超かぐや姫 スーパーフォルテッシモ!! 作:あるふぁせんとーり
桜楽:彩葉との差別化を図るためにプログラミング能力を向上させました
「見て見て! 芦花と真実に教えてもらったやつめちゃくちゃ伸びてる! ランキングもゴボウ抜き!」
「本当だ。よかったね、かぐや」
根強いファンを抱える2人とのコラボを経てかぐやの配信はこれまた一段と大きな伸びを見せ、まさに破竹の快進撃、時代の寵児といったところ。
まあ何が変わるかと言えばかぐやのテンションとちょっと豪華になる晩ご飯くらいといったところで、私と彩葉はそれをちょくちょくと手伝いつつも、今までと変わらずに勉強とバイト中心の日々を送っている。
昼過ぎまでは学校の夏期講習、放課後や休日は彩葉はカフェでのアルバイト、私は家でシステムメンテや3Dモデル制作の依頼をこなす、なんて夏休み。
ちょっと仕事が一段落して時間も出来たら、彩葉が帰って来るまでは私はかぐやの配信のお手伝い。
クソデカ理科実験の材料を一緒に買いに行ったり、Vlogの撮影に付き合ったり、アバターにちょっとアイテム付け足してあげたり、一緒にいろPにいたずらしたり……コラボ以降さらにモチベーション爆上げなかぐやに振り回されながらも、中々……どころか、すごく楽しい時間を過ごしている。
「……でも、流石に住所晒すのは駄目だよ?」
「だって無人島に一つだけ持ってくなら彩葉も桜楽も欲しいし……この部屋丸ごと持ってけば2人ともいるし……」
「大丈夫。かぐやが無人島に行っちゃっても、必ず2人で迎えに行くから」
「ほんと!? かぐや待ってるからね!」
「……なんてことがあったんだけどね」
「もう……どうにかあの宇宙人に常識を仕込めないものか……」
「常識的なこと……あ、歌枠配信とか? もしかして、彩葉もやりたいの?」
「別にやりたいってわけじゃ……」
「ふふっ、やりたそう。よかったね、明日は歌枠だって」
「これまた急な……ってか明日は模試の予習しないとだし……」
「やらない?」
「……やる」
「みんなー! 今日の歌枠はお待ちかねのいろPとさくD付きだよ! みんなの盛り上げ次第では……着ぐるみ脱いじゃうかも?」
まだだけどね、なんて笑いながらも、心底楽しそうなかぐやの横顔を眺めているのはすごく良い時間。
「かぐやもみんなのこと好きだよー!」
かぐやはキラキラしてるし、かぐやを見てる人、かぐやを応援してる人までキラキラと輝かせるかのようだった。
夜空に星は多いけど、その中でも一番煌めいて見えるのは一番近くにある月。
かぐやはそんな存在だ。
太陽のように自らの力で輝いて、月のように他の星々を差し置いて夜空でとびきりの光を放つ。
親バカとか、ハッピーエンドへの願望とかそういうの諸々込みで……かぐやはヤチヨと同じところまで行けると思う。
……ごめん、当たり前か。
だって、かぐやはヤチヨ、ヤチヨはかぐやなんだから。
「ね、今日の晩ご飯何にしよっか?」
あ、このタイミングで話が逸れたらBメロ──
「……ミスった。てへ☆」
あーあ、ミスってもかわいい。
▽
「ねえ桜楽! 芦花と真実に「KASSEN」って超面白いゲーム教えてもらったんだけどさ!」
「ああ、あの。私もバイトでちょろっとメンテしたことあるよ」
「え、そうなの!? じゃあ今度桜楽も一緒にやろうよ!」
「私は……対人はまだ素人だからなぁ。もしかして誘いに来てくれたの?」
私が尋ねると、かぐやは一瞬止まってから「あ、そうだった」と言わんばかりに首をぶんぶんと横に振った。
「ゲーム配信めちゃくちゃ盛り上がったんだけど、毎回芦花達にコラボしてもらったりってのはなんか違うじゃん? だから一人でも盛り上がれそうな感じの他のやつも発掘しようと思って」
「ああ、そういうこと。一応私がやってるのはあるけど……ちょっと難しいよ?」
「難しい方がコメ欄盛り上がるし!」
「了解。だったら──」
私はテーブルの上に仕事用のちゃんとした、クワーティ配列の方のキーボードをセットしつつ、スマコンを装着する。
そして「3、2、1……」というカウントダウンと共に、せーので私達は目を開いた。
「わ、何これ……!?」
「「RANSE」。KASSEN程じゃないけど、一部で人気のあるリアルタイム戦国シミュレーションだよ」
目を開くと、そこは随分デジタルな設備のサーバーなんかが並んだ天守閣。
中央の大きなテーブルにはホログラムの架空の地図が映し出され、プレイヤーの目の前にはいくつかのモニターと、木製のキーボードがポツンと置かれている。
かぐやは不思議そうにキョロキョロと見回していた。
