「颯にぃ、今日は一緒に駄菓子屋に行くのん」
ある日の放課後。バス停を降りると程なく、れんげからそんなお誘いが。
「おっ、いいぜ。そういや村に戻ってきてから駄菓子屋に会うの初めてかもな……」
駄菓子屋の店の前に着くと、ぶわあああっと懐かしい気持ちが溢れ出るとともに、昔駄菓子屋に行った時の記憶も一気に思い起こされた。けど今はお婆ちゃんじゃなくて楓姉ちゃんが店をやっているそう。小鞠が教えてくれた。
れんげが「駄菓子屋ー、来たのーん」と元気よく扉を開けると、俺も次いで店に入る。
目に入る限り駄菓子、駄菓子、いやプラモデルもある。そんな店内を見回していると、レジの奥ののれんのそのまた奥から「いらっしゃい、れんげ」という落ち着いた声とともに金髪の女性が姿を現した。
そして俺を見るなり、目を丸くする。
「お前……颯真!?」
「あ、ども。一応皇城です……」
「一応ってなんだよ。おうおう大きくなったなぁ……」
れんげの「ウチの許嫁ですん」という爆弾発言はスルーして、駄菓子屋と挨拶を交わす。当時はこの店に来る時くらいしか彼女との接点はなかったけど、これから交流が増えていくことだろう。れんげも懐いていると夏海から聞いたし。
で、何にするんだ? という駄菓子屋の声に、改めておやつを選び直す俺とれんげ。俺はラムネ、れんげは某美味しい棒を買っていた。当然お代は俺が出す。
「頼もしいのん」
「いや普通だから」
店の前のベンチにふたり腰掛け、俺はラムネを開け、れんげも菓子の封を解く。
ひと口、ふた口とラムネをごくり。シュワっとしたラムネの味が、晴れた空と溶け合って気持ちがいい。すると菓子をひと口齧ったれんげが、菓子を俺に差し出してきた。
「颯にぃ、あーんなのん」
「ゑ?」
「分けてあげるん。しあわせはシェアするべきなん」
「れ、れんげさん? いやソレたべかけ……」
「……颯にぃ、あーんするん」
「ハイ、します」
れんげの圧に負け、れんげの菓子をひと口いただく。パンチのあるたこ焼き味、ラムネで爽やかになった口の中に意外と合う。すると、れんげがむふーと満足げになったところで、一言呟いた。
「喉乾いたん。ウチもラムネ欲しいん」
「お、もう一本買ってこようか?」
「颯にぃのがいいのん」
「足りねえだろ。待ってな。今買ってくる──」
そうベンチにラムネを置いた途端、れんげは俺のラムネをたしっとひったくる。そして躊躇いなく俺が口をつけたラムネを自身の喉に傾けた。
冷えるはずの体温、その頬は赤く染まる。
「……何考えてやがる」
「ひと口だけでよかったん」
「…………」
「まわし飲みくらいで颯にぃは大袈裟なんなー」
「いや意識してただろ間接。お前顔真っ赤だぞ」
「!?」
両の手を慌てて頰にやったれんげ。勢い余ってお菓子を落としそうになっていた。そして、俺から顔を背けて、しかしその赤くなったほっぺはちらりと見えたまま。
「……颯にぃの勘違いなのん」
そう、弱々しく呟いた。
そのさまは年相応なはずながらも、色っぽくて愛おしい。
「そう……すか」
俺自身も顔が熱い。
何意識してんだ、小2相手に──。
甘酸っぱいふたりの寄り道、俺がいるから門限はまだまだ遠い。