超かぐや姫 スーパーフォルテッシモ!!   作:あるふぁせんとーり

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第十帖 かぐや、いろP、さくD

「えっとえっと、ライバーのなり方は……うひゃあ、いっぱいあるな〜」

 

 

 何か意味ありげなヤチヨの視線が名残惜しくもログアウトした私。

 

 目を開いた現実で出迎えてくれたのは、カタカタと一生懸命に彩葉のPCを動かすかぐやの姿だった。

 

 よく見るとツクヨミに引き続きギャルギャルな派手金髪。

 

 そんなに気に入ったのかな、なんて思いつつ、私はその様子を眺めていた。

 

 

「……あ、おかえり! 結構早かったね!」

 

「ただいま。現実でもイメチェンしたんだ? 似合ってるよ、かぐや」

 

「でしょでしょ〜!」

 

「──って、なんで現実に影響出てんの!?」

 

「え、彩葉はやだ? じゃあ──えいっ、えいっ、えいっ──」

 

 

 あ、やっぱりエイリアンではあるんだと直感する。

 

 「えいっ」「えいっ」とやる度に変わっていく彼女の髪。

 

 緑、ピンク、青、黒、ストライプ、マーブル、ゲーミング……

 

 あらかた試した後彼女は──

 

 

「でもやっぱこれっしょ☆」

 

 

 元の金髪をなびかせた。

 

 

「……只人(ただびと)の理解を越えし宇宙人(うちゅうびと)

 

 

 五七五のリズムで絶句する彩葉。

 

 「そんなの気にしてたらキリないよ」と私は開かれた参考書の横に麦茶を置く。

 

 そんなことしている間にも、かぐやはライバーになったらやりたいことリストのようなものを作っていて何とも楽しそう。

 

 

「……あ、そうだ! 桜楽、あれ教えてよ! 戦うやつ!」

 

「ん〜、私はメンテとか調整はバイトでやったことあるけど全然遊ばないからな〜。ということで彩葉、出番だよ」

 

「……」

 

「いーろーはー? 青チャに頭突っ込んでも無駄だよー?」

 

 

 そう言って彼女の顔を覗き込むと、そこにはとてもかぐやには見せられなさそうなニマニマ顔。

 

 よく考えなくてもそりゃそうだ。

 

 彩葉お待ちかねのヤチヨとの握手だったんだから。

 

 私だって思い出すだけで頬がゆるゆるに溶け切って蕩けてしまいそう。

 

 

「忙しいから、また今度ね」

 

 

 私はかぐやにそう断り、積み上げられた二枚の布団を敷いた。

 

 

 

 

「よし、これで問題ないはず」

 

 

 一学期も終わろうという、とある日の夕方。

 

 気合あふれる鼻息と共に彩葉が壁に貼っつけたのは夏休みの予定表。

 

 9割近くがバイトと勉強で埋め尽くされ、夏休みとは名前だけの、何とも彩葉らしい予定の入れ方だ。

 

 

「ごめんね、桜楽。夏休みの間もお世話になっちゃって」

 

「ううん、気にしないで。私の方こそ彩葉に勉強見てもらってるし、夏休みひとりぼっちじゃ味気無いしね」

 

「ありがと。電気代とか水道代とか、そういうのはまた渡すから」

 

「ちょっと!? ねえかぐや置いてけぼりなんだけど!? ねえかぐやと遊ぶ時間は!?」

 

「知らない。そんな時間ないし。あと邪魔禁止ね」

 

「ちょっと!? ねえ桜楽からもなんか言ってよ〜!!」

 

「そう言われても……私もこんな感じだしなぁ」

 

「うそぉ!? やだやだ、かぐやと遊んでくれなきゃやだ〜〜!!」

 

 

 やれどうしたものかと頭を抱える彩葉。

 

 まあ私もこんな時どうすればいいかなんて知る由もなくて、適当に辺りを見回してるとふと目に入る大量の小道具。

 

 四畳半の隅っこにこんもりと積み上がったそれの個数を数えていると、かぐやは「配信用の小道具だよ! 百均で買ってきたの!」と教えてくれた。

 

 

「配信用って……あんた本気でライバーやるつもり?」

 

「モチのロンだよ! ヤチヨカップで優勝するにはライバーになってファンを集めないとなんでしょ? ほら、もう初配信もやったんだから!」

 

 

 それは自信満々、図工の授業で出来た自信作を先生に見せるようにアーカイブを開くかぐや。

 

 

『かぐやっほー! 月から来たかぐやだよ! 今日は初配信だし、やることも思いつかないからこれで終わり! じゃあねー』

 

 そこにはまあ、とてもトップを目指せるとはお世辞にも言えない配信画面、具体的に言うと小学生でも上手いとは言われないであろうイラストが、不気味なBGMを背景に手を振っているだけの配信だった。

 

 けれどシークバーを見てみると、視聴回数が集中しているのは配信が終わった後半から。

 

 なんでだろと思ってスキップすると、突然画面が実写へと切り替わった。

 

 

『……っと、これで切れてるのかな? いやー、帰ってきたら2人ともびっくりするだろうなー』

 

