもいいだろう、なんて思うかもしれないが、典型的な普通の具現化のような俺が、まさかバイクを乗り回すなんてハルヒの奴は思わないだろうから、今日はちょっと驚かせてみたくなった。我ながら珍しいことするな。
ハルヒたちが見えてきた。あいつ(と、長門を除いたその他団員達)がどんな反応をするか楽しみだ。
広場の入り口手前、数メートル辺りで減速しつつ、ブレーキをかけて、と。
「おーい、ハルヒ!」
ヘルメットのカバーを上げ、顔を出してハルヒに向かって名前を叫んだ。
「あら、今日は早いじゃない…って、え?」
当たり前だ。自転車にエンジンつけたような乗り物に乗ってきたのだからな。
それに、俺の目論見通り、ハルヒは俺のバイクを見た瞬間、目を水晶玉みたいに丸くした。朝比奈さんも同様の反応をし、古泉も「あなたもたまには派手気味なことをするのですね」とでも言いたげな顔で、少し驚いている。長門は……うん、察してくれ。
「あんた…それ…」
「おう!校則が緩くなったからな、欲望を解放して買っちまったよ!」
俺は少しニカッとしながら意気揚々に、まるで親父が自慢の息子を紹介するかのように言った。あのハルヒを驚かせることに成功したのだから、そりゃあ俺だって嬉しくはなる。
…のだが。いや、ここまでは良かった。
ハルヒの驚いた目が、どんどん獲物を狙う獣のようなそれに変わっていく。今までの勘からか、脳内の司令塔が警戒体制をレベルマックスにしている。
そして、嫌な予感は見事に的中した。
「キョン!あんたの原付、今日からSOS団の活動に使わせてもらうわ!」
「…やめてくれ」
力なく呟いて反論する自分が実に情けないし、そもそもバイクを見せびらかすなんてしなきゃ良かったと、思った俺であった。