『異種族玩具店(アダルトショップ)の店主はインキュバス』 作:微糖コーヒー
「……ゼクス様、準備が整いました。これがあなたの煩悩と私の残業代の結晶、**脳内干渉デバイス『D-スリーパー』**です」
リリが差し出したのは、流線型の銀色をしたヘッドギア。そこには、先日回収した「天使の雫」を触媒にした超伝導魔法回路が、不気味なほど青白く明滅している。
今回のターゲットは、サキュバス界の頂点、『夢魔の女王(クイーン・サキュバス)』。
彼女たちは現実には姿を現さず、高位の魔法使いや英雄の「夢」の中にだけ現れ、その魂を極上の快楽と共に吸い尽くす。
だが、そこには致命的な欠点があった。──「夢」であるがゆえに、目覚めればその感触は消え、実体のある「道具」を持ち込むことができないのだ。
「夢の中でしか味わえない快楽なんて、ただのデータのやり取りに過ぎない。俺が証明してやる……『概念的な快楽』は、『物理的な刺激』に勝てないってことをな」
開発:『感覚同期(シンク)システム』
「いいかリリ。このデバイスは、夢の中の刺激を、現実の俺の肉体に装着した『外部ユニット』へとリアルタイムで転送する。そして、現実の『外部ユニット』が叩き出す物理的な超振動を、逆に夢の中の女王へとフィードバックするんだ」
「つまり、『夢の中で女王に抱かれながら、現実の機械(マシン)にイかされる』。さらにその刺激を女王に逆流させて、夢の世界そのものを絶頂でバグらせる……というわけですね。最低です」
リリはジト目でスイッチを入れた。
実践:夢の女王vsアダルト・エンジニアリング
深い眠りに落ちた俺の前に、紫色の霧を纏った絶世の美女が現れた。
「あら……。ただのインキュバスが、私の庭(ゆめ)に土足で踏み込んでくるなんて。いいわ、その生意気な魂、枯れるまで吸い尽くしてあげる……」
女王サキュバスが、妖艶な笑みを浮かべて俺の胸に手を当てる。
その瞬間、夢魔の王族にしか許されない「魂の直接吸引(ソウル・ドレイン)」が発動した。
(──今だ、リリ! 同期(シンク)開始!)
現実世界の俺の肉体に装着された、超高出力の「全身バイブレーション・ケージ」が唸りを上げる。
「ッ!? な、何これ……!? 夢(ここ)にはないはずの、暴力的なまでの『硬質』な刺激が……魂の中に直接、流れ込んで……っ!?」
「驚くのはまだ早いぜ、女王様。これは、アンパルのスライムとドワーフの技術が詰まった、現実の結晶だ!」
俺は夢の中で彼女を抱き締め、フィードバック回路を最大出力(オーバーロード)に叩き込んだ。
夢の世界の法則ではありえない「1秒間に1万回の超高速振動」と「天使の雫による高純度電気刺激」が、女王の精神体を内側から焼き上げる。
「あ、あああああぁぁぁッ!! 嫌、なにこれ……っ! 私が吸い取るはずのエネルギーが、全部『エロいノイズ』に書き換えられて……っ! 意識が、白濁(ハングアップ)しちゃう……っ!!」
女王サキュバスの輪郭が、絶頂のあまりデジタルノイズのように乱れ、崩壊していく。
概念(ゆめ)が、物理(現実)に敗北した瞬間だった。
結末:女王の降臨
「……はぁ、はぁ……。ゼクス様、お疲れ様です。……あ、起きましたね」
目を覚ますと、そこにはリリの呆れた顔……と、俺の枕元で**「実体化して」**腰を抜かしている、全裸の女王サキュバスの姿があった。
「……え? なんで、ここに……」
「あまりに強烈なフィードバックのせいで、彼女の存在波長がこちら側の世界に『固定』されちゃったみたいです。……おめでとうございます、ゼクス様。ついに『夢の住人』を現実に誘拐(デバッグ)することに成功しましたね」
「……あ、あうぅ……。あんなの、聞いてないわよ……。あんな……あんな機械に……負けるなんて……っ」
かつての威厳はどこへやら。女王は顔を真っ赤にして、自分の身体を抱きしめて震えていた。
本日の成果: 夢魔の女王を実体化・捕獲。
収支: 女王の身代金(天文学的な魔石)+「夢専用・刺激プラグ」の予約殺到。
リリのメモ: 「……これからは、寝ている間もゼクス様を監視(デバッグ)する必要がありますね。……防犯用の貞操帯、作ります」
「おいリリ、それはエンジニアとして本末転倒だろ!」
俺たちの「異種族・全方位攻略」は、ついに次元の壁すらも粉砕し始めていた。