超かぐや姫 スーパーフォルテッシモ!!   作:あるふぁせんとーり

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Ex-Final 月夜を越えて

 打って、戦って、奏でて、歌って。

 

 真ん中から全てまで、余すことなく、月の何処かにいるかぐやに届くように。

 

 

「……やっぱり、初めて歌うならかぐやとがいいでしょ?」

 

 

 そんなヤチヨの言葉を蹴り飛ばして、彩葉はセットリストを作り上げた。

 

 ヤチヨが歌う曲、私が歌う曲、彩葉が歌う曲。

 

 1人で、2人で、あるいは3人で。

 

 かぐやが歌った曲、かぐやが「これ歌いたい!」って言ってたのを、片っ端からかき集めて。

 

 私達がかぐやと一緒に歌うんじゃない、かぐやが私達と歌うんだ。

 

 そう思ってもらえるように、羨ましくて飛び出してきちゃうくらい、精一杯叫ぶんだ。

 

 

「──率して直に──申します──」

 

 

 あの朧気な夢と記憶を辿って、やっとここまで来た。

 

 彩葉も、ヤチヨも、芦花もいる。

 

 なら、後はかぐやだけ。

 

 開始1時間経過、進捗18%。

 

 100%になるまで一切合切の手抜きはなし。

 

 ステージの上から、ありったけのサウンドを鳴らした。

 

 

「──お嫁に一つ──いかがですです──」

 

 

 

 

「行くぞォーッ!!」

 

「「「「オオォーーッッ!!!!」」」」

 

 

 最前線を押し上げるのはブラックオニキスの3人、そして彼らをトップとするKASSENのプロゲーマー達。

 

 それにファンダムが軍勢として群を成して超巨大KASSENフィールドを「戦いは数だよ兄貴!」と言わんばかりに鶴翼の陣で轢き潰し、KASSENフィールドを突破してとうとう月の都そのものまで迫っていく。

 

 その後ろの確保した陣地を固めていくのは桜楽の活躍でにわかに流行を見せたRANSEの精鋭達。

 

 前哨基地、あるいはバフオブジェクトをバンバン建てまくる彼らはツクヨミ軍の継戦能力に大きく貢献してくれている。

 

 今回はヤチヨも全身全霊のフルパワー、ツクヨミ内部限定なら不老不死のお月さまとだってリソース勝負でやり合える。

 

 楽しい、けれど絶対負けられない勝負に私は桜楽達との作戦会議を思い出していた。

 

 

「ヤチヨ、全力のライブやりながらだったら何体くらいまで分身出せる? 防衛と偵察、あとプログラミングが出来るくらいのやつ」

 

「それだったら……30は出せるかな。現地環境次第だけど、最適化すれば40行けるかも」

 

「じゃあそのうち10はRANSEに欲しい。今回はRANSEとしての陣取り合戦も、月のコードそのものをツクヨミに置き換えるのもやらないとだから」

 

「だったらもう少し数減らして、黒鬼とか芦花レベルに戦える分身にしよ。今回は多正面作戦だから、あれくらい短期で戦線を押し上げられるヤチヨが複数いたら相当前抑えやすくなる」

 

「基本は前線押し上げてところどころで挟み撃ちするって感じだよね? だったらクールタイム短い自爆用ヤチヨも何体かいたら便利じゃない?」

 

「あ〜、ありかも。芦花案採用で」

 

 

 ということで今回のヤッチョの役割は歌姫と将軍、偵察用ドローンに自爆ミサイル。

 

 拙僧多才なれば!……なんてのはさておき、今回の勝利条件はかぐやを取り戻すことだけど、それとは別でもう1つ目標がある。

 

 それは月の100%制圧、そしてこっそり実装しておいたアンリミテッドモードを発動すること。

 

 といっても、今回のアンリミテッドモードはバフじゃない。

 

 KESSENはローグライクシステム、相手を倒せば倒すほどバフがもらえ、より相手を倒しやすくなるから、今回のバフ枠はそっち。

 

 

