超かぐや姫 スーパーフォルテッシモ!!   作:あるふぁせんとーり

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第十八帖 feat.彩葉 竹取神戦/Round2

「てかさ、母さん結構お前のこと気にしてんぞ? 少しくらい連絡してやれよ」

 

「色々準備があるでしょ! 主に心の!」

 

「うりゃあ〜〜! うわあああっ〜〜〜!?」

 

「だから母さんの言葉を重く受け止めすぎ。向こうが言葉のドッジボールしてくんだから──」

 

「っ──!」

 

「少しは避けないと。「ドッジ」って「避ける」って意味なんだしさ。たまに受け止めて投げ返すくらいで丁度いいんだよ」

 

「知るかそんなの! 私は私で決めるから!」

 

 

 ボイスチャットを配信用から内部通信用に切り替え、お説教とともに連撃を仕掛けてくる帝。

 

 途中横槍を目論んだかぐやも軽く受け流され、カウンターでぶっ飛ばされる。

 

 反論を考えれば手が止まって不利になり、攻撃を捌くのに必死になればメンタルがじわじわと追い詰められてくる。

 

 私は棍棒を弾き返し、距離を取って体勢を立て直した。

 

 

「彩葉!」

 

「了解っ!」

 

 

 ぶっ飛ばされたかぐやがジェットエンジンを吹かして戻って来ると同時、私はハンマーの柄にワイヤーを引っ掛けて帝の斜め後ろから急接近。

 

 さらに外したワイヤーを今度は棍棒に引っ掛けて加速を上乗せする。

 

 間もなく牛鬼に辿り着かれる、その前に倒さないと。

 

 ガラ空きの背中に、私は双剣を──

 

 

「ダメダメ。もっと上手くやらないと──」

 

 

 帝は絡みついたワイヤーごと、棍棒を地面に叩きつけた。

 

 マップがまるで隕石でも降ってきたかのようにひび割れ、ドガッと瓦礫が宙を舞う。

 

 マズい、そう思って宙に浮いた双剣を握り直そうとするも瓦礫がキャラコンの邪魔をする私の隣を抜刀した帝がウルトの超加速で駆け抜けていく。

 

 音声が一瞬途切れたのは帝が配信用ボイスチャットに切り替えたからだろう。

 

 その先には接敵時の威嚇モーションを取る牛鬼。

 

 駄目だ、止まらない。

 

 

「──俺みたいに、さ」

 

 

 決め台詞と共にウインクしたその瞬間、鮮やかに解体された牛鬼は見事に爆ぜた。

 

 

『帝、見事に瞬殺〜〜!!』 

 

 

 まだだ、ここから櫓まではまだ時間がある、今から追いかければ──

 

 

「ごめん彩葉、着ぐるみ脱ぐ間もなく死んだ!」

 

『おお〜っと、ここでさくD脱落!! うんうん、対人経験0でよく頑張った!』

 

『乃依にあの鈍足連射を吐かせるとは恐るべき新人でしたが相手が悪すぎた! ここで牛鬼撃破とともに乃依が櫓ゲッート!!』

 

 

 櫓を2つとも占拠されたらその時点でコールドゲーム。

 

 帝が辿り着いたらその時点でこのセットの敗北が確定する。

 

 とはいえ元よりこちらが櫓を取る想定、嵌めゲーとすら言われる弓職の頂点相手にここまで粘り切ったなら桜楽は十二分に仕事を果たしてくれた。

 

 

「止めるよ、彩葉!」

 

「もちろん!」

 

「さ、続きと行こうかお二方!」

 

 

 櫓へと続く石作りの階段を駆け上がる私達、その前に立ちふさがるのは当然帝。

 

 

「桜楽の仇ーー!!」

 

「直線突撃! 解釈一致!」

 

 

 ジェットエンジンを吹かして懐に潜り込もうとするかぐや、さらにその内へ潜り込んだ帝は逆袈裟で思いっ切り斬り上げる。

 

 

「ゔぇっ!? まじでいってーんだけどこれ!」

 

『かぐや脱落ー!!』

 

 

 私がカバーする間もなく一撃。

 

 踵を返した帝へ私はブーメランで斬りかかるが──

 

 

「今回はお兄ちゃんの勝ちだ」

 

