死に損ないの英雄   作:HakuGozira

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 なんやかんやでブルアカは二回目の投稿です。
 ざっと言うと死に戻りを与えられた一般人が色々と頑張る話です。因みに、主人公はナツキ・スバルみたいに切り替えがめっちゃ早いわけでも無いですし、一人でなんでも解決する様な人間では無いです。
 一人で叫んで、吐いて死にかけて、主人公補正は絶対いらないです。
 苦しんでほしい。


一章 1話 偽物の主人公

 

 ___何処かで見た事のある光景だ。

 

 心中を埋め尽くすのは、そんな言葉だ。

 その足取りは、酷く安定せず小鹿が初めて親の庇護を離れ、まだ見た新天地を歩き始める様な物に見える。

 自分自身ですら、今の状況を噛み砕いて説明するのも出来る筈が無い。何故なら、今いる場所がいかにも『普通』では無い。

 

 建物群などは、良く見る都心部に酷似しているが、それ以外がの要素が自身の『普通』を否定する。

 

 「…もしかしなくてもだよな。」

 

 行き交う人々の頭にあるのは、光輝く天使の輪。更には、黒髪も黒目の人が全く持っていない。人々は、情熱の赤に魅惑の青。様々な髪色を持ち合わせ、服装も貴族を彷彿とさせる華やかな衣装。

 極め付けは、所々目を凝らせば背に翼を生やす人や『ネコミミ』を生やす人など。

 

 繋ぎ合わせたこの情報から、一つの結論を導き出し頭を抱えながら消え入りそうな呟きを一つ落とす。

 

 「つまり、異世界召喚ってものらしい。」

 

 その呟きすら、前を通過するリムジンの轟音なエンジン音に掻き消され、誰の耳にも入る事は無かった。

 

 

 ________________

 

 

 少年、佐々木柊(ささきしゅう)はごく普通な男子高校生である。

 愛情深い父と母の間に生まれ、その生涯を波風立たず生活してきた柊の人生は正に極々平凡。

 全てに置いて、満点を叩き出せるわけでも無い運動能力と学力。だが、日常生活に置いて、全くの支障があった訳でも無い。

 異世界主人公特有の『引きこもり』でも無い、学校へと祝日以外はしっかりと登校するし、顔合わせれば声を掛けてくる友人もそこそこ居た。

 

 だからこそ、彼は妄想などの類に走った事は無いが、そこそこにアニメが好きという事もあり、『異世界ファンタジー』要素は概ね理解しているが___。

 

 「実際自分が味わうとか、考えた事ないぞ。」

 

 全くの理解不能な現実に、そう肩を落とす。

 しかし、良くも悪くも目立たない少年だ。短い黒髪に百七十ぐらいの背丈。運動部に所属している事もあり、体格はそれなりに筋肉質。

 部活終わりの帰路から突然と異世界へと飛ばされた事により、服装は学校指定の紺色のジャージに、背伸びをして数万円に届き得るリュックを背負っている。

 

 至極凡庸な見た目の少年は、今その平凡を何者かに奪われ、現実離れしたこの『今』を受け入れるのに精一杯だ。

 

 「とりあえず、ここから何すれば良いのか分からないな。」

 

 ガラス張りの建物に、自身の姿が反射し無意識に自身の頭上へと視線を向ける。

 異世界は異世界。何かの力があってもなんら不思議では無いと考える柊は目の前に写る自身の姿にため息を吐く。

 

 「…なんも無いじゃん。」

 

 『なにもなかった』そう結論つけるしか無い。

 そんな典型的な展開など、そう簡単に起こる訳では無い。寧ろ、少しの期待を思い浮かべた自分が愚かだった。

 

 ポケットからスマートフォンを取り出し、電話のアプリを起動し、父と母に電話を掛けるが勿論、繋がる訳も無い。

 

 「……これ、本当にどうするの?」

 

 異世界へと飛ばされた一人の少年は、すぐさま自身の終わりと詰みを予感し、額から嫌な汗を滲ませその場から目的も無く歩き始めた。

 

 

 ________________

 

 

 「ここって、本当に異世界なのか?一応、俺の生活する都心部と全く文化とかは同じなんだけど。」

 

 既に、歩き始めて数時間以上が経過した柊は、巡り変わる風景に酔い始めている。

 そもそも、柊という人間はこの場において何も持ち合わせていない迷い人だ。地名や土地勘、全てが現代日本とは違う事により全てが新しい場所に思え、一度通った場所は分からない。

 

