超かぐや姫 スーパーフォルテッシモ!! 作:あるふぁせんとーり
気になった人は自分で調べろカス(yachi8000)
何で言ったかというとファンアートが欲しいからです
よろしくお願いします
とうとうこの日が来た。
とうとうこの時が来た。
緊張、達成感、あるいは極大の昂揚。
伝えたかった気持ちも伝えて、こんなとこまで来れてしまって。
まだ続きがあると分かっているにも関わらず、終わってしまっていいとさえ思っている自分がいる。
それじゃ駄目、まだまだ続けるんだと自らに気合を入れ直し、私は目の前の景色に意識を引っ張り直した。
「ヤバいどうしよ、震え止まんない……失敗したらどうしよ……」
「大丈夫だよ。ほら、リラックスリラックス」
傍から見ても緊張で心臓パンクしかけな彩葉の頭を膝の上に載せ、ブラッシングするみたいに髪や狐耳、尻尾をゆっくりと撫でていく。
隣に座る彩葉の現実の鼓動さえ伝わってくるみたいだった。
「だらららら、蟹! だらららら、うさぎ!」
「……何それ、くだんない」
「あ、彩葉やっと笑った!」
かぐやがさっきから繰り返しているモノマネルーレットを眺めている内に緊張も少しは解けたのか、彩葉は思わずくすっと笑った。
それで味を占めたのか、狐、ドラゴンと続けていくかぐや。
満足するまで続けた彼女はぐぐっと背を伸ばしてから自分のお腹に手を当てた。
「桜楽〜、私練習しすぎてお腹空いちゃったな〜! 終わったら一緒にパンケーキ作ろ!」
「良いよ。いちごとホイップ、たっぷり乗せようね」
「わーい!」
「だらららら、どじょう!」
「はいはい今度は──って!?」
「ヤチヨ……!」
「ヤチヨじゃん。おつー」
どんな大物相手にも物怖じしないのはかぐやのいいところ。
モノマネルーレットのモノマネをしながら姿を現したヤチヨは「パンケーキいいな〜、ヤチヨも食べたいな〜」と無邪気にその場でふわふわ回る。
「んじゃヤチヨも食べる?」
「ヨヨヨ〜、ヤチヨは電子の海の歌姫なので食べられないのですぅ〜」
「え、なにそれ! 歌姫ってそうなの!? なにそれ拷問じゃん! かぐや歌姫やめる!」
「電子の海だからじゃないかな」
「あ、そっか」
「でも嬉しい言葉言ってくれるねぇ、お嬢ちゃん。ヤチヨ感激〜」
……同一人物、なんだよね。
改めて思うと、とてもおんなじ存在とは思えない。
なんというか……ヤチヨは、何かを隠してるように見える。
なんなんだろ、ヤチヨとかぐやは何が違うんだろ。
「じゃあさじゃあさ、ヤチヨって何食べてるの? まさか、何も食べてないとか?」
「いえいえ、とっても美味しいものを食べてますよ〜、ヤチヨは。ツクヨミにいるみんなから溢れてくるキラキラ。それこそがヤチヨの主食であり大好物なのです」
「へ〜、じゃあかぐやのキラキラもいる?」
そう言って彼女は生まれてこの方ずっと着けている銀色のブレスレットをヤチヨへ差し出す。
けれどヤチヨは「そういうのはもっと大切な人に渡すんだぞ☆」とその申し出を丁重にお断りした。
「大切な人……」
『各所、準備整いました』
軽やかな通知音と共に空中に現れる舞台監督さんからのメッセージ。
時間はピッタリ、いよいよだ。
私達は控室を離れ、ステージへ続くエレベーターかリフトのような枠に乗る。
「──いざ、ゆこうか」
歌姫の顔になったヤチヨの言葉とともに、その枠は静かに上がり始めた。
誰のものかも分からない感嘆のため息がいくつか流れていく。
「よかった、みんな程よく緊張して、程よくリラックス出来てる。一番いい状態だよ。私ですらこの時間だけはいつもヒリヒリしちゃうのに」
「ヤチヨでも、そうなんですか?」
私が尋ねると、彼女はこくりと首を縦に振る。
「ヤチヨは電子の海の歌姫で、ツクヨミみんなのアイドルだからね。どうか今回もみんなが楽しんでくれますようにっ!って必死でお祈りしてるんだよ〜」
「なら大丈夫ですね。毎回彩葉と2人で楽しんでます」
「ふふっ、そんな生でそんなコメントもらえてヤチヨ大満足〜☆」
本当に、私達はこの歌姫と同じステージに上がるんだ。
私達を救ってくれた彼女と同じ曲を奏でて、同じものを届けるんだ。
ああ、不思議だなぁ。
……あ、そうだ。
一つ、聞きたいことがあったんだっけ。
「……「Remember」って、もう歌わないの?」
私に代わって、彩葉が尋ねた。
あそこからだ。
あれを聞いたから、私はヤチヨを追いかけるようになった。
でもあの歌は長いこと奏でられず、当然のように今日のセットリストからも外れている。
「あれはもう届いたし、まさかのおまけまでつけてくれた。だからもうお役目完了。ヤチヨとしては万々歳なのです」
「……? それって──」
私が言い切る前に、昇降機は止まった。
それに気付いた瞬間、「プレッシャー」なんて言葉にしたら陳腐なくらいの感情が私達に注がれる。
一瞬、宇宙を象った背景かと思った。
けれど、そうじゃない。
あれは観客だ。
私達を待ってくれているお客さんだ。
リフト……いや、今はステージに変わったそれにパッと明かりがつくと、どっと、天地を揺らすような大歓声が私達を迎える。
期待は星の光のように注がれ、昂揚は星の引力のように私達を引っ張り、ステージの中心へと引きずり出す。
まるで、私達が銀河の中心になったみたいだった。
「さあ、時間だよ!」
ヤチヨが手を広げた瞬間、私達もステージ衣装へと変わった。
今回のためだけに何度も会議を重ねた専用装備。
何人ものクリエイターのお陰で想像以上のものに仕上がっている。
ああ、この期待に応えないと。
昨日までサイリウムを振り、歓声を上げて期待する側だった私達に、ヤチヨが応えてくれたように。
そしてギターを構える私も、キーボードに指を添える彩葉も、きっとこの瞬間に初めて気がついたのだろう。
「ヤオヨロ〜〜☆」
「みんな! 生きるの、どうですか〜?」
「いいことあった?」
「それとも、泣いちゃいそう?」
「よしよし、大丈夫だよ。全部大丈夫」
「どんなに孤独で長い道のりでだって、楽しかったな〜、って記憶が足元を照らしてくれるんだよ」
「この瞬間もそんな記憶に、忘れられない思い出にしたいから──」
「……どうか、一緒に踊ってくれる?」
ステージから見える光が、こんなにも勇気をくれることを。
「「ヘイベイビー」」
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