超かぐや姫 スーパーフォルテッシモ!!   作:あるふぁせんとーり

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第三十四帖 feat.ヤチヨ KASSEN-EX/RoundFinal

 何度武器を振るったのだろう。

 

 どれだけの月人を退けたのだろう。

 

 かぐやの歌声が響く中、彩葉達の一挙手一投足に歓声が上がる。

 

 「頑張れ」「負けるな」と声が響く。

 

 それを私は誰も知らない、ツクヨミの果てから眺めていた。

 

 

「……よく、やるなぁ……」

 

 

 私が声に出せる、精一杯のものだった。

 

 最低だ。

 

 未来は変わらない、彩葉達は絶対に月には勝てない、そんな確信さえ抱いておきながら、私は軽々しく「手伝う」だの「応援してる」だの「大丈夫」だの言って、彩葉も桜楽も、かぐや(自分自身)さえ騙したんだから。

 

 芦花と真実はすごい。

 

 彩葉や黒鬼ほどKASSENが得意なわけじゃないのに、ボコボコにされたってめげることなく立ち向かってる。

 

 黒鬼はすごい。

 

 全く見たこともない相手に対しても動きを見切って、的確に有効打を叩き込んでいる。

 

 桜楽はすごい。

 

 仮想世界、データ世界の住人相手に一歩も退くことなく電脳戦でやり合っている。

 

 彩葉はすごい。

 

 本来のスペックをかぐやへの想いだけでシステムの上限近くまで引き上げて、巨大なボスキャラ相手に大立ち回りを見せている。

 

 でも、それは「すごい」だけ。

 

 月にとっては、彼女達の抵抗もあしらえる遊びの一つに過ぎないものだから。

 

 

「──涙も笑顔も照らしてゆく──」

 

「……そろそろ、かぁ」

 

 

 「瞬間、シンフォニー。」を歌い終えて、次の曲へと続く僅かな完走区間。

 

 ボサツ型の放った光弾が空を覆い尽くし、ずっと待機状態だった最大戦力、毘沙門天型が決着を付けんと動き出す。

 

 8000年間、たったの一回さえ忘れたことはない、恋い焦がれたイントロが会場に鳴り響いた。

 

 

「……よしっ!」

 

 

 かぐやが頷くと同時に、天守閣に仕組まれたギミックが作動する。

 

 彼女が一時的に、化粧直しも兼ねてお城の中に収納されている間、彼女の立っていたステージは鳥居に水面、そして灯籠と、まるでツクヨミの入口のように装いを変える。

 

 そして軽やかで華やかなメロディに合わせて犬DOGEと共に飛び出してきた彼女の最後の衣装は十二単風。

 

 紛れもない、月からのお迎えを受け入れるためのものだった。

 

 記憶の限り再現は頑張ったつもりなんだけど……間違ってたら、ごめんね。

 

 

「──瞳映る──静かな世界──」

 

「っ──」

 

「かぐやごめん〜〜!!」

 

 

 一番最初に脱落したのは、芦花と真実だった。

 

 ごめんね、あの時お礼言えなくて。

 

 私と彩葉のために戦ってくれてありがとう。

 

 かぐやと彩葉と、桜楽のために戦ってくれてありがとう。

 

 

「──優しい思い出──ふさいだ鍵穴──」

 

 

 ああ、あの時、私はあそこで何を思ってたっけ。

 

 彩葉と初めて会った日のことだっけ、初めて食べたパンケーキのことだっけ。

 

 いいや、全部だ。

 

 彩葉との時間の、全部を思い出してたんだ。

 

 ずっと、ずっと……綺麗だったなぁ、彩葉の表情(かお)

 

 

「──さわれない──きみだけの──彩──」

 

 

 じゃあ、今の「かぐや」が思い出してるのは、きっと彩葉と桜楽のことだ。

 

 いいなぁ、2人分だから思い出も2倍だ。

 

 きっと……私より、「かぐや」の方が上手くやれる。

 

 だから、これでいい。

 

 ディスプレイを見上げる。

 

 無限に増え続ける月の軍勢が桜楽の抵抗も彩葉の奮戦も押し潰して、天守閣のかぐやに迫る。

 

 彼女の歌声、彩葉が最後に書いてくれたワンコーラスの「Reply」がサビに入ろうとしていて、前はこのタイミングで黒鬼がチート使ってたな〜、なんて懐古していた思考を彼女の声がぶった切った。

