ふと思いついたよ。だから書く。5話で終わらす(宣言)
ワタシ、ナガイノ、カケナイ。アキショウナノネ。
ステージ1
『えたいの知れない不吉な塊が私の心を始終
「おはよ〜、アズサ」
「おはよう。姉上」
割れた窓から差し込む朝日が当たり、私は起こされる。私の寝るベッドは小さくて、妹のアズサと寝ると私が落ちそうになる位にはかなり狭くなった。
「ゴホッゴホッ…………」
「姉上、大丈夫か?」
「大丈夫……喘息はやっぱしんどいね…………」
そう言い、私は寝ながら先に起き上がったアズサを見上げる。私は生まれつき身体が弱くて、私より健康なアズサは私のことを何かと面倒見ようとしてくれる。
でも、本当は姉の私がアズサの面倒を見なきゃいけない筈なのに…………そう思っていても、私の体は重くてまだ動かせなかった。
「姉上はまだゆっくりしててくれ。糧食を受け取って来る」
「…………ありがとう」
ふとアズサの方を見ると、いつの間にか着替えを終わらせていた。アズサはポンコツな私よりできる子だ。多少私の方が物を知っているかもしれないけど、たかが1年早く生まれただけ、しかも学年も同じ……アズサもやれば出来る筈だ。
私は割れた窓から静かな外を眺める。アリウス分校は外のトリニティより治安が悪いが、銃声が響くことは少ない。アリウス分校はCQCの技術とかゲリラ戦闘が主な戦闘方法だから、喧嘩になったら銃ではなく殴り合いになる。
私はベッドの傍にあるボロボロの棚、その上に置いた私の銃を手に取る。古くさいリボルバー。名前は『Memento mori』。病弱で若くてなお衰弱し死が近づく私にぴったりの銃だ。私は上半身だけ起こして、銃の動作に異常がないか点検する。
「よし……」
シリンダーは少し錆びているけれど、動作に異常はないようだ。私はベッドから降り、洗面台へ向かった。
私の髪と羽根はアズサと似て白かったけれど、いつからか先端の方が灰色に汚れていた。その代わりなのか、顔色はアズサより蒼白い。けれど、顔つきはアズサと見紛えるほどそっくりのままだ。
私は口を濯いで、ヘアゴムを取り出す。
「ゴホッゴホッ…………かはっ!……」
私は口元を手で抑えると、鮮やかな赤色の液体が出てきていた。私は昔から咳をすると偶に血を吐き出す。ドロドロとしていて泡も混ざったそれは、見ていて心地のよいものではなかった。
私は手を洗って髪を結う。アズサとそう変わらない長さの髪は、そのままだと私はあちこち引っ掛けてしまうから短い方がいい。でもアズサと同じが良かったから髪を切ろうとは思わなかった。
私はベッドの所に戻ってリボルバーを置いてパジャマから着替え始める。私は病弱で力がない。小銃のような重いものを日頃から持ち歩けないから、やむなく拳銃を扱っている。本当は小銃を使えたらいいし、自動拳銃の方がいいのかもしれないけど、わざわざリボルバーを選んでいる理由は──────
「ただいま」
「おかえり…………無警戒で入って来て大丈夫なの?……」
「大丈夫だ。罠がないかどうかは確認してから来ている」
流石は自慢の妹、抜かりなく出来ているのは姉として誇らしい事だ。私だったら、確認し忘れてサオリにこっぴどく怒られるね。やっぱりアズサはサオリの弟子として優秀だ。
そう思いながらも、着替える手は止めない。私の服はアズサの服がドレスとするなら私の服はスーツみたいな感じだ。私はスカートが余り好きじゃない。だから私はいつもズボンとシャツをきて、その上からジャケットを羽織っている。靴もロングブーツを履く方がいい。
「姉上、あんまり無理はしないでほしい。また血を吐いているのに……」
「……アズサ、大丈夫だよ」
本当は寝ていたい。けれど、幾ら具合が悪くたって休むのは是とされない。それが社会であり、生き抜く為に必要なものなのだ。
「本当に?……」
「うん……休んで何もしてない状態になっちゃうのは嫌だから」
私はせめて、アズサの為に頑張るつもりで居たかった。私は無能だし役立たずだ。でも、役立たずは役立たずなりに役に立てるように努力しなくちゃいけない。
「アズサ、行こう。ここでいつまでもゆっくりしている訳にも行かない」
「…………分かった、行こう」
…………………………………………………………
私達アリウスの人間はサオリの指導の元、戦闘技術を学ぶ。ヘイローの壊し方、首の絞め方、即席での武器の作り方…………まあ、その内容は色々あるけど、私はそれについて行くので精一杯だった。
「ぜぇ……ヒュ……ぜぇ……ヒュ……」
そのなかでも走り込みが一番辛い。上手く息が吸えず、ただでさえ重い体は更に重くなり、倒れてしまう。
「……どうした」
「ぜぇ……ヒュ……ぜぇ……ヒュ……」
私は会話ができるほど息を整えることもできず、どうにか息を吸うことに集中する。
「無理なら端で寝ていろ。邪魔になる」
そう言ってサオリは私を皆が走る中から外へ出す。サオリとは同い年だけど、その能力の差は大きく離れていた。私は弱い。特段役に立ちたいとか考えているわけじゃないけど、姉としての性分なのかそれが悔しかった。
そして私は今日もまたアリウスの訓練を眺める事になった。仲のいい人は私に優しいけれど、休んでいるほかの人から飛んでくる視線は明らかにいいものじゃなかった。
私だけ休んでいる事は悪いことだ。そんなのよく分かってる。けれど体は言う事を聞かない。でも、参加しなくちゃ。そう思って私は壁に寄りかかってぐったりした体を無理矢理力を入れ、立ち上がる。
「大丈夫なのか?……」
「うん……まだ立てる。十分やれる」
「…………分かった」
私はそう自分に言い聞かせるように言う。サオリはまだ心配そうにしていたが、毎日こんな感じだからOKしてくれた。
「戦闘訓練だが……やれるな?」
「勿論」
私は戦闘訓練に参加することになった。私は基本的にアズサと一緒に戦うけど、武器が武器だし、いても動ける訳じゃないから鉄砲玉みたいな扱いで突っ込む事になる。
まあ、これは仕方のないことだ。それに私は姉としてアズサを守りたかった。
「訓練開始」
せめて戦闘で傷つかないように────その一心で、サオリの開始の音頭と共に私は室内へと入る。今回は室内戦闘の演練だ。私とアズサが攻める側だから沢山トラップとかあるんだろう。けど、私はそんなのお構いなしに先の部屋に突撃する。それは少しでもアズサが傷つかなくて済むように……そう言う焦燥によるものなんだろうか。
「姉上!」
ドカーーーーン!!!!
