超かぐや姫 スーパーフォルテッシモ!!   作:あるふぁせんとーり

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強い芦花


Ex-第7話 レシピ

「……つまりかぐやちゃん=ヤチヨで、ヤチヨはここ八千年をループしてて、3人はそのループから抜け出すためにかぐやちゃんを取り戻そうとしてるってこと?」

 

 

 およそ1時間弱の説明を終えると、首を傾げて答え合わせをする芦花。

 

 「大正解です」と言わんばかりに彩葉は首を縦に振った。

 

 

「芦花、ありがとう。こんな話信じてくれて」

 

「そりゃ、信じるよ。だって──」

 

「ヤオヨロ〜〜☆」

 

「めっちゃ目の前にヤチヨいるし」

 

 

 そう。

 

 思い立ったが吉日並みのスピードで行動に移したヤチヨは、今はうちの電化製品の殆どに入り込んでいる。

 

 今は薄型テレビの中から私達の話を聞いていたところだった。

 

 

「もちろんかぐやは助けに行くけど、それはそれとしてヤチヨも2人に甘えたいのです〜」

 

 

 随分とリラックスモードな彼女はかぐや時代から変わらない黒Tシャツで髪を下ろし、いつもの∩∩な目から振り子のような涙を流している。

 

 ……うん、やっぱ超可愛いし家に来てくれたのは超絶嬉しいんだけど、それはそれとして一旦置いておこう。

 

 

「……で桜楽、具体的にはどういう作戦で行くの?」

 

「基本は逆探知だよ。一回目の襲撃と、二回目のKASSEN。特に二回目は色々仕込んだから、絶対どこかしらには痕跡残ってるはず。月のマシン語も勉強しながらになるから……半年くれたら、絶対間に合わせるけど」

 

「そこから1年半で月と全面戦争か……」

 

「……取り敢えずさ、向こうと同じこと出来ないとキツそうじゃない? 残機無限とか、そういうの」

 

「それについてはヤッチョに考えがあってね。KASSENに全ユーザー協力型のレイドバトルを実装しようと思って。残機無限で、ローグライクみたいなシステムでキャラクターを強化していって、制限時間内に一定以上の敵を倒したら勝ち、みたいな。月と戦るのはそのベータテストにするつもり」

 

「これがチャート」

 

 

 そう言ってタブレットを開き、今後2年、月攻略までの予定を芦花に見せる彩葉。

 

 私が夕食を用意する傍らで彼女はそれにしっかりと目を通した後、自らのスマートフォンにそれを保存した。

 

 

「……取り敢えずこれは分かったし、私も出来ることはなんでも協力するよ」

 

「ん? 今何でもって──」

 

「ヤチヨ」

 

「でもさ、一個だけいい?」

 

 

 ため息を吐きながら芦花は言った。

 

 

「……なんでこの家、食べ物が冷食しかないの?」

 

 

 あ、ヤバ。

 

 

「こんなんじゃ身体壊すに決まってるよね? っていうかかぐやちゃんのおかげで終わってた食生活だいぶ改善されたんじゃないの? ……ちゃんとこっち見て、彩葉」

 

「……べ、別にインスタントもあるし……」

 

「ほら、彩葉。目逸らさない」

 

「いや桜楽もだけど」

 

「……やっぱ?」

 

 

 そうして私達はチンしたての牛丼を傍らに、マジな表情の芦花にその場に正座させられた。

 

 怒ってるとか、悲しんでるとか、そういうのが分からないのが真顔の怖さだと思う。

 

 

「言い訳は聞いてあげるからさ。まず彩葉から」

 

「えっとぉ……最近の冷凍食品とかインスタントって栄養バランス良くてぇ……料理する時間勿体なくてぇ……」

 

「次、桜楽」

 

「その……手料理だとなんかかぐやの味と全然違うっていうか、コレジャナイ感がすごいというか……節約料理の染み付いた私達のご飯じゃクソマズいっていうか……」

 

 

 「そもそもかぐやの料理が美味しすぎたのが悪い」と彩葉にアイコンタクトを送ると「そうだそうだ! かぐやの料理が悪いんだ!」と同意の念が送り返されてくる。

 

 ヤチヨはまさかの「ヨヨヨ〜、実はヤチヨも心配だったのです〜」と芦花側に寝返り。

 

 あんなにヤッチョGPTで「好きな物をたくさん食べるのがヤチヨは幸せだと思うな〜☆」なんて言ってたくせに。

 

 そしてしばらく身体を大切にしろだのなんだの、皮肉抜きで友人としてのありがたいお言葉をいただいた後、芦花はもう一度ため息を吐いた。

 

 

「……2人とも、かぐやちゃんに感謝しなね?」

 

 

 そう言って、芦花はピッピッとスマホをいじって何かを操作する。

 

 何やってんだろ、と正座したまま私は首を傾げていると、「明日も来るから」と芦花は告げた。

 

 

「かぐやちゃんから色々レシピもらってるからさ、これからご飯作りに来るよ。食材も今頼んだし」

 

 

 それから芦花は教えてくれた。

 

 月に帰る前、かぐやは私達のことをものすごく心配していたのだと。

 

 メンタルだけじゃない、具体的な生活のこと。

 

 きっとあの水と粉のパンケーキがトラウマだったんだろう、「2人だけにしたら死んじゃう」、そう思ったらしいかぐやは悩んだ挙げ句、真実には彼氏がいるからと芦花に助けを求めたらしい。

 

 

『私が帰っちゃったら、たまに2人に美味しいご飯を作ってあげてほしい』

 

 

 スマートフォンにはかぐやが少しだけ上手くなった字で書き溜めていたレシピがびっしりと送られていた。

 

 

「……だから、準備しようと思って。かぐやちゃんが帰ってきたら、新しいレシピも、新しく見つけた2人の好みも教えてあげるんだ。2人ほどじゃないけど……私も、たくさんもらったから」

 

 

 「皆、大好きだよ」、冷めた牛丼を温め直しながら屈託も、迷いもない笑みで、芦花はそう笑った。

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