 

 

「彩葉! あの菩薩型集合!」

 

「──っ、了解! お兄ちゃん!」

 

「任された!」

 

『乃依及び雷の強化状態がさくDに移行されました』

 

『帝アキラの強化状態がいろPに移行されました』

 

 

 現状掛けられるバフの全てを2人に集約し、桜楽は乃依の氷の発射台+雷の大盾を借りた駒沢カタパルト、彩葉は帝の金棒フルスイングで最高速度を叩き出して突撃する。

 

 狙いは遥か彼方から量産型と弾幕をバラ撒き続ける菩薩型。

 

 残った5人も全員残機は残り1つ、一か八か、これが最後のチャンスなんだろう。

 

 眼下に七福神やらの大物を収めつつもその遥か頭上を軽く通過し、2人はそれぞれの得物に最大限の力を込める。

 

 

「いち──」

 

「にの──」

 

「「さん────ッッ!!」」

 

 

 次の瞬間、ブーメランとバトルアックスの軌跡が4本の腕、無数の人型ごと菩薩の巨体を叩き斬った。

 

 ∞の残り残機を1つ減らしただけ、そう思ったけれど、すぐに彼女の狙いがそうじゃないことに気がついた。

 

 

『Unknown:ユニット08が撃破されました』

 

『フィールドの支配権限の48%がUnknown:ユニット08からさくDに移行しました』

 

『さくDのフィールド支配率が100%に達しました』

 

 

「間に合った──!!」

 

 

 地面に落ちる直前、彼女は現れたウィンドウの鍵穴にバトルアックスの柄を突き刺す。

 

 そして一瞬の間を挟み、機械的なアナウンスがふわっと姿を表した。

 

 

『味方ユニットのアンリミテッドモードが承認されました』

 

『60秒間味方ユニットは以下の効果を獲得します』

 

『強化:攻撃力の上限撤廃』

 

『強化:移動速度の上限撤廃』

 

『強化:有効射程300%拡張』

 

『強化:常時ウルト発動可能』

 

『強化:「防御無視」獲得』

 

『強化:「不死身」獲得』

 

『強化──』

 

『強化──』

 

『強化──』

 

 

 チートモードもかくや、画面を埋め尽くす強化状態の嵐。

 

 KASSEN-EXにおける最大の逆転要素、それが「アンリミテッドモード」

 

 どんなに実際の戦闘が不利状況であろうと、フィールドを100%取った瞬間、一分間のみ「絶対勝利」が確約されるというシステム。

 

 ネットに転がったチートモードなんかとは比べ物にならない、ツクヨミ公認の超絶強化。

 

 桜楽、よくこんなの作ったなぁ……。

 

 

「わっ!?」

 

「なにこれ──!?」

 

 

 強制回復した芦花と真実がフィールドへと吐き出される。

 

 

「うわ、すっげーな、これ」

 

「やっぱ俺、どんな状態でも映えちゃうんだよね〜♡」

 

「……気分上々だな」

 

 

 カメラに映った黒鬼の身体にその発動を示す青いラインが迸る。

 

 そしてそれは彩葉達も──

 

 

「彩葉、ご機嫌いかが?」

 

「決まってるでしょ。──最高!!」

 

 

 強化状態にありがちな通りに僅かに髪も伸びた2人。

 

 黒髪に青のインナーカラーの入った彩葉と、銀髪に赤の桜楽。

 

 月もいよいよ佳境と見たか、空を埋め尽くさんばかりに増殖する七福神。

 

 

「──どこにもない──カラフル──つかまえよう…さぁ!」

 

 

 2人は顔を見合わせ、頷いた。

 

 

「この一瞬が──最高のパーティーなんだ──」

 

 

 サビと同時に、彩葉達最後の抵抗が幕を開ける。

 

 それは勝つためじゃなく、かぐやの記憶に残るための戦い。

 

 彼女に別れを告げるための戦い。

 

 派手なエフェクトで、カッコいい技で、楽しそうに。

 

 目指すは反転、ステージで歌うかぐやの下へ。

 

 二筋の流星のように軌跡を描きながら、無数の月人を消し飛ばしながら。

 

 

「ありふれてる──好きな物にずっとまみれて──」

 

 

 歓声が上がる。

 

 それを演出だと、最後はかぐやが帰ってしまうのだと分かっている観客でさえ声を上げ、宙を駆ける二人の背中を押す。

 

