病弱な白洲の姉   作:脱力戦士セシタマン

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 アズサ姉の容態は、悪化して行く一方です。

 実はアズサがセイアのことムッコロしかけたのをアズサの姉ちゃん知りません。



ステージ3

 

 

「ゴホッゴホッ!……ゴホッ!……」

 

 アズサがトリニティにスパイとして潜入して以降から数ヶ月が経ったかな。私の容態だけど…………正直かなり悪化していた。

 体が前より重くて、どうにか立てる状態で走るなんて到底無理だ。息を吸う度肺が痛んで、手が震える。

 

 辛い。苦しい。

 

 私なんていなくても良かったんじゃないか。そう思えてしまう。私はアズサよりも力が弱くて、戦う知識も技術もなくて、すぐ倒れてしまう。

 仮に必要とされていたって、生きているのが辛い。逆に必要とされてなかったとしたら、マダムに用済みとされて始末される。アリウスはヘイローの壊し方を学んでいるような場所なんだ。

 

 私はナイフを取って首に当ててみたりした。あんなに吐き出している血が首から出てくるのが怖くて切れなかった。

 首をくくってみようともしてみた。息が出来ない苦しさをよく分かっていたからすぐにやめてしまった。

 高い所から落ちて死ねないか試そうと思った。極稀に無効化される力で落ちても死ななさそうだし怖かったからやめた。

 結局私は生きていたくないよとほざいておきながら、死ぬ勇気すらもないんだ。

 

 でも……薄々気付いている。私は死期が確かに近付いている。遅かれ早かれ死ぬ。それも怖い。

 

 

 

 私は……どうすればいいのか分からなかった。

 

 

 

 そんな中、私に手紙が届いた。どうやらアズサからみたいだ

 

『拝啓、姉上。手紙の始まりはこれで良いのだろうか』

「…………」

 

 私はこんな始まりの手紙を読み進めていく。手紙の内容は色々あった。補修授業部と言う所に所属している事、先生と言う人から授業を受けている事、可愛いキャラに出会えた事、日々が充実している事……私は手紙からアズサが楽しそうにしているのが感じられて…………嬉しくも、何処か悲しかった。

 

『本当は隣に姉上がいてくれれば良かったのによく思う』

「っ!…………」

 

 私は……もう何処にもいたくなくなっていた。姉上だからアズサの為にって頑張ろうとしていたけれど、もうそうしたいとも思えなく成り始めていた。

 もうアズサは一人で自立出来ている。その事実が、私の心に静かにのしかかった。

 

 私にはもうアズサには必要ない。そうであって欲しかった。

 

『本当はやっぱり寂しい。姉上がいて欲しい』

「………………」

『姉上は何より大切だ』

「私は……私は………………」

 

 私は明らかに重い病に冒されている。だが私の病を治せる程アリウスに治療設備はないから……

 私は必要ないんだ。消えたって問題ない。そうじゃなかったら私は……私は…………

 

「私は……余りに惨めじゃないか…………」

 

 余りに不公平じゃないか。私だけどうしてこんなに苦しまなきゃいけなかったんだ。

 

「なんで……なんで私だけなんだ…………ゴホッ!ゴホッ!」

 

 どうして私は人より弱いのだろう?出来ないんだろう?私は……私は………………

 

「なんで…………私だけ誰よりも苦しいの?……」

 

 私が病というハンデを背負って頑張って、でも私より出来る人がいて、凄く……凄く悔しかった。

 私は凄くないんだって、誰も褒めてはくれなかった。だから褒められるように、必死にやらなくちゃって思って頑張った。でも…………それが報われたと思えた時は来なかった。

 アズサは私がいなくたって生きていけるのに、私はアズサがいなければロクに生活も出来ない。私は姉失格だ。

 

 そうか……私は病に苦しんでたのもそうだ。でも、私を一番苦しめていたは劣等感だったんだ。私は人より能力がない。それがどうしようもなく悲しくて悔しくて…………それがいつしか虚しさに変わった。それをアズサを守らなくちゃって思って忘れようとしていたんだ。

 

 でも私はアズサより出来ない子だったから、余計虚しくなっていたんだ。私はアズサが羨ましくて……でも恨む真似だけは絶対にしたくなかった。だから私は、もう何も考えず姉らしくあればいいんじゃないかって虚勢を張っていた。

