いつも通り多くは後書きで語るとしましょう。
「うー……やる気出ない……」
若草色のカーテンから、柔らかな日差しが部屋に差し込んでいる。四月も終わりかけ。山々に緑が繁り始め、虫たちは我先にと地上に這い出し、活動を活発化させる。
が、このように五月が迫る、もしくは五月になるとやる気を失う生物も存在する。そう、人間である。
確かに全員が全員という訳ではないが、どうしても色々と引き締まる四月に比べ『慣れ』が出てきてしまうのが五月。いわゆる『五月病』というあれだ。
さて、限りなく人間に近い月娘にも、五月病にかかる者は存在する。よりによってそれが五月担当の皐月である。別に一年を通して仕事をしている訳でもない月娘が五月病というのも変だが、ただ皐月がそう納得したいだけだ。
「しっかりしないと……月娘の仕事……でも……」
一応やる気は低いとはいえ、月娘としての責任感は持っている皐月。もう朝の九時過ぎ。そろそろ布団に包まれて夢現の状態から抜け出さねばならないが……。
「ぐぬぬ……どうして前の月娘が来てくれないの……こっちから受け取りに行く慣習なんなの……」
最早五月病というよりは、ただ怠惰なだけに近い状態で、皐月は再び布団に潜り込んだ。
「遅い」
卯月は外界の空気を一切遮断した自宅で、お茶を飲みながら一人呟いた。
もう四月も末。ようやく花粉も一時の勢いは鳴りを潜め、一度外出すればくしゃみと涙が止まらないといった状況ではなくなったものの、やはりもう数週間は外出は控えたいのが卯月の本心である。
この時期の標準装備である花粉防止サングラスとマスクを外し、その端正な顔立ちを歪めながらカレンダーに目を向ける。
「……行くか」
脳裏に年中だらけている緑髪月娘を思い浮かべながら、卯月は取り急ぎ外出の準備に取りかかった。
ピンポーン、と室内にインターホンが鳴り響く。
「……んぇー」
普段来客などないものだから、皐月は聞き違いだろうと布団からピクリとも動かない。
だが続けざまに二度、三度と鳴らされ、安眠を妨害された皐月は渋々布団から這い出して玄関へ向かう。
「はいはい今出ますよー」
寝ぼけ眼を擦りながら、しなだれかかるようにしてドアを開ける。
「っとと……もふ……」
勢い余って玄関先に倒れ……るかと思ったが、前にあった柔らかな物体に埋もれるようにして踏みとどまった。
「ん……?なんか美人さんのおっぱいなんだよ……」
「離れろ皐月」
自分の胸に埋もれる皐月を前に、卯月は嘆息しながら前進した。
皐月は年がら年中ぽやぽやしているが、特に四月の末から五月の中旬まではそれが顕著だということを卯月は理解している。
ろくに手入れのされていない緑髪は腰辺りまで伸びきり、一度皐月が前方にうなだれると、まるで和風ホラーそのものになる。服装もゆったりしたものを好み、サイズの合わないシャツにジャージと完全にダメ人間ならぬダメ月娘である。
似たようなタイプに一月担当の睦月がいるが、向こうは妹の如月、そして弥生がしっかりしているのでなんとかなっているが、こちらは自制を促すのがいないのでだらけ放題である。一応時折卯月が声をかけに来るのだが、当の卯月が強烈な花粉症持ちのため、簡単には様子を見に来れないのである。
「皐月、仕事の受け継ぎ
だ」
「んにゃー……」
椅子に座る卯月の足下で転がる皐月が顔を上げた。
緑髪に合うくりくりとした碧眼が真っ直ぐに卯月を捉える。身だしなみさえしっかりしていれば美少女なのに、と卯月は半ば呆れながら彼女を引っ張り上げる。
「今年はどうやら平年より気温は上の方で調整しているらしい。だから……おい、聞いているのか」
「すー……」
椅子に座ってまでだらける姿勢に感服しながら、卯月は皐月の頭をひっぱたく。
「あいたっ」
「これ以上その調子ならゴールデンウィークはすべて大荒れの雨にするぞ」
「そんなっ!」
ガバッと皐月が覚醒する。月娘は各月の天気を自由に司ることができる都合上、自分の用事に合わせて調整できる。
皐月のようにだらだらするタイプはゴールデンウィークのような大型連休はまさに至福の日。どこへだって遊びに行きたいだろう。それが大荒れの雨とは楽しみを奪われるも同然。
勘違いされやすいが、決して皐月はすべてにおいてやる気がないのではなく、自分の楽しみには全力を尽くす。やや子どもっぽいだけに過ぎない。
鬼教官卯月の元、皐月の真月娘化計画が始まるのは、また別の話。
まずはここまで呼んでくださった皆様に感謝を。
さて、本編をご覧になった方はおわかりかと思いますが、はい突貫工事で作りましたごめんなさい。
全然キャラ立ってないし……面白くないし……。前書きでも書きましたが、つくづく自分には計画性というものがないことを実感します。一日数行ずつでもいいから書けばいいのに……。これじゃあただのノルマを果たす作業だよ……。
次回こそは……次回こそ……。
今回はこの辺りでお別れです。機会があればまた次回お会いしましょう。