超かぐや姫 スーパーフォルテッシモ!!   作:あるふぁせんとーり

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桜楽メモ:タイピングは分2000キー弱打てる


第十九帖 竹取神戦/RoundFinal

 第3セット。

 

 私には秘策があった。

 

 メンテとかそういうのは一切関係ない、シンプルな疑問から生まれたとっておき。

 

 マイナーな小ネタでしかないから、多分対策もされてない。

 

 一回見られたら二度は使えないだろうけど、一回は絶対通るという自身がある。

 

 なら、勝てるかもしれない。

 

 

『さあ第3セット、衝撃は止まらない!! 両者櫓を確保し天守閣での最終決戦へ!! 頂点狙うかぐやいろPに立ちふさがるのは当然帝!! そして乃依と雷の前に立つのは先程ジャイアントキリングを見せつけた超新星さくD!! この勝負、最後まで瞬き厳禁だ!!』

 

「へえ、本気で俺達止められると思ってる? それも1人で?」

 

「止めないと勝てませんから。普通でしょう? ──好きな人に、少しでもカッコいいところを見てほしい、なんて」

 

「ふーん、悪くないね」

 

 

 前衛は大盾を構えた雷、後衛は十八番の鈍足連射を番える乃依。

 

 さっきみたいにその場でジャスガじゃ雷に隙を突かれておしまい。

 

 だから、先に乃依を倒す。

 

 私はバトルアックスを構え、乃依の初撃を待った。

 

 そして、それが来た瞬間── 

 

 

「──っ!?」

 

「何──?」

 

 

 私は乃依の鈍足矢を踏み台に、空中へ飛び上がった。

 

 

『おおっと!? さくDに鈍足連射が効いてない!? 一体これは何が起きてるんだ!?』

 

『ジャストジャンプ……実用化されてるのは多分初めてですね。え、これ成功させんの? この本番で……!?』

 

 

 ジャストジャンプ。

 

 KASSENは空中でガードボタンを押しても効果が発生しないが、ジャンプの頂点、すなわち上下移動のパラメータが0になった瞬間だけは地上と同様にガードボタンの受付が発生する。

 

 もちろん効果は出ないのだが、重要なのはジャストガードの発生条件が「ガードボタンを離したそのフレームに攻撃判定が重なっていること」だということ。

 

 すなわち「ジャンプの頂点でガードボタンを押す」、「鈍足連射に重なった瞬間離す」、「ジャストガードによりダメージ無効」、「ダメージのないオブジェクトとなったため踏み台ジャンプ可能」という流れが発生し、これを繰り返すことによってアックス職でも無理矢理近づくことが出来るってこと。

 

 もちろん入力猶予は全部1Fだけど──

 

 

「……私も、キーボード叩いてご飯食べてるので!!」

 

 

 乃依の鈍足連射、雷の瓦礫操作、その全てを踏み台にして距離を詰める。

 

 流石このゲーム最強の弓使い、有効射程もとんでもなく、一回ミスったら終わりの勝負。

 

 でも負けない。

 

 勝ちたい。

 

 カッコいいところ見せるって、私が言ったから。

 

 

キィンッ──キィンッ──キィンッ──

 

 

 甲高いジャスガの音が絶え間なく響く。

 

 飛んでくる弾幕を足場にし、宙を走るように私は彼の懐へ飛び込んだ。

 

 

「くっそ……対策しとけば良かった」

 

 

 バツが悪そうに笑う彼へ、私は思いっ切りバトルアックスを振り上げた。

 

 

「おめでと、マジでアックスの評価上がるよ」

 

 

 そんな褒め言葉を残して、彼は爆ぜた。

 

 で、後は……

 

 

「……ウルト吐いてゴリ押し!!」

 

 

 アックスのウルトの評価は低い。

 

 溜まる時間的に第3セットにしか使えないのに、効果が超絶高倍率とはいえ自己バフ、それも一発だけだかららしい。

 

 でも、この状況なら、あと一人どうにか倒せば良いっていうならそれは一切問題じゃなくて。

 

 

「……来い」

 

 

 正面から受け止めてやるという王者の余裕。

 

 向こうのウルトも同じく自己強化、データによるとダメージ肩代わり+超強力なカウンター。

 