 

「…………入るぞ」

 

 家にサオリが入って来て初めて私は泣いている事に気付いた。サオリはベッドの椅子を運んで、ベッドに座って数滴涙が落ちた手紙を膝に置くパジャマ姿の私の傍に座った。

 

「…………辛いか」

「私は……虚しいよ」

「……全ては虚しい。今更だ」

「そんなの分かってる。それに、私の『誰よりも優れたい』っていうのがあり得なくて、それを目指すのは凄く我儘で…………馬鹿らしい承認欲求の塊だってのも分かってた」

「…………」

「それでも大切な物を守りたいって……ゴホッゴホッ……でも……私はアズサより出来ない子…………」

「それがどうした」

「だから…………私はいなくても良かった」

「…………」

 

 私は出来ない子。だから要らない。役立たずが切り捨てられるのは社会では当然の事で────

 

ペシーーーーーーン!!!!

 

 私の頬な強い痛みが走る。何が起きたのか分からなかったけれど、私の頬は思いっきり引っ叩かれたみたいだった。

 

「お前は比較するからそうなるんじゃないのか!?お前の強みは比較できるものじゃないだろう!?」

「えっ…………?」

「まず…………お前のあの回避は異常だ。トラップでも用意しない限り銃弾が全部躱せる身のこなしは、誰も真似できないぞ?」

「でも……躱せるだけ」

「弾幕だろうが距離を詰められるのは躱せるだけでは済まないだろう……しかも当たったとしても無効化される可能性がある時点で十分過ぎる。しかもリボルバーで意味不明な威力を叩き出せる。気付け。お前の強さは十分イカれていると言うやつだぞ」

 

 サオリがイカれてるとか使うんだと、今の空気に全く見合わない事を思いながらも、私はサオリの言葉に耳を傾ける。

 

「それに……お前は確かに人一倍優れる事なんてないのかもしれない。だがお前は器用だし頭が良い。人一倍優れていなくても、色々な事が出来る事は十分凄い事だぞ」

「……努力すれば誰だって出来る」

「その努力はそんなに軽いものなのか?私はそう思えないぞ」

「ゴホッ!ゴホッ!……私には……分からない。私の努力はただの我武者羅で、ついて行くので精一杯みたいな状態だから」

「なら…………それは十分凄い事なのだと理解しろ。そして誇れ」

「!……ゴホッ……」

 

 幾分かはもやもやしていたのが解消された気がする。まだそれが消え去った訳じゃないけど。でも……私は特にやる気は起きなかった。これは多分病のせいだろう。そう思いたかったし、実際問題そうなのだろう。

 

「どうだ。少しは元気になったか」

「うん。幾分かは」

「そうか……それで、本題に入る」

「本題????」

「私は相談に来たわけじゃない。伝えなくては行けないことがあったから直接来た」

「………………そうだったんだ」

 

 なんか、私を助けに来たわけ辺りやっぱ現実はシャバいんだなと思わされる。やはり現実は無情だ。ちょっと悲しかったけど、それは顔が動くほどじゃなかった。きっともう、悲しんでも助けてくれるわけじゃないって分かってるからなんだろう。

 

「それで、だ…………トリニティのトップを襲撃する」

「また?」

「あぁ。ティーパーティーのホスト『百合園セイア』は死亡、『聖園ミカ』はこちらに付いている。残る『桐藤ナギサ』を始末すれば…………」

「転覆出来る、と」

「あぁ」

 

 確かにトップを切り崩せればだいぶ乗っ取りには近づけるだろう。あの夢の『百合園セイア』って人、ティーパーティーのホストだったんだね。また夢で合う(?)かは分からないしあの夢が本人の亡霊なのか分からないけど、夢出会えたときは聞いてみよう。

 

「申し訳ないけど私としては見通しが甘い気がするよ……」

「?……」

「多分あっちについてる『先生』は相当な人間だ。アズサの手紙から推測するに指揮能力だけじゃなく人を惹く力、人を動かす力がある。それは何より厄介で強い」

「成る程……」

 