 

「君といたあの部屋も──電子の海も──」

 

「ほら! 待ってるんでしょかぐや!」

 

 

 行く手をはばむ七福神を撃ち落としながら乃依が叫ぶ。

 

 

「胸のなかつめ込んで──タカラバコにしまおう──」

 

「振り向くな……!」

 

 

 毘沙門天の一撃を受け止め、雷が送り出す。

 

 

「ねぇ──もっとはしゃいで──アンコールないのって──」

 

「かぐやによろしく!」

 

「楽しかったって伝えといて!」

 

 

 雑魚敵を薙ぎ払い、芦花と真実が道を作る。

 

 

「おねだりして──とびきり──」

 

「行け、彩葉! 桜楽!」

 

 

 天守閣の麓、大物の群れを引き付けながら帝が叫ぶ。

 

 

「キラめいてうたおう──」

 

 

 濁流のように、無限の物量として押し寄せる月を、全力で押し返す2人。

 

 後少し、後少し、後少しで階段が終わる。

 

 頑張れ、頑張れ。

 

 負けるって分かってて、それでも画面から目が離せなくて、応援したくなっちゃって。

 

 やっぱりそれがあの子達の強さなんだって思い出して。

 

 そして軍勢の群れを抜けたその瞬間、無敵が終わり、メロディが止まった。

 

 

「……」

 

「……」

 

 

 奇しくも、最後の状況は彩葉と桜楽、そしてかぐやで同じものだった。

 

 全力を出し切った身体を、月人が取り囲む。

 

 「……やっぱ、まだ駄目かぁ」、なんて表情をした桜楽の手からバトルアックスがガシャンと落ちる。

 

 何も言わない彩葉の手からも双剣が抜ける。

 

 すごいよ、2人とも。

 

 やっぱり、ずっと上手くやってる。

 

 ずっと上手くやってた。

 

 

「──、──」

 

 

 さっき2人が叩き斬った菩薩は、まるで何事もなかったかのようにステージに降り立ち、恭しくかぐやへと傅く。

 

 もう、誰もその場に干渉する手立ても、干渉する意思も残していなかった。

 

 

「はるばるようこそ」

 

 

 あの日と同じように、彩葉達の敗北と自らの運命を受け入れたかぐや姫は屈託なくそう微笑む。

 

 それから少し気まずそうな顔をして、

 

 

「逃げちゃって、ごめんね」

 

 

 申し訳なさそうに謝った。

 

 

「でもでも、すっごい、すっ……ごい楽しかったんだよ!!」

 

 

 子供が親に、学校であった出来事を報告するような、そんな言葉に、表情の変わらない菩薩の顔が僅かに微笑んだようにも見えた。

 

 それからは、私が知ってる通り。

 

 お迎えの光る雲に犬DOGEと一緒に乗り、大勢の月人を引き連れて、ツクヨミの空に浮かぶ月の方へ。

 

 

「……」

 

「……待って、待ってよ──」

 

 

 静かにそれを見上げる桜楽と、まだ手を伸ばそうとする彩葉。

 

 それに応えたわけではないけれど、光る雲はフィールドの中心で動きを止めた。

 

 

「……みんなありがとう!! おかげで最っ高の卒業ライブに出来た!! 思い出もお土産も両手い〜っぱい!! 本当にありがとう〜〜!!!!」

 

「かぐや〜!!」

 

「愛してるぞ〜!!」

 

「かえんないで〜!!」

 

「私達ずっと待ってるから〜!!」

 

 

 何も知らないコールが、夜空にこだまする。

 

 かぐやはそれを聞いて満足そうに、

 

 

「えっへへ、名残惜しいけど……これでおしまい。それから──」

 

 

 一時的に、ほんの数秒、かぐやがツクヨミを離れる。

 

 あの時抱き締めた彩葉の体温、鼓動、呼吸……私の身体が覚えてる、最後の感覚。

 

 

「彩葉も、桜楽も──ずうっと、大好きだよ」

 

 

 そして、ツクヨミに戻った彼女は手を振りながら……最後、羽衣をかけられてから消えていった。

 

 ……これで、かぐや姫の物語はおしまい。

 

 きっと──ううん、すごくいいお話。

 

 ここまでで充分なんだよ、桃華。

 

 だからこれで、めでたしめでたし。

毎日更新、何時がいい?

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