私は上手くトラップを作動させながら下がって回避する。私は無駄に昔から回避にだけは自身があった。それは私が傷付くことを恐れるあまり身につけられたものなのかもしれない。
ダダダダダダダダダダダダ!!!!
直ぐに部屋にはいると二人からの集中砲火。普通の人ならボコボコにされて終わる。
「ふっ!!!!」
けれど私は華麗な身のこなしで回避する。ほぼ倒れているとも言える程姿勢は低いが、速さは走りと変わらない。私は躱しながら一人の方に近づく。しかし、私の足に何かが引っかかる感覚があった。
ドカーーーーン!!!!
どうやら私はトラップに引っかかって爆弾をモロに受けてしまったらしい。
突然だが、私には幾つか呪われた力みたいなのがある。私が攻撃を受けると、その攻撃は極稀に無効化されることがある。なんでこれが起きるかとか考えた事もなかったけど、ただの幸運で当たってないとはあんまり思ってなかった。だって私の真横から爆発した爆弾を食らってノーダメージなのは運で片付けられる話じゃない。
「っ!?」
「ラッ、キー」
私は絶え絶えの息でそう喜びつつ、『Memento mori』を取り出す。室内戦闘なら小銃より拳銃の私の方が分が良い。
「ゴホッ……げはっ…………」
咳により吐き出された血をリボルバーの弾にかける。
私の呪われた力、それのもう一つは血液で銃弾の威力が向上させることが出来る。リボルバーを持っている理由はこれを最大限生かすために使ってる。
ズガァァァァン!!!!
到底リボルバーで叩き出せるとは思えない威力を叩き出せる。多分威力だけで言えば対物ライフルとかにも劣らない威力だと思う。まあ射程が短いし、反動が大して強くなってないから爆破が強くなってる訳じゃなさそう。
これもどうやって威力が上がってるのかは不明だ。兎に角、倒せればいい。まずは一人。
「!!!!」
もう一人はおんぼろのソファーに隠れていたので、その
ズガァァァァン!!!!
無事にぶち抜けた。が、こんな破壊力を誇る分デメリットもある。病弱なのに無理矢理出血させて、激しく動いた後に攻撃するとどうなるか、そんなの誰だって分かる。
「ゴホッゴホッゴホッ!げはっ!!!!」
「姉上!────────」
私はまた血を吐きながら倒れ、そのまま意識を手放してしまった。
…………………………………………………………
「姉上!」
私が目を覚ますといつものベッドで眠っていた。どうやらアズサが運んでくれていたみたいだ。
「アズサ…………」
「良かった……姉上、あんまり無茶はしないでくれ」
アズサはそう言ってちょっと悲しそうな顔をする。アズサを悲しませるなんて、姉失格だ。
「うん……気を付けるよ」
何気に訓練中に血を吐いて倒れるのは珍しい事だ。今日は体調が悪かったのかもしれない。そうだ、体調が悪かっただけだと、私は信じたかった。何をどう考えても体調は悪化して行く一方なのに、そうだとしたくなかった。
だって私はアズサの姉なのだから。アズサを守らなくちゃいけないんだ。
…………………………………………………………
「すぅ……」
外がすっかり暗くなった位の時間だった。姉上はもう既に眠ってしまっていた。いつも無茶をしているのに今日は一段と無茶したみたいだ。
私の姉はずっと何かに駆られているように見えた。何かを変えなくてはいけない、そんなふうに焦っているように思えた。
体が弱く喘息に苦しんでいたとしても必死に戦おうとしている────私はそんな姉上を私は守りたかった。例えこの世界が虚しくても……姉上は唯一のかけがえのない家族だ。
「頼むから、自分を大切にしてくれ」
棚の上に置かれたリボルバーは血に汚れたままで、リボルバーはシリンダーが少し錆びていた。自分の半身とも言える銃もボロボロで、姉上の様子を表しているようだった。
私はパジャマに着替えて姉上と同じベッドに入る。狭いけれど、姉上の温もりが感じられるから別に構わない。姉上は相変わらずほんのり温かくて、呼吸のたびに風切り音が聞こえてくる。そして少し苦しそうな表情をしていた。
「姉上、おやすみ」
そう言って私は姉上に抱き着く。すると姉上の顔は安心したような笑みに戻った。
私はそれを確認した後、私より温かい姉上の温もりに包まれる内に眠ってしまった。
『Memento mori』(元ネタ:コルトパイソン)
アズサの姉のリボルバー。
アズサの銃と対になるように黒く、血で汚れており、銃身には『死を想え』と言う文字が刻まれている。