 サポート、タンクとしては理想的なそれ。

 

 大丈夫、ここまで来たら勝ってくれる。

 

 私はバトルアックスを構え、一直線で彼の構える大盾へ突撃した。

 

 ああ、楽しいなぁ。

 

 

『さくD、乃依、雷、相打ちで残機を使い果たし退場!! ジャストジャンプ、ウルト、最後まで決め手を取っておいたさくDが見事再びのジャイアントキリングを達成だーー!!』

 

『これは流石にアックスもレールガンも評価変わるか!? だが勝負の行方は帝VSかぐやいろP、この3人に託された!!』

 

 

 

 

「へえ、待っててくれたんだ。わざわざ勝ち筋捨ててまで」

 

「勝つだけじゃどうにもならない。トップってのはな、夢を見せるからトップなんだよ」

 

 

 それ以上に言うことはないと踏み出す帝。

 

 それと同時に私もかぐやも突撃する。

 

 思えばいつぶりだろうか、こうしてお兄ちゃんと戦うのは。

 

 

「また負けた……やっぱ強いな〜」

 

「そうだろ。なんてったってお兄ちゃんだからな」

 

 

 そんな大昔のやり取りを思い出す。

 

 お父さんがいなくなってから、お兄ちゃんはお父さんになろうとしてるみたいだった。

 

 続けてたサッカーを辞めて、代わりにできた時間では家で読書かゲーム、母と揉めてたらすぐに来て間に入ってくれる。

 

 性格も行動も、それは記憶の中のお父さんそっくりだった。

 

 それからいつしかプロになるって目標が出来て、お兄ちゃんは私を置いて上京した。

 

 色んなことを抜きにして、画面の向こうで活躍するお兄ちゃんを見るのはすごく楽しかったし、嬉しかった。

 

 それで、お兄ちゃんがツクヨミで活動し始めて、そこでヤチヨを知って、それからずっとヤチヨに支えてもらって……ああ、そうだ。この間も、お兄ちゃんはずっと本気でこのゲームをやってたんだ。

 

 

「……勝てるかよ」

 

 

 笑い声のようなため息とともに思わず口をついて出る中、隣の欲張り怪獣はやっぱり唸っていた。

 

 

「ち〜く〜しょ〜! 笑えるくらい楽しいけど笑えるくらい強い! でも彩葉のためにも桜楽のためにもかぐやが勝つ!」

 

 

 目を輝かせ、そう笑う彼女。

 

 そうだ、楽しくて良いんだ。

 

 

「……私さ、勝ったら聞いてほしいお願いがあるんだけど」

 

「いいぜ、お兄ちゃんがなんでも叶えてやるよ」

 

 

 交渉成立。

 

 その回答を聞き届けた瞬間、私とかぐやは左右から帝を挟み撃ちにかかった。

 

 高台を駆け上がり、かぐやと武器を入れ替えてから重い一撃を叩き込む。

 

 

「武器の入れ替え──考えたな」

 

『さくD、乃依、雷、相打ちで残機を使い果たし退場!! ジャストジャンプ、ウルト、最後まで決め手を取っておいたさくDが見事再びのジャイアントキリングを達成だーー!!』

 

 

 レーダーマップから確かに3人が消えている。

 

 桜楽、本当にやってくれた……!

 

 

「悪いけど、ますます負けれなくなった──!!」

 

「はっ、いい友達持ったな彩葉!」

 

 

 帝を常に前後で挟み、武器の交換と足場破壊を繰り返して帝を崩れた柱の方まで追い込んでいく。

 

 

「そこっ!」

 

 

 気を見計らい、私は双剣の片割れをぶん投げた。

 

 それは完璧な軌道で帝の背後の瓦礫へ突き刺さり、ワイヤーを伸ばすアンカーはかぐやのハンマーへ。

 

 ミスって抜けなくなったフリをして、かぐやはグイグイとそれを地面に押し込み、アンカーをその場に固定する。

 

 

(彩葉無視して凸りまくったから、帝は自我つよつよかぐやちゃんデーだと思い込むはず!)

