今回異様に話が薄っぺらいのは花粉症のせいじゃないです、私の文章力不足です。
いつも通り多くはあとがきで語るとしましょう。
ぽかぽかとした春の陽気が、優しく地面を照らす。自然と笑顔になるような気候の中、どうしても笑顔になれない少女がいた。
「っくしゅん!」
桜色のワンピースに身を包んだ一人の少女が、家の玄関を開けるなりセミロングの髪をなびかせ盛大にくしゃみを放った。
「うー……花粉症にとってこの季節は辛いな……」
一人恨みを吐きながら、マスクと花粉症対策の眼鏡を取りに家に戻る。
名を卯月。四月を司る月娘である。
その時、弥生は庭先の掃除をしていた。地面から顔を覗かせる新芽に微笑を浮かべながら、それを傷つけないように慎重に掃いていく。
ふと、人の気配を感じ、弥生は顔を上げた。
「……」
「……」
そこにいたのは、顔の半分を隠すマスクと太陽に反射して目元が見えない眼鏡をした、弥生より頭ひとつ背の高い人物だった。顔からは性別はわかりにくいが、着ている桜色のワンピースから女性と判断した。
「不審者さんですか。我が家には何もありません。お帰りください」
「……弥生、わかって言ってるでしょ」
「……一年ぶり、ですか。お久しぶりです、卯月さん」
不審者改め四月担当月娘、卯月は返事代わりにくしゃみを返した。
「今年も花粉症、大変そうですね」
「そりゃあもうね……担当月に恵まれなかったよ」
弥生宅にて。ようやくマスクと眼鏡を外した卯月は、薦められたお茶をすすりため息をついた。
卯月の素顔は、あの不審者スタイルからは想像もつかない程の美少女だった。セミロングの髪はしっかりと手入れされサラサラと美しく流れており、キリッとしたつり目と相まってやや近寄り難いような、そんな高嶺の花のような雰囲気を醸し出している。もっとも、目は花粉症で真っ赤に充血していたが。スッと通った鼻筋に、キッと結んだ口元が、凛々しく、そして芯の強い性格であることを印象付ける。ただくしゃみを抑えるためだけだが。
「花粉症って一度なったら治らないらしいですね」
「他人事だな……」
弥生としては卯月のことを心配したつもりで言ったのだが、抑揚のない声色と無表情も相まって、どこか突き放した印象を与えたらしい。
そのことを反省しながら、何か話題でも作ろうと思考を巡らせた。
「そういえば皐月さんはお元気ですか?」
「あああいつね……相変わらず頭の中はお花畑だよ。皐月がちゃんと管理してくれないとだらける人間が増えるんだが……」
「……そうですね」
脳裏にだらしない姉の姿が浮かび、皐月を非難することはできなかった。
言うまでもないが卯月は花粉症だ。花粉なんてこの世から消えてしまえばいいと思っているし、自分の前後の月娘なのに花粉症に悩まされていない弥生と皐月がとても羨ましい。
それでも仕事は手を抜いたことはないし、新年度初めの月娘としての自覚も持っているつもりだ。
花粉症さえなければ月娘として一番優秀だとさえ思っているのだが……。
「お菓子……持ってきますね」
弥生が立ち上がり、卯月の横を通り過ぎる。同時に巫女装束に付いていたらしい花粉が舞ったのか、またくしゃみが出てしまう。
「うう……これさえなければ……」
「さて……来月ですが……」
弥生が三月の天候表を卯月に見せる。卯月自身、弥生の姉二人とは余り接点がないが、どこか抜けている二人と違って丁寧かつしっかりと管理されている。先程までの浮わついた気持ちを振り払い、脳内で四月の天候をイメージする。
「今月は平年より暖かく設定しました。ですので……」
「くしゅん」
「……ですので四月は平年の気温を下回らない位に……」
「っくしゅん!」
「設定して……。いただければ」
「はっくしょん!」
「……」
「聞いてる、ちゃんと聞いてるから」
「まあ風を取り込む設計なので……ではよろしくお願いします」
「ん……確かに」
卯月は用紙とサイコロを受けとると、脇に置いていた花粉症対策眼鏡とマスクを持って立ち上がった。
「もうお帰りになりますか」
「ああ、ここは花粉がな……」
「何のお構いもできませんで……」
卯月を見送るべく、弥生も追って立ち上がる。
「では」
「それじゃ、また」
再び不審者スタイルとなった卯月を見送り、ふと気にする。
「そういえば今日は風が強いですけど……」
まずはここまで読んでくださった皆様に感謝を。
さて、前書きにも書きましたが、今回は話が異様に薄っぺらです。余り密接に関わっていない設定の月娘たちの話は大変で……。いいのかな、こんな事務的に投稿するだけで……。
今回はこの辺りでお別れです。機会があればまた次話でお会いしましょう。