 「…なんか、スマホに新たなアプリが入ってますとかなら良かったなんだけどな。」

 

 ご都合展開は待った無し。右また左も分からない無知な状態で彷徨い続ける柊は、今の状況に似たアニメをふと思い出す。

 

 「完全にリゼロ見たいな状態だな…。」

 

 面白いと唯一、異世界アニメとして見ていたアニメ『Re:ゼロから始める異世界生活』。概要は、突如として異世界に飛ばされた少年ナツキ・スバル。無知無謀無力無能、そんな少年が与えられた力は死して時間を巻き戻す『死に戻り』だった。

 この力を使い、少年は過酷な運命に抗う。というのが、概要である。

 

 「でもな、完全に状況が同じだよな。ジャージだけ。」

 

 その身なりと出来事だけを見れば、完全にナツキ・スバルと酷似するが、寄っているのはジャージのみ。

 それ以外は、何も持ち合わせていない柊であるが、一つだけ懸念点がある。

 

 「……俺に死に戻りは宿って無いよな。流石に、俺なら死なんて到底耐えられないぞ。」

 

 『死に戻り』読んで字の如く、自身の死をトリガーとしてある一定の時間まで時を遡ることの出来る能力。

 スバルはこれを駆使し、様々な障害を乗り越えてきたが、とてもじゃ無いが、常人が持って良い代物でも無い。

 自身が常人と胸を張って言えるか疑問だが、少なくとも狂人の自覚などは無い。寧ろ、柊自身は軽く指先を切っただけで絆創膏を貼り、軽い捻挫ですらこの世の終わりの様に捉える痛みの耐性の無さ。

 

 「…いや、完全にそうと決めつけるのは早いな。俺の勝手な被害妄想だ。」

 

 酷くうるさい心臓を抑え、大きく息を吐く。

 目的も召喚理由も不明の暗黙の地。何もかもが足りない自分に出来る事などその足で歩き、情報を集める以外に手段は無い。

 

 「当分は帰ることを目標に頑張るか。…異世界なんて見てるだけで十分なんだから。」

 

 自身の中での最重要事項『元の世界への帰還』を軸に、その足を前へと進めた。

 

 

 ________________

 

 

 「もう嫌だ!助けてくれ!」

 

 小脇にピンク髪の少女を抱えながら全力で、機械人間から逃げる柊。

 この経緯になったのを語るには、約数十分前までに遡る。

 

 自分自身は完全に『人見知り』という訳でも無く、寧ろ異性との会話は比較的にはできる。

 

 特に苦戦する事もなく、この場所とこの場所の問題を理解できた柊。

 

 まず、この場所は学園都市『キヴォトス』。様々な学園を一つに纏め、学生が殆どを占める都市、その総称を学園都市キヴォトスという。

 日本地図や世界地図にキヴォトスと呼ばれる都市は存在しないが故に、この場所を異世界と断定。

 その間に、キヴォトスの現状も小耳に挟む程度には聞き入れる事が出来た。

 

 まず、この学園都市キヴォトスを統一するのは連邦生徒会と呼ばれる機関であり、分かりやすく言えば動物園の飼育動物と飼育員の関係が分かりやすい。

 キヴォトスの学園機構の問題などをいち早く解決し、更にはキヴォトスの治安維持すら完璧に行う。その裏には連邦生徒会を取り仕切る連邦生徒会長の存在があった。

 

 連邦生徒会長の姿を見た者は居ないとされているが、キヴォトスで暮らす人々は連邦生徒会長を『超人』と呼び、ある種の恐怖を感じているらしい。

 その連邦生徒会長はというと、つい半月前に突如として消息不明となってしまった。

 

 理由は不明。しかし、連邦生徒会長の消失はキヴォトス中で話題となったが、最も重要になった事は犯罪率が数日で数千%まで膨れ上がった事だ。

 連邦生徒会長が鎮静していた不良生徒達が一斉に活動を再開。その影響で、キヴォトスの犯罪率は右肩上がりで上昇。

 

 その結果が___最初に繋がる

 

 集まった情報を整理しようと、暗い路地裏に腰を降ろし一息つかうとしたその瞬間、複数の機械混じりの声が路地へと響き渡る。

 柊は、突然の出来事に肩をびくつかせるが、謎の使命感と正義感が体を動かし、悲鳴が上がる場所へと駆け出す。

 