 じゃあ何かと言えば、それは月の基幹システムへのハッキング。

 

 もっと言うなら、全ての月人が元から持っている「感情」のスイッチをオンにするというもの。

 

 かぐやの活動ログ、ふじゅ〜の発行システム、もと光る竹内の私の思考データなど諸々のシステムをフル動員して、感情という数字に干渉することに成功した、私と桜楽が2年間で作り上げた技術の粋。

 

 元々月人にも感情という概念は存在するが、その波が極めて平坦かつそれが行動に影響を及ぼさない、というのが彼らが無感情に見える正体だと、もと光る竹のログ……の更に前、月時代まで遡った結果判明したのが大学受験の終わった春休み。

 

 それを知った時、頭をガツンと、思いっ切り殴られたみたいだった。

 

 ずっと自分がおかしいと思っていた。

 

 逃げ出した日も、もう一度地球を目指した日も、ずっとどこかで思っていた。

 

 自分だけがずっと違くて、みんなと違う私が悪くて、どうしようもなく分かり合えないんだって。

 

 でも、そうじゃなかった。

 

 分かり合える可能性が生まれた。

 

 もう私みたいに泣く誰かが生まれない世界。

 

 

 ……どうかな、ヤチヨ。

 

 私、上手くやれてるかな。

 

 それとも追い越しちゃった?

 

 ヤチヨが桜楽のこと知ったらどんな反応するのかな。

 

 それとも、たまたまこうして彩葉と一緒にいただけで、本当はヤチヨも桜楽のこと知ってたのかな。

 

 

 歌いながら、踊りながら、色んなことを考えて、それから最後に覚悟を決める。

 

 ……分かってる。

 

 今からやろうとしてることは、月をめちゃめちゃに壊すこと。

 

 永遠に続いたその在り方を、真っ向から否定すること。

 

 許されるかな、許されないかなぁ。

 

 ごめんね。

 

 あの時わざわざ迎えに来てくれて、あの時は送り出してくれたのに。

 

 でもまだ、しわしわのおばあちゃんになったって、私はまだ……()()()()()()()()()()

 

 

「……次は新曲、行っちゃうよー!!」

 

 

 2人に合図すると、ギターとキーボードがかぐやの知らない音を奏で出す。

 

 忙しくて、ノリたくて、はしゃぎたくて堪らない、そんな音を歌い出す。

 

 私は電子の身体に息を吸い込んで、何よりも強く、

 

 

「──今日叫んだ「好き」が──昨日も明日も──千代も八千代も鳴り響くように──」

 

 

 

 

 3人の声が響く最終局面。

 

 戦線は月の都まで入り込み、まさに乱戦状態。

 

 私は2人からの「頼み事」を探し、巨大な寝殿造りを駆け回っていた。

 

 「もと光る竹」、月の宇宙船兼タイムマシン兼人造人間製造マシンというオーバーテクノロジーそのもの。

 

 それが2人のプロジェクトのキーパーツになると聞かされた私は二つ返事で、そのデータ、あわよくば本体をツクヨミの方に持って帰ってくるという仕事を引き受けた。

 

 ……チョロいなぁ、私も。

 

 

 すれ違いざまに防衛部隊を蹴散らしながら、私は1人奥へ奥へと突き進む。

 

 寝殿造りは基本的に壁がなく、無数の柱の間を帳で仕切って部屋を作っていたのだがそれはここも同じに見える。

 

 ということは宝物庫の在り処も現実とそう大差ないだろう。

 

 寝殿造りには「塗籠(ぬりごめ)」とよばれる壁に囲まれた部屋があり、その主な用途は高貴なる方の寝室や宝物庫。

 

 ヤチヨ曰く月の最先端技術らしいもと光る竹を隠すには丁度良い場所だ。

 

 第一、月は出ることも入ることも想定されていない作りで、ましてや攻められることなど全く考えられていない。

 

 そんな場所で、もし月人にもちゃんと「大切なものは隠さなきゃ」って考えがあるならそこ以外に選択肢はないだろう。

 