 

 私をリスポーン地点へ送り返し、帝は櫓の鐘を鳴らした。

 

 

『帝が取ったーー!! 両櫓占拠でコールド! 第1セット、トライデントのままブラックオニキスが押し切りました!』

 

『これは流石に黒鬼が強=スンギ』

 

『チームかぐやもよく頑張った! ドンマイドンマイ、切り替えていこ〜☆』

 

 

 

 

「……だから言ったでしょ。実力差ありすぎなんだって。かぐやが配信でやってたようなのじゃなくて、これはマジで無理ゲーだから」

 

「ごめんね、彩葉。櫓止められなかった。……強かったなぁ、乃依」

 

「いや、桜楽はあれで全然良かった。私達が帝押し切れなかったのが敗因だから。……てか、私が勝てなかったせいだし……」

 

「……でもね」

 

 

 銀色ドラゴンの着ぐるみスキンを解除しながら、桜楽は笑った。

 

 

「私、次は乃依に勝てるよ」

 

「……え、マジで? 本気で言ってる?」

 

「うん。私は2人と違って対戦ログが全く残ってない。つまり、私が何を出来るか……それは誰も分かってない。初見殺しみたいなものだけど……絶対、一回は通る」

 

「ん〜……じゃあさ、それ3戦目に回さん?」

 

 

 何か思いついたようにポンと手を叩くと、かぐやは言った。

 

 

「桜楽さ、練習の感じだと時間稼ぎはめちゃくちゃ得意じゃん? 帝にも瞬殺はされないっしょ?」

 

「んー……どうだろ。絶対に近接タイマンは勝てないけど……粘れはすると思うよ。人読みもされないしね」

 

「じゃあさじゃあさ──」

 

 

 かぐやはテンション高めで、どうせ誰にも聞こえてないのに私と桜楽の耳元でヒソヒソと囁く。

 

 

「……確かに、それだったら行けるかも」

 

「システム上も問題ないと思う」

 

「にっしっし、真実からもらっといて良かった〜」

 

 

 流れの変わる第2セットが、幕を開けようとしていた。

 

 

『────!? ここでさくDも脱いだーーー!!』

 

 

 

 

『第2セット、一切迷うことなくブラックオニキスはトライデント! ちょっとかぐや達舐め過ぎじゃないかな〜?』

 

『しかしチームかぐやも変わらないV軸! これでは第1セットの再現になってしまうぞー!?』

 

 

 何も知らない実況がむしろ面白くなってきたところで、私は虎バイク乗車中の帝に脳天から斬りかかる。

 

 

ガキィィン──

 

 

 棍棒とブーメランの鈍い衝突音が雪山にこだまし、虎バイクを降りた帝が私の方へ目を向ける。

 

 

「愛しのかぐや姫は?」

 

「知らないの? かぐや姫は月に帰るんだよ」

 

「ふっ──冗談キツいな!」

 

 

 エネルギー波をちょん避けし、得意の近接戦闘に持ち込んでくる帝。

 

 今度は別に倒すことが目的じゃない、いなして、いなして、私が時間を稼ぐ番。

 

 帝が困惑している理由は簡単だ。

 

 確かにレーダーマップには映っているはずのかぐやがそこにいない。

 

 ハンマー職、ついでにアックス職もだが、それらの武器には隠密スキルはセットできなくなっている。

 

 なのに見当たらない、何故だ?

 

 そんなことを考えているのは簡単に見て取れた。

 

 

「──っ、上か!!」

 

「へっへー、だいせーかーい!」

 

 

 そこにはフィールドの上空を舞うレプトケファルス、要は鰻の幼体を乗りこなすかぐやの姿があった。

 

 一定以上の高度であればミニオンの攻撃が届かず、高速ライドを使い続けられるというマイナーな裏技はあったが、かぐやはそれをレプトケファルスをおやつで餌付けすることによって高度の問題を解決してしまったのだ。

 

 フィールドギミックすら飼い慣らすとは……流石真実'セレクションである。

 

 それに加えて2Dのレーダーマップには高低差は映らない、帝がかぐやに気付けなかったのもそれが理由である。

 

 

「それじゃおっさきー!!」

 