 

 

 そんなことを考えているであろう彼女の目。

 

 かぐやが策を作ってくれた、桜楽が舞台を整えてくれた。

 

 ともすれば、私は──

 

 

「勝たなきゃいけないんだっつーの!!」

 

「っ──そっちが本命かよ!」

 

 

 四方八方に固定されたアンカー、巻き取られるワイヤーが帝の身体をその場に強烈に締め上げる。

 

 そうだ、お兄ちゃんは誰よりもこのゲームをよく知ってる。

 

 私の突破力じゃ天守閣は落とせない、だからここで犠牲にするなら私、囮にするなら私、そこまで全部織り込んでくる。

 

 でも、かぐやはそこまで織り込んでくれた。

 

 

「私達の、勝ちだ──っ!!」

 

 

 絡みついたワイヤーごと、私は帝を叩き斬った。

 

 「やりゃあ出来んじゃんか」、お兄ちゃんの口がそんなふうに動いた。

 

 

『お、鬼アッチ〜〜〜〜!!!!』

 

「やったー!! やったよ彩葉!! うちら最強!!」

 

「あれ、かぐや。私は死んじゃったからお役御免?」

 

「桜楽も最強!!」

 

「大人しく待ってて。天守閣落としてすぐ帰るから」

 

「うん、楽しみにしてる」

 

 

 桜楽との通信を切り、私は呼び出したオオタカへと飛び乗った。

 

 その後を追ってすぐにジェットエンジンに点火したかぐやもついてくる。

 

 

「彩葉が危なくなったら、かぐやが助ける!」

 

「かぐやがミスっても私はおいてくー」

 

「なんで!? 助けて桜楽ー!」

 

「はいはい、私はどっちもちゃんと助けてあげるから。早く帰ってきて」

 

「うう……やっぱり信じられるのは桜楽だけだぁ……」

 

「お? お? やるか同士討ち?」

 

「「……あははっ」」

 

「……なんか、2人だけズルーい」

 

『おっと、でも実はヤッチョと一緒にいる桜楽なのでした』

 

「えっそっちの方がずるくない!?」

 

 

 ようやく大将落としが見えてきた。

 

 決着はもうすぐだ。

 

 

『さあ、黒鬼の天守閣へ迫るかぐやといろP!! しかし帝も最高速度でチームかぐやの天守閣に向かう!! さあどっちだ!! かぐやか!! 僅かにかぐや優勢か!!』

 

「うおおお!! かぐや大・活・躍☆」

 

 

 ハンマーを持って駒のようにブン回り、ミニオンを一掃しながら階段を駆け上がるかぐや。

 

 

「うぇーい、勝か──え?」

 

 

 そして大将落としにハンマーを振り被った瞬間、彼女の足元で巨大な爆発が発生した。

 

 

『ここで雷の地雷トラップだーー!!』

 

「抜け目なー」

 

「フンッ」

 

『さあ帝だ帝だ!! ウルトも吐いて急ぐぞ帝!!』

 

 

 思わず身体から力が抜けていく。

 

 レーダーマップを見るにこれはもう帝だ。

 

 向こうの勝ちだ。

 

 そう思っていた瞬間、通信が入った。

 

 

「走って、彩葉」

 

 

 

 

「ねーねー、ヤッチョ気になるんですけども〜」

 

「何がですか?」

 

「いや、さくDまだ何か隠してそうな顔してるな〜って☆」

 

「……まあ、誰も手札があの2つだなんて言ってませんし、誰も私の手札知りませんし、何より私は──自分より強い人の真似をするのが、すごく得意なんです」

 

 

 

 

『なんとここでチームかぐやの地雷も起爆!! 最後に仕込んでいたさくDがあっぱれと言うしかない!! 帝、致命傷は避けたが大きく吹き飛ばされた!!』

 

『アックス、レールガンがスキル地雷!? 火力中毒者が過ぎるぞさくD!!』

 

『さあいろP迫る!! しかし帝盛り返す!! 帝か!? いろPか!?』

 

 

 最後のチャンスだ。

 

 全身全霊でミニオンを押し返し、私は大将落としへ向かう。

 

 レーダーマップを見ている暇もなく、ただただ全力で。

 

 

『勝負の行方はどうなるんだ──!?』

 

 

 そして私と帝は──同時に、天守閣を落とした。




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