 人を動かせると言うのは何より恐ろしいものだ。社会は人と人の繋がり、そして活動によるものだけど、人を動かせると言うことは力をもっているも同義だ。

 暴力には限界がある。でも人と人が協力し、群れをなした時の強さと厄介さはアリウスの訓練で体でよく理解させられた。

 

「それにトリニティは数多くの派閥が統合されて出来た学園だからトップがこれ以上消えると多分派閥は割れる。でもトリニティって体裁を破壊したやつなんて良い印象は持たれないだろう。特にパテル派はいいとしてフィリウス派とサンクトゥス派だった奴らは多分黙っちゃ居ないよね。あとゲヘナはノリと勢いでこっちにアタックしてきそうだし…………」

「…………つまり?」

 

 息苦しいし、体はだるいし熱っぽいけれど、驚くほど頭は切れていた。

 

「まあエデン条約のいざこざってアリウスにとって大チャンスだろうけど、失敗しそうだなぁ……ってだけ」

 

 特に先生の介入は多分割れた派閥を引っ付けるだけの物はあると思う。そうでなければ風の噂で耳にした様々な学園からの手助けを受けて会社に攻撃、なんて芸当は不可能だ。

 

 まあ、こんなに作戦に否定的だけど、私は無駄に頭が回って、上の人の言うことが聞けない節があった。だからといって代替案が出せるわけもなく、ただ無駄だと思いながらもやっていた。随分傲慢だけれど、中途半端に能力がある事がどんなに面倒で悪影響が出るかよく分かる例だ。

 

「……体は動かない割には、随分頭は回るらしいな」

「私にもなんでこんな頭回るのかよく分からないよ。ひどいよね、自分は作戦も立てないのにケチつけるなんて」

「そうだな…………話を戻すぞ」

 

 そしてまた話が脱線してしまった。私の変な所でお喋りなのも私の悪い癖だ。

 

「お前はその襲撃には参加しない事になった」

「……そうなんだ」

「…………アズサとは会いたくなかったのか?」

「大丈夫」

「そうか……体調も優れないだろうから作戦が終わるまでは寝ていろ」

「…………サオリ……ありがと、それと……」

「?」

 

 私はどうしても伝えたい事があって、立ち上がってそのまま去ろうとしていたサオリを引き止める。きっとアズサは手紙の中で言っていた補修授業部の仲間を取るかアリウスを取るか、悩んでいることだろう。だからせめて、この言葉だけでも伝えたかった。

 

「アズサに『迷うな。自分を信じて突き進め』ってだけ、伝えておいて」

「分かった」

 

 そう言ってサオリは家から出て行ってしまった。

 本当はアズサに会いたい。けれど、作戦に今の状態で参加すればすぐぶっ倒れるのがオチなのは目に見えてる。なので私は作戦の成功を祈りながら眠る事にしよう。作戦が終わるまではゆっくりしていていいのだ。私はその束の間の安息に身を委ねる事にした。

 

 そしてすぐにまた眠ってしまったのだろう。気付けば私はセイアと出会った廃墟にいた。そしてセイアは以前と違い、椅子に座って茶菓子と紅茶の乗ったテーブルからティーポットを取ってカップに注いでいた。

 

「セイア…………いやサンクトゥスのホストさん、また会ったね」

「おや、君は……どうやら私の正体がバレてしまったみたいだね」

「バレてるも何も、ホストだったのを私が何故かど忘れしていただけ」

「おや、そうだったかい」

 

 私は珍しくそう知った被りをしてしまった。いや、忘れていた事を知った被りなんて言わないかもしれないけど……まあ別にどっちだっていいだろう。

 

「立ち話もなんだ。君も座り給え。何、君の分の紅茶と茶菓子はあるからね」

「ありがとう」

 

 そう言って私は席につき、紅茶の入ったカップを啜る。味はあんまり分からなかったけど、

 

「君に一つ聞いてもいいかね?」

「……何?」

「君は…………どうして()()()()()()()()()()()いるんだい?」

「????」

 

 私は何を言っているのかよく分からなかった。予知夢?何を馬鹿げた事を言っているのだろう。あぁ、そうか。夢だからそう言う夢を私が見ているに過ぎないんだろう。

 なら、私の呪われた力についても言って問題はないだろう。もし予知夢に干渉出来るとしたら呪われた力位しかないだろうし。

 