 

「……! あった……!!」

 

 

 壁土で塗り固められた見た目とは違い、中身はバリバリの電子ロック。

 

 メモリを刺して桜楽に座標とデータを送ると、ほんの数秒で赤く光っていたランプが緑色に変わり、扉が溶けるように姿を消す。

 

 そしてその中には、安全装置に繋がれたたけのこのようなものが、外の喧騒なんて気にも留めずに、静かに佇んでいた。

 

 

「これが、もと光る……」

 

 

 間違いない。

 

 前に見せられた、ヤチヨのサーバールームに置かれていたそれとよく似ている……というかほぼそのものだ。

 

 えっと、ヤチヨが教えてくれた盗み方は──

 

 

「どなたですか?」

 

「っ──!?」

 

 

 慌てて振り向くと、そこには黒い髪の女の子が立っていた。

 

 年齢は……かぐやちゃんと同じくら、一瞬姉妹かと思うほどに似ている。

 

 いや、出自から言えば……「同型機」とでも言うべきなんだろうか。

 

 私は反射的に起動したネイル型の籠手をもう一度オフにし、彼女の言葉に答える。

 

 

「ROKA、綾紬 芦花。……月に攻め込んでる、主犯の1人」

 

「……じゃあ、かぐやちゃんのお友達ですか……?」

 

「──!」

 

「……あの、お願いがあるんです。もしそうなら、あなたがツクヨミ(向こう)から来たのなら……わたしも、地球に連れてってくれませんか……!?」

 

 

 「なよ」と名乗った彼女は必死な顔で私に訴えてくる。

 

 あの時突き放しちゃった彼女のことが、ようやく少し分かるようになったのだと。

 

 「かぐやちゃんと同じ物語を作りたい」「かぐやちゃんを追いかけてみたい」

 

 そう言われて、私が断れるはずはなかった。

 

 

「……いいよ、一緒に行こう」

 

「……! あ、ありがとうございます……!」

 

「って言っても、私には大したこと出来ないけどね。取り敢えず、このたけのこだけ運ぶの手伝ってくれないかな?」

 

「もちろ──」

 

 

 彼女が言いかけた次の瞬間、地震のような衝撃が部屋を揺らした。

 

 軋む木材に崩れる壁土。

 

 「まさか……」と僅かに目を見張ったなよちゃんは素早くもと光る竹を木箱にしまい込み、外に出るように促してくる。

 

 

「これ、何が起きて……?」

 

「わたしも初めてなんですけど、でも、これが()()なら……これから始まるのが、あなた達にとって……かぐやちゃんにとっての、ラスボス戦です」

 

 

 

 

「嘘、何あれ……?」

 

 

 月のド真ん中、まるで空間そのものを割るかのように現れた、ビルと見紛うほどの巨大な影。

 

 一気呵成に攻め立てていたプレイヤーの手が止まり、参加者の間に騒然が満ちる。

 

 クライマックスを控えたインストが響き渡る。

 

 

「あちゃ〜……あれ、都市伝説じゃなかったんだ……」

 

「ヤチヨ知ってるの!?」

 

 

 彩葉が尋ねると、彼女はコクリと頷いた。

 

 「ダイニチ型」と呼ばれるそれは、月の最終防衛機構にして月の秩序そのもの。

 

 月の在り方の存亡の危機に起動し、敵味方関係なくみな平等に排除する……なんて、都市伝説があったらしい。

 

 そして今目の前にいるのは教科書やら修学旅行やらで見せられた大仏、それを一回りや二回りどころじゃないサイズに拡大した巨像。

 

 後光がレーザービームのように周囲を薙ぎ払い、咲き乱れる蓮華は爆弾のように爆ぜてはプレイヤーも月人も見境無く蹴散らしていく。

 

 考えろ、考えろ、私はどうやったらあれに勝てる?

 

 あれはセキュリティそのもので、月そのもの、あれを倒さなきゃアンリミテッドは起動できない。

 

 ……いや、これなら……?