「これ……どういうゲーム?」
「簡単に言うと……天下統一を目指すゲーム。複数のプレイヤーでマス目を奪い合って、相手を全滅させたら勝ち。……あ、一応タイムアップの時に一番領土の広いプレイヤーが勝ちっていうのもあるから、初心者はそっちを目指した方がいいかな」
「へー。どうやってマス目取ればいいの?」
「そうだね、じゃあ全体の流れから──」
RANSEは1ターン8分、攻撃3分と防衛3分を1分間のインターバルを挟みつつ繰り返すという流れ。
攻撃はマス目を取る、つまり陣地を拡大するフェーズで、防衛は手に入れたマス目を強化したりして資源を集めるフェーズ。
これをひたすら繰り返し、少しずつ他のプレイヤーとのリソース差を広げていくというシンプルなゲーム性だ。
「さーくーらー、マス目を取る、みたいなコマンドないんだけどー?」
「ふふっ、そこがこのゲームの面白いところなんだよ。取り敢えず、一番近くのこのマス、クリックしてみて」
「ここ?」
首を傾げつつもかぐやがクリックすると、「分類:平地(未開拓)」「資源:オンミョー100」というパラメーターがパッと現れ、続いて黒い入力欄がバッと現れる。
「わ、なんか出た! 次どーすればいいのこれ?」
「えっと、少し難しいんだけど……オンミョーはゲームシステム的に変数xとして扱われてるんだよね。だから、この空欄には「xをn個取り出す」とか、「xを毎ターンn個取り出す」、みたいな命令をかけるんだけど……」
「……待って、桜楽。このゲームって……」
「あ、言い忘れてた。リアルタイム
何故か、流行んないけど。
▽
「ねえーー!! たーすーけーてーさーくーらー!!」
数日後。
ちょうど風呂掃除を終わらせたところだった私は唐突に配信中のかぐやに呼ばれていた。
「またまけるー!! またかぐや結婚させられちゃうんだけどー!?」
また……ああ、そう言えばこの前彩葉がリスナー数十人なぎ倒してプチ炎上してたっけ。
今度は私の番か、なんて事を考えつつ状況を確認すると、まあしっかり悲惨。
100%で完全敗北だとすれば進捗率は83%と言ったところ。
求婚してくるリスナーもまあ懲りないもので、『今日はいろPいないぞ!』『いろPいないなら行ける!』と一気呵成。
ていうか彩葉、よっぽどトラウマになってるんだ……
「ちなみにかぐやってどんな感じで進めてた?」
「チュートリアルで出てきたみたいにライブラリのおすすめコードコピペして、それをちょっといじって……あとは防衛重視って感じ!」
「うん、お手本通り。今回みたいな集中砲火されない限りはそれで大丈夫だと思うよ」
「でしょでしょ! ……で、勝てるの?」
「大丈夫、ちゃんと勝てるから」
オンミョーを注ぎ込んで残った数少ないマス目の産出を最適化し、それから1分考えればお待ちかねの攻撃フェーズ。
私は小さく息を吸い、ホームポジションに指先を揃えた。
『ターン8、開幕。各プレイヤー、攻撃を許可します』
その合図と同時に、私はキーボードの上に指を躍らせた。
必要最低限の兵だけ打ち込み、マス目に撃ち込む。
1マス多分1秒未満、今日はすごく調子の良い日だ。
『またこれかよおい!?』
『いろPの再来キターーー!!』
『またピネだ! またピネ=ダオラ!』
「すごいすごい!! ……てかてか待って、桜楽コピペは?」
「このゲームさ、慣れれば手打ちの方が早いんだよね。私アルバイトもあるから分400くらいは打てるし」
『俺も分400文字打てるぞ』
『←これ多分words』
『誰ださくD相手なら行けるとか言ってたやつ』
間の1分で状況を全部叩き込んで、3分間はひたすらタイピング。
このゲームのあんまり良くない点として、戦略よりもプログラミングの速度の方が大事っていうのはあるけど、まあそれはそれとして。
精鋭リスナー10人を何ターンかで壊滅させ、見事かぐやの逆転勝利で「かぐや争奪RANSE選手権」配信は無事終了。
無事じゃなかったことと言えば、さくDもちゃんとプチ炎上しちゃったってことくらいだ。
「へえ……めでたしめでたし、ってわけ?」
「っ!?」
「あ、彩葉」
「……で、「もうかぐや争奪戦はやらない」って約束は……?」
「あ、あの、これはその、リスナーが……」
「問答無用! 今頼んでる謎のトーテムポールキャンセルするから!!」
「あー!? かぐやが一目惚れしたやつー!?」
とまあ、こんなやり取りを繰り返している内にも、かぐやはどんどんヤチヨカップのランキングを突き進んでいった。
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