「さあ……詳しくは分からない。けど、私には呪われた力があるの」

「呪われた…………」

「そう。まず攻撃を受けた時に、極稀に攻撃が無効化される事がある」

「ほう……」

「代償があるんだろうけど、何が代償になってるのかは分からない。名前なのかな?……」

 

 まあ、名前でも何でもいい。多分私は呪われた力が消えたら確実に戦闘はもっときつくなる。ただでさえ病弱なのにキツくなったら今度こそ本当にアリウスについて行けなくなるかもしれない。

 

「あと、もう一つは私の血液を付けた弾は威力が上がる。反動はそのままなのにリボルバーが対物ライフルみたいな威力が叩き出せるようになるよ」

「なんだいそれは…………君は呪術師か何かかい?」

 

 セイアは驚いた顔でそう言う。血を付けたら弾の威力が上がるだとか、非科学的過ぎて呪術を疑いたくなるのも仕方がないだろう。

 

「違うけど……でも予知夢に干渉出来ているのはそれなんじゃないかな」

「成る程…………ズズッ……」

「まあ、私は病で永くはないんだろうけどね」

「っ!?ゴホッゴホッ……どういうことだい!?」

 

 セイアは驚きの余りむせてしまった。

 

「私は肺が悪い。何の病気かは分からないけど、何であれそれを治せる程アリウスは豊かじゃない。遅かれ早かれ死ぬ」

「それは……あんまりじゃないか」

「……もう諦めたよ。何したって私の命が救われるわけじゃないんだから、全部どうでも良いよ」

 

 セイアはどうにかしたそうにしていたけれど、無理だ。仮にセイアが本人だとして、アリウスの生徒を助ければ当然裏切り行為になるから助けられない。

 それにそもそもセイアは死んでる筈。死人がどうこうできるものじゃないだろう。

 

「…………本当にもういいのかい?」

「うーん……まあ、強いて言うなら妹の事は心残りと言うか、守ってあげられなくなるのが申し訳ないと言うか…………」

「…………」

 

 私は……多分もう諦め切っているんだろう。助からない。別にそれで良かった。

 

 私はもう、色々投げ出したい程疲れていたのかもしれない。

 

「……さっきのは病の話は忘れて。貴方には関係ない」

「…………そうか」

 

 だが、セイアは何かを決意したかのような目をしていた。私にはなんでそんな目をしているのか分からなかった。そんな事、どうでも良かった。

 

「暫くはここにいるつもりかい?」

「あぁ」

「なら私にはやるべきことができてしまったからね。少しお暇させて貰うよ」

「そっか」

 

 私はそのまま紅茶を啜って何も考えず廃墟を眺め続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…………………………………………………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私はサオリと密会をしていた。

 

「姉上は来ないの?……」

「……あぁ。あいつの容態は悪化している。寝かせるのか最善だと判断した」

「そうか……」

 

 私は少しホッとした。もし姉上と戦うことになったならと思うと心苦しかった。だが、姉上が居ないのなら思いっ切りやれる。

 

「寂しいか?」

「………………あぁ」

 

 それでも、そうだとしても、私は姉上に会えないのは寂しかったし、私が信じる正しさの為に姉上を裏切るのは心苦しかった。

 

「姉上から伝言を預かっている。『迷うな。自分を信じて突き進め』と言っていた」

「…………そうか」

 

 きっと私の迷いが見抜かれていたんだろう。流石は姉上だ。手紙で伝えた事だけでここまで推察してしまうなんて、やっぱり姉上は凄い。

 

「遂に明日だ。失敗は許されない」

「分かってる」

 

 私は姉上を守る為に身に着けた気配を察知する特技でこちらを見る仲間に気付きながらも、そうサオリに返した。

 





 普通にゲヘナに対する偏見が激しいアズサ姉ェ…………
 因みに本人は役立たずとかほざいてますがまずその呪われた力がイカレポンチ能力なのでまず切り捨てられません。と言うか血液売れ。反動無しで威力上がるとか無法過ぎる。
 あとアズサ姉の強さですがアズサより攻撃性と範囲と回避性能が強くて耐久全般と射程がカスです。強さは姉のパラメーター尖ってるせいで一概に比較できましぇん…………
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