 

 

「……彩葉、桜楽」

 

 

 思いついたところで、ヤチヨは私達に声を掛けた。

 

 

「あれに巻き込まれる前に、かぐやを迎えに行ってあげて。こっちはヤッチョがどうにかしちゃうから」

 

「いや、どうにかって、流石のヤチヨでも──」

 

「いいからいいから。この1年で進化してるのは二人だけじゃないのです。むしろ自己進化こそAIの十八番でしょ?」

 

「ヤチヨ、AIじゃないでしょ?」

 

「そういうのはいいから! ほら、行った行った!」

 

「ああもう! 絶対かぐや連れて加勢するから!!」

 

 

 そう言い残してキーボードを双剣へと変形させ、カラスに捕まって崩れ行く都の方へ飛んでいく彩葉。

 

 「桜楽も早く行っちゃいなさいな」と背中をつつくヤチヨに、私は首を横に振った。

 

 

「行かないよ、私は」

 

「え……? だって、かぐやを助けに来たんじゃないの……? 桜楽も、そのために……」

 

「そうだよ? でも、「桃華」を救ってくれたのは「ヤチヨ」だったから。今のかぐやは彩葉が助ける、「かぐや」(ヤチヨ)は私が助ける。それじゃあ、駄目?」

 

「……ううん、ううん……本当、こんな幸せで、いいのかなぁ……」

 

「何泣きそうになってるの? これからでしょ、本番」

 

 

 私はヤチヨの顔をひょいとダイニチ型の方へ向けつつ、私もじっとそれを見つめ、そしてそれを構成するコードを確認する。

 

 やっぱりそうだ、あれはここが月である限り最強だ。

 

 バフ全部盛りのヤチヨでも敵わない。

 

 なら──

 

 

「ここを、ツクヨミにすればいい!!」

 

 

 キーボードに指を奔らせる。

 

 座標ごと、定義ごと、ルールごとKASSENフィールドも月の都も全部丸々「ツクヨミ」に上書きする。

 

 足場は水面に、オブジェクトは灯籠に、空は星の軌跡、そして巨大な鳥居をひとつまみ。

 

 

「ヤチヨ、あれお願い」

 

「うん」

 

 

 まるで全てがリセットされたような状況、巨大な仏像の前でヤチヨは告げる。

 

 

「──太陽が沈んで、夜がやってきます。でも──」

 

 

 そして星は沈み、空が澄み──

 

 

「──明けない夜はないのです!!」

 

 

 ヤチヨの声がプログラムを定義する。

 

 ツクヨミであって、ツクヨミではない場所。

 

 コード名を「月読見(ツクヨミ)」から「天照須(アマテラス)」へ。

 

 さあ、舞台は整った。

 

 ヤチヨはガラス張りの番傘を、私はバトルアックスを構え、仏様と相対する。

 

 BGMにはあの日のリベンジを。

 

 あの歌声を、続きから。

 

 ねえ、そうでしょ?

 

 彩葉──

 

 

「──この一瞬を──最高のパーティにしよう──」

 

 

 ──かぐや!!

 

 

「〜〜〜〜っっ!!!! みんな、ただいまっ!!!!」

 

 

 かぐやと彩葉の歌声を聞きながら、ヤチヨと一緒に戦う最終決戦。

 

 少し変な気分だし、絶対に本当の物語とはズレまくってる。

 

 でも、だけど、だから──絶対、負けるはずない。

 

 これが、私の選んだハッピーエンドだから。

 

 


 

 

 こうして彩葉とかぐやの物語、そしてどこからか生えてきた桜楽とヤチヨの物語は──

 

 え、締めちゃ駄目?

 

 どうせ勝つってみんな分かってるでしょ?

 

 もうこれ以上言わなくていいくらいのハッピーエンドなのに、まだ続き必要?

 

 ……うそうそ、まだまだ見たい物語いっぱいあるもんね。

 

 つまりは何が言いたいかっていうと……まだまだ最終回は先ってこと!!

 

 ヤッチョもまだパンケーキ食べれてないし!!

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