「いや、いやいやいや、これインカメじゃん! かぐやの顔、顔映っちゃってるって! てか部屋! 内装もろバレしてる!!」

 

「あ、えっと……」

 

「え、ヤバいの?」

 

「……まあ、ヤバいかヤバくないかで言えばヤバいかな……もう手遅れだけど……」

 

 

 コメント欄も『インカメw』『ヤチヨのライブいた?』『立ち絵より中身の方がかわいいじゃん』『てか2人ってライブの時一緒にいたやつ?』と数秒の実写パートに集中している。

 

 頭を抱えつつ、彩葉は話を続けた。

 

 

「あと、何このホラゲーでも聞かないようなおどろおどろしい曲。どこから引っ張ってきたの?」

 

「かぐやが作った!」

 

「作るったってどうやって……」

 

「あれ!」

 

 

 そう言ってかぐやが指差したのは小道具の横にちょこんと置かれた私のエレキギター。

 

 弾き方はどうしたの?と尋ねてみると、ネットで調べた、との解答。

 

 ほぼ我流、そりゃ音もこんなに歪むわけだ。

 

 

「……そうだ。せっかくだし彩葉のキーボード貸してあげたら? ほら、使ってない六十一鍵のやつ」

 

「え、あれは──」

 

「もしかして彩葉ピアノ弾けるの!? すごいすごい! 先生お願いしますよ〜! ちょっとだけでいいからさ〜!」

 

 

 目をキラキラと輝かせて彩葉に縋るかぐや。

 

 彩葉はまたため息を吐くものの、彼女の熱量に負けたのか隣の部屋にキーボードを取りに戻る。

 

 そして数分後、「アッツ!」という顔をしながら彼女はキーボード片手に帰還した。

 

 

「おお〜、これがキーボード……!」

 

「はぁ、まずギターにしろキーボードにしろコード進行ってのがあって──」

 

 

 そんなことを言いながら鍵盤を叩いた瞬間、彩葉の動きが止まった。

 

 その瞳が揺れている。

 

 ああ、昔を思い出している時だ。

 

 

「やっぱり私が──」

 

「ううん、大丈夫」

 

 

 そして彩葉は、そんな過去を振り払うように鍵盤の上に指を躍らせる。

 

 聞いたことのない、彩葉オリジナルのメロディ。

 

 その様子は驚くほど軽やかで、それでいて楽しそうで、私もそれに合わせてエレキギターの六弦を弾いた。

 

 

「……ら……ララ……誰も止められ──はしない──歌わずにはいられ──ない──」

 

 

 そのメロディに即興で歌詞を乗せ、これまた軽やかに歌い上げるかぐや。

 

 キーボード、ギター、そして歌声。

 

 次第に彩葉も興が乗ってきて、どんどんキーボードは淀みなく、テンポを上げる。

 

 それに合わせて指を動かし、かぐやの歌声もどんどんと明るく、楽しく、美しくなっていく。

 

 これは多分、手放しに言える。

 

 かぐやの声は人に届く、人に思いを届けることが出来る最高の歌声。

 

 そのせいか、気付けば彩葉も丸々一曲を弾き切って満足げな様に見えた。

 

 いや、満足げは嘘だ。

 

 手が震えてる。

 

 それはきっとかぐやの歌声、彼女の奏でる旋律がとても楽しいもので、それにすごく昂揚してるから。

 

 私だってそうだ。

 

 たった一分かそこらにも満たないセッションで「ギター続けててよかったぁ」なんて思ってるんだから。

 

 

「やっば、この曲彩葉が作ったの!? すごすぎ! てかそれに即興で合わせる桜楽も天才すぎだし!」

 

 

 どうやらそれは、かぐやもだった様子。

 

 彩葉の手を掴み、私の手を掴み、それをブンブン振り回した後に部屋中を駆け回っている。

 

 そして彼女は──

 

 

「2人とも、一緒にライバーやろ!!」

 

 

 そんなことを、言い出した。

 

 

「彩葉がプロデューサーで、桜楽がディレクターね!」

 

「いや、待って。急すぎるっていうか……」

 

「そもそもかぐや1人じゃ駄目なの?」

 

「だーめ! だって1位のブラックオニキス?っていうの3人組なんだよ? 私達も3人でやろーよー! 彩葉がキーボードで桜楽がギター、そんで私が歌えばバズってバズってバズりまくり確定! このオンボロアパートから1位だって夢じゃないよ!」

 

「無理だって。作曲の時間なんて──」

 

「あはっ、彩葉嘘吐きの顔だ。ほんとはやりたいんじゃない? 少なくとも、勉強の息抜きくらいにはさ」

 

「桜楽はいいよね!? 賛成だよね!?」

 

「私は……彩葉がやってくれるなら私も弾こうかな」

 

「あっ、ずるい! 判断こっちに丸投げした!」

 

 

 こうも押されてしまえば、流石の彩葉というか、安心と信頼のチョロ葉は──

 

 

「ちょっとだけなら、いいけど……」

 

 

 簡単に「yes」と言ってしまうのだ。

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