『なんと、なんと、かぐや姫が宙を舞う! かぐやがさくDの元へ向かいます!』

 

『おお〜、このレプトケファルスちゃんがとうとう気付かれるなんて!』

 

「雷、トップレーン! 乃依が落ちる!」

 

「よそ見してたら行っちゃうからね!」

 

 

 指示を出す帝の隙を突き、私は仕込みワイヤーで櫓へ向かう。

 

 

「いいね、良くなってきた」

 

 

 楽しげに笑う兄の顔が、思い浮かぶかのようだった。

 

 

 

 

「次から次──おばけ入力精度って感じ」

 

「ねー、どんどんタイミング合ってくんだけど。マジで初心者ってこと? こわー」

 

『櫓Bは拮抗状態! 乃依の止まらない鈍足連射をジャストガードで弾き続けるさくD! 奇しくも両者、ミニスカ和装メイド対決となっている!』

 

『いやー、あんなのがビギナー帯に解き放たれるかもとか未来が楽しみになるなぁ』

 

 

 やっぱりそうだ。

 

 近接戦闘はどうしても読み合いの要素があって、そうなるとトレモとフレームしか分からない私じゃ経験の差で負ける。

 

 でも遠距離戦はそうじゃない。

 

 ひたすら入力精度。

 

 同じコマンドをどれだけ早く完璧に打ち続けられるかという、その要素が読み合いよりも遥かに高い割合を締めている。

 

 それなら私は……割と得意。

 

 

「でも弾いてるだけじゃいつか──」

 

「うぉりゃぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

 時間通り。

 

 レプトケファルスからジェットエンジンで飛んできたかぐやが鳥居の向こうで爆煙を上げる。

 

 

「ん? あれ──」

 

 

 今。

 

 乃依がよそ見をしたその瞬間、私はジャストガードのチャージ増加によってチャージ時間を踏み倒し、レールガンの引き金を引いた。

 

 

────ドシュンッ────

 

 

 長いチャージ時間、悪い取り回し。

 

 けれどそれと引き換えとなった、遠距離最高火力最高弾速。

 

 

「──すご」

 

 

 放たれた弾丸は一瞬の沈黙の後、乃依のアバターを消し飛ばした。

 

 

『なんとなんとなんとなんと!! 着ぐるみを脱いださくDが乃依に一矢報いたぞ!! いや矢を射ってたのは乃依の方なんだけど!!』

 

『まさかロマン砲でしかなかったレールガンがこんなとこで輝くなんて……』

 

「かぐや!」

 

「はいはい任せて!!」

 

『さあここでかぐやが櫓を占拠!! やはりこのチームは何かを()()()()()!!』

 

『ですがここで帝がいろPを落としてさながら中国大返し、まだ分かりませんよぉ!』

 

 

 そして櫓が私達のものになったことを確認し、私はお掃除ロボットを呼び出してかぐやと共に飛び乗る。

 

 目指すは勿論天守閣。

 

 しかしレーダーマップを見るとそこにはすかさずカバーに入る雷の姿が。

 

 

「桜楽、あとはよろしくぅ!」

 

「了解!」

 

『さあ本陣に迫るさくD! しかし雷と帝が対かぐやで共闘しているぞ!?』

 

「ここは……通さない──っ!!」

 

 

 一瞬振り向くと、そこには最大点火のジェットハンマーで2人諸共飛んでいくかぐやの姿が。

 

 私は思わずくすっと笑い、それから目の前の大将落としにフルスイングのバトルアックスを叩き込んだ。

 

 

『ここでさくDが天守閣を落としたー!! 第2セットまさかのどんでん返し!! チームかぐやが最終セットに持ち込んだぞーー!!』

 

『初の天守閣がブラックオニキス!! 大物狩りにも程があるぞ!!』

 

『おお〜!! これこそヤッチョの求めていた盛り上がりなのです☆』

 

 

 かぐやの奇策と、私の情報アドバンテージががっちりハマった第2セット。

 

 何より、大将落としを打ち込んだ時のあの感触。

 

 

「どう? 桜楽。 楽しいっしょ、KASSEN」

 

「まあね」

 

 

 そして3人で力いっぱいハイタッチしたとこで、勝負は運命の第3セットにもつれ込んだ。

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