 駆け出した柊は、悲鳴の場へと辿り着き、不自然に止まる黒色の大型車両を目視し、後部座席の扉を開け放つ。

 そこには、幼さが滲み出すピンク髪の少女が手足を縄で結ばれ、口を粘着性のあるテープで押さえ付けられていた。

 

 急いで少女を車両から出し、縄を解こうと手足へと手を伸ばしたその刹那、突如として轟音が鳴り響く。

 柊は突然の出来事に伸ばしていた手を止め、轟音を放った存在へと視線を向ける。

 

 「……おいおいおい、嘘だろ。」

 

 全身が鋼鉄の機械装甲で出来た三体のロボットが、突然として柊の前へと立ち塞がる。

 ただの機械ならば、柊はさほど危険はしなかった。しかし、立ち塞がるロボットは両手にあり得ないものを携帯していた。

 

 ___それからは、火薬の匂いがした。

 ___それは、最も人を殺すのに適した武器だ。

 ___それを、人々は鋼鉄の塊。拳銃と呼んだ。

 

 「クソ!」

 

 防衛本能が働き、背負っているリュックを無我夢中にロボットへと投げ飛ばし、力任せに少女の体を横脇に抱え、全力でその場を逃走する。

 ___再び発砲。

 投げたリュックは、見るも無惨に拳銃の餌食となり、中の教材や筆箱、弁当箱をプラスチックの藻屑へと変える。

 

 早速は完璧。しかし、相手は拳銃を所持、確かに空いてる数メートルは一般人にとっては安心できるものだろうが、そんな安全など拳銃の前では格好の的。

 背後から、火薬の出る音と銃弾がアスファルトの地面へと落ち、甲高い音が路地へと響き、柊の恐怖を逆撫でする。

 

 「もう嫌だ!助けてくれ!」

 

 何かにつまづき、姿勢を前へと崩したその刹那、頭上を弾丸が通過し、建物の壁へと着弾する。

 柊は一直線での逃亡は武が悪いと踏み、急いで進路変更。入り組んだ路地を、何度も何度も駆け路地の出口を目指すが、迷路の様に永遠と道が続く路地は、柊の運命を嘲笑うかの様だった。

 

 「クソクソクソ!右も左も行き止まりか!?」

 

 何度も何度も、壁へとぶつかりその度に弾丸を避けるのに神経と体力を使い、既に柊は限界を迎えている。

 今すぐにでも楽になればと思うが、この少女は一体どうなるのか。そんな最悪の想像が頭をよぎり、楽になろうとする選択肢はとっくに存在していない。

 

 「…っ!あれは、出口か!」

 

 更に逃亡を続け、何度目かによる路地の曲がり角を曲がった瞬間、僅かな日光の光が指す通路を見つける。

 この先が出口である事に希望を掛け、最後の力で通路の出口を目指す。

 その刹那、横脇に少女を抱える右腕の反対。左腕が何かに衝突した様な激痛が襲い掛かる。

 

 ___撃たれた。撃たれた。いたい、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。

 

 左腕へと視線を向ければ、二の腕へと一発の銃弾が直撃し、肘から先が糸の切れた人形の様に垂れ下がり、激痛で頭がおかしくなりそうだ。

 肉と肉の間に異物が入り込み、二の腕には激痛による血液の熱と腕に残る銃弾の冷たさを同時に感じ、次第に痛みと非常な不快感が込み上げ意識が飛びそうになる。

 

 「……っぁ。」

 

 しかし、体は地へと足を強く踏み付ける。

 倒れるなと、体はそう叫ぶ。倒れたいと、心が懇願する。

 だが、そんな少年の心の叫びは無惨にも発砲された一発の弾丸、それが無慈悲にも少年の命を刈り取るべく迫る。

 ___その瞬間だった。

 

 「そこまでです。」

 

 「よくも私の後輩を良いようにしてくれたわね。その償いしっかりと受けて貰うわよ。」

 

 突然、感覚の無い左手を掴まれ一気に誰かに引き寄せられる。

 その少女は、酷く美しい人だった。生態系において、ここまでの美貌は見た事が無いとそう感じる程に、柊の心は一瞬で奪われた。

 

 足まで伸びる純白の白髪。幼い顔にはそぐわない凛々しさを孕んだ瞳。服装は白を基調とした、学生服の様なものに身を包み恐ろしい程の美貌を兼ね備えたその美女は、柊と抱える少女を見つめ目の前のロボット達へと銃口を突き付ける。

 

 「……ぅ。」

 

 その光景を最後に、柊は痛みの影響で意識を手放し、深い闇へとその意識を沈めた。

 

 

 

 

 

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