超かぐや姫 スーパーフォルテッシモ!! 作:あるふぁせんとーり
『何という急展開、まさしく青天霹靂! 気まぐれにツクヨミに現れた超新星はやはり気まぐれに去ってしまうのか!? 最後の歌声、最後のダンス、最後のファンサ……いざいざ涙は厳禁、この卒業ライブ──かぐやの全てを見届けろ!!』
かぐやとヤチヨの二推しを謳う忠犬オタ公の涙混じりの実況音声が特設会場に響き渡り、それに渡り合うように大歓声を張り上げる観客達。
それはまるで波のように反響し、天地を揺らすような轟きがツクヨミを埋め尽くしていく。
そしてその波が一つの頂点に達した時、無数のスポットライトが天守閣を照らし出す。
もちろんその頂上に立っているのは──
「みんなありがと〜〜!!」
本日の主役、我らがかぐや姫である。
もう一度息を吸い込んでから、彼女はツクヨミ中に届くように言葉を送り出す。
「もうお別れの時間みたいなんだけど、悲しい顔で終わるのは嫌なんだ! 最後までみんなで笑って、最高にハッピーなまま卒業したいの! だからみんなも楽しんでいって!!」
「かぐやー!!」
「今までありがとー!!」
『かぐやを追えてよかった 本当にありがとう!!』
「行かないで〜〜!!」
『いつでも帰ってきて! 私達待ってるから!!』
コールがツクヨミと、配信のチャットを埋め尽くす。
そしてその音に乗り、7つの桃が天守閣の麓のリスポーン地点へと落下した。
「さあ、最高の引き立て役、務めてやろうじゃねえか!!」
「……気合充分」
「俺らの方が目立っちゃっても知らないからね〜」
帝率いるブラックオニキス、
「かぐや〜見てる〜?」
「最高のライブにしてね、かぐやちゃん!」
人気インフルエンサーのまみまみとROKA、そして──
「大丈夫だよ、かぐや。最後には上手くいくから」
「ライブの余興。私達は私達で精一杯やるから。勝ったら商店街回って、フルーツ山盛りの最強パンケーキ作ろう!」
隣りに座る、桜楽と私。
帝達の声は歓声に掻き消されてかぐやまで届かないが、私達の声は別。
まぶたを開くと、そこには同じようにスマコンの光を輝かせながらも目を開ける二人の姿があった。
「ほら、なかよしのやつ。やるんでしょ?」
ピースして、星を作って、三角に重ねて、最後は狐でコーン。
それだけやって、目を瞑る。
意識は暗い配信部屋から、再びツクヨミの舞台へと引き戻される。
「そっか、そっかぁ……みんな……自由だぁ〜っ!!」
向日葵のような満開の笑顔で、頭に犬DOGEを乗せたかぐやは天高く声を上げる。
それが届いたツクヨミの空には大きな満月が浮かび、次第にそれは雅楽を奏でながら蓮華のように花開いた。
菩薩と、それに付き添う七福神、そしてあのコラボライブに現れた灯籠頭の人型。
観客はそれをライブ演出だと拍手で迎えるが……間違いない、あれがかぐやを迎えに来た「月人」だ。
「いける?」
「問題なし」
バトルアックス、ギター、タイプライターを組み合わせたような新生武装を携えた桜楽はそう頷くと、彼女はそれを彼方の菩薩型に向ける。
『ユーザー名:さくDからUnknownへ対戦が申し込まれました』
『──対戦が受理されました。レギュレーションを決定します』
……乗ってきた。
それはまるで文明気取りが、部族の祝祭を面白がって参加しに来るかのよう。
丁度いい、ちょっとくらいトラウマ刻んで、やるとこまでやってやる。
『──新規ルールが読み込まれました。KASSEN-EXを解放します』
KASSEN-EX。
それは桜楽が組み上げた、7対7のKASSENを8対8にした拡張版。
従来のものに加えてRANSEのような陣取り要素が組み込まれ、確保したフィールドではローグライクのようなパワーアップ効果が得られるという変更が施されていて、先行実装を謳ってはいるものの、事実上この戦いのために作られた専用システムだ。
「演奏にバトルにプログラミング……桜楽は多芸だね〜」
「私は作曲はなかったし、せめてこれくらいはね」
芦花にそう笑い返すと、彼女は私達全員の顔をもう一度見回し、そして頷く。
『ストック:3機 時間制限:なし 強化システム:アンリミテッド──』
「……行こう」
『──対戦を開始します』
鳴り響くシステム音声と共に、私達は飛び出した。
直後、稲妻が迸り、無数に建てられた周囲の櫓がかぐやのようなオレンジ色に染まる。
『強化:味方ユニット移動速度30%向上』
『強化:味方ユニット有効射程15%拡張』
『強化:敵ユニット被ダメージ20%増加』
『強化:味方ユニット──』
『強化──』
『強化──』
「はっ、お友達張り切ってんな! 流石RANSEの絶対王者ってとこか!」
「でしょ。桜楽、めっちゃすごいんだから」
「ああ、信用して暴れるさ!」
人型月人と今回は100%味方の中立ミニオンが軍として衝突する中、私は敵の大物、七福神型の方、巨槌を構える大黒天型へ突撃する。
頭上を月の軍勢の光弾と乃依の氷の矢、桜楽の打ち込んだコードが飛び交うその様子は流星群のようで、この状況でなければ見惚れてしまいそうなほど。
かぐやの歌声が響く。
それは優しくて、温かくて、どこか物悲しそうで。
しかし、その旋律をかき消すように、巨槌から放たれた大判型のビームカッターが私の身体を掠めた。
「っ──!!」
私はブーメランに精一杯の力を込め、私の数倍の巨躯へ叩きつける。
戦闘仕様とでもいうのだろうか、あの時とは違う明確な手応えと、それ故に感じられる強さ。
そして向こうの二撃目、振り下ろされた一撃をワイヤーと双剣を絡めてどうにか受け止める。
単純なスペックだけならストーリーモードのラスボスクラスだろう。
でも──
「もっと衝動的な音で──もっと感情的な歌で──」
『強化:いろPに「カウンター」が付与されました』
「ただじゃ終われないっての──!!」
加えられた衝撃を受け止め、大黒天型を全力で弾き返す。
桜楽のコードがキャラを強くし、かぐやの歌が私達を強くする。
チート級の物量がマップを埋め、チート級の砲撃がマップを薙ぎ払う。
しかし、その度に対抗するように声援は大きくなり、コードは打ち込まれ、歌声は強く響く。
かぐや、見ていて。
私達の姿を。
最後まで忘れないで。
相手は電柱から赤ん坊を生み出して、ヤチヨの作ったツクヨミをあっさりと乗っ取れるような意味不明な奴ら。
本当に勝てるなんて思ってない。
本当にかぐやを守り切れるなんて思えてない。
それでも私達は戦うんだよ。
あなたが勇気をくれるから。
あなたが優しさをくれるから。
あなたが希望をくれるから。
相手がお高く留まった文明人で、この時間が未開の部族の祝祭だとして、そうだとしたって構わない。
「何千年が経ったって──何万年が経ったって──」
『強化:味方ユニットに「防御無視」が付与されました』
バッドエンドになんて──
「させるもんか──!!」
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