超かぐや姫 スーパーフォルテッシモ!!   作:あるふぁせんとーり

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第二十四帖 月

「ヤチヨ〜!!」

 

「いろPサイコー!!」

 

「桜楽愛してる〜!!」

 

「かぐや、結婚してくれー!!」

 

 

 「ヤチヨ」「かぐや」「彩葉」「桜楽」と絶え間なく降り注ぎ、終わってなお止まない大歓声。

 

 汗はだらだらだし、結局ステージの上でもいつものようにかぐやに、ついでにヤチヨに振り回されたりもしたし、たった1時間のステージ。

 

 けれども、それはこれまでの人生において何よりも激しく、何よりも熱狂した時間だった。

 

 

「かぐや……めーーーーっちゃくちゃ楽しかった!!!!」

 

 

 あっという間に過ぎ去ったその時間を越えて、真っ先に叫んだのはかぐやだった。

 

 堪えきれないといった様子で手をブンブンと振り、観客席を見回し、最終的にはその目は隣の私と彩葉へ向けられる。

 

 

「……ねーねー、結婚ってどうしても誰か1人としか出来ないの? かぐや、彩葉とも桜楽とも結婚したいなぁ」

 

「駄目に決まってる。日本は一夫一妻なんだから」

 

「……あ、じゃあかぐやがいっぱいいたら? そしたらどっちとも結婚できる?」

 

「それだったら……出来るんじゃないかな?」

 

「やったー! ヤチヨに分身教わろ〜っと!」

 

「あのね、そもそもヤチヨは……」

 

 

 彩葉は言いかけた言葉を止め、根負けしたかのようにため息を吐きながら笑った。

 

 

「生活費は三等分、勉強の邪魔はしない、レシートはちゃんと出す。これだけ守ってくれるなら私はいいよ」

 

「異議なーし」

 

「ほんと!? やったやったー!!」

 

 

 また無邪気に、月の兎のように跳ねるかぐやの声は興奮冷めやらぬファン達の大声援が押し流していく。

 

 全てが熱くて、沸々と沸き立っているような、そんな感覚。

 

 そしてそんな熱狂に──

 

 

「さく……彩葉! あれ、ラグった?」

 

 

 小さな違和感が、横槍を入れた。

 

 先程まで情熱的に、けれど規則的に明滅していたサイリウムの星々は突如として乱れ始め、歓声の中に困惑が混ざり始める。

 

 私はギターをキーボードに持ち替え、その場でいくつかのSNSを捜索する。

 

 それは人々のデバイスに入り込み、自己紹介でもするかのように巨大な月を映し出した。

 

 それは人々のスマコンに映り込み、機械的に一礼した。

 

 それは人々のネットワークに染み込み、不意に通信を途切れさせた。

 

 

「なんか読み込まないな……」

 

「あれ、入力バグった?」

 

「おい、再起動しても直らないんだけど」

 

「あのモニター変じゃない?」

 

 

 数えればキリがない。

 

 ほんの細かな、一つ一つは取るに足らないような違和感が砂山のように積み上がっていく。

 

 そしてその違和感は、このステージにまで及んだ。

 

 


 

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 誰もが熱を冷まし、モニターを見上げた。

 

 今から2週間後。

 

 それはまるで、犯行予告のようだった。

 

 どよめく観衆と、それをよしとした違和感。

 

 それから間もなく、彼らは次の段階へと進んでいた。

 

 いくつかのアバターが乗っ取られ、姿を変えた。

 

 真っ白で無味無臭、無特徴な体の上に大きな灯籠の乗ったような、奇妙なそれ。

 

 

「彩葉」

 

「……何、これ。……かぐや、少し下が──」

 

 

 彼らは私達の想定より早く、私達を害そうとしていた。

 

 様子見の段階を飛ばし、そのうちの一個体がかぐやの腕を掴む。

 

 彩葉が声を掛けた時には、すでにかぐやは脅かされていた。

 

 まるで空気の抜かれた風船のように、へなへなと膝からその場に崩れ落ちる。

 

 

「──」

 

「駄目」

 

 

 往生際悪く二撃目を入れようとするそれを、私はバトルアックスで叩き割った。

 

 左肩から右腹にかけて走った刃の軌跡と、それに従って分かれる身体。

 

 手応えはないのにあっさりと切れたそれは、まるで切られたことに気付いていないかのように上半身を床に落としたまま下半身だけが動き続けている。

 

 その切り口から溢れてくるのはツクヨミの花びらではなく、どす黒い粘液のようだった。

 

 ああ、そうだ。

 

 明らかに、こいつらはそういうことだ。

 

 

「ツクヨミの、ものじゃない……!」

 

 

 マズい、少し怖くなってきた。

 

 その感情に呼応するように人型は数を増やし、じわじわと迫ってくる。

 

 

「かぐや、大丈夫!?」

 

「……」

 

 

 何も答えない。

 

 瞼は開いているけど、その視線はどこにも向けられてない。

 

 まるで自分の中の情報を処理することで手いっぱいのようだった。

 

 

「──」

 

 

 また白い腕が伸びる。

 

 けれどもそれは──

 

 

「おいたは、ダメだよ〜」

 

 

 ヤチヨによって、軽く薙ぎ払われた。

 

 ライブ限定仕様のネイルが上下左右に揺れる度、人型はなすすべなく枯れ葉のように吹き飛んでいく。

 

 ステージに上ったばかりの人型はいくらか後ずさりすると、ヤチヨへ、あるいはその隣のかぐやへ向けて頭を下げた。

 

 

『──モウシワケ アリマセン』

 

「喋った……!?」

 

 

 その真偽を問いただすまでもなく、人型は次々と誘爆し、姿を消していく。

 

 まだ倒れたままのかぐやと、僅かに震えている彩葉。

 

 彼女は震える手を握り締め、ヤチヨに問いかける。

 

 

「……ヤチヨ、今の、何?」

 

「……」

 

 

 彼女は何も答えない。

 

 代わりに観客席に向かって、嫌に明るい大声を張り上げる。

 

 

「今のは一体!? 来たる9月12日、一体何が起こってしまうんだ!? 続報を待て!」

 

「あー、そういうやつか」

 

「ヤチヨ好きだもんなー」

 

「良かった、演出だったんだ……」

 

「みんな、今日は本当にありがと〜〜☆」

 

 

 そうしてヤチヨはこのコラボライブに幕を下ろし、緊急で通信を落とす。

 

 客席とステージが分かたれ、再びこの空間に残るのは私達4人だけ。

 

 

「今の、何?」

 

 

 もう一度彩葉が問いかけると、彼女は少し考えるふりをしてから、それっぽく答える。

 

 

「う〜ん、バグじゃなさそうだし、天才やんちゃ小僧でも現れちゃったかにゃ〜、ヤッチョが調べとくよ」

 

 

 ああ、嘘だ。

 

 ヤチヨは嘘を吐いている。

 

 でも、嘘を吐きたくなるのも当然だろう。

 

 その答えを伝えるのは、多分かぐやじゃないといけないから。

 

 そうでしょ?

 

 あのかぐや姫のクライマックス。

 

 それは、「月」からのお迎えだから。

 

 

「……楽しかったよ、ヤチヨ」

 

 

 私は最後に、全部胸の中にしまって、そんな言葉とともにステージを離れた。




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