超かぐや姫 スーパーフォルテッシモ!!   作:あるふぁせんとーり

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彩葉とは別路線の天才がいたらもっとハッピーエンドになりそうですよね


第十一帖 かぐや街道、爆走中

「……うん、よく書けてる」

 

「でしょでしょ!」

 

 

 得意げに胸を張り、「ヤチヨカップ ゆーしょーまでのみちのり」の出来栄えに頷くかぐや。

 

 彩葉の夏休みの予定表の隣に並べられたそれは、拙い文字ながらもかぐやさながらに、満面の笑みを浮かべて輝いており、別に攻めるわけではないけれど少しくすんで見える彩葉のものとは対照的。

 

 

「これ全部やったら最っ高のハッピーエンドになるよね!」

 

「うん。きっと彩葉もニコニコだよ」

 

「桜楽……最近かぐや甘やかし過ぎじゃない?」

 

「あれれ、どの口で言ってるのかな? いろPさん?」

 

「ぐぬぅ……」

 

 

・いっぱいはいしん見てもらう!(見るのかんじかけた!)

 

・ふじゅ〜をかせぎまくってウハウハ!

 

・りょーりもべんきょーすて、ふたりをげんきにする!

 

・おっきなライブもひらいてみんなにキャーキャーいわれちゃう!

 

・ブラックなんとかをたおす!

 

 

「……で、この五個を達成したい、と」

 

「足りなくなったら?」

 

「増やす!」

 

「ふふっ、臨機応変にね」

 

 

 こうして8910位のとこから、かぐやの快進撃は始まった。

 

 もちろんかぐやは配信のことなんて知らないし、私達もやる側のことは全然分からない。

 

 だから調べて万全を期す……なんてことはかぐやにはなく、思いついたこと、楽しそうなことを片っ端からやっていった。

 

 

「このダンスかっわーい! かぐやもやるぅー!」

 

 

 その間に余計な思考は一切ない。

 

 やって、次のを見つけて、またやる。

 

 私達が学校に行っている間は大人しく家にこもってダンスの練習だったり、あるいは晩ご飯のために唐突に魚釣りに出かけたり、やっぱり宇宙人は破天荒。

 

 

「ただいま」

 

「おそうめん買ってきたよ〜」

 

「あっ、おかえり! 見て見て! また新しい動画撮ったの!」

 

 

 そして学校から帰ってくる度、かぐやの動画は最低でも1本、興が乗れば2、3本は増えていた。

 

 

「らー、らららー」

 

 

 風呂場に籠もってはボイトレし、

 

 

「うっひょ〜、芦花が教えてくれたメイクマジで盛れんじゃん! そっこーアップして……めちゃくちゃミスったNGバージョンも載せちゃお!」

 

 

 芦花に仕込まれた自撮りに精を出し、

 

 

「わ、真実'sセレクションすげー! これもう緊急で動画回すしかないっしょ!」

 

 

 真実直伝の食レポをブン回し、

 

 

「あー、はいはいそんな話ね! 大丈夫大丈夫、失敗した時のことは失敗した時に考えて、今は前だけ向いちゃえばいいんだって! 昔のやなこととかはもう忘れちゃって良いんだよ! そうそう、忘れるってそんな悪いことじゃないんだからさ! そんでも駄目だったらまたかぐやに話聞かせて!」

 

 

 ヤチヨを真似たお悩み相談まで。

 

 一から十までやりたいことだけ、でもやりたいことは徹底的に。

 

 バイタリティと積極性あふれるかぐやの配信は、次第に多くの人を魅了していった。

 

 

 

 

「ねー、桜楽ー、どうやったら彩葉は配信出てくれるかなー?」

 

「……もしかして、私は出る前提?」

 

「……だめ?」

 

「駄目じゃないけど……ちょっと恥ずかしいかな。着ぐるみとかでもいいんだったら、全然やるんだけど」

 

「……! じゃあさ、着ぐるみ作ってよ! 桜楽が入るやつと彩葉が入るやつ! 私お金払うから!」

 

「別にいいけど……分かった。すぐに用意するよ」

 

 

 例えば、ゲリラ路上ライブに巻き込まれる、なんてことも。

 

 

「はい、これが彩葉の」

 

「えっと、これは……?」

 

「着ぐるみ。これ入って、パフォーマンスの手伝いしてほしいんだって」

 

「……いつ?」

 

「30分後」

 

「はあ!? そんなの誰が──」

 

「駄目?」

 

 

 目をキラキラと輝かせ、手を握っておねだりするかぐや。

 

 私は、彩葉がこれを断れないことを知っていた。

 

 ここ1年一緒に過ごして……ううん、一ヶ月も一緒にいたら誰だって分かる。

 

 彩葉はいい子だ。

 

 それが自分の目的の邪魔にならない限り、なるべく人の頼み事には応えようとしてくれる。

 

 逆に言えば、明確な目的もなく遊んでいる……すなわち、ツクヨミにいる時なんかは──

 

 

「……仕方ないなぁ」

 

 

 大体のお願いごとは叶えてくれるのだ。

 

 ということで30分後。

 

 

「みんなー! 盛り上がってるー?」

 

「「「おー!!」」」

 

「……」

 

「……」

 

 

 私達は十数人のオーディエンスに囲まれたかぐやの回りに、かごに入った花びらを撒いていた。

 

 

「……ねえ、桜楽」

 

「何? 彩葉……じゃなかった、いろP」

 

「良いから」

 

 

 着ぐるみに仕込んでいた通信機能を起動し、問いかけてくるいろP。

 

 私はあちらこちらに花びらと紙吹雪を撒き散らしつつ彼女の質問にお答えした。

 

 

「まず……これ何?」

 

「かぐやのゲリラ路上ライブ。これから一日一回どこかでやるんだってさ」

 

「……次。この着ぐるみ何?」

 

「狐。ほら、彩葉のアバターって狐娘じゃん。なんと特注仕様で泣き黒子まで付いてるんだよ」

 

「待って、まさかこれ作ったのって──」

 

「私。かぐやに頼まれてさ、ふじゅ〜も払われるちゃんとしたやつ。だから彩葉用の狐着ぐるみと、私用のドラゴンちゃん着ぐるみ作ったんだ。これなら顔出ししなくていいもんね」

 

「まあ、それはそうかもだけど……」

 

 

 こんな感じで私も彩葉も手伝っていた。

 

 

 

 

 とまあ、かぐやは配信して、その間に彩葉はバイトしたり、私はツクヨミのメンテの仕事とかしたり、2人で勉強したりな、こんな日々が続いて。

 

 

「ねーねー! 一緒にダンスのショート動画撮ろうよ!」

 

「いや無理無理無理! そんな暇ない! 勉強する! バイトする! ね、桜楽!」

 

「え? 私はそんな暇あるけどなぁ」

 

「てか一分で済むし。芦花も真実もやってくれるって言ってたし。ねー?」

 

「ねー」

 

「そうそう。彩葉運動神経良いんだし楽勝でしょ。私も彩葉が踊ってるの見たいなー?」

 

 

 無理を通せば道理引っ込むというけれど、無理を通されまくった彩葉のボーダーラインはどんどん下がっていく。

 

 どんどん周囲を巻き込んでいくかぐやに振り回されるのはなんやかんや楽しくて、四面楚歌となってしまった彩葉は陥落寸前──

 

 

「おっけー撮れた! 超かわいいよ彩葉! んじゃ後はアップして──」

 

「駄目。 絶対駄目。それだけはマジ、絶対駄目だから」

 

 

 ──には、もう少し時間がかかるかも。




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